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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
51/126

17 快進撃と貴族様

「えい!」

 アルルの正拳突きにより吹っ飛んだ猪――ベベファンゴは、大きな木にぶつかり、そのまま声を上げる間もなく絶命した。

 順調である。

 アルルを加え戦力を増やし、図書館で勉強し召喚を強化し、訓練で確認、そして実戦である。

 召喚を色々試してから、俺達はダンジョン探索をする日々を続けていた。

 最初はアルルも緊張していたが、最近では大分慣れてきている。戦闘に慣れるというのは油断に繋がるのかもしれないが、今の所が大丈夫のようだ。

 このダンジョンも大分進む事が出来た。といっても、まだ山の下の方だけだ。頂上までは遠いし、そこまで行けるとも思っていない。

「よし、クエストはこれで完了だな。戻るとするか」

 今回のクエストは、魔物討伐だ。ベベファンゴという小さい猪を討伐するものだった。小さいと言っても、日本で見るそれより一回り大きい気がする。これで小さいというのだから、普通サイズやデカいのはどれくらいになるのだろうか。

 少しずつ成長していくしかない……。

「それじゃ、Jr(ジュニア)頼むな」

「ゴゴ……」

 Jrと呼ばれた、ニメートル弱の一見すると大男。実はこれは晶人が創った(・・・)召喚獣だ。

 色々と試した結果、手持ちの召喚獣を元に改良する事が出来たのだ。

 元になったのはスクトゥムゴーレム。これを改良する形で創ったのだが、何故か上書きされてしまい、元のスクトゥムゴーレムは呼び出せなくなっていた。

 このJrはスクトゥムゴーレムを一回り小さくしたものだ。なのでJrである。それでも硬さは十分だし、なにより改良したお陰で魔力コストが良くなったのだ。休憩中などは戻す事で節約をし、ほぼ常時召喚しておく事が出来るようになった。

 これにより防御面は安定し、攻撃面もアルルを加えた事で十分と言えるレベルになっている。

 Jrを初めて見せた時、マリアは呆れてアルルは驚いていた。

 それもそのはずだ。召喚獣としては中級から上級に位置するスクトゥムゴーレムを、小さい版とは言え創造したのだ。創造はそんなに簡単に出来るものではない。

 それを知っているマリアは、呆れるのと同時に、さすがはアキと思った。

 それを知らないアルルは、単に驚き、アルルのご主人様は凄い! と思った。


 帰路も油断する事なく進む。

「前に、猪。二体です……」

 探索に大きく貢献しているのはアルルだ。獣族故の聴力と嗅覚で、索敵と敵の発見を行っている。

「またベベファンゴか……。もう依頼分は終わっているんだけどなぁ……。まぁいるなら倒すしかないか」

「二体ならいつも通りね」

 スクトゥムゴーレムが一体を受け持っている間に、残りの一体を全力で倒す作戦だ。作戦といっていいのか分からないくらいシンプルである。

 向かってくるベベファンゴに対し、その作戦でぶつかろうとした、その瞬間。

 どこからか飛んできた火炎がベベファンゴを襲った。そのすごい火力だ。見ると、ベベファンゴは消し炭になっており、生きてはいない。

 魔物の横取りは基本的にマナー違反とされている。戦闘中の冒険者が苦戦しており、救援された場合は別だが、不干渉というのが冒険者の暗黙のルールとされている。

 今回の場合で言えば、俺達はまだ戦闘中ではなかったが、明らかに俺達が戦うはずだった魔物だ。それを横から、それに何も言わずにあんな火を撃たれてはたまったものではない。下手すれば、こちらに当たっていた。

 一体どこの冒険者だろうか。注意しないと駄目だろう。

 そう思い、火炎が飛んできた方向を見ると、重装備のパーティ六名が立っていた。

 これまでも、ダンジョン内で他の冒険者を見かけた事はある。そのどれよりも、そのパーティは重装備で、高そうな物を身に付けている。いや、一人だけその中でも軽装な男がいる。斥候役とかだろうか?

「今魔法を撃ったのはあんた達か? いきなり危ないじゃないか。あの魔物は俺達に向かっていたんだぞ」

 先の通り、横取りはマナー違反である。厳密なルールではないため、絶対にやってはいけないという行為ではない。交戦中ではなかったとはいえ、あのまま行けば交戦状態になったはずである。なので、横取りではないだろうか?

 別に横取りに拘っている訳ではない。他の冒険者がいるかどうかも確認せずに魔法を撃つというのは、さすがに注意せずにはいられなかった。

「冒険者がいたのか。当たらなかったんだろ? なら問題ないだろ。分かったんなら、さっさとどけ」

 まさかの態度であった。

「どけってアンタ……。当たらなかったけど、いきなり魔法を撃つのか? 横取りか?」

「貴様! 我々は貴族、クニュッペル様の私兵である! 平民が貴族に意見をするのか!」

 貴族の私兵だからといって、その私兵も貴族とは限らない。下級の貴族や、三男などが雇われるケースもあるが、多くは晶人と同じ平民の冒険者である。だが、貴族に雇われている時点で平民よりは位が上と思う私兵もおり、それはそれで問題視もされている。

 この私兵も実はたんなる平民の冒険者ではあるが、貴族という後ろ盾があるため、このような態度を取っているのである。

「なんだ。何かあったのか?」

 今の出来事を何もなかったかのような態度の男が口を出してきた。唯一の軽装の男である。

「クニュッペル様……。いえ、平民が口答えをしてきたもので……」

「ふん、平民の冒険者か。お前らが死ぬ気で魔物を倒していれば、私もこんな所に来る事もないというのに。全く、役に立たないものだ」

 私兵が強気だったのも頷ける。この場に貴族がいたからだ。


 貴族は平民を養い守る義務がある。知性があるものは政治で、腕力が優れているものは魔物退治を行い、平民を守る。

 だが、どの貴族もそうとは限らない。何の力も持たず、貴族という地位だけを与えられている者もいる。そういった貴族でも、何かはしないといけない。成果を出さなければ、貴族としての馬鹿にされるだけでなく、下手をすれば爵位を下げられるという事もありうる。

 そのため、知性も腕力も乏しい貴族は、金を使い、私兵を雇って魔物退治を行っている。雇った私兵が活躍すれば、雇い主である貴族の功績になるのだ。

 だが、私兵だけに任せっきりという訳にもいかない。一月に一度くらいは、貴族本人も現場に赴き、アピールをしないといけないのだ。その一人がクニュッペルであり、クニュッペルにとってはそれが今日であり、ダンジョンに嫌々ながらも来ている訳だった。


「貴族……様でしたか。……すみませんでした」

 さすがに貴族相手に文句を言う訳にはいかないか。

 このダンジョンにもしばらく通っているけれど、貴族関連と接触したのは初めてだ。いつもは遠巻きに見るだけで、関わってはいない。

 だけど、目の前にいるのは、その貴族様だ。対立してはまずい。相手の機嫌を損ねないようにしないといけない。とりあえず謝っておけばいいかな。

「分かったならさっさと……そういえば、貴様ら。これから戻るのか?」

 貴族様本人は、嫌味を言っただけで、特に絡んでこなかった。嫌な態度を取ってきて私兵も、どうやら許しくくれるようだ。よかった。

「はい。クエストは完遂しましたので、戻る途中です」

 このまま邪魔にならないように帰ろうと思っていたのだが、何か問題があるのだろうか。

「ほぅ。クエストは何だ? 素材系か?」

「いえ、討伐です。ベベファンゴ一○体です」

「そうか、討伐か。なら素材は不要だな。喜べ、平民! お前らはクニュッペル様の役に立つのだ!」

 この人は何を言っているのだろうか? 別に貴族の役に立ちたくないし、早くこの状況から脱したいのだが。

「クニュッペル様。先ほどの平民が魔物の素材を渡したいと進言してきました。いかがなさいますか?」

「ふん。平民にしては良い考えだな。これも私の人徳が成せる事だな。私の功績だな」

「承知致しました」

 この人達は何を言っているのだろうか。確かに討伐クエストには素材は不要だ。だけど、別途納品クエストがあれば、それも達成出来るし、無ければ売ってもいい。不要なんてことはない。

「よし、お前ら。集めた素材を置いていけ。クニュッペル様のご命令だ」


 そんなの嫌だった。渡したくなかった。

 でも拒否をしていれば、貴族に逆らうって事になるんだろう。なので、ベベファンゴの素材を全部、私兵に渡した。

「はぁ……。ごめんな、二人とも。何の相談もせずに」

「あれはああするしか無かったわよ。逆らうと何があるか分からないし。それに、クエスト自体は達成出来てるじゃない。だから気にしないで」」

「そう言ってくれると助かるよ」

 素材を渡し貴族も私兵も去った後、冒険者ギルドに戻り、討伐のクエストのみの報告のみを行った。素材が何も無い事は、特に不思議がられなかった。

 よくある事なんだろうか……。出来ればもう会いたくないんだが、ダンジョンにいれば会ってしまうのかなぁ。仮に、素材系のクエストを俺達が受けていたとしても、素材を全部巻き上げられていただろう。

 こんなんで苦情は出ない――んだろうな。だって貴族だし。逆らうと命の保証はないらしいし。だから、素材だけで済んで良かったと思うしかない。


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― 新着の感想 ―
[一言] この手の輩は嫌いだわ。権力に楯突かない代わりにそれ以外にでかい態度取る馬鹿な主人公(笑)
2020/01/27 13:59 退会済み
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