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06 ダンジョンと順調な旅路

 伝説のダンジョン。

 その情報は、簡単に集める事が出来た。

 ヴィータネンの人達が言っていたように、道中の難易度は高くないようだ。

 ランクDの冒険者だけでもボス部屋まで辿り着く事も可能。

 問題になるのがボスらしい。

 どんなに強力な一撃を用意しても、それを叩き込む前に潰されるか、もしくは避けられるなどして直撃しない。

 どんなに人数を準備しても、一番狙って欲しくない所から切り崩される。

 まるで歴戦の戦士かのように勘もよく、こちらの攻撃は当たらず、向こうの攻撃が当たる。

 心を読んでいるみたいに、こちらの力を最小限に抑えた戦い方をしてくる。

 それが、伝説のダンジョンのボスだ。

 ちなみに、伝説のダンジョンは通称であり、正式名称は北ウィックベクレル という名前らしい。


「ここがそうなのか……」

 ヴィータネンとの話し合いから四日。まずは小手調べという感じで挑むつもりで、俺達は伝説のダンジョンの前に来ていた。

 俺達の他には、ヴィータネンからシグネ団長、シーリ、スサンナ、それにミネットの四名が同行している。

 さすがにノーラ副長までは着いていない。

 ここまでの道中は平和そのものだった。

 人数が多いというのもあるが、そもそも街の外でも魔物は少なく平和なのだ。たまに出てくる魔物も弱いもので、何の問題もなかった。

 女の子達はお喋りをしながら――まるで散歩のような移動だった。

 マリア達はこの三日間で、ヴィータネンの人達と大分仲良くなったみたいだ。さすがは女子同士である。

 俺はというと、会釈はするけど基本的に会話はない。シグネ団長やノーラ副長とは挨拶はするけど、他のクラン員からは嫌われ気味だ。

 俺が認められれば、ミネットはヴィータネンから引き抜かれる事になるのは、皆に伝わっている。

 向こうからすれば、俺はミネットを引き抜きにきた、一見するとハーレムパーティの要の男。

 白馬の王子が迎えに来たのならば憧れもするだろうが、両手に華状態で、ミネットも末席に加えてやろうか? 状態で迎えに来た男……。謂わば、女の敵なのだ。

 こうなると俺への妨害とか、マリア達への勧誘があると思って少し心配していたけれど、そういうのは特になかった。

 その辺はフェアというか、正々堂々としているみたいだ。


「基本的に私達は手助けはしないからね。まぁランクCなら危なくはないと思うけど、その時はミネットちゃんを渡す実力がないって事になるよ」

「分かってますよ」

 ヴィータネンの四人は、ここまでも俺達の後ろに続いてくるだけだった。

 戦闘はもちろん、道中の案内すらもしていない。それらも全て冒険者の実力を計るためだからだ。

 さすがに夜営の準備や食事、夜の見張りなどは協力して行ったけど。

「それで、今回は最後まで行っちゃうの?」

 このダンジョンは全一○フロア。そんなに広くもないようだし、数日あれば初見でも最下層まで到達できるだろう。

 だけど、最終目標はあくまでボスだ。もちろん最下層まで行けないようでは話にならない。

「今回の目標は最下層までのルートのマッピングだ。ボスには挑まないつもりだ」

「ふーん。まぁいきなりボスに行っても、いい勝負が出来るとも思えないしね」

 今回の挑戦ではボスには行かない。そこまでのルートの確保が目標だ。

 もちろん地図も売ってはいたけど、馬鹿高かった。買えるには買えるけど、そこまでして買う物ではないかなと思って止めておいた。

「それにしても、本当に君のパーティってハーレムじゃなかったんだね。それとも、私達がいるから遠慮してるのかな?」

 ダンジョンまでの数日の夜営は、ヴィータネンの人達とは別のテントだった。俺達はいつも通りに、マリア達女性陣はテントの中に。俺はその前に寝袋で休むという形だ。

 それを見たシグネ団長は。

「あれ? 中で女の子とイチャイチャしないの? ヤらないの? てっきり英気を養うのかと思ってたけど」

 と言ったのだ。

 隣でその発言を聞いてしまったスサンナとミネットが、すごく恥ずかしそうな顔をしていた。

 ……同じくそれを聞いていたヴァルマは嬉しそうにしていた。

「……だからハーレムじゃないって言ってるじゃないですか」

「まぁいいか。それじゃ、先導はよろしくね。うちらは何も言わないし何もしないから。もちろん、うちらに魔物が迫ってきたら対応はするけどね」

 シグネ団長達は四人。

 シグネ団長はランクがB。レンジャーという斥候みたいな遊撃みたいなポジションだ。

 シーリさんはランクCの魔導士。ミネットの先輩で魔導士としての先生みたいな人だ。ヴィータネンでも古株で、ノーラさんみたいなタイプの真面目な感じだ。

 スサンナはスピード系の前衛だ。マリアみたいな感じだろうか。ランクはDで、年齢もミネットに近くて相方みたいな感じらしい。

 ミネットはもちろん魔導士だ。ランクはDらしいけど、その実力は俺達が良く知っている。

 人数が少ないし、盾役となる前衛がいないので不安になるけど、シグネ団長の実力ならば大丈夫という事だろう。

「それじゃ行こうか」




「ふんふん……。今の所は問題ないみたいだね」

「そうですね……ランクCなら問題ないでしょうし、これならミネットも問題ないと思いますけど」

「で、でも! まだボスには行っていないし」

 うわー……。アキヒトさん達、昔よりすごく強くなってる……。かっこいいなぁ……。

 兄さん達が結婚をしたのは嬉しい事でした。冒険者を引退したのは寂しかったです。

 でも、ヴィータネンの人達に迎えて貰って、今は毎日が凄く楽しいです。

 それでも、私はアキヒトさん達のパーティに入りたいです。

 兄さん達と一緒も楽しかったですけど、兄さんと義姉(ローザ)さんは付き合う前からいい雰囲気でしたし、二人と一人という感じで少し寂しかったのを覚えています。

 アキヒトさん達と一緒のパーティになっていた時は楽しかったです。

 ゴーレムを前にした時のアキヒトさんは、カッコ良かったです。兄さん以外の男性と一緒に旅するのは初めてでしたし、召喚も上手なので憧れました。

 そんなアキヒトさんが私に会いに来てくれて、とっても嬉しいです。すぐにでもパーティに入りたい気持ちもありますけど、ヴィータネンの人達……特に仲良しのスサンナさんと別れるのも辛いです。

 今だけなら……今だけなら、アキヒトさん達とヴィータネンの皆さんが一緒です。

 ……アキヒトさんもヴィータネンに入ればいいんですけど……。あ、でもそうなるとみんなとも仲良くなっちゃう?

 そ、それは駄目です! ただでさえ、アキヒトさんの周りには綺麗で可愛い女性ばかりなんですから……。

 マリアさんは可愛いし、強いし……。アルルちゃんは妹みたいで守ってあげたい可愛さがあるし、カタリーナちゃんも妹みたいだけど、しっかり者って感じで可愛いし、それになんと言ってもヴァルマさん。あの胸は反則です……。

「ミネット、どうしたの? 疲れた?」

「ううん、大丈夫です、スサンナさん」

「そう? ほら、前が進んだみたいよ」

 私じゃ……入りこむ隙、ないです?




 なるほど。このダンジョン。そんなに広くもないし、出てくる敵も厄介とはいい難いのばかりだ。

 これならイヴァン達と挑んだワーズヴェシンのウィルワーズのが厄介だったかもしれない。まぁあの時とは状況が違う訳だけどね。

 一度に出てくるのが、多くても三匹ほどなので、マリアとアルルとベアルカスで十分に対応可能だ。

 ヴァルマは後方で待機して貰っている。正直、ヴァルマではこのダンジョンが力不足だろう。ソロで難なく最下層まで行けるだろうし、逆に俺達がお荷物みたいなものだ。

 だけど、その力は秘密だ。ヴァルマも変に目立ちたくないのか、結構強い近接職という役で、俺やカタリーナの護衛をして貰っている。

 全一○フロアのうち、始めの一日で三フロアをクリアする所までこれた。このペースなら、三日でボス手前まで行けるだろう。

 出てくる敵の数は少なく、厄介ではないとはいえ、個々の強さはウィルワーズのそれとは比べものにはならないはずだ。

 そう考えると、俺達――比較できるのは俺とマリアだけだけど、強くなったんだなと実感できる。

 能力値の数値上では強くなっているけれど、やはり実戦で確認出来るのは大きい。

「今日はこの辺までにするか」

「今四フロアかしら。サクサク進めちゃうのね」

「それじゃ夜営の準備を致します」

「あ、私も手伝うわよ。アルル」

「ふむ……ではわらわは……警戒でもしてようかの。必要なさそうじゃが」

 ダンジョンまでの道中で夜営の準備も慣れたものだ。

「おやや? 今日はここまでかい?」

「えぇ。初めてのダンジョンですし、少し余裕を持って進もうかと」

 夜営の準備をしていると、俺達よりも少し後方を歩いていたヴィータネンの人達が合流をしてきた。

 最初に宣言した通り、ヴィータネンの人達は何の助言もしなかった。

 こっちの道のが近道だよ、とか。

 その魔物はどこそこが弱点だよ、とかだ。

 戦闘はもちろん、ダンジョンの進み方も見られているのだ。

「よし、それじゃうちらも準備しますか。シーリちゃんはご飯よろしくね!」

「団長も料理覚えた方がいいですよ?」

「私はみんながご飯作ってくれるかいいのだよ」

 この数日で分かった事がある。

 全員が女性のヴィータネンだけど、女性っぷりが一番薄いのが団長ということだ。

 料理はしない、というか壊滅的に下手らしい。テントなどの準備は得意だけど、料理は専ら他のメンバーの役割のようだ。

 今いる中では、シーリが料理役に収まっている。スサンナやミネットはその手伝いといったところだ。

 俺は普通に出来るくらいと思っている。マリアは神クラスだ。アルルとカタリーナは勉強中で、ヴァルマは料理をしたことが無い。

 そう考えると、うちらも人の事は言えない。

「明日は八フロアを目標にしとくか」

 三日目でボス手前まで行って、そのまま帰路。帰りは道も分かっている部分も多いし、魔物も倒しているので、スピードは上がるだろう。

 三日目で一気に六フロアくらいまでは戻っておきたい。

 これまでなんだかんだでボスクラスとの遭遇、そのまま戦闘になっていたけど、さすがにここでは予定通りにいきたいものだ。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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