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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
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28 三連星と勝利

 俺が思いついた現状を打開する作戦。オークに隙を作らせる作戦。

 それは……。

「……という訳だ。ベアルカスには負担を掛けるが、頼む」

「クマ!(御意!)」

 ……どうでもいいけど、ベアルカスは喋れないはずなのに、頭の中での会話なら何を言っているのか解るんだよね。

 思ったよりも武士っほいというか、固いというか、古風というか。見た目は愛くるしい熊なのに……。

 ともあれ、皆に作戦は伝えた。タイミングが大事だ。失敗したら、こちらの戦力は低下してしまう。それでも戦線は保てると思うが、ジリ貧になる可能性が高い。なので、この作戦は成功させておきたいのだ。

「さぁ、ミッションスタートだ!」


 目の前の戦いから目が離せない。

 力量や技術が賞賛に値するのはもちろんの事、我々の命が掛かっているためだ。

 まだ身体は本調子ではない。あの襲撃者は、とんだ毒を使ってくれたものだ。それも、この男が治療をしてくれなければここまで回復もしていなかっただろう。

 中ボスとの戦いは難航している。冒険者達は、先も言ったが、素晴らしい戦いをしている。力量も装備も技術も、この界隈ならば十分なほどだろう。

 惜しむ所は、経験値だ。恐らく、大型の魔物と戦った経験が少ないのだろう。避けるなどの防御面はうまいが、攻撃がうまく当たっていない。小型の魔物ならば、一撃で撃破することも可能な攻撃でも、ただ大きいだけの魔物ですら、それは適わない。攻撃する箇所、角度にダメージ。それが全てにおいて、大型用の戦い方をしないといけない。

 カタリーナが先ほどもいったように、一瞬でもいい。隙が出来れば、あの戦乙女の攻撃が通るだろう。勝機があるとすればそこだ。

 この男もそれは分かっているのだろう。何か作戦を立てているようだが……。

 ふむ。一撃くらいならば動けそうだな。万が一の時には、私も協力しようではないか。


 オークの攻撃は主にアルルとベアルカスに向いている。マリアに攻撃しても意味がないと分かっているからだ。

 そこを狙う。

「よし、ベアルカス、頼む!」

 今まではアルルとベアルカスが主に攻撃をしていた。だけど、これからは、アルルを少し下げてベアルカスが攻撃を担う事にする。

 ベアルカスの攻撃は、確実にオークへと当たっている。だが、オークはダメージを負った気配はない。少しは負ってくれれば嬉しい所だが……。

 こうすれば、自然とオークの攻撃はベアルカスに集中する事になる。マリアもアルルもオークの気を引かないように、それでも攻撃圏内で待機している。

 オークの攻撃はするどい。大振り、小振りと多芸な攻撃を繰り出している。

 だが、それらの攻撃はベアルカスには届かないが、着実にベアルカスの体力は削られていく。このままでは、いつかはオークの攻撃に捕まってしまうだろう。

「あっ!」

 誰が発した声か分からない。その声の先には……。ついに避けきれなくなり、体勢を大きく崩し――転んでしまっているベアルカスがいた。

 そんな隙をオークが見逃すはずもない。確実に、ベアルカスが体勢を直す前に、出来るだけ大振りで、そんな感じなのだろう。

 オークが、先ほどの攻撃よりも大きく振りかぶって、ベアルカス目掛けてその武器を振り下ろした。

 攻撃を守れるマリアは遠い。アルルも位置が遠いだめ、ベアルカスを連れ出せる事は出来ない。

 つまりは……ベアルカスの命運もこれまでという事だった。


 ……今回は相手が悪かった。

 巨体なオークから繰り出される巨大な鈍器による攻撃は、ベアルカスを容易に粉砕する威力を持っていた。

 大きな音と共に、周囲に立ち上がる砂埃。ベアルカスがいた地点は、地面に穴が空いていて、ちょっとした爆発が起きたかのような跡だ。

 その地点にベアルカスの姿はない。ベアルカス()()()()()も存在しない。

 塵一つ残さず、ベアルカスはこの世界から姿を消した。

 オークは勝ち誇った顔をしているだろう。対峙していた三人の内、一人を撃破したのだから。


 そのオークの喜びを、ぶち壊す事にしよう。

「行け! ベアルカス!!」

 俺の呼び掛けと共に、ベアルカスがオークの正面に出現する。

 オークは驚いているだろうか? 大振りしてしまった武器を、振り上げるだろうか?どちらにしろ、倒したと思った相手が目の前に再度現れたのだ。

 その隙をベアルカス()は見逃さない。見逃すはずがない。このために、マリアとアルルは待機していたのだから。

 まずは一番近くに出現したベアルカス。武器を振り下ろしたままのオークを駆けあがり、顔の辺りまで、そして渾身の一撃。

 これまでのベアルカスの攻撃は、力いっぱいの攻撃ではなかった。相手の攻撃をいつでも避けられるように、気を使いながらの攻撃だった。だが、今回のは違う。立ったまま何もしないオークに対して、防御を考える必要はない。

 ベアルカスの攻撃を受けて、オークは悲鳴をあげつつ後ずさりした。地面に刺さったままの武器から手を離し、初めてダメージらしい反応をみせた。

 顔を手で覆うオーク。……体がガラ空きだ。

 アルルがオークのすぐそばまで来ていた。ベアルカスも、初撃を終え、華麗に着地していた。

「ベアちゃん、もう一発、行ける? 一緒に行くよ!!」

 アルルにはベアルカスの言葉は分からない。それでも、少ない時間にしろ、一緒に戦ってきた戦友だ。雰囲気で了承したと受け取ったアルルが、ベアルカスと共に、オークの腹部を攻める。

「行くよ! ダブル……パーンチ!!」

 何の捻りもない、二人による全力のパンチ。ノーガードだったオークの腹部は、いかにオークが魔物であろうと、体力があろうと、そのダメージは計り知れないだろう。

 オークからすれば、予期せぬ攻撃。予期せぬダメージだ。頭を押さえていた手が、今攻撃を受けた腹部へと伸びていった時。

 三人目の攻撃が繰り出される。

「頭のガードを下げちゃ、駄目じゃないの! シッ!!」

 高らかに、華麗に、そして力強くジャンプをしたマリアが、ガラ空きになったオークの頭に斬りかかる。

「BUMOOO!」

 今までにない大きな悲鳴をオークが挙げ、そして倒れた。

 三人による、強力な攻撃のラッシュだ。

「……やった……のか?」

 作戦は完璧に決まった。ベアルカスは俺の召喚獣だ。出すのも戻すのも自由だ。

 危ない時は召喚を解除して戻せばいい。前に、マリアが危ない時も戻したんだしな。こういった事が出来るのが、召喚獣の利点で、召喚士の強みなんじゃないだろうか。

 マリア達はオークの前に立っている。これ以上の追撃はしないみたいだ。それもそうだろう。最後のマリアの攻撃は致命傷だろう。

「よし、皆お疲……、おいおい、マジかよ」

 少なくとも、頭に大きな傷を負っているはずだ。到底動けるものじゃない。死んでないのが不思議なダメージのはずだ。

 それなのに……。オークは再度動き出した。

「BUMOOOOO!」

 大きな咆哮だ。

「あれで倒せないのかよ……」

 もっと追撃を加えさせるべきだったか? それも既に遅い。倒れこんでいたオークが立ち上がり始めていた。

「くそ、もう一度やるぞ!」

 ベアルカスには悪いが、もう一度だ。少なからずダメージは入っているはずだから、さっきよりも弱まっているはずだ。

「いや、その必要はない」

「え?」

 横から誰かの声がしたと思ったら、何かが走り出していた。

「ふっ。これほど追い込めるとは……。詰めは甘かったがな。止めは頂こうか! てぃっ!!」

 さっきまで後ろにいたはずのお姫様が、気付いたらオークの頭に斬りかかっていた。

 ……何をどうなっているのか分からない。

 お姫様は、マリアが斬った部分を狙ったようだ。その攻撃により、オークの頭部は全壊したのが見えた。

 頭を失ったオークが、再度倒れる。

「ふむ……。思ったよりも動けるようになっておったな。それにしても、やはり経験不足だな。オークジェネラルは体力が凄いのだぞ」

「あれ……? お姫様? なんでそんな所に。動けないんじゃ?」

「あぁ。思ったよりも回復していたようだ。お主らが何かするつもりだったので、出来れば一撃加えてやろうと思って構えていたんだが、止めを刺してしまったようだな。すまぬ」

「いえ……。正直、倒したと思っていましたから。ありがとうございました」

「礼を言うのはこちらのほうだ。まさかここまで追い込むとは思っていなかったのでな。何にせよ、これで一安心だ。オークジェネラルは死んだ。復活までは、数日は掛かるから安心せよ」

 お姫様に止めを持っていかれた? 漁夫の利か? 美味しい所だけ持っていかれた?

 ……でも倒しきれなかったのは事実だ。あそこでお姫様が追撃してくれなかったら、戦闘は続いていただろう。

 はぁ……。これでもう大丈夫か。なんか安心したら疲れが一気にきたな。……これからどうするかな。


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