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魔動戦士ノエル  作者: 蒼久 素丸
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出会い

 この家にはどうやら地下室があったらしい。夢楽はそこに落ちてしまい、気を失っていた。それから数分が経った。

「…う、ん」

 夢楽が目を覚ました。あたりを見渡した時、確か自分は疲れてふらついて、そのままあの怖いおじさんの住んでいた家の中に入ってしまったことを思い出した。

「どうしよう」

 夢楽は悩んだ。ここから出たほうがいいか。だが外に出れば、確実にあの化け物の餌食になってしまう。この家に畏怖しながらでも、ここは堪えて待つことにした。

「……それにしても、ここって地下室なのかな? 」

 夢楽は不思議に思った。自分の落ちた場所が怖いおじさんの家の中、もとい地下室に入ってしまった。

「…奥に何かあるのかな? 」

 本当は怖いが不思議と奥から何かに惹かれるようだった。もしくは好奇心だったのかもしれない。

「…行ってみよう」

夢楽は意を決して奥へ進んでいった。





「う~、やっぱり不気味だな」

 と愚痴をこぼしながら、奥まで進んだ。

 あの怖いおじさんの家に地下室があったことは知らなかった。1部屋は広かったが、人形や難しそうな本など、たくさんの変な物やがらくたが山のように積まれており、本棚が壁のようになって、まるで迷宮のようになっていた。いかにも人形が動き出しそうで怖かったが、それでも何かに惹かれて奥へと進んでいった。

……そして、最奥までたどり着いたとき、彼女は『それ』を発見した。

「わ~~」

 夢楽はそれを見たとき驚嘆した。

 玉座のような大きな椅子に人形が座っていました。

「うわあ。綺麗」

 夢楽は人形に周りを歩きながら、観察をした。

 年齢は15歳くらいだろう。髪は腰まで長く、炎のような真紅の髪をしていた。服装は大きめのマントに黒いスーツのように見えるが露出度が高く、プロテクターのような金色の装甲が胸や腕、脚に装着されている。露出している部分の体中の関節が球体であるため人形であることが分かった。また胸部の鎖骨の間に大きめのひし形のルビーみたいな宝石が埋め込まれていた。

「どうして、こんなところに人形があるんだろう? 」

 疑問に思いながら、その人形の周りを歩きながら観察した。夢楽は好奇心に惹かれて人形に近づいた。

「よくできているなあ」

 その人形の関節は球体関節ではあるが、顔の肌や皮膚が人間と同じ質感があった。むしろ人形よりも柔らかく、人間以上の美しさがあった。夢楽はそれに看取られ、無意識に人形の頬を撫でた。

「うわあ。すべすべで綺麗」

 そのさわり心地は上品な絹よりも滑らかで、餅より柔らかく心地よかった。夢楽は人形の肌の虜になってしまった。夢楽が人形に夢中になっている時だった。

「ピギャアアアアア!!! 」

「!!!? 」

 獣のような叫びに気付いた夢楽がその発声したほうへ視線を向けると、後ろにはこれまで見たこともない。茶色く成人男性と、同じ大きさを持つトカゲのような生物がいた。

「ヒィ!!! 」

 夢楽はどうやら人形に夢中になって、怪物の気配に気づくことができなかったらしい。トカゲは夢楽を獲物と判断したのだろう。舌をちろちろ出し戻ししながら、こちらをジッと見つめてくる。

「いや、来ないで」

 少女の恐怖とは裏腹にトカゲは接近してくる。

 目の前には生き物の匂い、匂いは子供、子供の肉は柔らかく、柔らかくてとてもおいしい。

 獲物の都合なんてどうでもいい。自分はこの空腹感をただ満たしたいだけ。だからジワジワと獲物に近付いて…。

「ギシャアアアアアアアアアアアア!!! 」

 一気に喉元へとかみつく。

「イヤアアアアアアアアアアアアア!!! 」

 夢楽はこの怪物に食われて死んでしまうと思った。腕を顔の前で交互に交わし、目を瞑った。こんな貧弱な自分がこんな無意味な防御をしても助からないのはわかっている。それでも一途に生きたい気持ちが、夢楽に無意味でもわずかな抵抗を示したのだ。もう食われると思った。

「………? 」

 なにも来ない。痛みが来ない。衝撃が来ない。おかしい。そう思って少し目を開けて、状況を見てみた。

「……!!? 」

 そこには信じられないものが見えた。

「フギュウウウウウウ!! 」

 力のありそうなトカゲの口を腕の力だけで掴み封じていたのだ。しかもその腕に見覚えがある。さっき見た人形と同じ腕と球体関節があることに、夢楽はとっさにその腕の正体を見るべく後ろを向いた。

 そこには玉座に座っていた人形が茶色いトカゲをつかんでいたのだ。人形は成人男性ぐらいあるトカゲを片手で軽々と放り投げ、トカゲはがらくたの山へ埋もれた。

 夢楽は驚きを隠せず、人形のほうへ目が言った。人形の目がゆっくりと開き始めて、口が動いた。

「システム起動。アガトブレインのニューロンコネクションに異常なし。スピリットエンジン並びにマギウスシステム、オールグリーン。続いてこれより魔力認識確認を行います。」

 意味のわからない事を言った。人形のきれいな碧眼に幾多の光が点滅した。

「魔力認識を確認。これによりアガトブレインの最終プログラミングを起動します」

 そういって、数秒後。

「はじめまして。あなたが私のマスターですね」

「え!? …あの~、その~」

「ん、どうしました? 」

 さっきまでの機械的な動作から明るくかわいらしい少女のような動作になったことに夢楽は戸惑ってしまった。

「ピギャアアアアアアアアアアアアア!!! 」

「!! 」

 がらくたの山から先程放り投げられたトカゲが目覚めた。

「まだ生きていた! 」

トカゲは興奮し、怒りを表しているかのように唸りを上げた。夢楽はトカゲを見て怯えた。これを見た人形は事態を把握した。

「マスター、あれは敵なのですね? 」

「え? 」

 その一言に戸惑う夢楽だが人形は微笑みながら話してきた。

「あれを倒せばいいんですね? 」

「え? ……あ、うん」

 人形の声かけに不思議と落ち着いた。人形は夢楽の前に出た。

「マスターは私の後ろで待ってください。ではこれにより、敵勢戦力の排除を行います」

 人形が戦闘形態に入ると同時に、明るかった笑顔が、一変した。

「スピリットエンジンの状態を戦闘モードへとチェンジ。マギウスシステムのリミッターを解除。ゲマトリア・ドライブ起動。これにより敵勢力の排除を行います」

冷徹な無表情の機械人形のようで恐かった。しかしその立ち姿は姫を守る戦士のようだった。夢楽はある物語の騎士を思い出した。


 最初に動いたのは人形からだ。人形は矢の如く一気に前進した。トカゲはその勢いに一瞬驚き、顔面を殴られまたがらくたの山へと飛ばされ、がらくたの雪崩によって埋もれた。

 夢楽と人形との距離は一気に離れ、トカゲとの戦闘がやりやすくなった。

「ビギャアアアアアアアアア!!! 」

 2度も飛ばされ、がらくたの山に埋もれて怒りを爆発させたトカゲは、長い尻尾を使って鞭のように叩きつけようとした。ところが人形は余裕に尻尾をかわした。

「ビギャアアアアアアアアア!!! 」

 やすやすと交わした人形に、怒り狂ったトカゲは尻尾を目にもとまらない速度で連続に振るった。これに対し人形は何も変わらずにかわし続けた。

「す、すごい…。」

 夢楽はその戦闘に呆気にとられていた。あのトカゲの尻尾の連続攻撃もすごいけど、人形が余裕でかわし続けているのもすごかった。

 激しい攻防も長くなかった。トカゲの尻尾攻撃も疲労によって、スピードが落ち、とうとう攻撃を止めてしまった。これを見た人形は右腕から赤い光を発して、剣のような形になった。まるでSFに出てくるビームソードのようだった。

「敵勢の戦闘維持が低下しました。これにより削除を行います」

 人形はまた一気に前進した。トカゲは自身の危機を感知し、渾身の尻尾攻撃をした。しかし、人形は難なく左にかわし、右腕の光の剣で尻尾を斬り落とした。

「ギギャアアアアアアア!!! 」

 トカゲはあまりの激痛で口を大きく開けてしまい、これがトカゲの最後となった。人形の右腕がトカゲの口へと突っ込んだ。光の剣が喉元から内臓まで貫通した。そのまま右腕を上へとあげると背骨と頭部が両断してしまった。

 人形は後ろへ下がった。右腕の光の剣が消え、今度は両腕から炎が出て来た。炎をまとった両腕を上にあげて、炎が両腕の間の空間に吸い寄せられ、大きな球となった。そして人形は言い放った。

「マギウスシステム、炎魔法発動。『ファイアボール』発射!! 」

 火球はトカゲに直撃し、爆し、燃やし、焼かれ、消滅していった。

「すごい。やっつけちゃった。」

 夢楽は脅威から脱して安堵した。だが炎は周りのがらくたや本に燃え移り、勢いを増した。

「…って、燃えてる燃えてる!! 早く消さないと!!! 」

 流石に夢楽は慌てたが人形は慌てなかった。

「マギウスシステム、周りの炎によるマスターの被害を計測。これにより炎エネルギーを魔力エナルギーに変換し、自機に吸収します」

 そう言って、右腕を上げ、指パッチンを鳴らした。すると先程の炎の勢いがみるみると、人形の胸部のひし形のルビーへと吸収されていった。

「状況完了。これにより戦闘モードを変換し、コミュニティモードへと移行します。……マスター、ご無事ですか? 」

 機械的な感情から最初に出会った時の明るい表情へと変わった。

「あ…。うん、大丈夫」

 今日は変なことが連続で起き続けている。気持ちの整理がつかない。状況が追いつかない。もう訳が分からなくなってきた。今の自分は混乱しているのが分かる。夢から覚めたい。そんな気持ちもあった。でもなぜか自分は混乱した中でこんな一言を発してしまった。

「あなたは何者ですか? 」

 と言った。これに対し、人形は笑顔でこう言った。

「私は魔動人形(マドール』です。これからもよろしくお願いします。マスター。」

 これが『氷上 夢楽』と魔動人形の運命的な出会いであり、『氷上 夢楽』の人生の歯車を狂わす存在でもあった。


 この小説を読んでくださった皆様。誠にありがとうございます。本来できた話を一気に出す予定でしたが、不慣れなため時間にずれができてしまいました。私もまだ初心者ですので、誤字や間違いがあると思いますので、その点は後に改善して行きます。ご感想等あればお出しください。

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