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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人、復活、夢と現実のリンク

将人は頭の激痛により目を覚ました。将人は自分が地面に直に横にされていた。


「ここは………」


将人は痛む頭を押さえて、上半身を起こし、周囲を見渡す。そこはガタイのいい大男が数にして二、三十人程集められていた。建物の中のようで大男たちはイラだった様子で建物の出入り口であるドアを睨んでいた。建物の窓から中を覗き込む顔を見て将人は驚く。豚とイノシシを合わせたような顔が窓からこちらを覗き声を上げる。人間の言葉をしゃべっていない為よく分からないが恐らく笑っているのだろう。


「何だ、あれは………人間じゃない?」


「おお、マサト目を覚ましたか?」


そう呼ばれ声の方向を見ると赤毛のツンツン髪の人相の悪そうな男がいた。心配げに自分を見る男は人相とは逆に人が良さそうである。この人なら、今の状況、自分の事を聞いてみてもよさそうだ。


「アナタは誰ですか、俺は………誰でしょう? それにあの化け物は一体なんですか!?」


「マサト、お前何を言ってるんだ!?」


赤毛の男は驚いたように将人に尋ねる。


「何を言ってると思うでしょうが………自分が誰なのか分からないんです。どういう状況なのかも………」


将人は頭部に受けた打撃のショックで記憶障害を起こしていた。


「オイ、本気で言ってるのか!? 冗談だったらやめてくれ、今大変な状況なんだからよ」


「スミマセン………」


赤毛の男は将人の様子を見て、ふざけているのではないのを悟る。


「厄介な状況がさらに厄介なるか!? チクショウが!!」


赤毛の男が自分の事や今の状況を説明してくれる。自分の名前が将人、ウルバー鉱山に現れたモンスターの討伐の為に来た冒険者である事、体調不良のため、戦力外とされパーティーを外された事、突然ウルバー鉱山の方から何十体というモンスターが現れ、村を襲った事、モンスター討伐の為、ウルバー鉱山に向かった仲間を呼びに行った事、生き残った村人は男女で分けて閉じ込められてる事、最後に自分が将人たちが宿泊している宿屋兼酒場のマスターである事を話してくれた。


「冒険者、俺が!? モンスター討伐、何ですか、それ!? というかモンスターって何だ!? そんな生物が本当にいる訳が!? でも、現にそこにいるみたいだし!?」


将人はマスターの話にいまいちピンと来ていないが信じない訳にはいかないようである。


「俺たちはどうしてここに集められたんですか?」


「それがよく分からん、普通だったら男は殺されるし、女はここでは言えない様な目に合う。だが、あのモンスターは少しおかしい。男と女を分けて監禁とかそんな分別があるなんて考えられん」


そんな事を話している時だった。出入り口のドアが開いた。中に入ってきたのはコブリンソルジャー二体、オーク二体であった。四体のモンスターは顔を確認しながら誰かを探しているようだった。


「どうして戦わないんですか? ここにいる人全員て戦えばモンスターに勝てると思うんですけど」


「逆らったら村の女たちに何されるか分からんから逆らえないんだよ」


将人は村人を見る。睨んだだけで人を殺せるような視線をモンスターに向けているが、意志の力で自制していた。

コブリンが将人の前に立つと、将人を指差し騒ぎ立てる。他の三体のモンスターも将人の前に来ると騒ぎだし、乱暴に腕を掴んだ。


「マサト!! 何しやがる、このヤロウ!!」


四体のモンスターを止めようとするマスターを将人が手で制する。


「マスター! 俺は大丈夫ですから」


将人はモンスターに引きずられながらもマスターに笑顔を見せる。マスターは将人が出ていったドアを見ながら呟く。


「マサト、死ぬなよ。生餌戻ってきたら蜂蜜酒奢ってやるから」



「自分で歩けるから話してくれ」


将人はモンスターに話しかける。言葉が通じたか分からないが腕を掴んでいたオークが手を離した。何かを言われているのだがコブリンやオークの言葉は分からなかった。言い終わると前を歩き始めたので後についていく。そして村の広場に出る。広場の四方に建物の木片を集めそれに火をつけ光源とし、広場全体が見渡せるようになってた。中央には通常のコブリンとは違うひと際大きいコブリンが地面に座っていた。他のコブリンにはない妙な迫力がある。この村を襲ったモンスターの集団のボス的存在なのだろう。ボスコブリンは将人を一瞥すると手下であろうコブリンに何かを伝え後ろに下がった。ボスコブリンと変わって出てきたのはかなり小柄なコブリンだった。数にして七体、手には棍棒を持っていた。小柄なコブリンは将人を見てけらけらと笑う。嘲笑しているのだろう、悪意のある笑いは何でか分かる。そして、小柄なコブリンは何の宣言もなく襲い掛かってきた。

将人は棍棒の攻撃にを横に飛んで躱す。躱した先に別のコブリンがいた。体勢を崩している為、コブリンの攻撃を避ける事が出来ず、コブリンの打撃を頭部に食らってしまう。痛みで目から星が出る。動きが止まった所に総攻撃を食らう。痛いには痛いのだがそれで死ぬほどではない。それでも連続で食らうのはマズイ。小柄なコブリンの一体に体当たりを食らわし包囲から脱出する。そして、小柄なコブリンと対峙するのだが何をすればいいのか分からない。


(俺、こういう時どうしてたんだっけ?)


将人はその何かを思い出せず、何故かイラついた。小柄なコブリンは将人の苛立ちなどものともせず、再び襲いかかってきた。将人はともかく走り回って逃げる事にした。逃げに徹すれば小柄なコブリンは追いつく事が出来なかった。隙を見て広場から逃げようと考えていたが周りをコブリンやオークが包囲していて逃げる事が出来ない。広場をともかく逃げ回っていたが段々息が切れ、走り回るのが辛くなる。そして疲労から足がもつれ倒れてしまう。そこに小柄なコブリン七体に包囲され、攻撃を受ける。何度も攻撃を受け、そのうちのいくつかは頭部にを直撃する。意識が朦朧として痛みも感じなくなってきた。


(俺………このまま死ぬのかな?)


意識が暗闇に飲み込まれる。このまま暗闇に飲み込まれて消えてしまうのだろうか、そんな事を考えていた将人の前に過去の光景が映し出される。懐かしい光景、そしてそこには今自分が思い出さなければならない答えがあった。



小柄なコブリンは獲物への攻撃を止める。動かなくなったのを見て勝利の雄叫びを上げる。それに合わせて広場を囲んでいるコブリンやオークも雄叫びを上げる。

その声に反応したのか将人はユラリと立ち上がった。目の焦点はあっておらす、フラフラしている。ちょっとつつけばそれだけで倒れてしまいそうだ。そんな将人の姿を小柄なコブリンたちは嘲笑い、一体のコブリンが将人に近寄り棍棒を振り下ろした。

将人はコブリンの攻撃を見ていなかった、将人が見ていたのは過去の光景、そこに映し出された人物の教えを聞いてその通り体を動かした。


(変なクセがつくとよくない。早めに矯正しとかないとな)


左足を前に出し、右足は後ろに置く。右足の爪先を左足の直線対し四五度に開く。両足の間隔は肩幅よりやや広くし、後ろ足に七分、前足に三分体重をかけて腰を落とし、両膝が寄り添うようにする。

左腕を前方に、肩と水平に伸ばし肘を下に向けて掌を前方に向け千部の指を曲げボウルを握るような形にする。

右手は掌を左掌と同じ形にして、ヘソの高さに置き人差し指を左肘の下に向ける。

左ての人差し指、鼻先、左足の親指が前から見て一直線に揃うようにする。


その人物にの教えに従い現実の体も動いていた。全ての教えを満たした途端、体に力強いエネルギーが循環し始めるのを感じた。


(『氣』の流れを感じるだろう? その状態で『崩拳』をやってみろ)


その声に従い、現実の体が『崩拳』を繰り出した。将人の拳は小柄なコブリンの顔面に入った。拳が顔面に深々とめり込み、遅れて体が吹っ飛んだ。その攻撃力を見て小柄なコブリンたちは後じさり踵を返す手逃げ出した。コブリンたちにとって代わってコブリンソルジャー、コブリンソーサラー、オークが広場に入ってきて将人を包囲していた。

将人は『崩拳』を打ち出した衝撃により朦朧とした意識に活が入った。

将人は自分の拳の感触、そして倒れてるコブリンをみてポツリと呟いた。


「俺がやったのか?」


暗闇の中で見た過去の光景、その中で『三体式』の基本をなぞり返し、行う事で矯正する事が出来た。疲労困憊、全身がズキズキと痛むが『三体式』の構えを取るとそれより強い『氣』の流れに思わずニヤリと笑ってしまう。動きの矯正がされた事で『形意拳』が先人の技術、誠一郎や結衣の思いが戻ってきた。復活を感じたのだった。




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