10 アドバイスと相談
ちょっと短かった……
最初よりは戦えたけど、それでも駄目だった……。課題をクリアしたと思ったら、また新しい課題だ。
どうしたものか……。
とりあえず冒険者ギルドに戻り、クエスト達成の報告だ。
「はい、お疲れ様でした。ヨーモンキー討伐達成です」
「ふぅ、ありがとうございます」
「大分お疲れのようですね。何か問題がありましたか?」
そんなに疲れているように見えるのだろうか? 他の冒険者も少ないし暇なのだろう。受付のお姉さんがそのまま話しかけてきた。
「いえ。装備とか強化したので、余裕だと思っていたんですが……。それでも思ったよりも苦戦しちゃいました」
「えっと……。アキヒトさんとマリアさんはお二人ですよね? 人数の増強はされないんですか?」
「そうですね。俺達は二人なんですけど、他の街で約束してる三人組のパーティがあるんですよ。なので、合流するまで二人ですね」
「そうでしたか。あれ? それでも合わせて五人ですよね? パーティは六人までですし、お一人加えるというのはどうでしょうか?」
……そうだった。パーティって六人までじゃん。俺達はイヴァン達も含めると五人じゃないか。
って事は、後一人までは加入させても平気って事か?
と言っても、俺達にそんな冒険者に心当たりはない。
「うーん……。一人で活動している冒険者ですと……」
受付のお姉さんはやはり暇なのか。それとも俺達が心配なのか。
そもそも一人でやってる冒険者は、何か理由があって一人なのだろう。今更他のパーティに加わるというのは、難しいのではないだろうか。
「いらっしゃるにはいらっしゃいますが……。さすがに無理ですね……」
心当たりはあったようだが、やはり無理みたいだ。
「気長に探しますよ。それに、三人と合流出来ればいいだけですし」
「それもそうですが……。あ!」
良い事を思いついたみたいだ。やはり、ソロの冒険者に心当たりでもあるのかな?
「奴隷はいかがでしょうか? 冒険者の方で、結構使っている方多いんですよ」
一応紹介状も貰っているし、それは知っている。やはり奴隷という点で前向きになれないでいる。
「奴隷ですか……」
「確かに奴隷というと、あまり良い気もしない人も多いですが、お金で雇う労働者という感じです」
その後も色々と話してくれた。
奴隷と一言で言っても、その中身は色々あるらしい。
お金が無く自身を身売りした奴隷であったり、軽犯罪を犯した奴隷であったりだ。
軽めの犯罪は、所謂罰金を払えば執行猶予のような感じで奴隷にならずに済む。奴隷になってしまうのは、やはりそのお金が無い人が多い。
奴隷と言っても、売られるまではそれなりの待遇が与えられるらしい。といっても豪華な物ではなく、労働と引き換えに、衣食住が保証されるというものだ。
ちなみに重犯罪をした者は、強制重労働であったり、死罪になったりで奴隷には落ちないらしい。
奴隷に対しても、危害を加えたり、遊び半分で殺したりも出来ないようだ。奴隷にも人権があり、それが守られるらしい。
巨大な建造物を作らせるために、朝昼晩休みなく働かされていたり、人として扱われいないというイメージがあった。
どれもこれも、ゲームや漫画――実際にあった史実も含まれるかもしれないけど、そのようなイメージだった。
これまでの情報からだと、刑務所と囚人に近いのかもしれない。実際、軽犯罪を犯している奴隷もいるが、窃盗だったり詐欺だったりと、人を傷つける類は稀らしい。
正直に言うと、少し奴隷に対して嫌悪感が強すぎたみたいだ。
気が向いたら言ってみますと残し、冒険者ギルドにする。
人数が足りないというのは理解できる。でも、だからと言って奴隷を買うというのは、やはり抵抗がある。
ひとまずは、召喚獣の見直しをして、魔力と強さのバランスを考えなおす事にしようかな。
スクゥトムゴーレムもベアルカスも強い。が、重いのだ。ある程度強さを捨ててでも、もっと軽い召喚獣の方がいいかもしれない。もしくは、一匹に絞る方向のがいいかも。
数が多いと、それだけ俺の負担も増える。ここは前衛系で、スクゥトムゴーレムよりも強い召喚獣を探すべきだろうか……。
「どっちのがいいと思う?」
宿の部屋に戻り、休んでいるマリアに相談をしてみた。
実際に前衛で戦うのは、遊撃であるマリアだ。マリアの意見も聞いたほうがいいだろう。そう思ったのだが。
「そう……ね。ワタシは一人増やした方が良いと思うわ」
召喚獣の方向性について、どちらかと聞いたのに、全く別の返答が来てしまった。
「確かに、後一人までは加える事が出来るけど、冒険者ギルドの受付の人も言っていただろう? 良さそうなソロの冒険者はいないって」
「確かにそう言っていたわ。でもその後こうも言っていたわ。奴隷がいいんじゃないかって。アキ、紹介状貰ったでしょ?」
「いやまぁ、そうだけどさ。やっぱ奴隷って抵抗があるっていうか……」
「アキの世界で奴隷というのがどういうものだったのか知らないけど、この世界では一般的なのよ。冒険者や商人の手伝い、傭兵だったりね」
そもそも、奴隷なんていうシステムは、馴染みがない。現代社会に於いて、そんなシステムは存在しないからだ。ゲームや漫画、もしくかずっと昔の事、それが俺にとっての奴隷というシステムだ。
馴染みがないし、いいイメージは何一つないのだ。今日、色々話を聞けたから、少しはマシかなって思えたけど、それでも抵抗はある。
「……マリアはいいのか? 俺が奴隷を買っても。その奴隷をパーティに加えても」
「正直に言うと、あまりいい感じはしないわ。二人で頑張りたいって思っているから。でも、そのせいでアキの負担が大きくなってしまう方がイヤなのよ」
確かに、出来れば俺も今のままでパーティで頑張っていきたいと思っている。そのために強い召喚獣だって契約した。
「そう……か。分かった。行くだけ行ってみるよ」
マリアに心配を掛けないためにも、とりあえず見るだけ見てみるか。
奴隷だろうがなんだろうが、それで冒険がうまくいくなら、それでいい。マリアの負担も減るだろうし、俺も楽になるだろう。
「えぇ。いい男性がいればいいわね」
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