13 図書館と読書
色々あった翌日。
予定通り、アルルの服などを買いに行こうとしたのだが、マリアから待ったがかかった。
「服ならワタシだけでも平気よ。アキは図書館で調べ物をしてきたら?」
確かに図書館にも行きたいと思っていた。アルルの事もあるし、まだこの世界の事を知らなさすぎる。召喚獣の相性とかも気になる。
でも、それは別に急がなくてもいいのだ。アルルも特に平気みたいだし。
しかし、マリアはアルルと二人で買い物に行きたいようだ。
んー。まぁ、女の子の買い物だし、女の子同士のがいいのかな?
「分かったよ。それじゃ、俺は図書館に行ってくるな」
夕方くらいに戻る事にし、マリア達と別行動する事にした。
何度見ても図書館は大きい。それだけ本が貯蔵されているのだろう。
召喚獣の本とかもあるかもしれない。わざわざ買わずに、ここで調べたらよかったんじゃないのか?
……まぁ気付かなかった俺が悪い。それに、買ったお陰でゆっくり読めるしな。
ともあれ、ここにいては何も始まらない。中に入る事にしよう。
扉を開け中に入ると、本の匂いがした。本屋とはまた違った匂いだ。
それもそのはずだ。とても静かなのだ。話し声の一つもしない。そのせいなのか、余計に匂いに気付くのだ。
受付らしいのが目の前にあるので、そちらに向かう。さすがに、ここでは会話しないといけないだろう。静かな空間よ、さようなら。
「あの、すみません。初めてなんですけど、ここって何か利用するのに登録とかお金とかいりますか?」
一応小声で話しかける。
図書館は、読むだけならば何も登録はしなくていいはずだ。借りる時に、カードを使ったりするのが基本だろう。
それに、基本無料のはずだ。だけど、ここではそうじゃないかもしれない。何故なら、受付にはゲートのようなものがあり、入館と退館を管理しているように見える。
もしかしたら、入館だけで、何か必要なのかもしれない。何かトラブルに成る前に、利用方法を確認しておきたかった。
「初めてですか? ここ王都図書館はどなたにでも開放しているので、どなたでもご利用出来ますよ。ただし、身分証と銅板一枚と銀貨一枚が必要です。銀貨は保険のようなもので、退館時にお返し致します」
銀貨は、本を傷めてしまったり、何か問題を起こした時の保険らしい。特に何もしなければ返してくれるので、入館料が銅板一枚ということになるのか。
身分証は冒険証でいいはずなので、お金と一緒に渡す。
「はい、確認しました。では銀貨はお預かり致します。図書館については、こちらの案内書をどうぞ」
「ありがとうございます」
無事に入館出来たので、まずは貰った案内書に目を通す。
内容は、基本的に日本のそれと同じだった。本は汚さないとか、破かないとか、静かにするとか、飲食は決められたスペースでとかだ。
さすがに、コピー機やパソコン、ビデオなどの機械類はないので、その辺では少し残念であった。
本の内容を書き写すのはいいらしいので、使えそうな情報があったらメモっておくことにしよう。
まず俺が探したのは、歴史の本だ。この世界がどういうものなのかを知るためだ。
幸い、蔵書されている本は、日本の図書館と似たように分類がされていて探しやすかった。
探していた歴史関係の本もあったが、同じ棚に御伽噺の類もあったのは驚きだ。
棚の前で少し中身を確認して良さそうな本を手に取り、椅子に座る。まさに日本のそれと同じである。
世界が変わっても、図書館というシステムは似通うものなのだろうか?
……何冊か歴史の本を読んだが、解ったような解らないような。
魔物に苦労しつつも、魔法などを用い生活をしていて、ダンジョンで武具や財宝を探し、それがずっと続いている感じだった。
うーむ。日本というか地球ならば、縄文時代から始まって、弥生と続き、順番に時代が変わって近代になる、社会の授業ではそう習うし、実際そのはずだ。
その間、色々と文化文明が変わっていくが、この世界では魔法の存在が大きいようだ。
地球では科学や機械が進化したように、この世界では魔法がそれを担っている。
火を起こすなら、木を使って摩擦熱で火を熾す。それを便利にしたいから最終的にはライターが作られた。
それがこの世界では魔法で済むのだ。なんでもかんでも魔法だ。まさに便利である。つくづく使えない俺が悲しくなってしまう。
しかし! 俺には召喚があるのだ。召喚だって凄いんだぞ! 凄いんだよね?
よし、次は召喚術の本を読んでみるか。
召喚術の本もすぐに見つかった。……なんとなくだが、魔法関連の棚と比べるとかなり少ない気がする。それでも、召喚術関連の本がここまであるのは、初めて見た。
本屋ではこんなに見つからない。あっても数冊だ。だが、ここには確実に二桁の本がある。さすが図書館だ。
初級、中級、そして上級の各難易度の本が揃っている。同じのは無いようだ。どれも微妙に違うのだろうか。
とにかく読んでみる事にしよう。
まずは初級の本からだ。既に持っている本とどれだけ内容が違うのか気になるし、初心も大切だ。
生身は俺が買った本と大差なかった。魔法が使えなくなる点や不人気職、基本の四つの召喚獣などだ。だが、解った事もあった。
優秀な召喚士でも、せいぜい同時に召喚出来るのは三体が限度であり、通常は強い召喚獣を一体、サポートなどの使いやすい召喚獣を一体の、計二体を目指すのが良い、と書かれていた。
もっと早くこの本に出会っていればよかった。
スクトゥムゴーレムとベアルカスという、強い召喚獣を二体同時に用いる事は非推奨のようだ。
まずは強い一体か……。アルルがどの程度の強さは分からないけど、ここはやはりスクトゥムゴーレムになるだろう。サポートは、シルフとかの召喚獣でいいはずだ。
まずはこれに慣れる事にしないと駄目だろう。
これだけでも図書館に来たかいはあったものだ。
続いて中級の本を読んだが、こちらは特に得るものはなかった。
盾役として、スクトゥムゴーレム以上の召喚獣は見つからなかったし、特に急いで必要そうな召喚獣もいなかった。
次は気になる上級だ。初めて読む事になる。さすがに強い召喚獣ばかりだろうけど、契約出来れば頼もしいだろう。スクトゥムゴーレムは早くも二軍になってしまうかも?
さすがは上級だ。どの召喚獣も強そうだし、必要な魔力も高い。
盾役もそうだし、他にも回復や魔法使いタイプ、空を飛び斥候や奇襲なんてものも出来そうな召喚獣がいた。
これらは契約出来るか分からないけど、とりあえず召喚陣はメモっておいた。こういうときに、コピー機とかカメラがあれば便利なんだけど、それは仕方ない。
召喚獣の調査はこのくらいでいいだろう。
次は召喚獣の相性とか、アルルについて調べていきたい。
棚には、これまでのカタログ的なものではなく、召喚の歴史や研究とかの本もあった。これなら何か解るだろう。
まずは召喚の歴史からにしよう。
どれどれ……。約二千年前。召喚は大召喚士ユイ・トダによって確立された……?
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