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12 ラストと総力戦

 これは話が違うんじゃないのか?

 確かに変なボスだし強い。それは情報通りだ。

 でもその強さは情報通りではない。

 事前に聞いていた話では、ボスは攻撃的ではなく、どちらかと言うと受けのタイプで防御型だと聞いた。

 では今の状況はどうか。

「くっ……。こやつ、いつの間に!」

 開戦と同時に、俺に向かって突撃をしてきたのだ。

 ヴァルマが守ってくれなかったら、そのまま俺はボスに攻撃されていただろう。

 そのままヴァルマも参戦してしまったけど、そのヴァルマでさえボスの動きを捉えられていない。

 それくらい高速で動き回っているのだ。

「ヴァルマでも捕捉出来ないのか! こうなったらイージスの盾を出して守りを固めるしか……。ぐっ!」

「アキ! 召喚をさせる暇を与えないって訳ね……。でもなんでアキが召喚士だって知っているのかしら」

 速く動いて、俺の邪魔ばかりしてくるのだ。

 イージスの盾を出してしまえさえすれば、あいつの攻撃くらいなら防げるはずなのに、その隙すらも与えてくれない。

 速い割には持続力もないし、攻撃力も見掛け倒しみたいだ。

「めっちゃ速すぎるぞ……。あんなに俊敏に動くとか聞いてないんだが。それに攻撃も仕掛けてくるし」

「でも長くは保てないみたいね。よくて数秒。それに攻撃力もなさそうだし」

 それでも捉える事が出来ない。ボスがどれだけスタミナがあるのか分からないけれど、このままではお互い何も出来ないまま時間が過ぎていくだろう。

 マリアでも、アルルでも、そしてヴァルマでもあの速さには着いて行けない。

 ボスが脚を止めるタイミングを狙ってはいるが、ボスもその隙を分かっているのだろう。俺達が攻撃しにくい位置取りを確保しつつ行動しているのだ。

 情報と違いすぎるから、さすがにこの展開は想定していなかった。

 一旦出直すというのも考える必要もありそうだが……。




 攻めに転じるきっかけが無いみたいですね。

 それも仕方ありません。ここまで優秀な召喚士を含んだパーティに巡り合えた事は嬉しいですが、この最後の試練がクリア出来なければ駄目なのです。

 これまでも優秀な冒険者はいましたが、その中に召喚士はいませんでした。

 この召喚士の男性は、我が主トダ様以来の召喚士と言えるでしょう。

 さぁ! 高速で動く私を、どう攻略しますか?

 召喚の時間は与えません。このパーティの要は、あの召喚士です。次いで長身の女性ですね。

 なのでこの二人を封じてしまえば、このパーティを封じる事は可能になる訳です。

 出来れば長身の女性を無力化してから、召喚士を無力化したいですね。そうすれば、このパーティは撤退をするでしょう。

 そうなって欲しくはないので、足掻いて欲しいものですね。とは言うものの、さすがにもう無理でしょうか?

 ……おや? 弓士の様子がおかしいですね? あの娘は、これまでの戦いでずっと弓での後方サポートに徹していましたが、弓を持っていない?

 一人で撤退準備でしょうか。それならば追いはしません。さて、では引き続き召喚士と長身の女性を邪魔しましょうか。

 この力。持続時間が無いのが問題ですけど、さすがに長い時間行使し続けられるのは、それはそれで問題でしょう。

 では行きま……?!

「ギギ……?」

 なんですか、これは。いきなり目の前に壁が出来ました。まさか、召喚士が何かしたのですか? そんな予兆はありませんでしたが……。

 それに、脚が少し凍って地面にくっ付いていました。動けないほどではなかったですが、少しだけ戸惑ってしましましたね。

 ……なるほど。この壁と氷の元が分かりました。

 あの弓士は魔導士だったのですね。これまでの四度の戦いで、一度も魔法を使っていなかったので分かりませんでした。

 帰り道のために、温存させていたのでしょうか? 面白いパーティですね。ですが、種が分かればどうという事はありません。

 さほど問題ではありませんが、凍らされると厄介ですので、あの魔導士も無力化させておきましょうか。

 ……いえ。今私は、どれだけの時間立ち止まっていましたか? どれだけの時間、召喚士から目を離していましたか?




「動きを止める……いや。動きを少しでも抑える事が出来れば、召喚の時間が出来るんだけど」

 何かを召喚出来れば、この状況を打開できるんだけどなぁ。その時間がない。

 ヴァルマも攻めきれない感じだ。ブレスを使えば打開できるかもしれないけど、この部屋でやるには少し範囲が心配だ。俺達だけでなく、ヴィータネンの人達も巻き込んでしまうかもしれない。

 マリアでもアルルでもヴァルマでも無理……。

「ふふん、ここは私の出番のようですね」

 最後の一人。カタリーナが、どや顔で言い始めた。

「マリアお姉様のために、私の魔法であいつの動きを封じてみます!」

 そうだカタリーナには、道中は弓をメインでいて貰った。魔力温存のために、少しでも魔法の回数を減らして貰っていたのだ。マリア経由で。

 カタリーナの魔法は氷だ。その魔法で、ボスの動きを完全に封じる事は出来ないと思うけれど、少しは動きを止められるかもしれない。

 カタリーナはフリーだ。

 攻撃を受けているのは、主に俺とヴァルマ。

 マリアとアルルは、相手の動きが止まった瞬間を狙おうと頑張ってくれている。

 なら、その時に少しでも凍らせられば、あるいは時間が生まれるかもしれない。

「そうね、このままだと攻めきれないわね。カタリーナ、お願いできるかしら」

「はい! マリアお姉様のために頑張りますね!」

 次にあいつの動きが止まった時がチャンスだ。


 そのチャンスはすぐに訪れた。

 元々、あいつの高速時間は長くない。小休止と大休止を必要なようで、その大休止のタイミングをこちらは狙っていたのだ。

「行きますよ、氷よ、敵を凍り突け! フリーズスパイク ! もう一つ行きます! 氷よ、我が身を護る壁と成れ、アイスウォール!」

 フリーズスパイクは、相手の足元から氷を生やす魔法だ。アイスウォールは氷の壁で味方を護るシールドになる魔法だ。

 弱い魔物ならば、前者の魔法だけで片が付くけど、この相手じゃそうもいかないだろう。目的はダメージではなく、妨害だ。

 アイスウォールも本来は防御用の魔法だけど、壁のようなものを瞬時に発生させることで、目くらましのような効果も狙えるのだ。

 目論見通り、ボスは戸惑ったように見えたし、実際に動きは止まった。

「アキ! 今の内よ!」

「アキヒト様!」

「あぁ、行くぞ! マリア! アルル」

 カタリーナが作ってくれた時間は、本当に少しだ。この戦法はもう通じないだろう。この一回が勝負だ。

 出し惜しみはしない。最初から全力全快だ。

「来てくれ、イージスの盾! グングニル! そのままマリアとアルル、変身だ!」

 俺の呼びかけと共に、大きな盾と槍が出現し、そしてマリアとアルルに装着されていく。

 その時間は一瞬だ。これはカタリーナが稼いでくれた時間だ。マリアとアルルが変身するのと同時に、ボスがカタリーナ目がけて突進してきた。

「カタリーナも狙い始めたのか! くそ!」

 俺は元より、ヴァルマも想定外だったのか、防御に間に合わない。このままではカタリーナはボスの攻撃をまともに受けてしまうだろう。

「きゃあぁぁぁ!」

 ボスがカタリーナにぶつかるその寸前で、止まった。ボスが止まったのだ。

「大丈夫? カタリーナ」

「マ、マリアお姉様! ありがとうございます」

 カタリーナとボスの間には、マリアが立ちふさがっていた。イージスの盾で武装をし、完全な防御を身に纏ったマリアが間に合ったのだ。

「カタリーナ、マリア。無事か?」

「ワタシもカタリーナも無事よ、アキ」

 さすがはマリアだ。ボスの突進を止めるだけでなく、無傷とはね。

 マリアに止められたいるボスは隙だらけだ。それをうちのメンバーが見逃すはずがない。

「反撃、です!」

 グングニルによって攻撃と敏捷を超強化されたアルルが、さっきまでの相手と同じような速さでボスを吹き飛ばした。

 そのまま壁まで飛ばされて、大きな音を立てて壁にぶち当たった。

 初めて、こちらの攻撃が当たったのだ。それがアルルの攻撃とは。ボスに同情してしまう。

「ギギ……」

 吹き飛ばされたボスは、それまでの余裕は無さそうだ。まだ倒れてはいないけど、さきほどまでのように俊敏に動く様子はない。

 そのボスの前には、防御武装をしているマリア。攻撃武装をしているアルル。それに、これまでの鬱憤を晴らそうと憤っているヴァルマの三人が立ちはだかっていた。

「もう攻撃はしてこないのかしら? 攻撃してきても防いじゃうけどね。それに、よくもアキを狙ってくれたわね」

「もう速さでも負けません。アキヒト様に攻撃するのは許しません!」

「わらわの邪魔ばかりしおって……。それにわらわのアキヒト殿をいたぶるとは、なんと非道な奴じゃ」

「ギギ……」

 よく分からないボスだったけれど、今のボスの気持ちなら分かる。

 すみません、許してください、だろうな。


 三人にボコボコにされたボスは、見る影も無かった。

 大きなゴーレムのような体だったのに、今はパーツごとに分解されたかのように小さくなってしまっている。

 ヴァルだけでも攻撃力で見れば過剰だと思っていたのに、それにマリアとアルルも加わっていたのだ。

 これだけダメージを与えてしまえば、さすがにもう勝利と言っていいだろう。

「えーっと……。みんな? 俺は大丈夫だったからさ。ひとまず休もうか」

 油断という訳ではないが、あの状態のボスが何かを出来るとは思えない。警戒しつつ休憩だ。

「怪我は無くても、アキが攻撃されるのを見るのは嫌なのよ?」

「アキヒト様は、アルルのご主人様です」

「アキヒト殿に何かあったら、子種はどうするのじゃ」

「マリアお姉様、さきほどはありがとうございました!」

 ……みんな元気だな。カタリーナはいつも通りか。

 想定外な事ばかりで大変だったけれど、なんとか勝てたか。というか、勝ってしまったのか。

「いやぁ~。アキヒトちゃん、さっきの色々何かな? マリアちゃんとかアルルちゃんとかなんか変身してなかった?」

「ヴァルマさんの戦闘能力も凄かったですね。Cランクというのが信じられません」

「カタリーナさんの氷の魔法も凄かったのです」

 ヴィータネンの人達も驚きの感想のようだ。マリアとアルルの召喚とか、ヴァルマの事とか、色々と説明しないとなぁ……。

「あれ。シグネ団長。なんかボス動いてませんか?」

「え?」

 まさか? もう元の形を維持していないくらいボコボコにされたというのに、まだ動けるのか?

「ピピ……。ラストフェイズ シュウリョウ デス。オツカレサマ デシタ。タイムリープ カイシシマス」

 何か喋って……。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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