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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人、『氣』の不便さ、今後の課題を考える

村を占拠したモンスターを排除してから一日が経った。

その日は朝から村人総出でモンスターの死体の排除、壊された建物の修復、死者の埋葬等行われていた。そんな中、将人は酒場兼宿屋の一室を丸々開けてもらいそこで惰眠をむさぼっていた。


「戦闘以外はまるで役立たずだな、俺」


将人は天井を見ながらため息をついた。少し体を動かすと全身に痛みが走る。昨夜のボスコブリンとの戦闘で打ち身、切り傷は当たり前、全力全開で動いた事による筋肉痛が痛みの原因である。将人の怪我や筋肉痛を治そうと魔法使い数人で治癒魔法をかけるがほとんど効果がなかった。将人が扱う『氣』は魔法の効力を阻害する、攻撃魔法はもちろん治癒魔法も効きにいのだ。その為、薬草と包帯でぐるぐる巻きにされ部屋に押し込められ、マスターに休息を命じられてしまう。何も出来ないことに罪悪感を感じるも厚意に甘える事にし、眠る事にした。といってもさっきまで眠っていたのだが眠り足りなかった。目を閉じるとすぐにウトウトし始めたのだが、数人の無遠慮な足音と話声で眠りは破られるのだった。

バンッと部屋のドアが開かれ、何かがこちらに向かって飛んできた。打ち身、切り傷、筋肉痛の三重苦で苦しむ将人には避ける事が出来ない上に何かが乗っかった。、体の上に乗っかられた事による衝撃はさらなる苦痛を呼び、声にならない悲鳴を上げる。目をきつく閉じ苦痛に耐える事数秒、痛みが和らぐと、上に乗っかったものが何なのかを確認しようと目を開ける。そしてさらに声にならない悲鳴を上げた。


「マサトさん、ただいまっす!」


上に乗っかっているのはウェルだった。ただでさえ魅惑的、官能的な少女なのだが今の状態はさらに凄かった。ほとんど素っ裸に近い状態で胸や腰に申し訳ない程度に布が巻き付いているだけだった。


「ウェルはん………あんさん何やってるん? オナゴがそんなはしたない恰好したらあきまへんえ」


将人は動揺してかはんなりしてしまう。。


「なんすか、マサトさん。変な喋り方して、面白いっすねマサトさん」


ウェルが将人の頬に自分の頬を擦り付けてくる。将人は言葉が出せずアワアワする事しか出来ず、引きはがす事が出来なった。小悪魔的な笑みを浮かべ将人の顔を見るウェルが不自然に後方に離れていく。


「お兄ちゃんに変な事したらダメ………」


「ウェル、アンタって人は………羞恥心ってものがないの!?」


マサリアとパウラがウェルの腕を掴み、引きはがしてくれたのだ。深呼吸するものの興奮冷めきらない将人はマサリアとパウラの恰好を見て突っ込まずにいられなかった。


「リアはん、パウラはん………あんさんらも人の事言えまへんえ」


二人もウェルに似たような状態でギリギリ裸体ではないという状態だった。


「「これはしょうがないのよ!!」」


二人がハモりながらウェルを引っ張って部屋を出て行った。三人が出て行ったドアを見ていると、ドアが開き、ファテマがひょこりと顔を出す。


「騒がせてゴメンね、マサト君。夜にでもお互い何があったか話そうと思うからそれまで休んでて」


ファテマがそれだけを伝え、ドアを閉めた。


ドアの向こうでは「私もマサト殿に………」、「後でね」というアベルトとファテマの声が聞こえた。話声と足音が遠ざかると早はしんと静まり返る。やっと休めると目を閉じると、先ほどのウェル、マサリア、パウラの艶姿が思い出されムラムラするのだが体中が痛み、ナニもする事が出来なかった。



ドアがノックされ将人は目を覚ました。ムラムラしつつも睡魔に勝つ事が出来ず眠っていたらしい。部屋には夕日が差し込み、部屋を赤く染めていた。今日は食っちゃ寝以外何もしてないなと思いながらドアに向かって声をかける。


「開いてるよ」


ドアがガチャリと開き入ってきたのはマサリアとパウラだった。


「あ、お兄ちゃん起きてた」


今度はちゃんと服を着ていた。ホッとするも少し残念だった。パウラがベットの縁に腰を下ろし、残念がる将人を不思議そうに見ている。将人の表情から察した将人は少し意地悪をしようと考え口を開く。


「何というか………マサトって事が終わる時、動けなくなってる事多いよね?」


「イヤミを言うなよ………好きでこうなってる訳じゃないんだから」


クリティカルヒットだったようで将人はヘコむ。


「ゴメン、マサト。ちょっと考えなしだったわ………でも、魔法が効きにくいというのも善し悪しね。冒険者やるにはちょっと不便な能力かもね、『氣』って」


将人はその一言に腕を組んで考え込む。

冒険者をやる上で治癒魔法というのは必須である。移動中にモンスターや盗賊に襲われ、怪我を負う事はよくある話で、そのせいで依頼不履行になる訳にはいかないのだ。治癒魔法が使えれば余程の大怪我でない限り、依頼を続行する事が出来るのである。だが、将人にはあらゆる魔法が効きにくい。治癒魔法が使える魔法使いが一人いれば確実に数人は治癒できる。だが、将人の場合、二、三人で治癒魔法をかけてもほとんど効果がない。試した事はないが恐らく数十人の魔法使いが一斉に治癒魔法をかけてようやく効果が出てくるのではないだろうか? コストパフォーマンスが悪い事この上ない。いかにダメージを受けずに敵を倒すか。これが今後の課題にになりそうだ。

将人がさらに思考の海に潜り込みそうになった時、パウラが将人の目の前でパンッと手を叩いた。将人は驚いてパウラを見る。


「お兄ちゃん、ビックリした?」


パウラはいたずらが成功した子供のように笑っていた。


「ビックリしたけど………」


将人は少し悔しがったがパウラは何も悪くない。グッと堪える。


「リアちゃん、ダメだよ。お兄ちゃんに変な事言ったら。私たちはお兄ちゃんを呼びに来たんだから」


「呼びに来たって?」


「マスターが私たちにご馳走作ってくれたからマサトを呼んできてって。マサトは動ける?」


「ああ、大丈夫」


そう言って将人はベットから降りて立ち上がるが足元がふらつき、倒れそうになり、マサリアとパウラがすかさず支える。


「全然大丈夫じゃないわね」


「やっぱり私が付いてきてよかったね、リアちゃん」


どういう事かと聞こうとする前にパウラが行動に出る。結論から言うとパウラが将人にお姫様抱っこしたのだ。


「………パウラちゃん、抱っこじゃなくっておんぶにしてくれないか? 男がお姫様抱っこというのはちょっと」


「ダメ、これは私の特権だモン」


パウラが満面の笑みで鼻息を荒くして将人を運んでいく。後ろについていくマサリアは羨ましそうにパウラを見ていた。


「俺をお姫様抱っこって誰得だよ!? リアも羨ましそうに見ない!」


将人は照れ隠しからぶっきらぼうに言った。





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