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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人VSボスコブリン 卑怯

将人を中心に包囲したのはコブリンルジャーとオークだった。正面だけでも二、三十体。後方は確認できないが似たようなものだろう。それだけのモンスターに囲まれているのに将人の顔に浮かんでいるのは凄みのある笑みだった。


(何で俺、笑っているんだろうな。元の世界だったらこういう風に笑えたんだろうか?)


将人はそんな事を考えながら『三体式』の構えを取った。


(師匠、結衣姉さん、『形意拳』を発展させて先人の皆さん、一緒に戦って下さい!!)


将人は心の中で呟くと同時にモンスターが一斉に動いた。雄叫びを上げ将人に向かって一斉に襲い掛かった。将人は正面から向かってくるオークに向かって『崩拳』を打ち込んだ。これが記憶を取り戻してから、自分の意志で繰り出す『崩拳』だった。一歩踏み込み、オークの間合いにするりと入り込み、そこから繰り出される拳、体の連動により収束される力は激流となって拳から放出される。拳は深々とめり込み、オークの内臓を破壊、一瞬にして命を刈り取った。左右にいるコブリンソルジャーとオークには内から外に打ち上げるようにして顎を打ち上げる。顎の骨が砕ける感覚が拳に感じると同時にコブリンソルジャーとオークは前のめりに倒れる。『横拳』だった。

倒れている正面のオークを乗り越え、手斧を振り下ろそうとするオークに対し、左腕を頭上に上げ、防御すると同時に右拳で突いた。右拳がオークの胸部にめり込み、血反吐を吐いて倒れた。『炮拳』だった。

僅か数秒の間に四体のモンスターが戦闘不能に陥った。将人はこの結果に驚愕せずにはいられなかった。『万法(全ての技法)は三体式より生まれる』とはよく言ったものだ。『形意拳』のあらゆる技法は『三体式』より始まるが、『三体式』を基本からなぞり返したら技の一つ一つがより強力になるとは思わなかった。

全てのモンスターは生命力が高い、低レベルモンスターの代名詞でもあるコブリンやオークも例外ではない。そんな相手を一撃で倒す将人に、周りのモンスターは本能的に恐怖を感じ後退る。将人はチャンスだと思った。こっちがどれだけ強力な攻撃力を誇ろうと倒せるのは一、二体のみ。数の優位をひっくり返す事は出来ないのだから、このまま包囲を狭めればこっちの敗北は確実だというのにそういう知能がないのはやはりモンスターといった所か。

正面のモンスター数体を倒せば包囲から出る事が出来る。踏み込み、拳を繰り出そうとした時だった。雄叫びが雷鳴が如く轟いた。将人も周囲のモンスターも雄叫びが聞こえた方向を見る。そこにいたのは先程のひときわ大きいコブリン―――ボスコブリンだった。身長にして二メートル、いや三メートル程はあろうか。巨大な長方形型のタワーシールド、全長にして二メートル程、表面に凹凸があるようだがシールド全体に布が巻いてあり凹凸が何かは分からない。巨大なバトルアックスも装備しており、体と相まってあまり敵に回したくない凄まじい迫力があった。

完全装備しているボスコブリンの姿を見て周囲のモンスターに動揺が走る。数体のモンスターは逃げようとさえしている。


「こいつら、何を恐れている?」


将人の問いは次の瞬間答えられた。ボスコブリンが雄叫びと共に身を屈める。そして跳躍した。三メートルある巨体、そして巨大なタワーシールド、バトルアックスを持った状態での約十メートルくらいは跳躍していた。


「バケモノかってバケモノか!? 落下地点は………当然ここか!!」


将人は正面のモンスターを倒し、包囲をから脱出した。次の瞬間、爆弾が爆発したような轟音と粉塵で周囲が見えなくなる。『三体式』の構えを取り周囲を警戒していると、右横から空気を切りして何かが接近してきた。これを防いではならないと感じ、将人は素直に左に倒れる。将人の体の上を何かが通り過ぎる。それが粉塵を吹き払った。その為上空からバトルアックスが振り下ろされるのが見えた。将人は素早く立ち上がり、バトルアックスの攻撃を避けた。バトルアックスが地面を深々と抉るのを見てゾッとした。もし攻撃が当たっていたら、防具をつけていようと関係なしに体が真っ二つになっていだろう。


「コブリンって最弱なはずだよな。あれはそんな生易しいもんじゃないぞ!? どんな進化したんだよ!?」


つっ込む将人にボスコブリンが雄叫びで答え、バトルアックスとタワーシールドを振り回してくる。重量のある武装を狩るあると振り回してくるボスコブリンの膂力は恐ろしいものだった。だが、単純と言えば単純なのか攻撃は単調で注意していればまず当たる事はない。しかもボスコブリンの手下とも言えるモンスターの固まっている所に将人が突っ込めばそこにバトルアックス、タワーシールドを振り下ろすので自動的に倒す事が出来た。しばらくは避ける事に専念し、ボスコブリンに他のモンスターを倒してもらう。モンスターたちも巻き込まれるのは御免だと蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。広場に残ったのは将人とボスコブリンのみだった。


「お前バカだろ、自分で自分の戦力追っ払ってどうするんだよ?」


ボスコブリン答えず、攻撃を繰り出す。先程の攻撃に比べたら軽い攻撃。ボスコブリンの動きが遅い。明らかな隙が出来る。将人はそこ目掛けて『崩拳』を繰り出す。ボスコブリンはタワーシールドで『崩拳』を防ぐ。将人は拳の感触が奇妙な事に気付く。鉄の感触ではない………これは肉の感触だった。タワーシールドを巻いている布の一部が赤く染まる。それを見て将人はある事を想像した。


「テメェ………その盾に何をつけている!!?」


将人が大声で叫ぶ。ボスコブリンは将人が何を言っているのか分からないが言いたい事は分かったのだろう。ニヤリと笑うとタワーシールドに巻いていた布を引きちぎる。そこにあるものを見て将人の怒りが頂点に達する。

タワーシールドには一人の裸の少女が縄で両手足を括り付けられていた。その少女に将人は見覚えがあった。


「マスターの………奥さん………」


腹部に痣が出来ている所を見ると将人の『崩拳』が女性の腹部を直撃したのだろう。将人はタワーシールドに攻撃した拳を握りしめ、悲痛な、それから怒りの表情になる。


「テメェ………世話になった人の奥さんを俺に攻撃させやがって………絶対に許さん!! 許さんぞぉぉぉ!!!」


将人は怒りの雄叫びを上げた。




 





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