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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
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16 訓練と召喚改革

 俺達三人は今、訓練場に来ている。前に召喚を行った場所だ。

 何故こんな所に来ているのかというと、アルルの実力の確認と、俺の召喚の実験のためだ。

 アルルの武具はすぐに決まった。私服と同じように動きやすい防具に、頑丈そうな手甲だ。

 頭には何も着けていない。どうも、耳が使いにくくなるらしい。獣族は人族よりも耳がいいため、異常の発見に役立つらしい。そのため、その耳を活かすために頭には防具はない。

 その他も、敏捷性を高めるために肩や肘などの要所にプロテクターのようなものを着けるのみとなっている。これで防御力は大丈夫なのだろうかと心配になるが、基本的に避ける戦い方になるし、なによりも手甲と打たれ強い身体能力のお陰で、そこまで紙装甲という訳でもないらしい。

 その手甲だが、ボクシングのグローブをもっとガッチリしたものという感じだろうか。殴る際に敵にダメージを与えるのはもちろん、自分の手を傷めないようにもなっている。また、しっかりとガードをすると、篭手部分がちょっとした盾のような形になるため、攻防一体の武器と言えるだろう。

 良いことも多いが、欠点もある。一番大きいのは射程だろう。かなり近づかなければ攻撃出来ない。剣や槍といった武器よりも射程は短い。

 また、斬撃が出来ないのも欠点だ。斬撃が苦手な敵には苦労すると思う。

 まぁ、それはマリア担当になるだろう。レイピアでは打撃が出来なかったけど、手甲はそれを埋める武器と言えるだろう。

 そんな訳で、武具を着けての動きの確認と、簡単な戦闘シミュレーションを行うために、訓練場に来ている訳だ。

 ちなみに、俺が召喚士ということと、マリアが俺の召喚獣ということは、アルルに伝えてある。絶対に秘密で誰にも言ってはいけないと命令(・・)したので大丈夫だろう。

 最初は疑っていたが、実際にマリアを召喚解除したら、それはもう驚いていた。やはりマリアが召喚獣というのは気づいていなかったみたいだ。


 まずはフォーメーションや連携の確認だ。

 剣道の練習のような、木の案山子のようなものも用意されていたが、今回は仮想敵として召喚獣を相手にすることにした。

 スクトゥムゴーレムである。

 とりあえず攻撃はさせないで防御に専念させて、それを相手に俺達三人……主にマリアとアルルが攻める形となる。

 アルルには各召喚獣の紹介もしておいた。敵と勘違いされても困るし、特徴をしっておいて欲しいからだ。

 特に、スクトゥムゴーレムを召喚したときは驚かれた。ベアルカスの時は、何故か懐いていた。可愛く見えても、熊だというのに。


 そんなこんなで、スクトゥムゴーレム相手に戦闘訓練をしている真っ最中だ。

 俺はシルフなどの召喚獣で援護するくらいである。本当はベアルカスも呼んで確認をしたいが、短時間ならまだしも、長時間だときついのだ。

 最初は防御のみをするスクトゥムゴーレムだったが、段々と攻撃させるようにした。といっても、武器は無く、盾とその拳のみになるが、クリーンヒットすれば痛いはずだ。なので、本気で殴らないように指示した。

 こうして二人の戦い方を見ると、似ているようで少し違う。

 マリアはさすがにレイピアでは相性が悪いが、関節部分や顔などの急所を狙っているようだ。相手の攻撃も、躱すようにしている。その分、攻撃チャンスを見極めるのが大変そうだ。

 アルルは打撃なので相性はいい。腕や脚などを攻撃、牽制して重い一撃を胴体に入れる攻撃のようだ。動きもいいし、強いと思う。ステータスでは微妙そうな値だったけど、なんでだろうか? 手元にあるアルルの冒険証を確認しても、強さと値が合っていないように思える。

 冒険証は、奴隷商店で買った時に貰ったものだ。冒険者パーティ要員の奴隷は、登録もしているので、買えば貰える。

 アルル本人ではなく、俺が持っているのは、アルルが奴隷で俺が主人だからだ。俺が管理するものらしい。

 さて、そのアルルだが、防御面はそこまで得意ではないようだ。ゴーレムのパンチを躱せない時は、その手甲でガードしている。ダメージはあるだろうけど、ガードが間に合えばそこまで大きくは無さそうに見える。


 ある程度は確認出来たので、スクトゥムゴーレムを戻して、マリアとアルルの二人で反省点の確認や復習をさせた。

 俺は俺でやりたいことがあるのだ。

 それは、召喚の確認だ。

 図書館で召喚の本を読んで色々解った事がある。

 まずは、召喚陣の出来によって、難易度が変わるという事だ。これは既存の召喚陣の中から正解に近いのを選んでいくしかない。どれがそうなのか解らないし、無理に近い。なので却下だ。

 対して創造は自由だ。自由すぎて、情報や強さを欲張ると魔力不足になるし、抑えると能力が低い召喚獣しか創れない。そんなの事するくらいなら、既存の召喚陣を使う方が効率が良い。

 そう、普通(・・)ならば。

 これから試す実験が上手くいけば、もしかすると召喚の常識が変わるかもしれない。


 まずは実験その一だ。

 これから創るのは、なんの変哲もない犬だ。本に載っていた犬だ。あの大きな召喚陣を必要とする犬だ、

 だけど犬にそんな多くの情報は要らないはずだ。俺がイメージ出来ればいいだけなのだから。

 という訳で、『犬』という漢字を書く。後は円を書いて終了だ。

 これだけで召喚されるのだろうか……。そのための実験である。

 召喚陣に魔力を通す……と思ったら、すぐに反応があった。

 目の前には、手のひらほどの小さな犬……が現れていた。かわいいというか、これは犬と呼んでサイズなのだろうか。不安である。

 俺が想像していたのは、普通の柴犬なのが、創造出来たのは小さな犬だ。

 しかし、成功だ。成功ではある。魔力も全然使っていない。さすがに、本に載っていた犬とは違うだろうけど、それでも簡単に行えた。

 このまま残しておく訳にも行かないので、戻すことに――の前に名前を付けてあげないと駄目か。

 うーん。小さな犬……定番だとポチになるんだろうけど、ポチって感じではない。むしろプチである。

「うん、プチでいいか。可愛いし。お前はプチだぞー。お、嬉しいのか? とりあえず戻って休んでくれ」

 安易な名前だったけど、喜んでいる感じだったので良かったのだろう。


 続いて実験そのニだ。

 もう少し条件を描けば、思った通りの犬が出てくるはずだ。

 さきほどの『犬』に加え、種類――分かりやすい柴犬だ。体長は四○センチでオス、後は……こんなものか?

 さっきよりは情報が多いはずだ。これだとどうなるか。

 さすがにさっきよりも魔力が必要になったが、それでもあっさりと成功した。

 目の前には四○センチほどの柴犬が座っていた。うん、成功だ。可愛い犬だ。特に何にも能力は付けていないので、ただの犬である。まぁ鼻はいいだろうから、番犬にはなるだろうか?

 名前は……ポチにした。ポチらしい犬だったからだ。ポチもプチ同様、戻ってもらった。


 ここまではうまくいっている。次は少し変わった物に挑戦だ。

 召喚()という名称だが、実際は獣じゃないと駄目ということはない。マリアだって人型だしな。

 それに、マリアの着ている服などは俺が出会ったときに既に着ていたもので、マリアが創られた時に一緒に創られたもの、らしい。

 つまりは、獣以外のだって創れるということだ。服はもちろんのこと、武器や防具だって可能なはずだ。

 俺がそれを試そうと思ったのは、マリアの服の事だけではない。図書館で読んだ御伽噺の中に、召喚士が街を救った話があったのだ。


 昔々、ある街に大量の魔物が攻めてきた。街にいた冒険者や、国から派遣されてきた兵士などが対応し、これを抑えようとした。

 途中までは順調にいっていたが、最後の最後で強い魔物が現れた。

 その魔物は、高い防御力と魔法が効きにくいという魔物だった。

 それでも、街を守るために、人々は果敢に攻撃をした。だが、効果は薄かった。

 このままでは街がという場面になったとき、一人の召喚士が大きな剣を創った。

 魔物なんかよりも大きい剣だ。

 誰にも振ることなど出来ないくらいの大きな剣だが、召喚士はその剣を操作し、その魔物を斬った。

 魔物はそれだけでは倒しきれなかったが、防御が崩れ、攻撃も魔法も普通に通るようになり、討伐することが出来た。

 召喚士の剣によって、魔物を倒す活路が出来、結果街が救われたのである。

 その活路を作った召喚士だが、剣を創った反動により、その命を落としていた。

 皆はこの召喚士を救世主と呼び、讃えた。


 実際にあった話かどうか分からないけど、やってみる価値はある。

 もちろん、命を落とすなんてまっぴらだが、これまでのからすると、無茶をしなければ平気だと思う。

 大きな剣ではなく、小さな剣――包丁くらいなら平気だろう。うまくいけば、武器や防具だけではなく、生活道具なんかも創れるかもしれない。買う必要はなくなるだろう。

 その代わり、服はやめておこうと思う。普段着る服なら、買ったほうがいい。

 無いとは思うけど、魔力切れになった時、召喚(ふく)がどうなるかを考えると、恥ずかしい。

 さて、実験その三だ。

 作るのは包丁。別に必要としていないが、獣ではない召喚の、武器としての試しだ。

『包丁』と書き、円を描き囲う。……イラストとかあったほうがいいのかな。包丁も色々種類があると思うけど、俺が知っているのは普通の包丁だ。スーパーとかで売っている普通の包丁だ。なんて名前だったか……。

 まぁ、俺が知らない正式名称なんだし、知らなくても問題はないはずだ。

 そう結論を出して、魔力を通してみる、とすぐに反応があった。一瞬である。

 召喚陣の中央には包丁が現れていた。紛れも無い包丁である。だが短い。というか小さい。

 子とも用……なのか? 固い物なら切れないし、逆に壊れてしまうそうな包丁だ。

 うーん。素材とか長さとか指定しないと駄目だったのかもしれないな。情報が足りないと、小さいのが出てきてしまうのだろうか。

 確かに包丁ではあるが、包丁としては使え無さそうだ。

 しかし成功ではある。獣――生き物以外も創造出来るという事だ。しかも、魔力は全然使っていない。まぁ、創ったのがしょぼいだけなんだが……。


 そういえば、この包丁にも名前を付けないといけないのだろうか? 確か、創造した召喚獣には名前を付けないと、魔力が切れて消えてしまうという事だったけど……。

 犬では罪悪感があったけど、包丁なら……。試してみるか。

 名前も付けずに、待つこと数分。包丁がキラキラと輝き出し、そのまま包丁は消えていった。

 一見すると、召喚を戻される時に似ているが、俺は戻す意思を出していない。つまりは、消えたという事なのだろう。

 その証拠になるか分からないが、俺にはさっきの包丁を呼ぶ事は出来ない。名前が無いからだ。

 同じ召喚陣なら似た近い物を創る事は出来るかもしれない。でもそれは同じ(・・)包丁では無いだろう。

 思わずゾッとしてしまった。もし俺がマリアにマリアと名前を付けていなかったら……。俺はマリアに二度と会えないし、俺もここにはいないだろう。

 さっきの包丁のようにいらないから削除というのは、包丁だから、試しにだから出来たのだ。

 例え試しであっても、俺はプチをあの場で見捨てる事が出来ただろうか……。

 創造は確かに便利だ。きちんと情報を描けば、必要な魔力も少ないというのが分かった。だが、創った責任というのが生まれるのも分かった。

 きちんと考えて創らないといけない。その事も分かってよかった。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

気軽にポチポチできるSurface 3をポチーしたい……。

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