表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第六章 仙人、王都へ向かう
107/190

仙人、故郷の味に涙する、新たな疑問

クオーラが売っていた屋台から移動しファテマおすすめの食堂に入る。昼時という事もあり客で賑わっている。席が全て埋まっている為、少し店頭で待つ事になったが急ぎの用はなく気楽なものだった。


「ここの料理、かなりの珍味だけど慣れるとクセになるから、期待してね」


店内から漂ってくる臭いは確かに食欲を刺激する。だが、マサリアとアベルトは先程のクオーラがトラウマになっており、ファテマの言葉を素直に信じることが出来なかった。


「ファテマさん、私、お腹が痛くなってきた。宿にも戻る」


「ファテマ殿、私も具合が悪くて失礼します」


マルテナとアベルトが仮病で逃げようとするがエミリアとパウラが押さえる。


「リアお嬢様、好き嫌いはよくありません。先程のクオーラという飲み物、美味しかったじゃないですか。ファテマ様がお勧めするこのお店の珍味是非味わってみるべきではありませんか」


「エミ、あの劇物、気に入っちゃったの!?」


「大丈夫だよ、アベルド君。美味しいから、ね」


「いや、お願いです、離してください、勘弁してください、死にたくないです………」


マサリアたちの取っ組み合いをファテマが苦笑してみていたがふと将人を見ると、無言で何か考えているようだ。


(この匂い、まさかあれなのか? でも、ここ異世界だよ? 異世界にあの料理がある訳ない。本当にあったら嬉しすぎて泣くぞ、俺………)


「マサト君、どうしたね。何か考え事かい?」


「いえいえ、何でもありませんよ。それより席が相手みたいです。中に入りましょう」


「あ、ホントだ」


将人たちは店内に入る。奥の方にはやや大きめのテーブル、椅子が左右四個、計八個の椅子があり、それぞれ席に着く。マサリアとアベルトは不安げに周りをきょろきょろする。


「二人とも、そんな不安がらないで。そんなに変なものはは出ないから」


「本当ですか。嘘だったらファテマ殿でも………」


「その時は私も協力するわ!」


マサリアとアベルトが見つめ合ったかと思ったら熱い握手を交わす。


「敵の敵は味方って私は敵かい!」


ファテマがすかさず突っ込んだ。


「お姉ちゃん、お腹すいたよう」


空腹に耐えかねたパウラがファテマに苦言を漏らす。


「ああ、ゴメンね」


ファテマが店員を呼び、今日のおすすめ料理を人数分注文した。


「さて、後は待つだけだね」


ファテマはホクホク顔だ。マサリアとアベルトが不安顔。


「変なものは出ないでしょうねえ」


「大丈夫だって。今日のおすすめ料理は普通だったから」


「今日はって言った。別の日は変なものがあるんだ!」


「あれが出るなら私も食べないよ。ネバネバしててすごく臭いんだもの」


ファテマのセリフに将人は視線で射殺すが如くファテマを見る。その視線にファテマが小さな悲鳴を上げる。


「な、なんだい、マサト君………」


「そのネバネバして臭い物ってもしかして豆ですか? 豆を発酵させてモノですか!?」


「ハッコウが何か分からないけど豆みたいなものだよ」


「そ・れ・もっ注文してもいいですか!!」


「ハ、ハイッ」


ファテマが店員を呼びそれを注文した。生卵も追加注文する。


「マサト君、君も相当アレだね」


「俺の国では主食です。朝には必ず出るものです。一日一回は食べたくなるものです」


「君のお国の人って………」


ファテマは呆れ顔だ。


そんな話をしているうちに時間が過ぎようやく料理が出てきた。出てきたのは木のお椀に入ったライス、皿には焼いた魚、野菜の盛り合わせ、そして赤茶けた液体だった。ファテマとパウラがその赤茶けた液体をうまそうに飲む。マサリアとアベルトが匂いを嗅ぎ、おかしな感じはしない、むしろ食欲を刺激する匂いである事を確認してから口に含み飲み込んだ。


「うわ、これ美味しい」


「少ししょっぱいですがこれは美味しい」


マサリアとアベルトが見て事のない食材はこれだけだったのであとは安心して食べる事が出来た。エミリアはただひたすらに食べている所を見ると気に入ったようだ。


「ふむ、みんな気に入ってくれたようだね。マサト君は………」


無言になっている将人を見てファテマはぎょっとした。将人がポロポロと涙を流しながら食事をしていたからだ。


「マサト、アンタ何泣いてんのよ?」


「お兄ちゃん、ご飯、お口に合わなかった?」


「ファテマドォ~ノ~!!」


アベルドがファテマを睨む。


「私のせい!?」


一様に心配そうに見られ、将人は涙を拭きながら訂正する。


「違う違う、日本人のソールフードとも言えるみそ汁と納豆がこの国で食べられるとは思わなくって………故郷の事が思い出されてつい………」


「故郷は遠いのかい?」


「はるか遠い所にあって、普通の方法では戻る事が出来ないでしょうね………」


「でも、マサト君のお国の料理があるって事は、同郷の人がいるか流通ルートがあるんじゃないかい?」


ファテマの素朴な疑問に将人は考える。


(同郷の人間がいるはずがない。俺の他にも異世界から人間がいるのか? そういう人間がいたとして味噌とか納豆とか作るか? あり得ん………俺の世界と繋がってる食堂とか居酒屋とかあったりするのかも知れない。調べてみる必要があるな。ひょっとしたら元の世界に戻れるかもしれない………)


もし元の世界に戻る方法が見つかったら、その時自分はどうするのだろうか? 皆と別れる事になるのではと考えると少し胸が痛んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ