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11 守護者と試練

 私は(マスター)に創られた存在。

 元々は主のサポートのために創造されましたが、今となってはマスターの研究所を守護し、資質ある者を待つだけの存在。

 普通の召喚獣ならば、既に魔力切れになっているでしょうが、私はこの研究所にいる限りは問題ありません。

 ここは元は主の研究所でしたが、時代が経つにつれて地形が変わり、今となってはダンジョンの奥底になってしまいました。

 そのお陰もあって、冒険者がここまで来る事が多いようです。私の試練を受けに来る冒険者です。

 だけど、冒険者からすれば、どうやらここはダンジョンの最奥で私はボスという扱いになっているようです。

 ……その勘違いについては訂正もしたいですが、丁度いいのでそのままにしておきます。

 さて、私の求める者は、主のような資質ある者。主の研究を理解し、扱える者。それを見出すまで、私はここで待ち続けます。

 ……ですが、その成果は良くありません。

 ボスという扱いになっているため、挑戦者は多いのですが、どれも今一つなのです。

 資質……魔力があり、実力もあり、そして優秀な召喚士は現れません。

 ですが私は待ち続けます。

 我が主、戸田様のために。


 ……また冒険者がやってきたようです。

 最近は召喚士の数も質も下がる一方です。見つかるのは当分先になるのでしょうか。

 おや? どうやら大勢のようですね。一○人ほどでしょうか。半分ほどが見た事がある方です。残りは新規のようですね。

 新規の方々が挑戦するみたいですね。見たことがある女性パーティは、脇に避けていきます。

 いつからか分かりませんが、部屋の隅は観戦席となっているようです。私も好戦的に行く訳でもありませんし、端にいるのならば攻撃はしないので、そうなったようです。

 さて……新規の方ですね。情報がないので慎重に行きましょう。

 五人組ですね。前衛が三人に後衛が二人でしょうか。バランスはいいと言えましょう。後衛は……一人は魔導士ですが、もう一人の男性は分かりませんね。

 では戦いましょうか。

「ピピ……。パーティ ヲ カクニン」

 まずは一回目ですよ。

「シレン ヲ カイシ シマス。ファーストフェイズ」


 なるほど。

 前衛の一人はレイピアを武器にした素早さを活かす軽戦士ですね。中々に強いですが、私との相性は悪いでしょう。相手もそれを分かっているのか、遊撃に徹しているようです。

 もう一人は拳を武器にした攻撃型のようです。獣族なので力もあり、一撃を喰らってしまうとまずいでしょう。

 そしてもう一人……は何故か戦闘に参加しないみたいです。温存でしょうか? データが取れないのは残念ではあります。

 前衛はそれだけではなかったです。男性は召喚士だったみたいですね。クマのような前衛タイプの召喚獣を召喚し、獣っ子前衛とコンビで攻撃してきています。

 この召喚獣は……確かベアルカスだったでしょうか。少しデータよりも強いみたいですが、それだけあの召喚士が優秀なのでしょうか。

 最後は後衛の女の子ですね。こちらは弓士だったみたいです。こちらも武器の相性は最悪なのでサポートに徹していますね。

 魔導士がいないのは驚きでしたが、その分を召喚士の男性がフォローするのでしょう。

 実力もバランスも連携も十分にいいパーティですね。ですが、今のままでは私を倒すことは出来ませんよ。

 さぁ、見せて下さい。貴方達の奥の手を。


 おや? どうやら何かをするようですね。

 おおぉ……。何か大きな召喚獣が現れました。

 今までの他の冒険者の経験からすれば、恐らくあの巨体で私を抑え込むのでしょう。それほど強い召喚獣かどうかが問題ですが。

 しかし……あの召喚獣は、スクゥトムゴーレムのように見えますが、データよりも少し小さいというか、スマートですね。だとすれば、期待外れでしょうか?

 おっと、矢が飛んできましたね。別に当たってもそんなにダメージはありませんが……。

 む、あの軽戦士の突撃が来ますね。今までよりも速い、ですね。さすがに喰らってしまうとマズイですね。ここは相手の作戦に乗ってあげましょう。

 やはり巨体な召喚獣で抑えに来ましたね。だとすれば、後は獣っ子とベアルカスが攻撃を……。ぐっ……やはりそう来ますよね……。さすがに直撃は厳しかったですね。

 一回目の試練は()()です。さすがに私もこのままでは壊れてしまいますからね。では続きは次回に。

「ピピ……。タイムリープ ヲ カイシシマス。セカンドフェイズ デ オアイシマショウ」


 さて、これで時間は戻りましたね。

 私の能力は時を操る事が出来ます。タイムリープは私の記憶をそのままに、過去に戻る能力。

「シレン ヲ カイシ シマス。セカンドフェイズ」

 この力を使って、私は色々な冒険者を試験してきました。一回や二回、私に勝っただけではダメなのです。それだけでは、資質があるとは言えません。

 色んな戦いで私を圧倒してください。同じ手は私には通用しないのですから。

 さぁ、次はどんな方法で私に勝つのでしょうか。

 ……まずは一回目と同じですね。連携を駆使して私に攻撃を仕掛けてきます。でもそれは通じないのは一回目と同様です。

 となると、次はスクゥトムゴーレムを出してくるのでしょう。ですが同じ手は喰らいません。抑えられる前に、こちらから抑えます。


 うまくいきましたね。私には同じ手は通じません。

 相手からすれば初めての攻撃でしょうが、私からすれば、それは既に見た攻撃です。なので対処可能です。

 このままでは私は倒せませんよ? 次はどうしますか?

 おや? スクゥトムゴーレムを戻して別な何かを召喚しましたね。あれは……データにありません。

 私には今までの戦闘経験から収集したデータと、元から備えている戸田様の召喚データがあります。それらを総合すれば、全ての召喚獣のデータが揃っているいってもいいくらいです。

 なのにあの壁のような召喚物のデータはありません。

 ……まさか、創造でしょうか。あの若さで創造を行えるとは、期待度は上がりました。

 ですが、その壁のようなもので一体何をするのでしょうか……。え……、壁が崩れた? いえ、分解してあの軽戦士のそばに……。

 こ、これは! まさか合体したのでしょうか? 軽戦士の格好が先ほどまでと変わっています。武器も防具も、恐らくは一級品レベルでしょう。

 こんな現象、知りません。普通の召喚獣には出来ません、ありえません!

 ぐっ……。さっきまでの素早さ重視の軽戦士とは段違いです。武器はまだ片手剣なのは幸いですが、速さは先ほどまでよりも速く、そして攻撃の威力は跳ね上がっていて脅威です。

 防御するので精いっぱいですね。軽戦士だけでなく、他の冒険者も一斉攻撃に出ています。

「たぁぁぁぁ!」

 む? 軽戦士はどこに……? 上! しまった、一瞬見失っ……武器が変わっている? 片手剣と盾はどこに。いえ、それよりも、あの武器はまずいです。ハンマーのような武器はまずいです。

「これで……! 終わりよ!! 」

 ……見事です。こうもパワーアップされてしまうと、初見では対応は難しかったですね。しかし、二度目はありません。あれに勝つには、合体させないようにするのが正解でしょう。合体後では、対応が難しすぎますから。

 では、またお会いしましょう。

「ピピ……。タイムリープ ヲ カイシシマス。サードフェイズ モ タノシミニシテイマス」


 三回目です。ここまで来る冒険者は多いですが、この辺りから脱落者が出てきますね。今回の相手はどうでしょうか。

 一回目に見せた、冒険者と召喚者のコンビ攻撃は健在ですね。ですが、それはもう効きません。

 そうなると、次は二回目に見せた軽戦士と召喚獣の合体ですね。それはマズイですので、対処させて頂きます。

 ……召喚はされましたね。ここから合体に向かうのでしょうが、阻止します。

 軽戦士を抑え込んで、合体させないようにします。あの召喚物を抑えても良いのですが、あちらは分解されるのが前提のようですので、破壊しても無駄でしょう。

「な?! マリアを抑えに来た? みんな、マリアからボスを引き離してくれ!」

 なるほど。やはり、合体出来るのはこの軽戦士だけなのですね。他の冒険者でも出来るのならば、この軽戦士に固執する必要がありませんからね。

 この軽戦士を抑えつつ、他の冒険者の攻撃も防いでいれば、合体は出来ません。そちらの勝ちは起こりません。

 ……おや? 合体用の召喚獣を戻しましたね。勝機がないと分かったのでしょうか。

 撤退でもするのでしょうか? 別に構いません。逃げるならば私は追いませんよ?

 ……またあの召喚士が何かやるようですね。今度は一体何を……?

 これは……大きな槍、でしょうか? 槍を召喚してきましたね。先ほどの壁のようなものといい、この槍といい、私のデータにない召喚です。とすると、どちらも創造したものでしょうか。

 能力が分かりませんね。槍ならば直接こちらへ攻撃も可能ですが……。まさか? まさか槍もですか?

 し、しかし軽戦士は私が抑えたままです。このままでは合体は出来ない……ということは!

 ……まさか軽戦士以外も合体可能だったとは。そもそも召喚との合体などこちらのデータに無い事ですし。

 それよりも……。今度は獣っ子が合体ですか。元々の攻撃力は高かったはずですが、槍と合体となると、長所がさらに伸びたという結果になるでしょうかね。

 武装は……拳にナイフのようなものが付いていますね。打撃だけでなく斬撃も可能になったということでしょう。

 こちらに突撃して……速い! くっ……。想像以上にスピードアップしています。これは合体後の軽戦士以上のスピードですね。辛うじて躱したと思いましたが、どうやら斬られたようです。

「やぁぁぁぁ!」

「いいぞ、アルル! そのまま一気にだ!」

 軽戦士の時は、皆で一斉攻撃だったはずですが、この獣っ子の場合は違いますね。

 全方向から、まるで槍と投擲されているかのような鋭い突撃が続いています。それも段々と速く……。

 この攻撃方法では相手も消耗は激しい上に、他の人が邪魔になってしまう攻撃ですね。

 ……このままでは押し切られてしまいます。()()()負けておきましょう。対応策も浮かびましたし。

 さぁ、どう止めを刺してくれるんですか?

 ……なるほど。両腕を合わせ、全身で突撃してくるのですね。ナイフのような拳が合わさり、身体が棒のように真っすぐを。まるで、自身を槍に見立てて投擲するかのような突進……。

「うらぁぁぁ!」

 見事です。私の体に、大きな穴が空いてしまいましたね。硬さには自信があったのですが……。

 この獣っ子の合体も、対応は難しいですね。やはり合体させないのが正解でしょう。

 では、皆さま。次回をお待ち下さいませ。

「ピピ……。タイムリープ ヲ カイシシマス。イヨイヨ フォースフェイズ デス」


 四回目です。

 このパーティの起点にして爆発力。それはあの召喚士です。一回目も二回目も、三回目もあの召喚士の召喚がきっかけで敗北しました。

 ということは、あの召喚士をこちらで抑え込んでしまえば、このパーティの勝ち目は低くなります。

 他のメンバーでは私に太刀打ちできませんからね。

 心配なのは、今まで戦闘に参加してこなかった前衛の女性ですが……。ここまで参加していないとなると分かりませんね。

 さて、では行きましょう。あの召喚士を無力化します。攻撃はあまりしない私ですが、無力化です。気絶程度で済ませます。

「な?! ボスが突っ込んでくるぞ!」

「攻撃はしてこないんじゃなかったの!」

「と、止めます!」

 ダメです。貴方達の力は見切っています。合体後ならともかく、合体前ならば、私の敵ではありません。

「アキ、危ない!」

 これで召喚士を無力化……。

「ギギ……」

 止め……られた? まさか、私を止めるだけの者がいるはずが……!

「わらわのアキヒト殿に、何をするつもりなのじゃ?」

 今まで何もしていなかったあの長身の女性!

 私の突撃を、左手で受け止めた? まさか……。合体後の軽戦士や獣っ子並みの実力を有しているというのですか?

 このままではまずいですね。一旦離れて体勢を整えなくては……。

 う、動けない? まさか、私が抑えられているというのですか? そんな……。

 攻撃は不得手ですが、力や耐久力、素早さなどは一流の冒険者にも劣らないはずのスペックを有しているはずです。それなのに、微動だに出来ないとは……。

「わらわのアキヒト殿に、何をしようとしたのじゃ?」

 ま、まずいです……。この展開はさすがに対応が……。

「アキヒト殿に危害を加えようとする輩は……。わらわが許さん!」

 自由になっている女性の右腕で、そのまま私を殴ろうというのですね。ですが、一撃だけでは私は……。

「ギギ……!」

「ヴァルマ……。嬉しいけど、やりすぎじゃないか?」

「ふん。アキヒト殿を襲おうとした、あ奴が悪いじゃ」

「いやでも……。元の形が分からなくなっていて、敵ながら不憫なんだが」

 大きく殴り飛ばされましたね……。一撃でこの威力……。あの合体後の獣っ子並みの威力ですね。

 ということは……。体のほとんどが機能していませんね。大きく潰れているのでしょう。これではもう戦闘は出来ません。私の……負けです。

 さすがにこれは想定外でした。あの長身の女性は、召喚士を守護する、いわばガーディアンといった所でしょうか。

 この対策は……本気を出さないと駄目かもしれませんね。

「ピピ……。タイムリープ ヲ カイシシマス。ツイニ ラストフェイズ デス」


 いよいよ五回目ですね。ここまで来た冒険者は初めてです。これが最後です。

 三回目までは行く冒険者は多いのですが、そこで詰まってしまう事が多いですね。

 さすがに奥の手を複数有しているパーティは少ないようですし、一騎当千な方も少ないです。

 そうです。いくら私は何度も戦闘を重ね、相手の戦い方を研究し対応すると言っても、単純に強すぎる相手ではそれは難しいです。

 それに対応するために私が有しているもう一つの能力。それを使う時がいよいよ来ました。

 全快同様に、初手から召喚士を抑えに行きます。その結果どうなるは、前回の結果が物語っています。

「わらわのアキヒト殿に、何をするつもり……む?」

 長身の女性が抑えに来ますが、止められてしまうと私のパワーでは振りほどけません。なので避けます。止められるのが分かっていれば避けられます。

 召喚士を邪魔しつつ、長身の女性も抑えないといけません。さらに、他の冒険者もいますから、そちらにも注意しないといけません。

 普通ならば無理でしょう。ですが私の能力を用いれば……。

「くっ……。こやつ、いつの間に!」

「ヴァルマでも捕捉出来ないのか! こうなったらイージスの盾を出して守りを固めるしか……。ぐっ!」

「アキ! 召喚をさせる暇を与えないって訳ね……。でもなんでアキが召喚士だって知っているのかしら」

 私の動きを彼らが追う事は出来ないでしょう。私は時を操る召喚獣。タイムリープはその能力の一つでしかありません。

 もう一つの能力は、時の流れをゆっくりにすること。周りはゆっくりですが、私だけは早く動くことが出来ます。

 といっても、無限に使える訳ではありません。ほんの数秒です。

 ですが、戦いの中の数秒は大きいです。

「めっちゃ速すぎるぞ……。あんなに俊敏に動くとか聞いてないんだが。それに攻撃も仕掛けてくるし」

「でも長くは保てないみたいね。よくて数秒。それに攻撃力もなさそうだし」

「アキヒト殿を邪魔してるだけじゃの」

「アキヒト様、どうしましょう」

「なんか変なボスね。私が狙われていないのは良いのか悪いのか微妙な気持ちね」

「足を止めた所を狙うしかないけど……」

「そう簡単にさせてもくれないみたいね」

 能力の使用時間は短いです。これを破る場合は、切れた瞬間を狙うのが定石でしょう。ですが、そう簡単には捕捉させませんよ。

 間合いはしっかりと確保します。捕まりませんよ?

 一番厄介なのは長身の女性。次は召喚士ですが、こちらは召喚させなければ良いので、少し余裕はあります。

 ……くっ! これは驚きです。まさか長身の女性は魔法も使えるのですか? いきなり強力な炎が迫ってきて焦りましたよ。

 これは厄介ですね。近づけば力で、離れれば炎で攻めてくる訳ですか……。一体何者なのでしょうか。正直、今まで出会った冒険者の中で一番強いと言ってもいいくらいです。

 このまま向こうの息切れを狙いましょうか……。それとも、隙を付いて、あの召喚士を気絶させましょうか。

 後者のがすぐに決着が付きますが、あの女性が召喚士を狙っただけで怒って戦闘に参加してきました。召喚士の男性を気絶させてしまうと、さらに激昂してしまうのではないでしょうか。

 それは危険です。不確定すぎますね。やはり前者の作戦にしつつ、他の冒険者を消耗させていきましょうか。

さぁ……、今度はどう対処してくるのですか?

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


PCのキーボードを新調しました。

打つのが楽しいですね。キーが軽い……!

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