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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人、擒拿術で戦う、暗闇で見た物は………

酒場を出た将人はなるべく建物の陰に隠れ、忍び足で移動する。村の所々で村人がモンスターと戦闘しているがそれに入る事が出来ない。今の将人では相手纏いになる。戦う手段がないわけではないがモンスターと村人が入り乱れる状態ではうまくいかないかもしれない。だから将人は隠れて移動する。目的はウルバー鉱山である。そこにいるマサリア達を村に呼び戻せれば、戦力の増強が望める。モンスターを全滅させないでも退散させる事が出来るかもしれない。

将人はウルバー鉱山の入り口である門まであと50メートルと言う所にある建物の陰に隠れる。建物の陰から門を見るとコブリンソルジャーが五体、コブリンソーサラーが三体、オークが四体が陣取っていた。遠目ではっきりとは見えないが、何かを焼いて食べているようあった。


(焼いて食べるような知能があるなら話し合いも出来るだろうに………)


そんな事を考えながらモンスターを監視していたがそこから動く感じがしなかった。将人は溜め息をついて小声で喋る。


「アイちゃん、起動」


マサトの声に答え背に背負ったアイアスがフワリと浮きあがり、将人の目の前で静止する。


「アイちゃん、君に指令を与える。空からウルバー鉱山に入ってマサリア達を呼んできてくれ」


アイアスはイヤイヤするように将人に自分の体を擦り付ける。アイアスの反応に将人は困った表情になる。


「アイちゃん、ワガママ言わないでくれ。お願いだから頼むよ」


将人はアイアスを撫でながら言う。しばらく無言でアイアスを撫でるとゆっくり将人から離れた。離れたくはないが主人の願いである、アイアスは我慢して将人から離れる。建物の高さを超え、さらに上昇し、視認できない所まで上昇するとアイアスはウルバー鉱山へと向かう。


「………アイちゃん、頼むぞ」


空を見上げてポツリと呟く。視線を下に戻すとあるものと目が合ってしまう。コブリンだった。将人は建物の陰にコブリンを引きずり込む。急な事でコブリンは逆らう事が出来ない。もみ合うようにして建物の裏の路地に入った将人とコブリンは立ち上がり対峙する。コブリンは手に持っていた棍棒を振り回しながら突進してくる。将人はそれに対し『三体式』の構えを取る。将人は今、打撃系の攻撃をする事が出来ない。なら如何にして戦うというのか。

コブリンが左手に持った棍棒を振り下ろす。将人は左足を右斜めに進め、足を起点に回転し、こん棒の攻撃を逃れる。続いて左手でコブリンの左手首を掴み、右拳をコブリンの肘下に当て突き上げる。ゴキッという音と共にコブリンの腕が変な方向に曲がる。悲鳴を上げようとするコブリンの口を塞ぎ、左足でコブリンの左膝を踏み抜いた。膝が砕ける感触が足裏に伝わり将人は顔を歪める。うつ伏せに倒れ、虫の息になっているコブリンの延髄を右足で踏み抜きとどめを刺した。モンスターとはいえ、命を刈り取るという事には慣れない。偽善とはいえ手を合わさずにはいられなかった。

『形意拳』は基本となる『五行拳』を修練する事で打撃力を練るのだが、角度やタイミング、歩法等を調整する事で『擒拿術きんなじゅつ』、すなわち関節技に発展させる事が可能なのである。将人が考えていた別の戦い方とは『形意拳』を関節技に応用する事だった。これなら打撃力がなくても敵を制する事が出来る。養父である誠一郎より教わっていたが、あまり得意ではなかった為、使いたくなかったのだがなりふりり構ってはいられなかった。

再び建物の陰から門の方を見ると、数体のコブリンソルジャーとソーサラーがこちらに向かってきているのが確認できた。コブリンとの戦闘ではそれほど音は出ていない筈である。だとするなら建物の陰に引きずり込んだのを見られていたという事か。将人は踵を返し逃げる事を選択した。将人は関節技はそれ程修練を積んでいない。一対一ならともかく複数を相手にするとなるとこっちが不利となる。将人は路地を走り抜け反対側へ出ようとした時、頭部に衝撃を受け、気を失った。気を失う直前将人の目に入ったのはコブリンソルジャーのゲヒた笑みだった。



将人が暗闇の中で見たのは二年前、日下部家に引き取られた十三才の自分だった。その自分は土下座をしていた。


「ゴメンナサイ………お願いだから捨てないでください!!」


それを見た誠一郎は困った様に、結衣は悲しそうに将人を見ていた。




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