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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
三章 ~エルフの里と封印竜~
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11 参戦と鉄壁の盾

 あっぶねぇ!

 なんでこうもいつもギリギリの展開なんだ。いやまぁ、それが盾の役目なんだし、間に合ったならいいんだけど。

 それにしても、防げてよかった。さすがにやばいかも? って思ったけどね。


 あの赤く熱いブレスの後。トーダの兵士達が物凄く慌てている感じだった。

 それもそうだろう。あのでかい強そうな召喚獣がやられて、龍はピンピンしているのだから。

 封印失敗ってことか? 隊長がやられたとか、副隊長に任せるとか、そんな叫び声が聞こえる。

 何でこうなった。

 相手は龍だぞ。ファンタジーの世界の最強格だ。オークなんかとは比べようがない。それなのに、何で俺は様子を見たいだなんて……。

 いやだって、封印されていたはずだろ? だからこうして来ちゃったんだし。いや、愚痴るのは後だ。まずは逃げないと……。

 だけど、俺の足が動く前に龍の行動の方が早かった。

 さっきと同じような魔力の集まりに、口に意識が向いている動作だ。

 まさか連発出来るのかよ……。必殺技は普通は連発出来ないものだろ? クールタイムなり、使用制限なりあるのが常識だ。

 ……いや、相手は龍だったな。常識なんて通じないか。

 龍の口はこっちには向いていない。というか、俺には誰も―― 龍でさえ気付いていないみたいだ。逃げるなら今の……。

 いやまて……。あの龍、どこを向いているんだ? どっちを攻撃するつもりだ?

 あの方向には……!

 まずい! もうブレスが来る!

 ……今度は熱くない? いや、そんなのどうだっていい。間に合え!

「防いでくれ、イージスの盾!!」


 結果的に間に合ったし、防げたしで良かったけど、どうしようか、これ。

 最初は見るだけのつもりだったし、さっきも逃げ出そうと思っていたのに……。

「えーっと、大丈夫ですか。ロベルタさん、カティ」

 龍の口がロベルタさんとカティに向いていて、無我夢中で前に出てしまった。

 とりあえず何が起こったか困惑気味なので、駆け寄って声を掛けてみたけど……。

「貴方は……アキヒトさん? なんでこんな所に? それにこの壁は一体……」

 混乱材料が増えてしまった。

「説明は後にしましょう。ひとまず逃げないと。立てますか?」

「私は平気です。カティさんも無事ですか?」

「ボクも大丈夫……。だけど何が起こったの?」

「詳しくは後。早く逃げないと、龍が来ます」

 またあのブレスが来るかどうかは分からない。さっきの熱いブレスの後に、そう間を空けずに冷たいブレスが来た。

 ……火と氷のブレスが出せるのか? 相場は火と思っていたけど、確かにアイスドラゴンっていうのもいたかな。ファンタジーでだけど。

 でも二つ出せるなんて……。二属性って奴なのか? 魔法なら複数の属性が使えるらしいけど……。でも火と氷って、相反するだろうに。どういう身体してるんだ。それとも龍ってそういうもんなのか?

 ともかく。そういうのは後だ。

 一撃は防げたけど、次はどうか分からない。一応、イージスの盾は問題無く機能していて、周囲も守ってはいるけれど、ずっとこのままという訳にもいかない。

 俺の魔力が尽きれば消えてしまうし、ずっとブレスを耐えられるかどうかも分からない。

「ほら早く。ロベルタさんも今のうちに逃げましょう」

「私は逃げる訳にはいきません。あの龍をこのままにしてはおけませんし。……貴方達だけで逃げて……」

 確かに龍はこのままにはしておけない。だけど打つ手はあるのだろうか。

「……アキヒトさん。あの壁は貴方の力と見込んで、お願いがあります。力を貸して下さい」




「今の音は……!」

「……何かが燃えている音がします!」

「急ぎましょう、マリアお姉様、アルルちゃん」

 アキがいる方向。その方向から大きな魔力と大きな音、それに大きな力を感じたわ。

 召喚獣であるワタシは、人間よりも五感多少優れているはずだけれど、獣族であるアルルには及ばない。でも純粋な人間であるカタリーナも何かを感じたみたいね。

 それほどの()()。アキヒトの方向にいる()()。龍云々って、まさか……。

「んもぅ! アキは一体、何をしているのよ!」

 守るって誓った。守ってくれるって誓ってくれた。それなのに、今のワタシは何をしているのだろう。

 こんな事になるなら、アキを一人で行かせなければ良かった。

 今のワタシに出来るのは、ただひたすらにアキの所に駆けるだけ。……アルルもカタリーナも一緒にね。

 また大きな魔力と大きな音……! アキは……大丈夫みたいね。うん、アキなら大丈夫。だって、アキはワタシの主だもん。




「お願い、ですか?」

「はい。あの龍はこのままにしておけません、再度封印を施します」

 この状態から封印出来るのか。封印出来るならそうしたい所だけど、難しいんじゃないのかな? あのブレスが飛んできたら、避けるのも一苦労だし、防ぐのだって……。

「ですが、あのブレス。あれは厄介という代物ではありません。防ぐ事は実質不可能、でした。しかし、アキヒトさんのあの壁。あれなら防ぐ事も可能、ですよね?」

 確かに防げました。でも俺だって早く逃げたいんだ。だから、ロベルタさんもカティも……。

「お願いです。トーダの国に仕える一人の兵士として、貴方に依頼します。私が封印をしている間、私達を守って下さい」

 封印の召喚獣を使えるのは、隊長と副隊長のみ。隊長は気を失っているため、今動けるのは副隊長であるロベルタさんだけ。

 だからロベルタさんが封印を施し、その他の兵士が龍を抑える。その間の攻撃――最優先はブレスを俺が防ぐという作戦のようだ。

「カティやエルフの長老はどうするんですか?」

 エルフがどのくらいの力を有しているのか知らないけど、少なくともあの龍に相対する力量があるとは思えない。

 俺は仕方ないとして、この二人は避難させたほうがいいのではないだろうか。

「……長老さんは残るそうです。カティさんは、他の隊員に頼んで避難させます。いいですね、ハハリ さん、カティさん」

「うむ。カティは逃げなさい。ワシは見届けねばならん」

「……ボクも……カティも残るよ!」

「いけないよ、カティ。お前は生きて……今日の事を伝えなければならない。龍に手を出しては駄目だと。それがエルフが出来る、今我々に出来る唯一の事じゃ。頼む……」

 なんとも言えない空気だ。どっちの気持ちも分かる。孫を生かし逃がしたい長老と、一緒に残りたいカティ。

 だけどさ。

「カティ。早く逃げるんだ」

 龍が俺達の事を待ってくれるって訳じゃないんだよね。

 ブレスが来る気配はないけど、イージスの盾の向こうで大きく咆哮しているのが聞こえる。

 自慢のブレスが防がれた事に苛立っているのか?

「ロベルタさん。俺は防ぐので手一杯です。ブレスは防ぎます。それでいいなら、守ります。長老さんも守ってみせます。だからカティ、君は逃げるんだ」

 ロベルタさん達も長老も、みんな守ってやる。それなら何も問題ないだろ?

「でも……」

「誰か。カティさんをお願いします。上に残っているエルフがいたら、冒険者と協力して避難を。その他は龍に攻撃を!」

 ロベルタさんが声を掛けると、兵士が颯爽とカティを連れて階段へと向かっていった。

 それもそうか。逃げる口実が欲しい兵士もいたって事だろう。ちゃんとした理由で逃げる事が出来る訳だからな。

 さて……。龍はどうしてるかな。

 このイージスの盾。性能は文句無しだけど、一見ただのでかい壁なので、向こう側が見えないっていうのが欠点だ。

 魔力の集まりもないし、他の兵士達が攻撃を開始しているみたいだし、まだ俺の出番はないだろう。

 カティも無事に逃げたし、ブレスが来たら防ぎますかね。

 ……っと、いきなりブレスか! 本当に常識外れな生き物だな。こんだけ乱発されると、困っちゃうぜ。

 まぁイージスの盾ならば問題なく防ぐ事が出来るから、ブレスは相手が消耗するだけになる。……もちろん、俺が毎回防げればの話だけど。

 さて、どこだ。どこを狙うんだ? 魔力の集まりと位置、それに口の動作で狙いが分かるのが救いだけど……。

 ん? あいつ、誰もいない方向を狙っている? 近くにいる召喚獣達でもなく、少し離れた位置にいる兵士達でもなく、もちろん俺でもない。

「どっち向いてるんでしょうか、あの龍」

「……さぁ? 混乱でもしているのでしょうか。それとも疲れている? どちらにしろ、好機です。暴れられると封印は出来ませんが、あのブレスはさすがに消耗が大きいのでしょう」

 封印のために俺のそばで待機しているロベルタさんにも、あの龍の考えは分からないみたいだ。

 ……あの方向……。

「そうか! まずい、このままじゃ!」

「アキヒトさん、何を?」

 あの龍が向いている方向。それは……。

「……くっ。間に合わなかったか」

 さっきカティが向かった先。龍が狙ったのは。

「階段が……。まさか、あの龍はこれを狙って?」

「すみません……。盾が間に合いませんでした」

「いいえ。まさかここまで知能があるとは思っていませんでしたので……。これで封印しないと戻れなくなりましたね……」

 混乱? 疲れている? とんでもない。意図的にやったのだとしたら、あの龍はとんでもない奴だ。

 炎のブレスを直撃した階段は、階段としての機能を失っていた。これで俺達はここから逃げられなくなった訳だ。

 壁を登るなり、階段を復旧するなりすれば逃げられるけど、あの龍がそれを許すはずもないだろう。

 これは……俺も逃げておけばよかったかな……。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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