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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
三章 ~エルフの里と封印竜~
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09 報せと分裂

 サブナックの風の人が行ってからどれくらい経ったろうか。 依然、外は騒がしいままで、マリア達も不安なのか落ち着きが無いように見てる。

 このままではらちが明かない。

「サブナックの人帰ってこないし、俺も様子を見てくるよ」

「大丈夫なの? アキ」

「それを確かめにいくのさ」

 騒がしいだけで、何が起きているのか不明だが、さすがに危険はないだろう。

「それじゃ行ってくるよ。皆は待っててね」




 さて、この騒ぎは何だろうか。経験と勘からして、いい騒ぎには思えない。良くて俺達のパーティの誰かダッシュ大方大剣野郎が問題を起こしたとかだろう。

 しかしそれにしては妙だ。パニックというか威圧というか、そんな空気を感じる。

「ん? あれは確か、トーダの国の兵士だったか。何をそんなに慌てているんだ?」

 ちゃんと顔合わせをした訳ではないが、道中見た事がある顔だった。何より、ここエルフの里にいる人間と言えば、今回の護衛関連しかいないだろう。

 向こうがこちらに気付いた風な感じで近寄ってくる。

 俺に――いや、冒険者に用か?

「す、すみません……。ぼ、冒険者のかた、ですよね?」

「そうですが、何をそんなに慌てているんですか?」

 よほど慌てているのか、息が荒い。何事も無ければ、こんな慌てる事もないだろう。つまり、何があったという事だ。

 そして、兵士が慌てているという事は……。

「今すぐエルフ達の避難と本国に連絡を。龍が……龍が復活しました!」

 最悪の事態だ。




 エルフの里に来た時からなんか違和感というか、居心地が悪いというか、こんなに自然豊かなのに空気が悪いというか。そんなのを感じていた。

 そして俺は今、その気持ち悪い方向に向かっている。

 サブナックの風の人は見つからない。

 マリア達も心配しているだろうし、誰かに事情を聞きたいんだけど、来るエルフ来るエルフは取り乱していて、会話にならない。

 なので彼らが来ている方向に向かっている訳だ。

「しかし……何だこれは?」

 ずっと感じていた何か。それがさっきから大きく膨れ上がっているのを感じる。

 この感じは……召喚獣に似ている。マリアよりも、俺が使っている召喚獣のどれよりも遥かに大きな存在だ。

 封印の儀式とやらのために、召喚しているのだろうか。

 ……それにしては何か嫌な気配だ。


 結局、サブナックの風の人にも会えず、事情も分からないまま、その召喚獣らしい気配の場所まで来てしまった。

 さすがに封印の儀式の邪魔になってしまうだろう。仕方ない。戻りながら考えるとするかな。

 ……少しくらい、見てもいいよね? だって龍だよ? 封印されているし、覗くくらいなら……。ダメなら兵士さんが止めてくれるはずだしね。

 その兵士さんもいないみたいだし、ここはまだ平気なんでしょ。

 さーてと。あれ、下に降りるのか?

 なんかすり鉢状というか、ちょっとした盆地みたいになってるのか?

 神殿とか祠とかが建てられてるのをイメージしてたんだけどなぁ。

 ……お、階段だ。降りるか。

 それにしても、下に見えているのが龍なのかな。大きいなー。

 段々と降りていくと、違和感に気づく。

「あれ……。あの龍、動いてね?」

 封印の儀式とやらで、龍が動いてしまうのだろうか?そんな事は言ってなかったと思うけど。

 動いてるけど、実は弱まってるとかかな?本気の龍はヤバイらしいし、きっとそうなんだろう。

 しかし、見張りとかいないのかね。虹隊の人達がやるんじゃないっけ?サボり?

 ……もう少し進んでみるか。封印の儀式にも興味あるし。




「皆いるか!」

 トーダの兵士から聞かされた龍復活の報告。それを聞いてすぐに小屋へと向かった。

 一大事である。万が一、何かあった時のための俺達。その万が一が起こってしまったのだ。

 やるべき事は、エルフの避難誘導とトーダへの連絡だ。どちらも重要である。

「どうかしましたか、リーダー」

 小屋に戻ると、いつの間に戻っていたのか、散歩していたはずの三人が戻っており、全員が集合していた。

 何かを感じ、集合してたか。何だかんだで、やはりいいメンバーだ。

「さっきトーダからこの騒動の訳を聞いた。結論から言えば、有事だ」

 集まっていたメンバーに、今回の護衛の目的ダッシュ龍の事について説明し、それが復活した事を告げた。

「龍……ですか。なんかヤバイ系と思ってはいましたが」

「それで、どうするんですか?エルフの皆さんを避難させるのと、トーダに連絡でしたっけ?」

 避難誘導と連絡。どちらも重要だが、さてどう分けるか。

「あれ、向こうのパーティはこの事知っているんですか?」

「む。そういえば伝えてなかった。向こうと相談するとしよう。少し待っていてくれ」

 そうだった。この騒ぎの理由を調べて、向こうのリーダーに伝えるって言ってあったな。今も待っているに違いない。

 それを忘れるとはな。さすがに動揺していたのかもしれない。


「ザフナックの風の者だ。待たせたな」

 有事で動揺しているとはいえ、ノックは忘れない。うちらもだが、女性がいるパーティだと余計に必要なマナーだ。

「ん……?」

 反応が無い。向こうのリーダーがいるはずだが……。

 お、ドアが開い……。

「えっと……。何か用かしら?」

 出てきたのはリーダーではなかった。確かメンバーの女性だったか。

「ザフナックの風の者だ。そちらのリーダーに話があるのだが……」

 てっきりリーダーが出てくると思っていたが、何かの作業中だろうか。

「アキなら、外の様子を見てくるって出て行ったわよ」

「何?! クソ、どこかですれ違ったのか」

 そんなに時間が経ったとは思えないが、待っていられなかったか。こうゆう時は個別行動は避けた方がいいのだが、やはりまだ経験が浅いパーティか。

「ねぇ。何があったの?」

「……封印し直そうとしていた龍が復活したらしい。一刻も早くフォローしなければならないのだ」




 アキが様子を見てくるといって外に出て行って、まだそれほど経っていない時。ドアのノックする音が聞こえたの。

 アキならノックはしないだろうし、ならお客様かしら? でも誰かしら……。

「ザフナックの風の者だ。待たせたな」

 サブナックの風。確か一緒に護衛任務を受けていたパーティよね。

「えっと……。何か用かしら?」

 パーティ同士での交流とかかしら? でも仕事だけの付き合いみたいな感じじゃなかったかしらね。

 どうやらアキに用があるみたいね。……何かあったのかしら。

「ねぇ。何があったの?」

 外はまだ騒がしい。ここにいては何が起きているか分からないけれど、でも今は待つしか出来ない。

 それでも、今目の前にいる人は何か情報を持っているみたいね。

「……封印し直そうとしていた龍が復活したらしい。一刻も早くフォローしなければならないのだ」

 龍……。そうなのね。それが今回のトーダの目的だったのね。龍なんてものは見た事はないけれど、それでも強敵と言うのは知っている。

「役割は二つだ。エルフの避難誘導と、トーダへの連絡だ。で、誰をどうするかを決めたいのだが……リーダーの居場所は分かるか?」

 そうね。エルフ達を逃がすのとトーダに連絡しないといけないのね。

 アキの居場所……。召喚獣であるワタシなら、その契約者であるアキの居場所は分かる。それにパーティなら場所もなんとなく分かるはず。

 アキのいる場所は分かるけど、その場所がどんな所かまでは分からない。

 ワタシは、言い様のない不安を――。

「……ねぇ。その龍ってどこにいるの?」

「龍か? すまない。場所までは分からんが、伝えに来てくれた兵士は……あっちから走ってきたな」

 指挿された方向は、ワタシが思っていた――思いたくなかった方向だった。

「アキ……!!」

「あ、おい! どこに行くんだ!」

「マリア様?」

「マリアお姉様?」

 ワタシは止めるのを無視して、指挿された方向に、アキがいる場所へと駆ける。

「おい、ちょっと待て! 全員かよ!」

 後ろからアルルとカタリーナが来ているのが分かるわ。追いかけているのか着いてきているのか分からないけど、たぶん後者よね。




「全く……。なんだっていうんだ。はぁ、どうしたものか」

 向こうのパーティ――リーダーはいなかったが、メンバーには騒動の訳を伝える事ができた。そして兵士が来た方向、恐らくは龍がいる場所だろうが、そこを示した途端にその方向に走っていってしまった。

 しかも一人ではなく、メンバー全員でだ。

「仕方ない……。恐らくリーダーを探しにいったか、エルフの避難に向かったのだろう」

 ならばこちらはトーダへの連絡に人員を割くとしよう。

「戻ったぞ」

「お帰り、リーダー。向こうはどうだった?」

「あぁ……リーダーは不在だったが、エルフの避難に向かったぞ」

「それじゃうちらはトーダに戻るの?」

 全員で行ってもいいが、それでも速度が劣る。少数で行ったほうがいいだろう。

 それに……エルフの誘導だけで済めばいいが、仮に避難が難しい事態になった場合は、覚悟を決めるしかないが、果たしてそれでいいだろうか。

「あぁ、そうだな。出来るだけ早いほうがいいだろう」

「んじゃ準備するかぁ~。はぁ、結局エルフ娘と遊べなかったなぁ」

「いや……。そこで皆に相談なのだが、パーティを分けようと思う。トーダに戻る組とエルフの誘導に向かう組だ」

 エルフが何人いるか分からんが、冒険者が多いに越したことはないだろう。

「まぁ護衛対象なしでトーダに戻るくらいなら、全員じゃなくても楽だろうけど……。でも避難誘導ってことはさ、龍とその……」

「あぁ。最悪は対峙する可能性もあるだろう。それを踏まえた上で、だ」

「……残ります!」

 俺を一番慕ってくれている片手だ。気概はいい。しかし。

「勝手ですまんが、俺が選ばせてもらうぞ。……この三人だ」

 片手に魔法組の女の子二人の三人がトーダに戻る組。残りの俺と大剣に短剣の三人だ。

「なんでですか、リーダー! 俺も残ります!!」

「いやだめだ。魔法や召喚があれば、移動も楽だろう。そしてお前はトーダに戻るこの二人を守って欲しい。盾を分散するのは当然の事だしな」

 人選は最も理由を付けたが、簡単な事だ。若いメンバー三人をトーダに戻す。道中ももちろん危険だろうが、龍よりはマシだろう。それに魔法や召喚があれば、道中の相手には手間取らないだろう。

「二人には済まないが、俺と一緒にエルフを救うぞ」

「ふーん、なるほどね。分かったよリーダー。じゃあ残り組の俺は、頑張ってエルフちゃんを救いますかね」

「……御意」

「ほら、お前ら! 時間が惜しい。早く行動だ、いいな! 三人も十分気をつけてな」

「……はい、リーダもお気をつけて……。その、トーダに連絡したら、絶対に戻ってきますから!」

「……あぁ。待ってるさ」

 俺に出来たのは、うちらの三人を守ることだけだ。

 向こうのパーティも全員若かったな……。女性も多かったし、向こうのパーティにトーダに戻って欲しかったが、それも今となっては無理だな。

 出来れば龍とは対峙したくないものだが……。出てきたら守る事にしよう。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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