6人パーティ
お久しぶりです。
待ちました?
あ、待ってません?
ともかく、ようやく戻ってきました。浮気性です、はい。
では、かなりぐだってますが、どうぞ。
「親交を深めるということで、今日は最大メンバーパーティで行ってみよう!」
これを言い出したのはアレイナである。最大メンバーパーティというのは6人パーティのことを指す。決してフルパーティではない。フルパーティは24名だからだ。
アウリエラがだいぶ無斗には馴れてきたということで、アレイナは今日は受付業務に専念すると言った。
メンバーは前衛ライガー、無斗、シュリフト、エグザ、中衛アウリエラ、後衛クロガネの6名。
クロガネが言った。
「俺、魔法の発動そんなに早くないからね」
「そこは俺がカバーしよう。いつも通りってことで」
無斗がそう返して、位置取りを大体決めていく。
「俺に盾はちと荷が重いんだ、エグザ代わってくれるか」
「ああ、構わない。魔法を使うときだけ入れ替われるか」
「問題ない」
「シュリフトは基本遊撃で。ヒーラーも任せる」
「了解」
受けた依頼は水源の水質調査だ。そこまで危険な依頼ではないのだが、赤い髑髏のハンコが8つほど押されていた。危険度を示すこの髑髏のハンコは、大体ガルバスタードの基準でつけられている。
「随分と危険度が高いよな」
「これ受けたやつが帰ってこないらしい」
「それ絶対やばいやつじゃね」
「でも水源は大事だ、誰かがやらなくては」
順にライガー、エグザ、無斗、シュリフトの言葉である。
エッデガラから東に30キロほど行くと大きな泉がある。水質調査の対象はこの泉なのだが、何せその先に巨大な湖がある。水性の魔物が泉に登ってきている可能性だってあった。
彼らは基本的に徒歩で移動する。戦闘員しかいない状態では彼らは身軽なものである。泊まる気もないので非常に荷物も少ない。
先頭を走っていたライガーが立ち止まった。
「どした?」
「……臭ェ」
ライガーが鼻を押さえる。ちょっと待ってくれ、とエグザが辺りの魔力の流れを見始める。
「……まずいな」
「?」
アウリエラが首を傾げる。ハーフ魔人であるエグザは彼女の中では魔人区分に入っているらしい。無斗がポケットから小さな石を取り出して宙に放り投げた。石は瞬時に砕け散り、光が霧散していった。
「今のは?」
「陽光石っつってな、陽の気を多量に含んだ――まあ、こっちで言うと、なんだっけ、確か……ソルクリスタルかなんかだった気がする。洒落にならねえ……陰の気が強すぎだぞ」
ソルクリスタルは太陽水晶と当てるように、日光を存分に浴び、その強烈な光の魔力を宿した水晶である。
「なんでそんな高価なものを無斗が持ってるの?」
「――あ、言ってなかったな。俺、本業陰陽師なんだよ」
「とことんユニークジョブだな」
「るせえ」
ライガーの言葉に無斗が切り返した。ソルクリスタルは先ほど無斗が投げた程度のものであっても金貨50枚は下らないのである。
「陰陽師って何……?」
「日々羅華と、もう滅んだけど皇国にいたユニークジョブだよ」
「日々羅華はその名に恥じない日光の恩恵を受けた超自然島国。大陸での流通よりはるかに低価格で陽光石が手に入る」
無斗は荷物の中身を確認する。とはいっても、本当に必要最低限のモノしか持ってきていない。
「いつでも転移できるようにしておく必要があるぜ」
「……まずい。風上になった」
「チッ」
ライガーが言えば無斗は少々焦ったように顔色を変えた。
「アンデットモンスターに対する抵抗がない者はここで引き返せ。まあ、ライガーとクロガネには嫌って言っても残ってもらうがな」
状況を理解したシュリフトは貫牙をホルスターから抜いた。中に込めている魔弾の属性を変更する。アンデットに有効なのは光魔法だ。平たく言えば光魔法、厳密にいえば聖魔法なのだが、どちらも使用できるシュリフトには大した問題にはならない。
「回避に専念して、僕と貫牙で削るのがいいと思う」
「いや、それだと相手のサイズによる部分が多くなるだろ」
「水源がどうなってるか次第で戦法は変わるな」
「下位のアンデットなら俺でもなんとかできる」
「最悪雷で消し炭にするさ」
「……私、皆が化け物に見えてきた」
順にシュリフト、ライガー、無斗、エグザ、クロガネ、アウリエラである。特にシュリフトと無斗。アウリエラの記憶が正しければ、この二人は完全に人間である。どこかで別の種族が混じっていたとしても、彼らは確かに人間としての魔力と覇気しか放っていないはずなのである。
あと、エグザである。ハーフと言いながら下位のアンデットは何とかなるなどと随分と矛盾したことを言っているのである。本来アンデットは強き者に絶対服従、そこで最も強力な魔力を持つ者の支配のみを受け入れることになる。あくまでも、クロガネよりもはるかに魔力量の劣る彼が言うということは、アンデットはやはり青竜たちの支配は受け付けないということになるようである。
「……倒さなくちゃダメなの?」
「それが最もいいと思う。少なくとも聖属性を扱えるのはレアだ、僕は残る」
「なら俺も残るぜ。全種族の紋持ち、嘗めないでもらおうか」
「俺も残る」
「愚問」
「……最悪俺が彼女を逃がすってことになりそうだな」
「……アンデット相手に戦うとか信じられない」
もういい、何も言うまい。
そう諦めモードに入ったアウリエラは、この後驚愕の事実を知ることになってしまった。
まあ、全員驚いていたのだけれど。
「……何の冗談だ、ありゃあ?」
「そんなのこっちが聞きてえよ……」
ライガー辛そうだな。鼻が利くのが仇になっている。
今俺たちの目の前にいるのは――ドラゴンゾンビ。
信じたくねえ……。
あと、最悪の状況になっていた。
泉はドラゴンゾンビが身体を沈めていたため、水が腐敗していたのだ。しばらく水はまともに飲めないな、なんてぼんやり考えた。
「ううッ……」
ちなみに、ドラゴンゾンビだと確認できた時点でアウリエラには離脱しろと俺たちはちゃんと言った。しかしここに居るのは彼女の意思だ。俺たちは決して強制したわけではない。だが――。
「……アウリエラ、お前さんハイエルフだな? アンデットなんか天敵じゃねえか、大人しく撤退しろ」
「……っ、でも、うッ……」
「アンデットは弱ってるやつから狙ってくるんだぞー」
アウリエラは涙目で俺を睨んだ後、転移した。まあ、俺たちにしてもまったく勝算なんてない。ドラゴンゾンビというのは、本来既に上位種であるドラゴンの体を持ったアンデット。下手したらリッチよりもタチが悪い。
魔法は撃ちまくり、フィールド侵食能力だってある。一番いいのは長時間結界に閉じ込めておいて、いきなり爆発させて一気に業火で焼き尽くす方法。無理ですね。
「流石にドラゴンゾンビは――」
「だろうな、エグザ、焼くぞ」
「ああ」
ここで一番効果的なのはおそらく相乗効果を生める俺の式術だろう。まったくもって無茶をしようとしているものだ。でもな!
このままほっとくと確実に他の都市も死ぬ。
ここは水源なのだ。少なくともここから3つの都市が水を引いているのだ。
「……」
俺はあることに気付いた。
アウリエラはかなりこのドラゴンゾンビに近付くまで倒れそうな反応はしていなかった。本来ならばもっと遠い段階でああなっていたはず――。
「……クロガネ、近くに結界の跡がないか確かめてくれ」
「分かった――あったよ」
見つけんのが相変わらず早いやつだ。
「防御結界だ」
「確定だな――壊してこいつが入った、または壊してこいつを入れた」
「水源が元に戻るのにどれくらいの時間がかかるかわからねえのがネックだな」
「そこはまあ、浄化魔法を使える聖騎士様たちが頑張るんじゃないか」
俺たち五人はドラゴンゾンビの半分腐敗して骨が見え隠れする顔を近づけられた。まあ、俺は別に、ね。そもそも陰陽師なんてうさん臭いことしてるしな。反魂とか親父バリバリやってるわ。俺はやれないけど。そもそも俺死者復活とか嫌だから。
「聖騎士ってどこにいんの?」
「北部にしかいなかったと思うが」
「……このドラゴンゾンビ北部のやつが操ってると思ったのは俺の考え過ぎだろうか」
「「「「同じこと考えた」」」」
俺たちの思考回路はどうなっているんだ。
「北部に借りを作らせるため感バリバリじゃねーか!」
「うっぜええええ!!」
ムカついて全員でもう作戦も何もあったもんじゃない。俺たちはただ散開して一旦ドラゴンゾンビを囲んだ。
「スカーレット・サークル」
エグザの火属性魔法がドラゴンゾンビを囲んだ。ドラゴンゾンビの動きがやたら遅く見えるのが少しばかり気になる……。
クロガネも同じことを思ったらしく辺りを魔力探知で索敵し始めた。
こいつがドラゴンゾンビで間違いないのはわかるが、そもそもここにドラゴンゾンビがいることはすなわちこのドラゴンゾンビの元になったドラゴンがいたということで。となると、どこのドラゴンかというのが問題になってくる。
『聞こえるか』
「エグザ?」
『ああ。念話、無斗は魔人紋があるから簡単につながったな』
『なるほど』
念話機能を手に入れた!なんつって。
シュリフトは貫牙がライガーを探知して念話に参加できる形になったようだった。クロガネも無論。
『どうにも動きがおかしいと思わないか』
『同感だ。泉に浸かったっていうよりは――』
『最初からいたような』
『……だな。つーことは、だ。クロガネの索敵の結果次第じゃ、この泉丸ごとやられたことになるぜ』
ドラゴンの腐敗が酷くてよくわからないし、ドラゴンゾンビに変質してしまって元の鱗の色も窺えない。こいつがもし、だ。
ブルードラゴン、すなわち水の王者だった場合。
少なくともこのドラゴンを下す実力者と、ゾンビ化魔法をかけるだけのネクロマンサーがどっかにいることになる。
『索敵終了。戦闘跡あり。そいつはブルードラゴンだ、まだ若いけど』
『マジかよ』
『最悪だな』
『ネクロマンシーなんて人間以外使わない』
ここで一つ問題になるのが魔人族だ。エグザの半分であろう魔人、いわゆる魔族というのは二種類いる。エグザがどちらかは知らないが(本人も知らないだろうから聞くのは酷だ)、聖魔族と悪魔族がいる。
このうちの悪魔族の方はネクロマンサーも存在するが、ほとんどやろうとしない。理由は実に単純だ。悪魔王サタンの存在。サタンが阿保みたいに真面目な人で、ネクロマンシーを封じたそうな。破ったら即制裁、アレはえぐいと日々羅華在住の悪魔族が語っていた。
聖魔族の方はネクロマンシーじゃなくてただの蘇生になるそうである。寿命が尽きたら復活しないけどね、とこちらも日々羅華在住の聖魔族が語ってくれた。魔力の性質の差によるものらしい。
つまり。
人間が他の種族に罪を擦り付けることは不可能なのである。
ああでもアンデットは普通に生まれるし言い逃れくらいならいくらでもできそうだな。
もう一つ証拠になるというか、このドラゴンゾンビが仕組まれたものと断定できる要素はある。ドラゴンはめったに死ぬことはないし、捨てる部位なんて存在しない。よって、ドラゴンの死体を見つけた時点で普通は解体屋を呼ぶのだ。
それがされていない。こんなしょっちゅう人間が来る場所で。
つまり。
人為的。
それと、あまりドラゴンゾンビが移動しないのも気になる。ブルードラゴン系ブルードラゴンは水中では無類の強さを誇るドラゴン種だったはず。ブレスが変質しているのか、それともクロガネがいるからなのか。ブレスの変質なら周りの土も腐ってておかしくないがそれがない、まだ変質途中だろうか。
『念話への介入を確認。どうする?』
『どうせじき突破されるだけだろ』
『まあな』
『じゃあ最初から来てもらったがいいんじゃね』
念話にドラゴンゾンビが介入して来たとのこと。願ったりかなったりだな。俺たちは一様にうなずいて、エグザが念話をドラゴンゾンビとつなぐのを待った。
文章の書き直し案を考え中です。
どいつもこいつも文章が拙ぇ……
やる気がしっかり起きたら、こいつらを改稿します。