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黒き壁

書き溜めているからと油断していた結果がこ れ だ


お久しぶりです。テストは終わりました。では、どうぞ。

ライガーが気絶した。

シュリフトが理解したとき、エグザとエイルガレラが無斗に刃を向けていた。


「エグザ! エイルガレラさん!」

「これ以上は危険だ」

「こいつはたまげたね」


ガルバスタードはすぐに魔法を唱え、ライガーにシールドを張った。

無斗はそれを見てすっと目を細める。エイルガレラの拳とエグザの刃はガードの姿勢すら取らないまま無斗の身体に止められた。


「えっ」

「なっ」


2人は驚愕に目を見開く。エグザの方が危機察知能力は高かった。無斗を蹴り飛ばして後退する。しかし無斗は微かに揺れただけで、エイルガレラは手を掴まれて動けなくなった。


「なあああッ!?」

「……嘗めてるのか?」


エイルガレラは無斗が放ったその言葉に一瞬で頭が冷えた。

ああ、何をしていたのだ自分は。

すべきことは単純ではないか。


「ガル、ライガー連れて早く中に入りな!! エグザ、無斗を火で縛るんだよ!」

「了解したッ!」


エグザが刀を改めて構えた。ガルバスタードがライガーを抱えてギルド内へ戻る。無論その間無斗は別にガルバスタードを追ったりしなかった。


とんでもない化け物がいたものだ、とエイルガレラは思う。何が何やらよくわからぬまま直感に従ってここに立っているであろうエグザと、きちんと理解しているらしく青ざめているシュリフト。シュリフトは武器を構えることなく立っているだけだ。


「……無斗、君はそんなに強かったんだな」

「……俺にこれ以上はない。なんなら全員でも構わん、と言いたいが――ライガーが文句言いそうだな」


エイルガレラをエグザに対しては馬鹿にするようにあしらう程度だった無斗が、シュリフトには応えた。それだけでエイルガレラには、彼を守っているものを理解することが出来た。


「なるほどね――そのムカつく態度、バイフーの弟だね」

「……エイルガレラ、悪いが、こればかりは俺ではどうしようもない」

「分かっているさ。エグザ、剣をしまいな。白虎は武器を手にしてないやつを襲うほど落ちぶれちゃいないよ」


エグザは刀を納める。辺りを見渡すと、道端で気絶している者たちが大半で、数名、特にいつからそこにいたのか、静、動、語の3人がくすくすと笑う。


「どうした」

「いやいや、なかなかやばいものを背負ってるなと思って」


エイルガレラが問えば語が答える。彼らがただ観戦に徹していたということは、特に彼らが関わった結果ではないということなのだろう。エイルガレラは苦笑する。

やはり神々(別世界のモノ)の考えなど、理解できるものではない。


「……エイルガレラ」

「?」


ギルドに戻ろうとすると呼び止められる。無斗たちは先にギルドへ戻っていく。


「ほっといても大丈夫だよ。ライガーは壁を超えるし、これから先はトントンで進むはずだ」


珍しくこれからを予言するような言葉を掛けた語に、エイルガレラは息を吐いて、小さく礼をした。そんなに不安そうな顔をしていたのだろうかと考えてしまう。事実だったが、普通はその表情の変化にも気付けないほどに微かなもの。語、静、動は再び姿を消した。






「無斗、それは一体どういうことだ」


ギルドに戻った俺はシュリフトに問われた。シュリフトはさすがに学校に行っていたらしいから、精霊についてはよく知っているということだろう。

ま、別に隠していたわけではないし、ライガーはいろいろ文句を言うかもしれないが、構うまいよ。


「ライガーはなんでいきなりお前に挑んだ? その後のお前の動きは明らかに人間の動きじゃなかった。あんなことをすれば身体に大きなダメージを受けてしまうはずだ」

「ああ、シュリフト。お前の言うとおりだ」


シュリフトの言葉を肯定して見せると、目を細めたシュリフトは貫牙の銃口をこちらに突き付けた。


「……これをお前は避けるんだろうな」

「ああ、今なら避けれる」

「それはお前の実力じゃないな」

「ああ、これは俺に獣人紋を刻んだ獣人の体術だ」


隠すことなく答える。シュリフトはライガーの叔父さんか、と小さくつぶやいた。どうにもそうらしいから変な因果だ。


「……誰が戦ってもそれが最初か?」

「ああ、これが最初で一番厄介だ」

「……助けてくれとは言ってくれないんだな」

「そんなこと言うくらいなら腹ァ切るぜ俺は」


小太刀を指してみせるとシュリフトはやれやれと肩をすくめて貫牙を降ろした。


「なるほど。それのせいで無月は表立って動けなかったわけか。大変なことだ」

「……このタイミングでソラトワに依頼を……親父、俺に式神をつけてやがったな」


親父との喧嘩もそれまでのこともすべてが覆っていくのだからタチが悪い。今までさんざん出来損ないと言われていたのだって、がむしゃらに強くならなきゃ認めてもらえなかったのだって、うまく俺は親父の掌で踊っていたわけか。


「無斗。もう俺たちがこれをどれだけ口に出したって問題ないんだろ?」

「ああ……口調は勘弁してくれ……」

「分かってる、バイフー弟の口調そっくりだ」


ギルマスは理解を示してくれた。まったく厄介だと今更ながらに思う。

術式の詳細は俺にも分からないが、一つだけ言えることがある。

この術を解くにはライガーのように俺に挑まなければならないということだ。いや、本当はライガーがやっているのは悪手だ。もっと簡単に俺のこの状態を打破することはできる。だがそれには、朱雀直系がいないと話にならない。


「よし。とりあえず、ライガーが無斗に挑むことを前提とする。その後について考えるしかないな」

「無斗が直接口出しすることはできないだろうから、クロガネ、頼めるか」

「いいよ。まあ、俺傍系だから、麒麟破りはできないけどいいかな?」

「構わん。打開策さえ見つかればな」


クロガネが俺を見る。恨むぞ、というような目だ。そんな目をするなよ、俺だってこんなでかいプロテクトが掛かってたなんて初めて知ったんだ。


「無斗、これだけは教えてくれ。それは一体なんだ?」

「……抗魔仙封印。大陸に資料はねえと思うが」

「いや――名称だけで十分だ。休んどけ、無斗。あとは何とかする」


ギルマスの目が俺を子供として見ているような光を宿していた。まったく。俺はアンタのガキじゃねえっての。

なんとなく笑みが浮かんだ。俺は部屋に戻る。どうせライガーはあの部屋を使わないとまともな回復ができないだろうから、必要なものだけ俺が持って別の部屋に移動すればいい。

ああ、手を抜くんじゃねえとライガーが喚きそうだが。


エグザはライガーを寝かせたベンチの傍に立っていた。こちらを見て、小さく苦笑する。魔族であることと四神の結界に入れないことは同義だ。今回エグザはこれに関われないことを理解しているのだろう。ま、皆の分彼に働いてもらえばいいだろう。

全部終わったらエグザの分を俺たちが働けばいいのだ。


なんて、もうこれをライガーが破るのが前提なんだから笑えるぜ。


人物の視点が分かりにくいかなと思っているところです。

本当に、気が向いたら改稿します。

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