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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第六章 仙人、王都へ向かう
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閑話 仙人、難易度の高い食材を食す、国王の正体を聞く前に

アルマは立ちあがり、王座に戻る。将人に謝罪をして幾らか胸のつかえが取れたのだろう。表情も普段の落ち着きのあるものだが、将人を見る目は笑っていない。まだ、何かあるのだろうかと考えると将人の胃はキリキリと痛んだ。将人が痛みで苦しんでいるのをアルヴァールは気づいていない。


「さて、これでアルマの謝罪は終わった。マサト君もこれで、アルマがやった事は水に流してくれ」


アルヴァールはにこやかに言い、将人はジト目で返す。


「最初から水に流してるのに………土下座までまでやられると逆に拷問ですよ」


「そうか、マサト君には逆効果だったか、それはすまなかった。お詫びの意味も籠めて君たち冒険者に報奨を与える」


そういってマルテナがお金が入った麻袋を将人たちの手渡す。


(こういうのって普通お付きの人にやらせるよな。人はいないからって王女自らがやるものじゃあないよな)


そんな事を考えていた将人の右手をマルテナが両手で握る。


「マサトよ、姉さまを助けてくれアリガトウ。お主がおらなんだら姉さまは、王都はどうなっとったか………」


「いや、俺一人じゃどうにもなりませんでした。アイアスだけじゃダメだったし、他のゼロ鉄製の武具や防具があってどうにか出来たものですし。ぶっちゃけ大勢て一人を攻めたようなもので卑怯だった気が………」


「普通は軍隊がいても姉さま一人に勝てんのじゃぞ。大勢とはいえ姉さまに勝てたのじゃ、素直に誇っておけ」


「マルテナ………」


アルマの低い声が二人に届く。


「アナタは、この私がそこのマサトさんより弱いと………面白い事を言いますね。よければこれからでも私の強さ、証明しましょうか………」


アルマの体から魔力が漏れ始める。その魔力は風を伴い、天井のシャンデリアを揺らす。アルマは『神剣』という最強の剣士が名乗る事が許される二つ名に誇りを持っている。その二つ名を名乗る以上負ける事が許されない。それ故、偶然でも勝利した将人を許せないのだろう。

アルヴァールが注意をしようとする前に将人が声をあげた。


「絶対お断りします。あの時は『滅び』の石に憑りつかれて正気じゃありませんでした。そんな状態だったから何とか勝てたのです。魔力の運用に剣術、それに戦術判断が出来る今の状態ならどう逆立ちしても絶対勝てません。どうしてもやるというならここから立ち去るのを報奨として今、下さい!」


「通常なら私には勝てない。分かってるではないですか」


アルマはドヤ顔で胸を張る。それをアルヴァールが呆れ顔で見ていた。


「しょうがない『神剣』さまだな………説教部屋で説教する必要があるな」


説教部屋の一言にアルマは悲鳴を上げる。そして将人を睨む。


「アルマ、マサト君を睨むな」


アルヴァールに言われ視線を下に向ける。何というか哀が漂う同情誘う姿だった。将人たちは『神剣』の評価を改めざるおえない。


(………戦闘力以外は普通の人かも)


「こっちのバカ娘はほっておくとして………他に何か欲しいものはないか? 出来る限りの事はやらせてもらう」


「他に欲しいモノ?」


将人たちは額を突き合わせて考える。


「あ、それなら………」


将人は報奨として欲しいものは………



謁見の間での事から時間が立ち、今は昼時。将人は食堂に通された。王城で働く兵士や騎士が使わない、王族が使う食堂だった。将人が望んだ報奨はマサリア達には不評だった。その為、一人だけ食堂に通されたのだ。

将人は適当な席について料理が出てくるのを待つ。


「待たしたね、マサト君」


そういって現れたアルヴァールは三角巾にエプロンと言う姿だった。


「あなた、国王ですよね。何やってるんですか?」


将人は顎が外れそうなぐらい口を開き指差す。


「君が頼んだものは不評でね、ここの料理人は見るのも嫌がるんだ。食べたくなった時は自分で用意しなければならないんだ」


「国王に給仕させるとか何考えてるんですか? ここの料理人?」


「そう言ってくれるな。これは私の趣味でもあるのだからね」


アルヴァールは将人が頼んだ食材がが乗ったトレイを将人に手渡す。それを見て将人は鼻息を荒くする。


「コレコレコレェェェ!! これをもう一度食べたかった!!」


「君はやはりこの食べ物を知っているのだね」


「故郷の料理ですよ。あなたがこれを広めたって事ですがどうしてこれを知っているのですか?」


「その問いはこれを食べてから答えよう。まずは………」


二人はニヤリと笑うと両手を合わせ合掌してこういった。


「イタダキマス!!」


将人は木製のお椀の一つに生卵を入れ、しょう油を少々入れ、それを別のお椀に入っている納豆に入れ、箸でかき混ぜる。


「今気づいた。これ、お箸だ」


「君は使い慣れているだろうと用意したんだ」


国王アンタ何者だ、と問おうとするが食欲には勝てない。もう一つのお椀に盛られているアツアツのご飯に卵かけ納豆をかけ、一気に掻っ込んだ。ずるずると言う音を立てて掻っ込み、咀嚼をし飲み込む。


「クゥゥゥ。これこそ日本人の味だよ」


将人の口調が砕けだ感じになっていたがアルヴァールは気にしなかった。


「君ならそう言うと思ったよ。なら、こっちも試してみてくれ」


アルヴァールは更にお椀を出す。その中には白くてドロッとしたものが入っていた。将人は卵かけ納豆ご飯を食べ、空になったお椀にご飯を盛り、白くてドロッとした物をかけて一気に掻っ込み、咀嚼し飲み込んだ。


「これトロロだぁぁぁ!! 何でこれがここにあるんだ」


「これは冒険者時代に見つけたんだ。今では高級食材として冒険者ギルドに採取依頼を出している。君も機会があったら探してみるといい」


「ムリです! 俺だったら独り占めします!」


さらに掻っ込み、空になったお椀を置くと、アルヴァールの両手を掴む。


「もう、感動、感激です。有難うございます」


「それは良かった。まだあるからもっと食べてくれ」


「最後はあれをやります」


将人は開いたお椀になあたまごとしょう油を入れてかき混ぜてる。アツアツのご飯を別のお椀に盛り、混ぜる。生卵としょう油とご飯を混ぜたものを一気に掻っ込む。咀嚼して飲み込む。


「シフクーーーー!!!」


久々に食べる日本食は感動の一言だ。


「気に入ってくれて何よりだ。今まで出したものはアルマやマルテナには不評でね。こうやって喜んで食べてくれるものがいて私も嬉しいよ」


「納豆もトロロも卵かけも日本人じゃないと難易度が高いですからね」


将人はまた卵かけご飯を掻っ込み、完食した。


「ご馳走様でした!」


「お粗末さまだ。君の気持のいい食べっぷりを見ていてこっちが食べるのを忘れていたよ。私もいただこう」


アルヴァールも納豆ご飯を食べ始める。箸の使い方が日本人と同レベルで驚く。


(この人、日本人じゃないのか? でも、髪の色から顔立ち見ても日本人じゃないよなあ。昨今日本ブームだから味覚が日本人よりの外人さんがいてもおかしくないよな………)


「ご馳走様!」


アルヴァールも完食した。


「お腹が膨れた所で聞いてもいいでしょうか?」


「改まって何だい?」


「アルヴァール国王、アナタは何者ですか?」


「ドロドロネバネバの食材を食べた後のシリアスは少し無理があるような気がするが………今、ここにいるのはマサト君と私の二人だけだ。ここで話す事は他言無用と言う事でなら話してもいい」


「本当ですか? でもその前に………そこにいるよなあ、ウェゲル」


将人の前方の空間が波立ち、そこから真っ白な涙滴形の仮面が出現する。それからローブを纏った体が出現し、テーブルの上に座り込む。


「どうして分かったんすかねえ?」


白い仮面の男、ウェゲルの表情は分からないが声には驚きが含まれていた。












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