仙人、ウェル語る、将人のお陰で………
ウェルの声に村人から歓声が上がる。ウェルが両腕を広げ、手を振ると歓声が収まっていく。しんと静まるとコホンと咳込み、ウェルが話始める。
「自分たちが不調の将人さんを村に残して皆さんが鉱石を採取する坑道に入ったっす。そしてすぐにおかしな事に気付いたっす」
「おかしな事?」
「モンスターの死骸がそこら中に散乱してたっす」
その言葉に村人がざわめき出す。
「それ、おかしくないか?」
「坑道の中はモンスターのエサになるような物はないはずだ。一体、二体ならわかるけどそんな数じゃなかったんだよな? 散乱してたって事は?」
村人の問いにウェルが大きく頷く。
「軽く見ただけでも二、三十体の死骸があったっす」
ウェルの言葉にされにどよめく。『岩の角』だけでも厄介なのにさらにスターが大量発生する要因が坑道の中で発生したのではないか? そうなれ鉱石の採取が滞り、村の死活問題になる。最悪村を放棄しなければならない。村を占拠したモンスターを倒し、復興しようとしている時にこんな話が出るとは………。
「坑道の中モンスターの死骸がそんなにあった原因は何だったんだ!? 原因は分かってるんだよな!?」
村人の一人が不安を隠せず、大声で叫ぶ。それに対しウェルが不安を宥めるよう笑って答える。
「大丈夫っす。原因は判明してるし、それも解決してきたっす」
その答えに村人が安堵の息を吐く。最悪の事態にならなくて済んだ事に喜んでいた。
「さて、落ち着いた所で話を続けるっす。自分たちは坑道を探索し、そしてターゲットの『岩の角』を発見したっす。そいつは食事中だったっす。ここで『岩の角』の特徴を幾つか伝えるっす」
いきなり別の話題で話の腰を折られ、村人から文句が出る。
「これがのちの伏線になるんで聞いて欲しいっす」
ウェルが村人を宥めて話を続ける。
「『岩の角』はサイクロプスという一つ目の巨人の上位種で全身を岩と見まごうような硬質の肌に覆われ、額に名前の由来となった岩の角を生やしてるっす。食べる物が特徴的で岩や鉄、鉱石しか食べなくなるんで、こっちから手を出さない限り襲われる事はないっす。上位種の割に安全なモンスターっす………ところが今回の『岩の角』にはそのセオリーが通じなかったっすよ。この『岩の角』は『変種』だったんすよ」
「『変種』って何?」
聞いた事のない単語に将人は反応しウェルに尋ねる。
「『変種』というのはギルドで報告されたモンスターの特徴に当てはまらい特殊なモンスターの事っす」
マサトの疑問にウェルはすかさず答える。
「食事をしていた所でこの話を出したって事は食事の内容に問題があったって事?」
「驚いた、大正解っすよ!! マサトさんには何かご褒美を上げないといけないっすね。そおっすね………マサトさんにはこの………」
ウェルが豊満な胸を両手で挟み、寄せ上げる。
「おっぱいを好きなだけ揉みしだく権利を上げるっすよ」
マサトだけではなくマスターや村人もウホッっとなるが殺意の籠った五つの視線のうち四つが将人を残り一つがウェルを射抜いた。
「ウェルさん………私言いましたよね?」
「スミマセンっす!! ちょっとしたお茶目っす、冗談っす!!」
「マサト君、冗談らしいから本気にしたらダメだよ。パウラを泣かせるような事したら………もいちゃうよ」
ファテマが何かを握り引きちぎるジェスチャーをする。将人は股間を押さえ、「スイマセン!!」と必死に謝る。
「早速話を続けるっす………その『岩の角』は鉱石と一緒にモンスターを食べてたんっすよ。坑道に散乱していたモンスターの死骸は『岩の角』が食べ散らかしたものだったんすよ。それからこれは予想何すけどこの村を襲撃したモンスターの集団は『岩の角』から逃げ気てきたんじゃないかと思うんすよ」
「モンスターはモンスターなりの事情があったみたいだが、それでも村を占拠して、ましてや人を殺していい理由にならねえ!!」
村人の一人が憤然として叫ぶ。その声に同調し怒り出す、または泣き出す村人が続出した。おさまりが付かなくなりそうだったがここでウェルが落ち着かせるよう声を上げる。
「まあまあ、皆さん落ち着いて欲しいっす。これから面白くなってくるのでせめてもの慰み物として聞いててほしいっす」
ウェルの声にざわめきが収まり、シンと静まり返る。
「落ち着いてくれてよかったっす。ここから面白くなる事請け合い何で楽しみにして下さいっす………自分たちは『岩の角』との戦闘に入ったっす。通常の『岩の角』との戦闘では魔法で硬質化した肌を引きはがして中の肉体を攻撃するのが定石何すけど、魔法が通用しなかったっす。硬質化した肌はこっちが放つ魔法は全て防ぎきってしまったっすよ」
「そんな奴にどうやって勝ったんだ?」と村人。
全く打つ手のない相手にどうやって勝利したのか、当然の疑問である。そこでウェルが将人をチラリと見た。
「それはそこにいる将人さんのお陰っす。将人さんがいなかったら自分たちここにいなかったかもしれないっす」
村人たちの視線が一世に将人に向く。
「え、俺?」
ウェルが頷く。マサリア達を見ると同様に頷いた。
「その場にいなかったんだけど、俺何やったの?」
自分のお陰だと言われても将人には身に覚えがない為、喜ぶことが出来なかった。