01 ウィック大陸と杞憂なパーティ
ウィック大陸。
南に位置している大陸。大陸といっても大きな島であり、他の大陸よりは小さい。周りが海に囲まれているため、港町が多い。
この大陸の特徴は、なんと言っても国のトップが女性という事だ。
そのせいもあるのか、女性の権利が強い。これは王都に近いほど強く表れている。
強いと言っても、男性が奴隷のような扱いかと言われれば、そうではない。
税が安かったりレディースディのような、女性が得するのが当たり前だったりするものだ。それだけだが、男性は肩身が狭く、住みにくいと言われている。
中には恋人や伴侶を求めるやハーレムを夢見てくる男性もいるが、多くは女性に打ちのめされて帰っていくパターンが多い。
女性に認められればそうではないのだが、モテるためだけにと勘違いしてくる男性は後を絶たない。
もちろん、この大陸でも奴隷制度はあり、女性の奴隷も存在する。
女性の権利が強いといっても、罰や借金などを抱えた女性は当然奴隷に堕ちる。
その奴隷の女性を購入すれば、伴侶やハーレムも可能にはなる。といっても、それは主人と奴隷という立場で成り立っているため、一見ハーレムに見えても、周りの視線は冷たい。
と、いうのが、俺がトーダで聞いたウィック大陸の情報だ。
王都はドックトン。大きな街で冒険者も多数いる街だ。イヴァン達のパーティが、この街に着たという記録が残っているらしいので、向かうべきはここだ。
女性の国と言っても過言ではない国。そんな国だ。男である俺は注意していかないといけない。
そこ問題となるのが俺のパーティなのだが。
まずは俺こと社昌人。不遇と言われる召喚士だけど、日本の教育の賜物の漢字、アニメやゲームで培った知識を駆使して、高難易度と言われる創る召喚――創造が得意だ。
何故か魔力が馬鹿高いから、そのせいもあって色々と創ったりも出来るけど、やっぱり一度に沢山召喚をするのは、頭が疲れる。
魔力以外は……人並みだ。
次はマリア。
どっかの爺さんが創造で創った彼女を司る召喚獣で、料理や掃除などが得意だ。
外見も素晴らしく、歳は見た目からすると一五歳くらいの普通の女の子にしか見えない。学年で一位二位を争うくらいの美少女で、普段着は学生服のような落ち着いた物で、二―ソが眩しい。
身長も胸部も年相応といったところだろう。
武器はレイピアで、素早い動きと正確な攻撃を得意にしている。反面、魔力は少なく魔法は使えない。俺が創ったイージスの盾を展開装着することで、並み以上の攻撃力と、世界最強レベルの防御力を得る事が出来る。
続いてアルルだ。
グーベラッハで購入した、俺の奴隷だ。人族ではなく獣族だが、獣耳と尻尾を生やしている点を除けば、普通の人間と変わらない。
マリアよりも全体的に二回りほど小さく、見た目も服装も元気で、普段はショートパンツを履いている可愛い小学生のような感じだ。
武器は手甲で、獣族の力強い一撃とスタミナで前線を維持するファイターだ。おまけに耳と鼻もいいので、斥候のような事も出来る。
次にカタリーナ。
グーベラッハで出会った活発な女の子だ。
色々あって、元貴族になり、元々冒険者というか強い女性に憧れていたところを、命の恩人プラス騎士のようなマリアの姿に惹かれて、俺達のパーティに加入した。
弓と攻撃魔法――特に氷が得意な後衛だ。俺達の中では一番普通と言える……はずだ。
アルルよりも少しお姉さんといった感じだが、元貴族だけあって、真面目な時の発言や振る舞いは真面目なお嬢様といった所だ。もちろん、それに見合うだけの可愛い見た目もしている。
俺とはあまり仲良くはなく、マリアと俺が親しげに会話していると、軽く睨んでくるような視線も感じている。
最後にヴァルマだ。
一番異質な――龍人だ。かつてエルフの里周辺で大暴れしていた龍だけど、俺達との戦いで負った傷を癒すために人型の形態に変化。そして世界を旅したいという事で俺達のパーティに加入した。
だが、その目的は、異常な魔力と創意工夫をする俺に関心があり、俺と……子作りとするのが目的という事らしい。
男としては嬉しい限りだ。なんと言っても、ヴァルマは綺麗なお姉さんで、グラビアアイドルも霞むほどのプロポーションだからだ。
だけど、じゃあ早速という訳にもいかない。同じパーティである以上、節度ある付き合いをしないといけないし、何より俺にそんな度胸はない。
改めて見ると、俺のパーティは異質だと思う。
まずは男が俺一人という点だ。今までも男一人というのは少し寂しかったけど、ウィックでは事情が異なってしまう。つまり、周りからはハーレムと認識されてしまう。
別にハーレムでもないので、変に誤解されてしまうと困ってしまうし、それで何かいちゃもんとか付けられても困る。
俺が強ければそれでいいけど、俺は召喚士。世間では不遇で弱いとされている召喚士だ。なので、召喚士にハーレムは似合わないとかなんとか言われそうだ。
それに、女性みんなが美しい。
マリアは美少女。アルルとカタリーナは可愛い女の子。ヴァルマは綺麗なお姉さん……誰がどう見てもハーレムだ。嬉しいけれど、この状態で……ヴァルマの加入によって拍車が掛かったこのパーティでウィック大陸に行く事になるのは想定外だった。
ウィック大陸に向かっているこの船上でだって、既に値踏みするような視線と、ヒソヒソ声を受けている。
この世界に来て初めての海と船で感じる風の快適な船旅の中、そういった色々な事情からの不快な船旅を終え、船は無事にウィック大陸へと到着した。
着いた港町で、仕入れた情報通りのウィック大陸の姿を見る事ができた。
さすがに船員には男性も数名いたが、港町では見る限りは女性しかいない。
積み荷を降ろすのも女性。どこかに運ぶのも女性。露店で呼び込みをしているのも女性。何か買い物をしているのも女性……といった具合だ。
その中でも数少ない男性は、俺達のように他の大陸からウィック大陸に来たこの船の乗客と、ウィック大陸から他の大陸に出発する船に乗ろうとしている乗客の列にしかいない。
後者は……表情も暗く、涙目になっている男性が多いように見えるので、ハーレム夢破れて退散する人達なのだろう。
……俺達というか、俺は違う。おれはハーレム目的ではないし、そもそもハーレムでもない。
ただのパーティ仲間だし、この大陸にだってイヴァン達と合流するために来たのだから。合流してからは考えてないけど、さすがに俺とイヴァンで、パーティ内に男性二人もいれば、ハーレムとかなんとかという事もないだろう。
なので、しばらくはこの大陸で冒険者業をするのもいいかもしれない。まぁその辺はイヴァン達と相談だな。パーティの人数も超過してしまうことだし。
「それにしても……聞いてはいたけれど、女性が多いわね」
「そうですね~……」
「ここは冒険者は少ないみたいですね」
「船というのは初めてじゃったが、いいものじゃったの」
女性陣にとっては、この国はまさに天国なのだろう。
その証拠に、何故か男である俺だけ入国金という名目でお金を徴収された。
他にも、食べ物や飲み物といったものも男性は割高だし、そもそも男性お断りという看板のある店もある。女性同伴ならOKという店もあるけどね。
まぁ確かに女性にとってはいい国だけど、今のところ俺も悪い気はしていない。確かに俺は割り高ではあるが、現状お金は十分にあるし、マリア達は割安なので、むしろパーティ全体で見れば他の国よりも安いくらいだ。
そういう点では、この国はありなのかもしれない。野郎オンリーや、多いパーティでは苦労しそうだけど、所謂ハーレムパーティならば住みやすい国と言えるだろう。
ハーレムを形成できてれいればの話だけど……。
「それじゃ、王都ドックトンに行こうか」
「ローザやミネットは元気かしら……」
「アキヒト様とマリア様の、元パーティの方々ですよね?」
「あぁ、元々別々だったけど気が合ってな。色々あって今は別れているけど、やっと合流出来るからな。そうなったら、パーティを分けないといけないけど……」
「アルルは構いません……。アルルは奴隷ですし……」
「私はマリアお姉様と一緒じゃなきゃイヤですよ」
「わらわもアキヒト殿と一緒でなければの。まぁ帰りも待つというのも、それはそれで良いがの」
イヴァン達と合流すること、人数が増えてしまうので、パーティを分割しないといけない事などは説明済だけど、未だに解決はしていない。
俺とマリアは主と召喚獣の関係があるので外せない。
カタリーナはマリアと一緒が良くて、ヴァルマは俺と一緒が良いという。アルルだけは引くというけど、アルルは俺の奴隷だし、俺と一緒の方だいいだろう。
となると……この五人で固まるしかない訳になる。
だけど、イヴァン達はイヴァンにその妹のミネット、二人の同郷のローザと三人組だ。
パーティの人数上限は六人。俺達五人にイヴァン達三人で……誰がどう見ても越えてしまうのだ。
……イヴァン達と合流してから決めるかな。
まずは王都、ドックトンだ!
ご意見ご感想があれば嬉しいです。
が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……




