仙人、冒険者認定書取得、ライバル襲来
「マサト………オメデトー!!」
マサリアが突然飛び掛かってくる。強敵であるロバートとの戦闘直後で精も根も尽きかけている所へのタックルで踏ん張る事も出来ずに倒されてしまう。
「リア、勘弁してくれよ………」
「ゴメンゴメン、でも凄いよマサト!! あんな人に勝てるなんて信じられない!! マサト、何者?」
「リアお嬢さま、少し落ち着いてください。マサト様が困っておいでです」
相変わらず抑揚のない口調でマサリアを将人から引きはがすエミリア。
「でも、マサト様。私も素直に驚いております。よく勝てましたね」
右手を差し出すエミリア。その右手を掴んで立ち上がる将人。
「かなり手加減してくれたお陰です。本気だったら秒殺でしたよ」
「あれで手加減してたの?」
「ロバートさんを倒した技『虎形拳』ていって俺の得意技の一つであれ食らうと大抵は起き上がれなくなるけど、すぐに起き上がってきてせき込むぐらいで済んでたし、魔法ですぐに回復もしてた。体力や防御力を魔法で底上げしてたのかもしれない。まだまだ余裕があったって証拠、手加減されていたとしか思えないよ」
「手加減されようと何だろうと合格は変わらないんだから元気出してよマサト!!」
将人の肩をポンポン叩いて元気づけるマサリア。
「そだね、下級冒険者認定書貰いに行こうか」
将人たちは冒険者ギルド受付に戻り最初に対応してくれた受付嬢に話しかける。
「あのう………」
「試験、残念でしたね。ロバートさんかなりお強いですから。昔は自分が一番強いと勘違いする冒険者が多くてレベルの高い相手に殺されたりする事がよくありましたから。そういう勘違いを無くすにはしょうがない処置なんです。皆さん、残念ですが二か月間頑張ってください」
更に言葉を続けようとする受付嬢を遮る将人。
「あの、すみません。二人は落ちましたが俺は合格していますから」
一瞬何を言われたか分からずポカンとし、言葉を反芻してようやく理解する受付嬢。
「エエー!! 合格したってロバートさんを倒したっていうんですか、冗談ですよね? 上級一級に届くほどの実力者だったんですよ。そんな人に勝てるなんで信じられません!!」
「受付嬢さん声がデカいです。落ち着いて」
「失礼しました。驚いてしまいまして。少々お待ちください確認してきますので」
受付嬢がカウンターの奥に向かい職員と話し込んでいる。受付嬢が戻ってくると
「確認がとれました。おめでとうございます。では、これから認定書の作成を行いますのでこちらのカードに血を一滴垂らしてください」
そう言われカードと針を渡される。人差し指に針を刺しカードに血を垂らすとカードが光り、文字が浮かび上がる。
「凄いな、こっちの世界の魔法は。少しオーバーテクノロジーな気がするが………しかし、どうしようこれ………」
将人はこちらの世界の文字が読めなかった。だから、カードに何が書かれているのか分からず、エミリアに呼んでもらう事にする。手渡された認定書をみて驚愕の表情を浮かべる。後ろからみたマサリアも同じ表情を浮かべる。
「なにこれ………あり得ない。体力、攻撃力、防御力、早さは普通の人より少し強いぐらい、魔力は零って………赤ん坊にだって魔力は宿るのにどういう事? 認定書がおかしいんじゃないの?」
「こんな数値でロバートさんに勝てるなんてありえません。予備の認定書を持ってくるのでお待ちください」
「あ、いいです。これで間違いないと思いますから」
受付嬢から認定書を取り上げる将人。
「いいの、マサト。これって普通あり得ないよ」
「いいから、いいから」
あっけらかんといって懐に認定書をしまう。
この世界では魔力というのは地水火風の四大元素を操る魔法の他にも肉体の強化にも用いられる。魔力が零というは何の装備もなしに怪物と戦わされるようなものだ。将人は魔力の代わりに『氣』という力を使っているがこちらの世界には『氣』は確認されていないらしい。
受付嬢はこの結果を見て悩んだ後、「少しお待ちください」といってカウンターの奥に入っていった。
(ちょっと待ってよ。もしかして認定書取り上げられるのか? 冗談じゃないぞ)
将人は一人宿屋への帰路についた。今認定書が取り上げられることはなかったが、依頼を数件こなしてもらいその結果によっては認定書の失効を検討するという処置で落ち着いたのだった。
ホッとしながら歩いていると物陰から誰かが飛び出して道を塞いだ。将人はその人物に見覚えがあった。将人たちの前に冒険者試験を受けていた少年だった。その少年は将人を睨みつけ、叫ぶようにこう言った。
「オマエ、俺と勝負しろ!!!」