仙人、依頼を探す、アベルドが友人になる
冒険者試験翌日。
冒険者ギルドの受付前で将人はマサリア、エミリアと別れる。マサリアたちは今日から冒険者としての基礎講習及び戦闘訓練、将人は冒険者としての初仕事だった。将人は受付カウンターに行くと昨日案内してくれた受付嬢に声をかける。
「おはようございます、受付嬢さん。ええと………」
「おはようございます、マサト・クサカベ様。私はエマ・モリンズと申します」
「ありがとう、エマさん。早速ですが冒険者としての仕事を紹介してもらいたいのですが?」
「でしたら、向こうの掲示板に仕事の内容、報酬、期限、難易度が書かれた依頼書が張り出されているのでお決めになりましたら依頼書と冒険者認定書を一緒に提出してください。受理されましたら依頼が始まります。期限までに依頼を終えられなかった場合は違約金が発生しますので注意して下さい。他に何かありますか」
「とりあえず今は十分です。早速軽視版確認してきます」
将人は掲示板に張り出されている依頼書を見て頭を抱えた。将人はこちらの世界の文字を読めないのだ。
(そういえばこっちの文字を教えてもらう約束だったがそんな暇がなかったな。誰かに聞くべきか?)
辺りを見回すと柄が悪そうで屈強な男が数人いるだけで他には誰もいない。話しづらいと躊躇してると後ろから「クサカベ師匠、おはようございます!!」と大声で声をかけられる。後ろを見るとアベルド・ベイリアルが直立不動で立っていた。
「ビックリした!?………確かアベルド君だったね、オハヨウ。ところで師匠て何?」
「私より強い人を師匠とお呼びするのは当然です。クサカベ師匠どうかわたしを弟子にして下さい!!!」
「だが、断る!!!」
将人は腕を組みながら即答で答える。
「師匠!!」
アベルドの目に涙が浮かぶ。
「俺は自分と同じくらいの年の奴に師匠て呼ばれるのは抵抗あるから。慢心がないならこっちもわだかまりないし友達でいいよ」
「師匠、いえ。クサカベ殿ありがとうございます」
アベルトが感極まって両手を握ってくる。
「友達になったアベルト君に頼みたい事があるんだが………」
「このアベルドに出来る事なら何なりと」
「じゃあすまないんだが………」
掲示板に張り付けてある依頼書の内容を一つ一つをアベルドに読み上げてもらった。驚いたり嫌な顔せず協力してくれるのだから根はいい人なのだろうと将人は思った。
(初心者冒険者である自分が出来る依頼はこれだろう)
掲示板から今井の依頼書を取り上げる。依頼書には薬草の採取100枚、報酬100ゼル、期限なし、難易度☆(星の数が多いほど難易度が高く星の数5個が最高難易度)と書かれていた。
「じゃあこれやってみるか」
「クサカベ殿、頑張ってください。応援してます」
「アベルド君も頑張って。ああそうそう………」
将人はマサリアとエミリアの名前を出し、二人とも仲良くするように頼んだ。将人は受付カウンターに戻り依頼書と冒険者認定書をエマに提出する。エマは依頼書と冒険者認定書を受け取り帳簿に依頼内容と依頼を受ける冒険者名を記入し冒険者認定書を将人に返却する。
「これで依頼が受理されました。薬草は回復剤の材料として常に需要があるため期限がございません。こちらが薬草の特徴になります」
そういってエマはカウンターの下から植物辞典を取り出し将人に見せる。
「では、マサト様。お気をつけて」
笑顔で一礼される。
将人は冒険者ギルドを出ると大きく背伸びをして一息つく。
(日下部将人、15才、冒険者家業の始まりだ!)
心の中でそう呟き、気合を入れ、薬草が群生しているという森がある場所につながっている東門に向かった。