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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
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09 リベンジとそれぞれの活躍

「ありがとうございました」

 マリアの武器も新調した。順当にランクアップしたレイピアだ。このランクの武器には珍しく、ちょっとした魔法効果が加えられている。

 といっても、極僅か、敏捷が上昇するというだけのものだ。

「いいのが買えたな」

「ありがとうね、アキ。これでもっと戦えるわ」

 怪我をして欲しくないので、そんなに戦いがられても困るのだが……。まぁ、ゴーレムがしっかりカバーしてくれれば大丈夫だろう。

「明日から、また頑張りましょうね」

「そうだな」

 装備も整えたし、盾役もいる。それに攻撃面だって大丈夫なはずだ。前回のような戦略的撤退は、もうしなくて済むだろう。


 翌日。何日かぶりにクエストに挑むため、冒険者ギルドを訪ねた。

「さて、今日はどの依頼を受注するか……。ん?」

「むぅ……。今日も駄目でした……。お父様も駄目だっていうし、もう! どうしたらいいのよ!」

 なんのクエストを受注するか考えながら冒険者ギルドに入ると、そこには女の子がいた。この前、冒険者ギルドから出て行ったあの女の子だ。ベテランメイドさんも一緒にいる。

 改めて見ると、場違いだ。

 女の子は一ニ歳くらいだろうか。綺麗で高そうな服を着ているし、上品に見える。この前もお嬢様とか呼ばれていたし、メイドさんも連れているし、やはりお嬢様?

 その女の子は、何やら怒っているように見えるが、やはり俺達に気づかずに勢い良く出て行った。

「お、お嬢様! お待ちくださいませ!」

 そして、これまたベテランのメイドさんが後から追いかけていった。


「なんだったんだ……」

「さぁ……?」

 訳も分からないまま、賑やかないつものギルドの風景が広がっている。

 誰も不思議がらないのだろうか?

 とりあえずクエストを選ぶ事にする。

 前回は、木の魔物のトレントの討伐と、その素材納品だった。今回は……これだ!

 クエストを選び、受付へと提出する。ちなみに、受付には女性しかいない。特に知り合いもいないので、空いている所に向かった。

「すみません、これをお願いします」

「はい……。ヨーモンキーの討伐ですね。こちらが五匹が達成基準となっております。冒険証を……あ、ありがとうございます。では確かに。頑張ってください」

 そう、前回の敵――猿だ!

「どうもです。それで聞きたい事があるんですけど」

「はい? クエストに関する事でしょうか?」

「いえ……。さっきの女の子って、何かあったんですか? なんか怒ってましたけど」

 誰かに聞いてみたかったけど、知り合いの冒険者もいないし。ならば、受付の人に聞くのが確実だろう。

「ワタシも気になっていたわ。冒険者なのかしら?」

「えーとですね……。先ほどの方は、貴族様でして。ダンジョンに潜ろうとされていたのですが……。その、人数が余ってしまったので、待機という訳でですね」

 本物のお嬢様だった。王都なので、貴族様がいるのはそうだが、何故こんな所に……って貴族ってダンジョンに潜るのか?

「ダンジョンに、ですか?」

「はい、そうです」

「貴族様がですか?」

「はい。……もしかして、王都は初めてだったりしますか?」


 その後、受付嬢から色々と教えて貰った。

 王族や貴族は、自治のため、そして民の安全のために、戦闘訓練をしていたり、魔物を倒すのが責務らしい。武闘派と呼ばれているそうだ。

 さっきの女の子――貴族も、そのためにダンジョンに潜ろうとしたが、他のパーティに断られてしまっているそうだ。貴族を断るなんて……。大丈夫なのだろうか、と思ったのだが……。

 その断っているパーティというのが……なんと、この国のお姫様が率いるパーティらしい。

 その断る光景も、ここ王都の冒険者ギルドでは、日常の事のようだ。

 貴族のお嬢様の次は、お姫様です。なんか一気に、王都感が出てきました。というか、さっきの女の子は既に二回、そのお姫様にしろ、今後遭遇する可能性があるという事になる。

 ……何か失礼をしてしまって、捕らえられたりしないだろうか……。もしかして、既に失礼をしてしまっているかも!

 不安になったのだが、さすがに魔物を倒している武闘派の方々は、細かい程度では問題にしないようだ。

 それもそうかもしれない。ダンジョンにいる冒険者全員に、敬う態度を徹底させる不可能だし、戦闘中にはそんな事やっていられないだろう。

 武闘派もそれが分かっているので、冒険者ギルドなどに降りてきているときは、常識的に敬ってくれればいいそうだ。

 そういう意味で、俺はセーフなのだろうか? 何もしていないし……。まぁ何も言われなかったし、平気なんだろう、うん。


「まさか王族や貴族がこっちにまで来ているなんてね……」

「びっくりしたぞ……。今度からは気を付けないとなぁ」

 その辺にいる冒険者に見える人が、実は貴族だったりするかもしれない。

「あまり気にしないで、変に失礼な態度を取らなければ大丈夫よ。……多分」

 多分では困る……。まぁ、それっぽい人がいたら、会釈をするなりすればいいだろう。それに、元々他の人には礼儀正しく接しているつもりだ。敬語とかは怪しい部分もあるかもしれないけど、ですます調で話せばそれっぽいだろう。

「気をつけるようにするか。まぁ遭遇する機会も少ないだろうし、平気だろう」

「えぇ、気を付けるわ。それじゃ行きましょうか」

 王族や貴族の事を頭の隅っこに置いて、ヨーモンキーの討伐へと向かった。




「はぁはぁ……これは……疲れるな……」

「アキ、大丈夫? 一旦戻る?」

「あぁ……。ごめん、ちょっと休憩したい」

 万全の体制で挑んだヨーモンキーだったが、その戦績はというと、引き分けだ。

 いや、クエスト自体は達成しているから、勝利か? それでも、思ったようにいかなかった。


 スクゥトムゴーレムは十分に活躍してくれた。

 思った通りの防御力で、盾役として敵に対応していた。ヨーモンキー二匹相手には防戦一方だったが、危なげもなく盾役として安心して任せていられた。

 ベアルカスも活躍した。

 簡単に契約出来たから、もしかして弱いのかもと思っていたが、そうではなかった。ベアルカス、ごめん。

 熊故の、力強さと素早さでヨーモンキーと交戦。多少の攻撃を喰らっても、体力も十分にあるらしく問題がない。タイマンならば十分に戦えて、二匹相手になると少し危なっかしい感じがした。

 装備を新調したマリアも大活躍だ。持ち前の素早い動きで、スクゥトムゴーレムが抱えているヨーモンキーを攻撃したり、ベアルカスが劣勢の時は助けに行くなど、遊撃として文句の付けようがない。

 問題は俺だ。スクゥトムゴーレムとベアルカスは、うまく指示をしないとうまく動いてくれない。遊撃として、自己で判断し行動するマリアとは違うのだ。

 今までは、補助や遠距離からの攻撃指示だったので、楽ではあった。

 だが今回からは前衛二匹を加えての召喚術となる。

 目まぐるしく変わる戦局。敵の状態や増援、奇襲などに注意しながら、その都度指示をしないといけない。

 例えば、スクゥトムゴーレムに対して、ヨーモンキー二匹の対応を指示すれば、その二匹に対しては絶対に後ろに通さないように守ってくれる。

 ここに三匹目が来た場合に、その三匹目はスルーしてしまうという事があった。

 スルーされたヨーモンキーは、遊撃であるマリアが対処したり、それが間に合わなければ俺の所に向かってくる。

 俺は俺でなんとか対応はしたが、ノームなどを召喚したりの防戦一方で、マリアの到着まで逃げたりするのでいっぱいいっぱいだった。

 もちろん、スクゥトムゴーレムに『三匹目も頼む!』と指示すれば、守ってくれるだろう。

 その指示が追いつかなかったりなんなりで、結局ぐだぐだな戦いになってしまったのだ。

 召喚士の不人気の理由の一つ、召喚獣の指揮の大変さというのが身を持って分かった。

 さらに、魔力の点でも、結構厳しかった。

 潤沢な俺の魔力を持ってしても、マリアとスクゥトムゴーレム、それにベアルカスの常時召喚は、魔力を喰い過ぎてしまうようだ。

 盾役のスクゥトムゴーレムだけは、念のために常時召喚しておきたかったので、ベアルカスの常時召喚を止め、戦闘時のみにしたが、それでも魔力の消費は大きかった。

 常時召喚はマリアとスクゥトムゴーレム、戦闘時はベアルカスを加えて、緊急時にシルフやノームを追加で召喚となると……。指示の面でも魔力の面でも限界だった。

 今も、戦闘を終えたばかりで、息も上がっているし、魔力も結構消費している。

「くそ……。召喚獣を揃えて攻撃も防御も大丈夫と思っていたのに……。まさかこんな事になるとは」

「確かに、ゴーレムもクマも強かったけれど、アキは大変だったわね。怪我はない?」

「それは大丈夫だ。かすり傷だったし、それも治したから。ちょっと休憩したら、戻るか……」

 少しの休憩の後、クエストもクリアしているので、引き上げる事にした。


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