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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
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24 治療と崩壊

 この国の姫として産まれ、武人として生き、そしてダンジョンで死を覚悟したと思ったのだが……。

 いつの間にか、男――冒険者のパーティがいた。たまにダンジョンで見かけた事のあるパーティだ。

 オークジェネラルの攻撃を防いだこの壁は何なのだろうか。あの全力とも言える攻撃を、いとも容易く防ぐ所か、どこも崩れる様子もない。一体これは……。

「あーっと。皆さん、大丈夫……じゃないですよね」

 女が二人に男が一人のパーティだ。

 女の一人は、軽戦士のようだ。速度重視の防具に細剣を装備している。

 もう一人の女は、拳に何か装備しているようだ。拳闘士だろうか。

 唯一の男は……魔法使いのような外見だった。ならば、この壁は魔法で出来た者なのだろうか? オークジェネラルの攻撃を防ぐ魔法を使えるほどの実力を持っていただろうか。

 しかし、たったの三人だ。手練れなのかもしれないが、三人でオークジェネラルを倒せるだろうか? そうならば、私と近い実力の持ち主という事になるが……。

 さすがに実力派の冒険者の情報は知っている。姫として、そして一人冒険者として強者には興味があった。だが、目の前にいるパーティの情報は私は知らない。

 助かった、と言えるのだろうか……。この壁もいつまで持つか分からないし、前面にしかない。オークジェネラルも馬鹿ではない。すぐに横から攻撃をしてくるだろう。そうなれば、今度こそお終いだ。




 驚いた。

 半信半疑だったが、まさか本当にお姫様がピンチだったとは。そして、執事っぽい爺さんに、女の子……たまに冒険者ギルドで見かけた事のある子だ。

 その三人が、まさに大ピンチという感じで蹲っていたのだ。攻撃は凌げたが、このままという状況もまずい。

「まずは治療します」

 ともあれ、治療だ。怪我をしている可能性が高いし。

 お姫様は……見た限りでは怪我は無さそうだ。でも何か辛そうな感じだ。確か毒がどうとかって言っていたっけ。って事はヤバいのか?

 まずは全員を確認してからだ。次の爺さんは……赤い服がなんとも似合うダンディな……ってこれ血じゃね? ちょっと……こんなに出血って、ヤバいんじゃ?

 いやいや、やっぱり全員確認してからだろう。

 最後は女の子だ。こちらはかなり痛々しい感じだ。全身がボロボロで至る所に血が滲んでいる。着ている防具もボロボロで、少し目のやりどころに困ってしまう。だが大きな傷は無いようだ。疲労のせいか、意識ははっきりとしていない。

 一番やばいのは爺さんで、その次はお姫様かな? 女の子も治療は必要そうだな。

「来てくれ、ウンディーネ」

 回復には水のウンディーネだ。これも最初に契約した召喚獣だが、俺の手によって創り直されている。見た目はまさにナースという感じになった。

 回復といえば、病院だろう。といえば、女医になるんだが、女医って実際に見た事ないんだよね。だからナース。女性なのはウンディーネが元から女性タイプだったからで、深い意味はない。

「まずはこの爺さんからだ」

「はい、主様(マスター)。治療致します」

 俺の事をマスターと呼ぶのは変わっていなかった。その姿で主様(マスター)って言われるのは少し違和感というか、ならドクターと呼んで欲しい気もするが俺はドクターでもないし……。まぁ主様(マスター)でいいや。

 ウンディーネが爺さんに近づき、治療を施す。

 爺さんの顔色が段々と良くなっていく。傷も服の上からでは分からないが、大体は塞がっているはずだ。さすがに大怪我だったので、完璧に治すには時間がかかる。まずは応急処置程度にしておく。

「これで一安心か。次はお姫様だ。えっと、何かの毒とかでしょうか?」

 意識がはっきりしているのはこのお姫様だけだ。状況の確認もしたいけど、まずはお姫様の容体を確認したいのだが……。

 どうもさっきから、ぽかーんとしている。

「えっと……。まぁ毒にしても状態異常なら治せるので……。ウンディーネ、頼む」

 ウンディーネは、元は怪我の回復のみしか出来なかったが、そこはナースだ。毒や麻痺、石化などの状態異常を治す事が出来るのだ。さすがに死んだ人間はどうにも出来ないが、ご家庭に一体は欲しい召喚獣である。

「あ、あぁ……。私は麻痺毒を喰らっただけだ……。セバスが大怪我をしていたのだが……、治ったのか?」

「爺さんは応急処置だけですね。落ち着いたら、ちゃんと治さないと駄目ですし、血とか体力とかまでは戻せないので、動くのは駄目です」

 この爺さんはセバスさんというのか。名前からして執事だ。

「これで大分マシになったと思いますが、どうでしょうか?」

 会話中にお姫様の治療は完了した。実践したのは初めてだが、さて麻痺毒も治っているかな。

「……まだ完全には抜けていないが、さきほどまでよりは動けそうだ」

 うーん、やっぱ完璧には無理か。そもそも麻痺毒ってなんだよって事だな。イメージしにくいんだよなぁ。ゲームとかでは定番の状態異常だけど、現実で喰らった事はもちろんないから、想像しにくい。

 それでも、回復には向かったみたいだ。これ以上は重ね掛けとかすればいいのかな? まぁ次は女の子だな。

「次はこっちの子だ」

「カタリーナは……私を庇って、魔物の魔法に撃たれたのだ。防御魔法を使っていたとはいえ、さすがに全部は無理だったようだ……。くそっ!」

 なるほどね。どうりでさっきからイージスの盾が頑張っている訳だ。

 こうしている間にも、魔物の攻撃は続いていた。最初に攻撃してきたデカイのは諦めたのは、それとも様子見なのか、後ろに下がっている。

 代わりに攻撃をしてきているのが、遠くにいる魔物だった。

 魔法だろうと思っていたが、やはり魔法だったのか。何回も撃ち込んで来ているけど、イージスの盾の性能が発揮して完全に防御出来ているのだ。

 イージスの盾に当たったのはもちろん、外れて横から入ってきそうなのも弾いている。これがイージスの盾の性能で、結界みたいな感じで、範囲で守ってくれるのだ。

「よし、女の子も大丈夫だな」

 女の子の怪我は一番軽かったのもあり、ほぼ完璧に治療出来たはずだ。女の子だし、後が残らない方がいいしね。後でもう一回治療しよう。

 応急処置は完了したので、ウンディーネには戻ってもらう。お姫様は意識ははっきりしているし、女の子もじきに目を覚ますだろう。爺さんだけ心配である。気力の問題かもしれない。

「さて……。後はこの状況からをどうにかしないといけないけど……。あのでかいの倒すか!」




 私は夢でも見ているのだろうか。

 オークジェネラルの攻撃が止んだと思ったら、オークメイジが魔法で攻撃してきた。物理で駄目なら魔法で、か。オークジェネラルも馬鹿ではないようだ。

 この壁がいかに頑丈であろうとも、魔法耐性がどれだけあるか分からない。それに、範囲で攻撃されれば、前面以外は守り切れないだろう。

 そんな私の心配は、杞憂に終わった。

 壁の部分はもちろん、無い部分の攻撃も防いでいたのだ。まるで高位の結界のように、我々を包み込んでいるみたいだ。

 ありえない……。

 そんな結界を使える冒険者がどれだけいるだろうか?

 そんな私の驚きは、さらに続いた。

「まずは治療します」

 冒険者の男がそう言ったのだ。

 結界を張れるということは、魔導士の中でも神官系に位置する。ならば回復も使えるのはその通りなのだが。

「来てくれ、ウンディーネ」

 男がそういうと、どこから現れたのか、奇妙な――白を基調にした服を着た女性が立っていた。可愛い女性であり、まだ若く見えるが、どこか母のような優しそうな印象を受けた。

 その女性がセバスに何か施したかと思ったら、生きているのが不思議なくらいの怪我をしていたセバスの怪我が治った。気のせいだろうか。顔色が少し良くなったように見える。それでも、あれだけの血を流したのだ。すぐに動けるようにはならないだろう。

 しかしこの回復魔法の効果は……。あれだけの怪我を治せるとなると、この女性はかなりの使い手ということになる。

 それだけではない。この女性はどこから現れたのだろうか。いくら麻痺毒に侵されていると言っても、さすがに気づかないほどではない。

 男は来てくれ、と言っていた。今まで後ろに控えていたのだろうか。分からない事だらけだ。

 次に、男は私に話しかけてきた。どうやら、私も治療するようだ。普通ならば、どこの誰だか分からない者に治療行為などはさせない。何をされるか分からないからだ。

 それでも、目の前にいる男はどこか他の冒険者とは違う。直感的に、そして目の前で起こっている事案を考えれば、彼を信用してもいいと思った。

「これで大分マシになったと思いますが、どうでしょうか?」

 あの女性は、怪我だけでなく麻痺毒も癒せるようだ。益々訳が分からない冒険者たちだ。

「……まだ完全には抜けていないが、さきほどまでよりは動けそうだ」

 さきほどまでよりは楽になっている。それでもいきなり全力で動けるかというと、そうではなかった。完全には抜けきっていないのだろう。治療して貰ってなんだが、麻痺毒の治療は苦手なのかもしれない。

「次はこっちの子だ」

 残るカタリーナはセバスに比べれば軽傷だ。それでも、全身の至る所に傷があり痛々しい。

「よし、女の子も大丈夫だな」

 女性が癒すと、その痛々しかった傷は治っていた。良かった……。カタリーナが怪我をしているなんて耐えられなかったから、それを治してくれたのが嬉しかった。


 当初はセバスが時間を稼ぎ、私が動けるようになればと思っていたが、それは甘い考えだった。その結果、セバスは重傷を負い、カタリーナまでもが怪我を負ってしまった。一度は死をも覚悟した。

 だが今はどうだ。

 この冒険者のお蔭で、怪我は治り、麻痺毒もマシになった。この壁の防御力があれば、私が動けるようになるまで持つだろう。今は耐える時だ。

 だが、この男は違った考えのようだ。

「さて……。後はこの状況からをどうにかしないといけないけど……。あのでかいの倒すか!」

 倒す。確かにそう言った。確かに、今の状況を脱する方法は、この壁を活かして逃げ切るか、もしくはオークジェネラルを倒すしかない。

 普通の冒険者ならば後者を選ぶだろう。己に自信があり、力量が分かっていない若い冒険者ならば。

 ある程度熟練した冒険者ならば前者を選ぶだろう。己の強さも弱さも分かっており、自身のパーティを守るために、撤退を決断出来る。

 そして、中ボスを倒せるだけの実力がある冒険者ならば……。

 この冒険者達は、一体どれに当てはまるのだろうか。

 ともあれ、この壁があれば安心だろう。最悪、私が動けるようになればどうにかなる。オークメイジだけでも倒してくれていれば有難い。

 そう考えていたのだが、男が何かしようとした時、それは起こった。

 我々を守ってくれていた壁。オークジェネラルの攻撃も、オークメイジの魔法も防いていた壁。その壁に亀裂が入り……、そして崩壊した。


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