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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
三章 ~エルフの里と封印竜~
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03 偉い人と指名依頼

「ステフェン伯父さん!」

「おぉ、カティじゃないか。どうした、こんな所にまで」

 扉の向こうはやはり謁見の間という感じの部屋だった。

 広い空間。大きめで豪華な椅子。強そうな兵士。そして、賢そうなエルフ?

「長老から手紙を預かってきたんだよ、これね」

「父さん――長老から?」

 どうやらあのエルフがカティの知り合いのようだ。オジサンと言っているから、親戚関係なんだろう、うん。

 それにしても俺達は置いてきぼりだ。謁見の間の主もいないみたいだし、あのエルフは椅子に座っていないから王様って事ではないんだろう。

 俺達はここにいていいんだろうか。数人いる兵士は我関せずだし。

「ふむ……。なるほど、ついに来たのか……。これは急ぎ王に報告を……」

「おーい、ステフェン。エルフの里から客が来てるって?」

 登場人物が一人増えた。気さくそうなおっさんだ。護衛らしい人を伴い、この部屋にずかずかと入ってきた。誰なんだろうか。あの偉そうなエルフオジサンも呼び捨てだし。

「王! またそのような格好で! きちんとした格好をして頂かないと困ります。それにそのような言葉遣いでは!」

「ステフェンはいつも細かいな。それで、その客人っていうのはこちらかい?」

 愕然だ。あのおっさんが王様のようだ。王様の固定概念が崩れる勢いだ。

 どこにでもいるおっさんだろ! 日曜日には赤えんぴつを耳に挿して競馬新聞を読んでいそうだし、コンビニでワンカップを買って晩酌を楽しんでる、そんなおっさんだろ!

「はぁ……。こほん。王、こちらはエルフの里から書状を届けに来たカティです」

「カティです。エルフの長老からの手紙を持って来ました」

「うんうん。エルフは見慣れているけど、若いな。一人で来たのか?」

「いえ、途中で冒険者の方々に助けて頂いて、ここまで護衛してもらいました。あちらにいるアキヒトさん達です」

 蚊帳の外だった俺達に突然に脚光だ。

「おー、君達か。ありがとうな。エルフはうちにとっては賓客だからね。それでステフェン、何かあったのかい?」

「はい、王。実はエルフの長老からあの件が……」

 と思ったらすぐに蚊帳の外だよ。俺達がここにいる意味はあるんだろうか。あぁそうだった。カティ護衛の報酬だったな。

 カティが持ってきたという手紙を受け取った王様らしいおっさんは、難しい顔をして読んでいる。

 ……もういいんじゃないかな、俺達。


「ふむ。まさかオレの代で来るとはなぁ……。それで、どのくらい猶予があるものなんだ?」

「すぐにという訳ではありません。長ければ数年は持ちますし、短ければ数週間といった記録が残っております」

「だとしても、早急に手を打たないと駄目か……。一応いつでも大丈夫な体制は取ってはいるが、具体的にどう動くべきだ?」

「そうですね……。まず要となる召喚獣を契約している者は必須として、道中の護衛と現場の護衛や補給などが必要になるでしょう」

 おっさん王様とエルフが何か打ち合わせっぽい事してるじゃん? 俺達どうすればいいんだよ……。勝手に帰ってもいいのか? でもカティには一言挨拶した方がいいよね?

 カティも役目を終えたのか暇そうにしているし、あの二人が話している今しかない。

「カティ……、カティ!」

「ん? どうしたの?」

「いや……。なんか場違いだし、俺達帰ってもいい?」

「えーっと……。あ! まだ報酬が残ってるじゃん! ちょっと待っててね。ステフェン伯父さーん!」

「あ、ちょ……」

 あの二人の会話を割く事が出来るのか……。さすがはカティ、恐ろしい子。

「うーむ。まずは虹隊と四神隊と打ち合わせをしてみるか」

「分かりました。では会議の場を作りますね」

「頼むわ。それじゃ残った仕事を片付けるとするかな」

「さて…と。ん、どうしたカティ。まだ少し詰める事があるから、すぐに出発は出来ないぞ」

「それは解ったよ。じゃなくて、アキヒトさん達への報酬がまだなんだよ。ボク、人間のお金が少なくて……」

 ちょうど話が終わったのか? 王様はどっかに行っちゃったし。

「あぁなるほど。ふむ」

 カティがエルフの人を伴って近づいてきたぞ。報酬の話になるのかな?

「ばたばたしていて済まなかったね。カティをここまで護衛してくれて感謝する。私はステフェン。この国で宰相をしている者だ」

「ボクの伯父さんなんだよー」

 王様と話せるから偉い方と思っていたけど、宰相ですか。超偉いじゃないですか……。

「は、初めまして。冒険者のアキヒトと申します」

「さて、報酬だったね……。冒険者という事だし、冒険者ギルドに依頼という形で処理しようと思う。もちろん報奨金も出るしポイントも入る事になる。それでいいかな?」

 そんな事が出来るのか。受けた時は冒険者ギルドは通してないけど、後で冒険者ギルドを通しての依頼として処理できるのかな? ポイントは嬉しいな。ランクアップが近くなるに越した事はない。

 ……あれ? そういえば、オーク倒したけどランクアップって無かったんだっけ?

「ありがとうございます。助かります」

「うむ。ならば冒険者ギルドに話を通しておこう。二、三日後にはクエスト完了となるはずだ。さて、すまないがこちらも忙しくてな。カティ、準備が出来るまではここに泊まるといい。誰か! カティの案内を頼む。あぁ、君たちはもう下がって大丈夫だ」

 なんか忙しないけど、宰相だし忙しいんだろう。報酬の話も済んだし、帰るか。

「はい、ありがとうございます。では……。カティ、じゃあな!」

「うん、()()ねー!」

 さて、冒険者ギルドで港町の情報集めと、宿屋の確保をするか。数日は滞在する事になりそうだしな。

 帰り道に不審者扱いされないか心配だったけど、何事もなく城から出ることが出来た。


 王様? のようなおっさんとエルフの宰相、そしてカティと別れて数日後。

 冒険者ギルドや街で情報収集をしたり、簡単なクエストを行ったりしていた。

 もちろん、カティ護衛の報酬も受け取れた。気になるランクアップだけど、そもそもポイントがまだ足りていなかったようだ。オークジェネラル討伐で結構貰えたから、もう少し貯めればランクCの昇級クエストに挑めるかなという感じだ。

 イヴァン達がいるというウィック大陸は、ここから東に進んだ所にあるようだ。もちろん、途中には海があるので船を使わないといけない。

 王都ドックトンへの定期便が月に二度あるらしいので、それを使うのがいいようだ。商人や冒険者も多く利用しているらしい。

 そして、ウィック大陸の特徴も分かった。

 女性が多いようだ。グーベラッハの王様も言ってたような気もするけど、女性が多く、女性が統治――つまり女王がいるようだ。

 そのため、女性の女性による女性のための政治とまではいかないけど、女性が得をしたり働きやすい国になっているようだ。女性が得といっても、所謂レディースデーみたいに、女性は割引とかそんな感じらしい。

 まぁ女性が多いため、男性は割り増しという印象が強いのか、そういう意味では男性にとっては住みにくい国なんだろう。

 ともあれ、次の定期便は少し先なので、トーダでそれまではまったり過ごそうという方針になった。

 そのはずなのだが、冒険者ギルドから呼び出しを受けたのだ。

 ……何も悪い事はしていないよな? この国でウィック大陸の情報収集は禁止なのか? でもそういった雰囲気は無かったしなぁ。

 逃げる訳にもいかないし、行くしかないか。……独りだと寂しいから皆でね?


「よく来てくれた。早速で悪いが場所はここじゃなくてな。少し移動するぞ」

「はぁ、構いませんが」

 そう言い俺達を先導するのは、ここの冒険者ギルド副ギルド長だ。元冒険者で力強いおっさんだ。

 数日滞在して分かったが、ここトーダは身分制度はあるにはあるが、どうも権力を振りかざすという感じではないようだ。

 偉い人だけど、普通にその辺を歩いているし、普通の格好をしているし、俺達を同じ物を食べてるし、普通に話す事も出来る。

 どうもずっとそういう国らしい。だとすると、王様があんな風だったのは納得がいく。それでいいのかとも思うけど。

「あの、それで話ってなんでしょうか?」

「ん、あぁ。詳しくは着いてからだが、悪い話じゃないから安心しろ。実力と素行が良いパーティを探していてな。うちとしても幾つかは抱えているが、丁度出払ってしまっていてな。一つは確保出来たんだが、もう一つとなると難しくてな」

 良かった。怒られるって訳じゃないみたいだ。それにしてもどこに向かっているんだろうか。

「そこでお前達が来た訳だ。ランクDで実力は少し劣るかもしれんが、内容は濃いから心配はいらないだろう。素行も現段階の判断だが、悪いって訳でもないしな」

 ふむふむ。何かのクエストがあるのかな? ランクDで足りないって事は、ランクC相当? 俺達でいいんだろうか。

「さてと、着いたぞ。言葉使いに気を付けてくれればいいから、そこまで畏まらなくていいぞ」

 っておいおい、ここって。

「城じゃないですか!」

「あぁ、今回のクエストの依頼主は、王様だからな」


 門番の兵士と副ギルド長に付いて歩く。

 ……数日前の再現だな、これは。

 マリア達も微妙な表情をしている。俺も同じ気持ちだ。まさかまたここに来るとはなぁ。王様が依頼主って、なんか厄介事?

「こちらです。皆さん中にいらっしゃいます」

「ありがとう。さ、中に入るけど、びっくりするなよ?」

 既に驚愕状態なんだけど。だって、兵士が示したのは、先日も入った事がある扉だ。カティと一緒に入った、王様と宰相がいた部屋だ。

「お、副ギルド長来たな」

「王様、遅れまして申し訳ございません」

「いやいや、無理な要望だったろうしな」

「王……。少しは威厳ある話し方を……」

「まぁ知らない仲だしいいだろ。で、そっちが護衛のパーティ?」

「はい、我々冒険者ギルドが推薦するパーティです」

 部屋にいたのは、王様と宰相。そしてカティに兵士っぽい人が数人だ。

「これで皆揃いましたね。さて、では説明を始めます」


 ……宰相の簡単にして濃い説明が終わった。

 どうやら、エルフの里がピンチらしく、援軍のために派兵をするようだ。その道中の護衛が欲しいという事だった。

 もちろんトーダの国から兵士が出るため、護衛なんていらない気もするけど、道中の消耗を避けるというのが重要らしい。

 そしてその護衛のパーティというのが俺達らしい。聞いてないですよ?

「基本的には君たちのパーティが前衛だ。我が国からは召喚士を主軸にした編成なので、魔力の消耗は避けたい」

 召喚士の国と聞いていたけど、それが主軸なのか。にしても、他に前衛が出来る兵士っていないんですかね? 編成、偏ってません?

「今回のメンバーを紹介するとしよう。まずは召喚をメインに戦う四神隊の隊長と副隊長、他選抜されたメンバーだ」

 召喚隊のようなものか? 四神隊……。ちょっぴりカッコいいじゃないか! 見た目もいかにもって感じだしな。

「続いて各種武器や魔法を得意とする虹隊の隊長と選抜メンバー」

 虹隊? この国は別名を付ける文化でもあるのか? しかし、いるじゃないか、前衛!

「そして護衛の冒険者パーティだ。虹隊の彼らも道中は戦闘は行うが、彼らの消耗も避けたい。なので道中は君たち冒険者に頼る事になる」

 なるほど。そういえば、エルフの国への援軍という事だったな。それまでに兵士が消耗しちゃったら援軍の意味がないしな。

「後はここにはいないが、先発としてもう一つの冒険者パーティを既に向かわせている。途中の村で合流する手はずになっている」

 もう一つパーティがいるのね。

「そしてエルフの里からの特使だ。出発は明朝。それでは解散!」

 特使って、カティですか。なんか嬉しそうな顔をしていますけど? そしてもう解散ですか。明朝?

「あの、副ギルド長?」

「いやぁ。突然ですまんな。よろしく頼むよ」

「いやあの、突然すぎましたし、これ受けるってまだ言ってないんですけど?」

「そこは強制だ! 本当はランクDの奴にさせる事じゃないんだが、国としても緊急事態なんだ。だから、悪いが受けてくれ。というか拒否権は無い!」

 えぇー……。俺達、次の定期便で王都ドックトンに行きたいんだけど……。あ、駄目なんですね。

 なんでこんな事に……。

()()護衛お願いね!」

 ってカティがニッコリとこちらに笑顔を向けながら……。おのれカティ、お前か!


ご意見ご感想があれば嬉しいです。


いつも展開が長々として遅くなるので、気持ち飛ばし目に

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