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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第六章 仙人、王都へ向かう
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仙人、国王の二つの二つ名を知り、確信する

「一介の冒険者がこんな部屋に止まっていいんだろうか?」


将人はキリキリと痛む胃を押さえながら呟いた。小心者の小市民にとって家具や調度品が高価な部屋は拷問に等しいものだった。アルヴァール国王との謁見が終わった後、客間に通される。一人一室与えられた訳だが、そこに飾られた花瓶や、絵画、家具に至るあらゆるものが素人でも分かるほどの高級品、もしそれを何らかの理由で壊してしまえばどうなるかは推して知るべし。将人は高級品がない部屋の隅に縮こまり、なるべく触らないようにしていた。


「マサトはいるかあ!」


突然、客間のドアが勢いよく開かれる。


「ヒグッ!!」


将人は息を飲み、客間のドアの方向を見る。そこにはマルテナとお付きの侍女が立っていた。


「何じゃ、将人どうした。何故、そんな隅っこに座っておる?」


「正直、キツいっす」


将人はマルテナに陳情を訴えるが意地の悪い笑みを浮かべ、却下される。


「せっかく与えられた部屋に不満を持つとはどういう了見じゃ。これらの家具や調度品は客をもてなす為にある物じゃ。使われなければ意味がない。ほれ、マサト、こっちに座れ」


マルテナは部屋にある、二つのソファーのうちの一つに座る。将人はその向かいに座る。座り心地はいいものの生きた心地がしない。ブツブツ言っている将人の頭にマルテナがチョップを食らわす。


「いつまでもウジウジするでない、このバカ者が! お前は一度とはいえワシに勝ったのじゃから、もう少しシャンとせい!」


「それとこれとは………」


「聞く耳持たん。それよりこれを受け取れ」


マルテナが後ろに控えている侍女から麻袋を受け取り将人に渡した。ずっしりとした感触から金貨が入っている事が分かる。


「これは………」


「馬車移送の報酬じゃ。本当はあの謁見の時に渡したかったのじゃが、父さまが急に話を終わらせてしまったから渡せなかった、済まぬな」


「あの、失礼な事を聞いてしまうのですがアルヴァール国王様って何者ですか?」


マルテナが怪訝な顔をする。


「何じゃ、藪から棒に?」


「俺が体得した武術、『形意拳』と言うのですが、これをこの世界の人が知ってる訳がないんですが、それを国王様は知っていました。はっきり『形意拳』と言っていましたし」


「ウム、ワシも隣で父さまがそう言ったのを聞いておる」


「アルヴァール国王様はもしかしたら、俺と同郷なのかもしれません」


「それだけで同郷の者と考えるのは早計ではないか? 父さまは元は冒険者、各地を巡った際、同じ体術を使うものと対峙したことがあるのではないか?」


それだけはあり得ない。『形意拳』はこちらの世界から見れば異世界の武術、こちらに存在するはずがない。アルヴァール国王は各地を巡ったというが異世界さえも巡ったというのだろうか。


「マサト、急に黙り込んでどうした?」


「エッ?」


マルテナに言われて将人は深く考え込んでいたことに気付く。


「すみません、ボウッとしてました。ところでアルヴァール国王様はどこの生まれなんですか?」


「父さまは王都から見て西の方にある村で生まれたと言ってた。ワシも行った事があるが普通の村じゃったな。そこで生まれた少年が国王になるのだから人生何が起こるか分からぬな」


「マルテナ様、爺臭いですね」


「ほっとけ………これは参考になるか分からぬが、父さまも二つ名を持っておる。それも二つもじゃ」


「『神剣』や『聖剣』の他に二つ名があるんですか? この世界の人は中二病がいるんですかね?」


「中二病とは何じゃ?」


「こっちの話です。それより国王の二つ名は?」


マルテナはコホンと一呼吸おいて話始める。


「ワシや姉さまが使う剣術の開祖である事から『剣王』と呼ばれておる。そしてもう一つの二つ名は『食王』じゃ」


「『食王』!? 何故に?」


意外な二つ名に将人は驚く。


「父さまは元々は冒険者にして商人。各地を巡り珍しい食材を集め回り、加工し、新しい食材を作り上げた故に『食王』の名を冠するに至ったのじゃ。将人は王都に来た時、珍しい物を食したのではないか?」


「納豆やみそ汁、コーラ、それってアルヴァール国王が開発した物なんですか!?」


将人が身を乗り出す。


「何じゃ、どうしたマサト? そんな大声を出すな」


「すみません。でも確認しないといけない事なんです。教えて下さい」


「いや、その前にミソシル、ナットウ、コーラとは何じゃ?」


将人はみそ汁、納豆、コーラの特徴をマルテナに伝える。それを聞いてマルテナは頷く。


「そうじゃ、それらは父さまが集めた食材を加工して作り出したものじゃ」


「マルテナ様………アルヴァール国王様が俺の同郷の人だという確信がより深まりました。それらの食べ物って、俺の故郷で作り出された物なんですよ」


「本当か、それは!?」


マルテナが驚愕の声を上げる。


「俺の記憶する味と同じものが二品も三品も出れば偶然とは思えません………マルテナ様、アルヴァール国王様と会う事が出来ませんか? 会ってどうしても聞きたいことがあるんです」


「なら丁度良い。今夜、『滅び』に関する秘密会議が開かれる。それに出席すれば父さまと直に会える。そこで今の事を訪ねてみるとよい」






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