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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
三章 ~エルフの里と封印竜~
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05 行軍とエルフの里

 途中の村を出発してしばらく。

 俺達を含むトーダの国兵士一行は、エルフの里へと向かう森の中を進んでいた。

 エルフの里までは、この森を抜けるしかないらしい。

 グーベラッハからトーダまで、ここの大陸を二分するかのような――まるでカタカナのノの字のような 山脈が続いていたが、ここは丁度ぽっかりと山が低くなっている。

 もちろん山を越えればエルフの里がある側に行く事も可能だが、山を越えるのは容易ではない。なのでエルフの里に行くには、ここの低くなっている森を進むしかない。

 といっても、エルフの里に行く人間はいない。途中は木々で天然の迷路となっており、魔物や獣、さらに人間を遠ざけるような仕掛けもあるらしい。

 なので、この森を通るのは、専らエルフだけという訳だ。

 そのエルフだけしか通らないという森を、俺達は進んでいる。

 大丈夫なのか? と思ってしまうが、そこでカティの出番となる。エルフであるカティがいる限り、俺達は迷うことなくエルフの里に迎えられるらしい。

 といっても、獣や魔物には出くわしてしまう、そのための俺達である訳なのだ。

 ちなみに、エルフであるカティ独りなら、獣や魔物に遭遇する事なく、この森を進むことが出来るらしい。その点では、俺達は足手まといと言えてしまうが、それは仕方のない事だ。


 先頭はサブナックの風だ。その次に四神隊副隊長の部隊にカティ、四神隊隊長の部隊に虹隊隊長の部隊、そして殿に俺達となっている。

 これまでの街道とは違い、馬車を使う事は出来ない。平坦な森なら馬だけでも使えるかもしれないけど、微妙な勾配がある山なため、馬のみも厳しい。

 今回のエルフの里への援軍は、召喚が(かなめ)のようなので、四神隊の護衛が最優先だ。

 護衛と言っても、彼らにも戦闘能力はあるので護衛の必要はないが、いかに彼らを戦わせないかが今回は重要なのである。

 俺達からは分からないけど、何回か進行が止まり、戦闘音が聞こえる事があった。前では戦闘が行われているのだろう。

 一応、俺達も警戒はしているが、こっちには魔物は来ない。サブナックの風に頼りっきりだ。

 休憩の時に交代を申し出てみたが、問題ないという返答だった。

 これでは俺達が何もしていないように見えてしまう。

 いや、魔物が来ない事はいい事だけど、この場合は少し来て欲しい。魔物さん、空気読んでくれ。

 そんな俺の思いが聞き届けられたのか分からないけど、ついに魔物と邂逅した。


「キキー!」

 まるで猿のような魔物だ。

 だけど、手足と尻尾が異様に長い。手足長猿とでもいうのだろうか。

 その猿は手足と尻尾を器用に使い、木々を飛び歩き、隊の後方に位置する俺達を強襲した。

 最初に気付いたのはアルルだ。

「何か……近づいてきます。速いです!」

 耳をピクピクと動かして。

「上です!!」

 そう言うや否や、何かが木から飛び襲ってきたのだ。

「キキー!」

 猿が二匹。

 マリアを襲った猿は、長い手を槍のように突き出し、マリアがいた場所を突き刺した。

「ふっ!」

 アルルを襲った猿は、長い脚を鞭のようにしならせ、アルルを筆頭に俺達を薙ぎ払おうとした。

「ぐっ!」

 マリアは寸前の所で槍を避け、アルルは手甲を盾のように構えて鞭を止めた。

「うお! アルル、怪我はないか?」

「あ、ありがと、アルルちゃん」

「私も平気、です」

 アルルがマリアみたいに避けていたら、薙ぎ払われた鞭が横にいた俺とカタリーナを襲っていただろう。

 アルル、グッジョブだ。

 強襲が失敗に終わった猿達を観察する。

 二匹だ。後一匹いれば目と耳と口を隠したい欲求にもかられるが、あれは魔物だ。手長猿という猿が実在するのは知っているけど、足までとなるとさすがにどうだろうか。さすがはファンタジーな世界である。

 どのような攻撃手段を持つのか知らないが、さっきの攻撃のようにあの長い手足と尻尾を使っての強襲と物理攻撃だろう。アルルが防げた事から、攻撃力は高くないのだろう。スピード重視の森のハンターと言った所か。

 敵は二匹。俺達は四人。戦力は倍だが安心は出来ないだろう。何しろ初見の魔物だ。まずは支援を十分にしてから、見に徹するのがベストだろうか。それとも先手必勝で仕掛けるのがいいだろうか。

 護衛対象を守るのはもちろんだけど、最悪の時は俺はマリア達を優先してしまうはずだ。

「おサルさんね……。可愛い……くないから容赦なく行かせても貰うわ、よっ!」

 攻めあぐねている俺を尻目にマリアが突出する。

「あ、おい! マリア!」

 防御を固めればマリアでもダメージは被らないだろうと結論を出して、ノームにお願いしようとしていたのに、マリアが攻撃に走ってしまった。

 いくらマリアでも、独りで突っ切るのは無理だ。あの猿は動きが速そうだし、この森の中では奴らに地の利がある。

 マリアがレイピアを構え、猿に向かって一直線に突進をする。小柄な身体なのに、それはまるで猪を彷彿とさせる勢いがあり、力強く感じられた。

 見とれていたというのが正しいだろう。気が付いたら、マリアのレイピアが一匹の猿の頭を貫いていた。

 マリアがレイピアを引き抜くと共に、もう一匹の猿がマリアに襲い掛かる。

 槍のように、鞭のように手足と尻尾を器用に使い隙の無い攻撃を仕掛けている。敵ながらあっぱれな怒涛の攻撃であるが、それ以上に圧倒させられるのがマリアだ。

 それら全ての攻撃を華麗に。踊るように躱しているのだ。

 凄い猛攻だが、さすがに疲れたのか、猿の動きが一瞬止まった。

 そのタイミングで、躱しに徹していたマリアが攻撃に転じる。

「せいっ! やっ! とっ!」

 掛け声と共に、レイピアが踊る。何度かレイピアが踊った後に残っていたのは、倒れた猿だった。

「まじか……」

「さすがです、マリアお姉様!」

 それにしても容赦がない。相手は魔物なんだけど、頭を一突きと全身を斬る攻撃だ。確かに美しい闘い方ではあったけど、その内容はかなりえぐいようにも思える。

 ……機嫌でも悪いのかな? 怒ると怖い、タイプ?


「凄かったな、マリア。怪我は無いか?」

「きちんと避けたからね、大丈夫よ?」

 なんか少しトゲがあるような感じだな。

「そ、そうか……。それじゃ先に進むか。もう大丈夫です、先に進みましょう」

 戦闘のため歩みを止めていた隊に、戦闘終了を告げる。

 それにしても……マリアは強いな。オークジェネラルの時にあんなだったかなぁ? こう、強みというか凄みというか、なんか迫力があったな。

 ……やっぱ機嫌悪い?

「なぁ……。なんかマリア怒ってる?」

 隣を歩いていたアルルにこそっと聞いてみる。カタリーナはまだ雑談できるような親密度じゃないし、本人に聞く訳にもいかないだろう。

「えっと……。多分、最初の攻撃の後に、アルルだけを心配したからだと思います」

 え? そんな事でか? だって見るからに、俺ですら完璧に躱しきったって分かっていたし、マリアなら大丈夫だろうって思っていたから、あえて聞かなかったんだけど。

「うーん。そうなの、か?」

「多分、です。アルルは心配して貰って嬉しかったですから」

 そういうものなのかな? 後でフォローしておくかな……。


 それからも何回か俺達が魔物と戦う場面があった。

 深い森に魔物。これではカティがいなければ、どこかで迷い魔物と戦っている内に疲弊してしまっていただろう。カティ様々だ。

 何日か歩いた頃、隊の歩みが止まった。また戦闘だろうか? それにしては少し様子がおかしい。戦闘音も聞こえない。

「どうしたんだろう?」

「何かあったのかしら?」

「前で誰かが話してますね……。カティちゃん?」

「着いたのではないですか?」

 しばらく待っていると、ロベルタが前から歩いてきた。

「ロベルタさん、何かあったんですか?」

「いえ、エルフの里に着きましたので、皆さんにも連絡をと。もう少ししたら中に入れますので、それまでお待ちください」

 どうやらカタリーナの推測が正解だったようだ。

 それにしても……人が住んでいるようには見えないんだけど、ここが里なんだろうか?

 少し待っていると、隊が進み始めた。

 ロベルタさんが立って誘導をしている。この人は副隊長という役職なのに、色々と忙しそうだ。四神隊の隊長とは顔合わせの時にしか会ってないけど、本当に出てこない人なんだな。

「さ、こちらです。中に入ったら少し打ち合わせを行うので、冒険者の皆様も出席して下さいね。あ、代表者の方だけでいいので、他の方は休める場所を用意してあるので、そちらで。後、一応皆様の事もお話ししてありますが、不用意に出歩かないでくださいね」

 救援のためとはいえ、人間である俺達が歩き回りのは危険という事かな。

「分かりました。じゃあ私が。里の入口はこっち、ですよね?」

「はい、そうです。ふふ、驚くと思いますよ」

 見る限り、里は無い。周りの森に溶け込むように、ただでかい木が意味ありげに二本生えているだけだ。

 不審に思いながらもその木の間を通ると……目の前には里が広がっていた。

「え? なんだこれ。結界、みたいな?」

「はい、そうみたいですね。外敵から守るために、エルフの里には結界が張られているようです。カティさんがいなければ通ることも出来ないみたいでしたけどね」

 目の前には里という表現が正しい風景が広がっている。田園風景というか、のどかな感じだ。家らしい建物も見えるし、住民らしいエルフもいる。

 そうか……。エルフの里なんていうのは、秘匿されているそれっぽい。まさにそれだった訳だ。

 森を通るだけでなく、入口も結界で守っているなんて、普通だったら絶対に入れない場所なんだな、エルフの里って。

 かなり貴重な経験になるのではないだろうか。

「みなさん無事に到着出来ましたね。では代表者の方……はい、私に着いてきてください。残りの方はこちらのエルフさんが案内してくれますので」

「それじゃ行ってくるから皆は休んでいてくれ。マリアは大活躍だったし、特にな」

「そ、そう? それじゃみんなで休んでましょうか。アルルにカタリーナ、行きましょうか」

「はい」

「行きましょう、マリアお姉様」

 さて、ここでの俺達冒険者の役割は、そう多くなかった気もするけど、打ち合わせというからには仕方ない。

 終わったら俺も休むかな。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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