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花カマキリと北の鳥人

お久しぶりです。溜めてるのに投稿し損ねているという事実。

改稿早くしなきゃ……

情報収集を始めて一週間が経った。そのころ、ライガーと無斗に変化が起き始めた。無斗がライガーの拳を受け止めるようになったのだ。今までは全部危なげなく躱していたのに。それはつまり、ライガーの速度が無斗に、というよりも、無斗が使っているライガーの叔父の体術の速度に追い付いたということなのだろう。


「――」

「ふっ!」


無斗の腕から鮮血が飛び散った。

初めてライガーが無斗を削った。


「……」

「……は。おめっとさん、ライガー」


無斗がそう言って裂けた左腕の傷を撫でる。


「くそっ……」

「一週間でいくら殺しに来てだとはいえ、五年前の師匠に追い付いたんだぜ? もっと誇っていいと思うがよぉ」

「そうかもしれねえが――」


ライガーたちの方へ向かうと、そんな会話が聞こえた。獣人は強さをどこまでも求めると聞いたことがある。


「同じ術とはいえ、五年前、しかも相手は無斗、お前なんだ――人間の堅さと獣人の堅さじゃ比べ物にならん」

「はあ――お前それ言うか? 気付いてるだろうけど、俺のエレメント玄武だからな? 俺が破られたらもうお前は魔王名乗っていいと思うぞ」

「だせえ」

「名乗れとは言っとらんわ」


なんだかまだやろうとしそうな勢いだったので間に入る。


「お疲れ様、二人とも」

「おう、シュリフト。待たせたな」

「あ、じゃあさっきので解けたのかい?」

「ああ、まだ外れたのは白虎だけだし、朱雀役がいないとすぐ直っちまうんだけどな」


この封印術は自己修復も一緒に組まれているらしいことは知っていた。金を抑える火が必要、ただし魔人の魔力では代用できない。よってエグザにできることはほとんどない。そのイライラが溜まっているのか、エグザは延々と魔物の討伐依頼ばかり受けている。


「修復を遅らせることは?」

「出来なくはねーが、もうこの一週間でライガーの魔力は底を突きかけてる。これ以上やると命に関わるぜ」

「じゃあ僕と手合わせをしてくれ。貫牙でなら多少引き延ばせるだろう」

「なるほどな」


ライガーの消耗は今までの中で一番激しかった。下手に家の中に入れるより、地面の上で日向ぼっこさせておいた方がいいらしい。土が金を生むんだったっけ。金と土が金を回復させるのだ。ただし、金を金で回復させるには互いがぶつからないようにする必要があり、この場合は強めの火を打ち込まねばならない。弱体化している金に火を撃ち込んだらどうなるか。


――つまり、基本的に回復する方法が土の生む金気を回復に回す以外にないのだ。


流石にこれを知った時には驚いたが、逆に納得いく部分もあった。

獣人族は基本的に怪我をしないから分かり辛いのだが、獣人族はヒーリングの効きが悪い。当たり前だ。金属の摩耗はどうこうできるものではない。剣のように打ち直すことが出来ないから、獣人族にとっては、文字通り、身体が資本となる。


金気は魔法を断ち切ってしまう、“斬”“切断”の攻撃属性を持っている。故に、魔法耐性がそこまで高くなくてもドラゴンなどと平気で渡り合えるというわけだ。


無斗とクロガネが久しぶりに話している風景を見ることになった。現在無斗の表出している属性は火なのだそうで、あまりクロガネも相性がいいとは言えないようだが、火自体は無斗が内側から何とかするとのことだった。


ギルドホールに入ると、知らない二人組がベンチに座っていた。一人は蟲人だ。ひらひらとした服だが、無斗が珍しい、と言っていたので聞いてみたら、無斗の実家と似たような造りの服であるらしい。もう一人は薄着の貫頭衣をベルトで留めただけの服を着た鳥人だった。


エイルガレラさんとギルドマスターにライガーの健闘と無斗の現状を説明すると、二人はさっそく行動を起こした。


「こうもタイミングがいいと面白いというか、不気味だな」

「?」

「ライガー呼んで来い、無斗。新しいギルドメンバーだ」


無斗がライガーを呼びに出て行き、僕はその新しく入るという二人組を見つめた。

ギルドマスターによると、この二人がちょっと気になる情報を持ってきたのだそうである。鳥人の持っていた弓が見たことのない形だったのでちょっと驚いた。装飾がなかったのだ。騎士たちの持っている弓とは違うらしい。


「どうも」

「うス」


無斗がライガーを伴って戻ってきた。と、ライガーと鳥人が目を合わせた。

そして、次の瞬間に戦闘態勢に入っていた。


僕は見た、鳥人が小さく鼻で嗤ったのを。


「ッ……!!」

「♪」

「あらら」

「ライガーやめとけ、いくらお前でも今はキツイだろ」


蟲人は笑って見ているだけで、無斗が間に入って止めた。ギルドマスターがはあと息を吐いた。


「自己紹介から頼むぞ。ライガー、お前は大人しくしとけ」

「連戦させるわけにはいかないわ。無斗、鳥ちゃん止めれるかしら?」

「問題ないですよ」

「あー」


鳥人が蟲人の後ろに隠れた。


「あら、どうしたのよ?」

「エレメントが玄武の人間なんて初めて見たよ……北じゃないのに。日々羅華かな?」

「そうだが?」


どうやら無斗の属性に苦手意識を持っているようだ。――ということは、彼女は朱雀に近しいということなのだろう。


ところで、玄武はこの世界にはいないという資料も見つけたのだが、どういうことなのだろうか?

エレメントとはすなわち、加護を掛けている精霊のことを指している。人間が直接四神の加護を受けることは許されない。理由はよくわからないが、少なくとも、青竜、朱雀、玄武、白虎。この四体の神獣たちが人間のエレメントになることは決してあり得ない。


それなのに無斗のエレメントは玄武だというのだ。

ちなみにいうならば、僕のエレメントはウィル・オ・ウィスプと呼ばれる光の下位精霊だ。これだけで僕と無斗にどれだけ精霊魔法の威力に差があるかわかると思う……。


「あら、それおかしいんじゃなくって?」

「普通ならね――アンキ一族ならあり得る」


ちょっと待て、いろいろ聞きたいことが増えてきたぞ。


そう思った直後、無斗が苦笑して言った。


「まーまー、そこんとこは後だ後。俺は闇姫無斗。こいつライガーね。そこのツンツンがシュリフト、その竜人がクロガネ。受付にいる人間がアレイナ、横のエルフがアウリエラ」

「私は見ての通り蟲人よ。リリウム・ルベルム」

「――詳細は聞かねえよ」

「ええ、そうしてちょうだい。この子はフィールー」

「フィールーだよ。えーと。弓使い」


この場にいないエグザの紹介までして、リリウムさんたちの持ってきた情報とやらを聞くことになった。


「元老院が動くわよ」

「元老院が?」


忍び込んで話を盗み聞きしてきたらしい。北部に滞在したときは本当に胸糞悪くなるような為政者たちがいて、そいつらの元締めだということを考えると、盗み聞きしていたという本来ならば犯罪行為とされることをやっているリリウムさんたちを称賛したい気持ちになってくる。


「あと、なんだったかしら。人間以外は皆殺しみたいなこと言ってたわよ」

「……ギルマスたちを捕まえるのが目的なら、俺たちは詰みだな」


無斗がそんなことを言った。

そこでふと調べたことが反芻されて、僕は自然と口を開いた。


「なあ無斗、古人族って何だい?」

「え?」

「無斗に掛かっている術式を調べようとしたときにね、日記みたいな本を見つけた。そこに書いてあったのが、古人族。日々羅華の民を古人族の代表みたいに呼んでいたのだけれど」


無斗とクロガネが顔を見合わせた。


「シュリフト。なんで古人族は式術を、大陸の民は魔法を使うと思う?」

「……文化体系の差?」

「……結果的には、ね。でも違う。本来は、古人族は魔法が使えないんだよ」


クロガネがそう言って、手の平に花を咲かせた。


「こう言うと分かりやすいかな――無斗たちは、自分の属性とそこから生じる属性しかパッと出せない」

「……」


つまり、無斗だったら水と木は出せるが、火と金と土は出せないということだろうか。


「うん、その認識で合ってる。式術は魔法の体系ができる以前に成立したもの。古人族というのは、本来は強く精霊の加護を受ける存在で、精霊魔法をほぼ最大パワーで扱える。その代わりに、短命だったり、一部の能力を失ったりする」


これを仙人化という、と無斗が続けた。

リリウムさんたちは興味なさげに聞いているが、ちゃんと聞いているらしい。


「魔法はそういったリスクがない。その代わり、弱い。弱すぎる。それと、古人族の血は一度混じると四代先までは確実に残る、それだけ強力な血だってこと。シュリフトはたぶん三代目ぐらいじゃないかな」


ふと、フィールーさんがニッと笑った。


「古人族はぁ、優しい種族だよ。精霊を契約で縛ったりしなかった」

「……え?」

「まあ、そうね。新人族が出てきてから四神たちはそれぞれの人としての姿を作ったらしいから」


リリウムさんの言葉に、僕がクロガネやライガーを見てしまったのは仕方ないだろう?

彼らは確実に青竜と白虎の関係者。このフィールーという人も、おそらく朱雀の関係者で間違いない。


「僕らはねえ。新人族よりは他の種族が多いギルドの味方をすることにしたよぉ。だからここに来たんだぁ」


ニヤリと笑うフィールーさん。その首元に鋭い鎌が添えられていた。


「……!?」

「ああ、驚かせちゃったかしら? ごめんなさいね、今のはあくまでこの馬鹿の話。私は、フェアな取引をちゃんとしてくれるなら相手なんて誰でもいいのよ。まあ、ただの人間の集まりよりは私の意見も通りそうだと思ったからここに来たっていうのは否めないけれどね」


鎌を降ろしたリリウムさん。無斗とライガーを見て、リリウムさんは満足げに笑った。


「流石、弱ってても封印されてても動体視力は伊達じゃないわね。さてと――それじゃあ、さっそくお金を頂戴してもいいかしら? 買いたいものがあるのよ」


リリウムさんがうまいこと話の流れを切ってしまった。情報料ということで銀貨を三枚ほどリリウムさんに渡したギルマスは、僕たちに仕事に戻るように言った。そのころになってようやくエグザが帰ってきたので無斗と僕でリリウムさんたちの説明をした。


ゆるふわ設定で書いてたら後々えらい目に遭うと再認識しました。ちょっと設定煮詰て改稿してきます。

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