表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
123/190

仙人VSコブリンソルジャー、ソーサラー、自身に問う

将人は武装したコブリンの集団の中へ単身突っ込んだ。正面のコブリンに縦拳で突いた。『崩拳』を打ち込むがコブリンが装備していた鉄の盾で防御される。将人が装備しているゼロ鉄製ガントレットと鉄の盾が衝突し将人の手が軽く痺れる。動きを止めた所に左右に回り込んだ他のコブリンが剣で攻撃をしてくる。将人は右側のコブリンに倒れ込むようにタックルをして左側のコブリンの攻撃を逃れつつ、右側のコブリンに攻撃を加える。もつれあうように倒れた将人は、すぐにコブリンから離れ、後方に逃れようとするが他コブリンの追撃を受け、逃げ切る事が出来ない。今だ頭が混乱し、体がうまく動かせず武装したコブリンに間合いを詰められる。棒立ちになってしまった将人と、武装コブリンの間で空気が爆ぜる。その衝撃で将人と武装コブリンが吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。


「マサト君、動けるかい?」


将人のもとに駆け寄ったファテマが険しい顔で将人に言う。


「動けるなら後方に下がって待機してて!!」


「俺、戦えますよ」


「冷静じゃない人に戦ってほしくないよ。マサト君、キミ気付いてるかい? 戦う前に行うあの構え取らなかった事に」


ファテマに言われ、頭から冷水をぶっかけられたような気分になった。


(『三体式』の構えを取ってなかった………)


『三体式』―――これは『形意拳』ではまず最初に行う基本姿勢である。『形意拳』のあらゆる動作が『三体式』から始まり、『万法(全ての技法)は三体式より生まれる』、『万法(全ての技法)は三体式から離れず』と言われるぐらい重要な姿勢である。『三体式』の構えを取る事で『氣』が養われ、威力を体の内部に通す浸透力が生まれる。『三体式』を行わず戦おうとしていたとは、まさに蟷螂の斧と言えよう。将人は自分の迂闊さに顔から火が出る思いだった。


「パウラとウェルさんが後方で待機してるから将人君もそっちに行って」


今の自分に一緒に戦う資格なしと判断した将人は後ろに退く事にした。


「マサト君、後でパウラとウェルさん含めて膝詰め説教だからね!」


ファテマに背後から言われ、将人は首をすくめた。待機していたウェルは引きつった笑みを浮かべ、隣にいるパウラに


「君のお姉さん、怖いっすねえ」


「誰のせいでこうなったと思ってるんですか!!」


などと言い合っていた。



マサリア、エミリア、アベルト、ファテマの四人でモンスターと戦う事となった。マサリアたちが戦う相手は、剣と盾、鎧で装備を固めたコブリンソルジャー四体と、魔法の使用するコブリンソーサラー三体である。数が多い上に、道具を使う知能と魔力を併せ持ったモンスターが相手である。レベルが上がれば非常に厄介な相手だ。

前線で戦えるのはアベルト一人、マサリアとエミリアは後衛、ファテマは前衛後衛どちらもそつなくこなせるが、突出した物がない器用貧乏である。戦力差を見るとマサリアたちの方が不利だった。


「アベルト君、行って!」


ファテマがアベルトに指示を出す。アベルトが頷き、身体強化の魔法をかけ、コブリンソルジャーに向かって突進する。コブリンソルジャー一体の間合いにあと一歩で入るという所でアベルドがコブリンソルジャーの頭上を跳躍した。狙うはコブリンソルジャーの後方に控えているコブリンソーサラーだった。コブリンソーサラーがアベルトに向かって火球を放つが空中を移動する相手に狙いを定められず、見当違いな方向に放たれる。一度魔法が発動されると、また一から呪文を唱え直さなければならない。こうなると魔法使いは無防備となる。その隙をアベルトは逃さない。コブリンソーサラーの間合いに入り、一刀のもと三体のコブリンソーサラーを倒す。


「エミリアさんは私と一緒に石つぶてを! マサリアちゃんは強力なのを頼む!」


ファテマの指示にマサリアとエミリアが頷く。エミリアはファテマの隣に立ち呪文を唱える。攻撃力が低いが連射が出来る石のつぶてを飛ばす魔法を行い、コブリンソルジャーを足止めする。後方からアベルトがコブリンソルジャーを強襲する。その為、コブリンソルジャーの二体がアベルトの足止めに向かう。四体のコブリンソルジャーは挟撃され身動きが取れなくなった所にマサリアが叫ぶ。


「アベルト、下がって!!」


マサリアの頭上に直径二メートルほどの火球が浮いていた。マサリアは火球をコブリンソルジャー四体の頭上に落とす。コブリンソルジャーは火球に飲み込まれた。轟音と共に爆風で木々が揺れる。爆風が晴れると、地面が抉れ、コブリンソルジャーは死体も残さず消失していた。マサリアたちは数の不利を物ともせず七体のコブリンを退治した。

マサリアとエミリアはお互いの勝利をたたえハイタッチする。アベルトはマサリアの声を聞いてから後方へ跳躍するが少し遅かった。アベルドの装備がところところ焼け焦げており髪の毛がチリチリになっていた。アベルトの無残な姿ををファテマが面白そうに笑っていた。

鮮やかに敵を倒したマサリアたちの光景を見て、彼女らは間違いなく冒険者だと思った。それに対し自分はさっき戦った時冒険者だったのかと自分自身に問うていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ