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エグザの出自

お久しぶりです(*´▽`*)

こいつらの話、進まないΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン

魔族と勇者は二種類いる。

魔族はそもそもマナと魔力の塊が受肉しただけのモノであり、それが悪魔族(デヴィル)聖魔族(ヴァイス)と呼ばれる種族に分かれて行ったのだという。


特段仲が悪いわけではなく、お互いに使える魔法と使えない魔法を補い合って暮らしている。聖魔族(ヴァイス)悪魔族(デヴィル)、それぞれに魔王がいる。一般的に悪魔族(デヴィル)の方が凶暴だと言われていたのだが、現在はもはや聖魔族(ヴァイス)悪魔族(デヴィル)と混同され、悪魔退治などといわれて狩られるのは聖魔族(ヴァイス)の方だったりする。


ところで、この勇者も二種類いるというのは、宗教上の問題となってくるため何とも云い切りにくいものである。

勇者が二種類いることはかろうじて伝承が残っている。

見分けはいたって簡単で、勇者でありながら闇魔法、魔属性魔法も使用できる勇者を黒勇者、光属性と聖属性のみの使用が可能な勇者を白勇者と呼ぶのである。


「俺がどちらかわかるかい?」


彼の問いは、それについてのことを問うているのである。

シュリフトはすぐに理解した。そして、聖属性魔法を使用できる天賦の才を持つ者たちが必ず有する感覚――それをもって判断した、彼は、黒勇者である。


「黒だろ」

「黒」

「黒だね」

「黒です」


一様に同じ答えを示したシュリフトたちに、勇者はうなずく。


「はい、正解。――依頼主はわかったかな?」


今代の黒勇者は、異端とされ国外追放になっている。シュリフトたちは名を知らぬ世代ではない。


「聖魔王ゼノン殿、ですね」

「正解。ホントによかった、人間ばかりだったらどうしようかと思ってたから」


黒勇者は苦笑する。


「名で呼ばせていただいても?」

「! ああ、そうしてくれると助かるよ」

「では――」


動じた様子を見せないアレイナに黒勇者が驚く番だった。


「ペルセブレイブさん。依頼内容は人探し。聖魔王には確か奥様がいらしたはずですよね」

「ああ。俺が探したいのは、ゼノンの息子だ。一人息子なんだよ」


黒勇者――もといペルセブレイブは皆の顔を見渡した。


「縛ってしまうからということでゼノンの口からは聞けなかったが、おそらく赤毛、17歳」

「……」


皆は顔を見合わせた。


「エグザ、俺は今『お前なんじゃね?』って思ったとこなんだが」

「奇遇だね、俺も思った」

「――僕はそこの判断はできないけれど、可能性はあると思う。母親の名前は?」


シュリフトが本人確認のために問う。


「……フルネームは知らない。……エレノアと言うらしい」

「……エレノアとそっくりなんだよね、お前」

「……そんなことを言われてもな……」


エグザは小さく息を吐いた。


「では問おう。本当に俺がゼノン陛下の子であったとしてだ。なぜ急に探しに来たのか知りたい」

「……あー。これ言うと多分焦るからって言われたんだがな」

「?」

「……実は、エレノアが体調を崩してな」

「……」


まだかろうじて他人事のように聞いているエグザはほとんど動揺を見せないが、ライガーは目を細めた。


「……どうしてですか?」

「何でも、息子を預けたギルドが壊滅したそうじゃないか。それでゼノンがキレて――これは関係ないな。とにかく、もともとエレンが加入していたギルドが死人出したって聞いたとたんに倒れて」

「……クロガネ、被害者に赤毛の魔人いたっけ」

「いなかったと思うけど?」


エグザは静かに立ち上がった。


「?」

「陛下の元へ連れて行ってください。俺は顔も知らないが、俺の姿を見て安心できる人がいるならば」

「……ああ、ありがとう」


アレイナはふむ、と少し考えて、切り出した。


「どうする、依頼としては受けない方がいいんじゃ」

「あー。そうだな。どうしようか」


ペルセブレイブがお金は払おう、と言おうとした時、ライガーが口を開いた。


「金は要らねえ。その代わり、聖魔王か悪魔王との交渉権が欲しい」

「?」

「「「!!」」」


ライガーは静かに言った。


「こっちのメンバーにちょいと魔族の力を借りなきゃならん状況に陥っている奴がいてな。あんたなら話を通すくらいはできるはずだ」

「……構わないけれど。獣人は今のゼノンには近付けたくないな」

「別に俺が行く必要はねえ。来るなってんなら俺は行かねえ。それに俺はあまり魔人紋についても詳しくねえしな」

「!」


ライガーの言葉にペルセブレイブは目を細めた。嘘を言っているか本当のことを言っているのかぐらいの見分けはつくのである。


結論から言って、嘘は言っていない。だが、行けなくなりそうなことに対するイライラは見て取れた。それだけ彼にとって重要な人物が魔人紋を受けているということなのだろう、とペルセブレイブは判断した。


「……分かった。君たちには彼の護衛という名目で着いてくることが出来る。早めに行こう。魔人紋が絡んでいるならあまりもたもたしているとまずいかもしれないから」


アレイナはにっこり笑って四人を見送る体勢に入っていた。


「一つだけいいかしら」

「?」

「親かどうかってどうやって見分けるのかしら?」

「……魔人は、親には逆らえないらしい。特に母親には」

「――そうなんだ。じゃ、心配いらないわね! 留守は任せてちょうだい」

「おう、モンスター以外に対する対応はお前が最強だよ、アレイナ」






全員がさっさと支度を整えて、ペルブレイブの転移魔法で数回転移すること五回ほど。

エグザたちは巨大な建物の中にいた。


「お帰り、ぺるっち」

「ただいま」

「その子たちが?」

「うん、行った先にいたんだ」

「勇者ラックは健在なのね」


すれ違うのは皆魔族である。

ヒューマノイド、ドラゴノイド、ビーストノイド、フェザーノイド。ヴァンパイアに人狼、リザードマンもオーガもギガスも闊歩している。


シュリフトが時折怖がられることはあったものの、クロガネとライガーは上手く気配を抑えているのか、通常の竜人と獣人扱いを受けていた。


「ここだ」


ペルブレイブの案内で入った部屋に、筋骨隆々の黒い短髪の男と、細身で青紫の髪を伸ばした男がいた。傍には執事が控えている。


「ただいま」

「ペル」

「よっす」


どちらも貴族風の服に身を包んではいるが、おそらく黒い方が悪魔王、カラフルな方が聖魔王であろうと予想できるほどの魔力量を放っていた。


「ゼノン、お前の息子の名前はエグザで間違いないか?」

「!」


青紫の髪の男が立ち上がる。


「間違いなさそうだな。……いってやってくれるか、エグザ君」

「……」


エグザは小さくうなずいて、ライガーたちを見る。ライガーは肩をすくめて見せる。問題ないということだ。

エグザは一礼して、青紫の髪の男に近付いた。


「……大きくなったな、エグザ」

「……俺は――」

「覚えていなくても仕方ないさ……でも、無事でよかった……」


聖魔王ゼノン。

圧倒的な実力者と一目でわかる人物。

そしてその横に同等の実力者と思しき悪魔王サタンもいる。


しかしどれだけ強いと言っても一人の親である。

サタンがゼノンの肩に手を置いた。


「お前らは親子水入らずで話してくると良い」


ライガーもエグザにそう告げて、サタンとともに部屋の奥へ向かった。


「……面倒見のいい白虎だね、あの子は」

「……分かるんですか」

「ああ……彼の父とは知り合いだしね」


俺からすればまだまだガキだが、と微笑んで言い、ゼノンはエグザを伴って隣の部屋へ向かう。隣接していた部屋にはベッドがあり、そこに赤い髪の女が座っていた。


「エレノア、起きていたんだね」

「ええ……懐かしい魔力を感じて……」


ポニーテールにまとめられた髪は、彼女が二十歳前後に見えることもあいまってかよく似合っているが、これを十七歳前後のエグザが母親と思えとは無茶な話である。

しかしエグザは知っていた、年を取らない存在を。

そう。

仙である。


「……っ!!」


エグザの胸を熱い衝動が襲った。胸を押さえ、浅い呼吸を繰り返す。

みっともなく彼女に抱き着いてしまいたい。


「あらあら、そんな我慢しなくていいのに」


気付いた女――エレノアが優しく微笑んだ。その眼には涙が浮かんでいる。


「おいで」


エグザは息を吐いた。懐かしい、ずっと会いたかった、いろんな思いがエグザをめちゃくちゃにかき乱していく。

エグザはエレノアの傍に歩み寄って、近くに置いてあった椅子に腰かけた。

そう言えばフラグなるものは盛大に行きがけにアレイナに立てられていたな、などと思いながら。


「無事でよかった――会いに行けなくてごめんね」


エグザの頭を撫でるエレノア、幼い子供にするように。それもそのはず、エレノアにとってエグザは、ギルドに預けた赤子の時の思い出しかないのである。

エレノアの中ではエグザはまだまだ幼い子供なのである。


「……何か、理由があったんでしょう?」

「……ええ……」


悲しげな眼をしたエレノアは、思い切りエグザを抱きしめた。

エグザは気付いていた。

エレノアの自己回復速度が格段に上がっていることに。

どうやら、ペルセブレイブが言った心労による体調不良は本当であったらしい。そして、それだけ、離れていても会っていなくても、エグザのことを考えてくれている人だった――それだけである。


エグザの目にも涙が浮かぶ。

疲れたのだ、と思った。

当然だろう。


「……エグザ、泣いていいよ……辛かったでしょう」


屈指の実力者であった、エグザの預けられていたギルド”星闇月下”。それを壊滅させたのは他でもないエグザの魔導の師匠であるアルヴェムだった。そして、二人以外は全員死んだのである。

家族のように思い、慕っていたギルドのメンバーを喪ったことも、その光景が目の前で起こされたことも、やったのが師匠であったことも、何もかもがエグザを押しつぶさんとしていたのだ。


親の顔も知らなかったエグザにとって、ギルドメンバーを喪ったことは一番の心労となっていただろう。新しいギルドに入っている今は、それこそ気遣いの上手い不良が二名ほどいて気を回してくれるためほとんど寂しさなど感じてはいなかったが。


それでもやはり負担にはなっていたのだろう。

エグザは泣いた。

安心して泣いた。

エグザとエレノアの肩を包む等にゼノンが抱きしめた。


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