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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
42/126

08 冒険者街の本屋さんと新たな仲間たち

 本屋はすぐに見つかった。

 本屋と言っても、冒険者向けの区画にある本屋だ。なので、魔物やダンジョン、その他冒険者向けの本が置いてある。

 店自体はそこまで大きくはないが、所狭しと並べられているので、品数は多いだろう。多少古臭い感じがして、中古本屋という感じだ。本の匂いが結構する。嫌いな匂いではない。

 客は少しいるが、大盛況でもない。静かだし、ゆっくりと目的の物を探すとするか。

 探しているのは、もちろん召喚術の本だ。

 今持っているのは、初級向けの本しかない。さすがにそれでは力不足だろう。

 実際、この前もかなり厳しかった。いくら魔力が高くても、初級の召喚獣ではさすがに厳しい。

 中級、出来ればそれ以上の召喚獣を揃えたいものだ。


「アキ、これじゃないかしら?」

 マリアが見つけてくれたようだ。

 本屋だというのに、本は整列されていないため、中々見つからなかったのだ。

 ジャンルもバラバラだし、まるで宝探しだ。

 一応、俺も召喚術の本は見つけたが、前に買ったのと似たようなレベルの物だった。

「お、ありがとうな……。うん、よさそうな本だな」

「良かったわ。他にも探してみる?」

「そうだな。探してみるか」


 一◯分くらいは探しただろうか。さすがに、すべての本をチェックしたわけではないが、大体は確認したつもりだ。

 分かりやすいタイトルが付いていればいいが、中を見てみない分からないような本も、中にはあり、探すのに手間取った。

『召喚術』というタイトルが含まれているのを、半ば機械的にチェックしたが、創作の話――恐らくは小説の類と思われるが、そんな物も中にはあった。

 ちょっと立ち読みしてしまったが、召喚士は不人気職なはずなのに、その話では主人公が英雄のような書かれ方をしていた。少し面白かったが、さすがに参考にはならないと思い、そっと本を棚に戻した。

 他にも、召喚術の本は幾つか見つけたが、既に持っているレベルの物だったり、さっき保留にしたのと同じものだったりと、高度な内容の本は見つけられなかった。

 一応、店員にも確認したが、全ての本を把握している訳でもなく、さらに召喚術の本は中々動かないため、どんな本があるかどうか不明との事だった。

 結局、マリアが見つけてくれた本を購入する事にした。

 描かれている召喚獣は強そうだし、推奨魔力が記載されている召喚獣もいる。それによると、大体五◯から六◯くらいのが多いようだ。

 前の本には書かれていなかったが、所詮初級だ。一◯とかニ◯くらいが目安だったと思う。それに比べると、一気にレベルは上がる訳だ。

 今契約している召喚獣に愛着が無い訳ではないが、上位互換のがあったら呼ばなくなってしまうのだろうか。……少し可哀想なのかな?


「ありがとうございましたー」

「いい本が買えたな。ありがとうな、マリア」

「それなら良かったわ。それで、良さそうな召喚獣は載ってたの?」

「あぁ。ちゃんと防御向けの召喚獣が載っているのは確認したさ。それに、前衛の召喚獣も幾つか載っているみたいだしな」

 堅そうな召喚獣で防御に役立つ召喚獣が載っているのは確認済みだ。推奨魔力も六五と書いてあるし、俺なら問題ないはずだ。

「そう。なら早速契約かしら?」

「そうだな。宿屋に戻ったら、試してみるよ」

 魔法陣を描くのに必要なペンと紙も購入してある。初級の時は必要なかったが、さすがにこれくらいのになると必要になるみたいだ。


 初級レベルの召喚獣と契約する場合は、本に載っている召喚陣をそのまま使うことが出来た。初級故の手軽さである。それでもかなりの魔力が必要になるので、不安な人は、自分で召喚陣を描くといいらしい。

 さすがに中級くらいになると、自分で色々やらないと、自身への負担も大きいし、成功率も下がる。

「こんなもんかな?」

 召喚陣は、自分の魔力を込めながら描かないと意味がない。魔力を込めるというのがよく分からなかったが、すぐになんとかなった。

 描けば分かるのだ。

 それよりも、召喚陣自体を描くのに苦労した。複雑な上に、難しい柄とか多いのだ。絵心がない自分が恨めしい。

 これから契約しようとしているのは、盾役となる召喚獣だ。本には、大体の能力値(ステータス)、能力、特徴、外見などが載っている。中には一部情報が欠けている召喚獣のページもあったが、すべて判明している訳でもないようだ。

 それでも、盾役となる召喚獣は分かりやすかった。

 ごつそうな外見で、体力が高く、腕力も高めだ。対して、敏捷は低く、魔力は無いに等しい。分かりやすい能力値である。

「お疲れ様。うまくいきそうかしら?」

「大丈夫だろ。……多分」

 自分ではうまく描けているつもりだが、何しろ初めてなのだ。細かい所で失敗している、という可能性も無くはない。失敗している場合は、召喚士への負担――つまり、俺の魔力を多く喰ってしまうとか、それで最悪契約失敗という事になる。

 いかに魔力が規格外でも、さすがにこのレベルの召喚獣との契約は、召喚陣無しでは失敗してしまうかもしれない。

 念入りに、何回も自分が描いた召喚陣をチェックをして、望む。

「……よし、行くぞ!」


 召喚陣に魔力を注ぎ込む。

 ……まだか? 結構な量を注ぎ込んでいるはずなんだが……。一向に光らない。

 さすがは強そうな召喚獣だけある。しかしも、このままでは困る。

 自分の魔力総量というのが、良く分かっていない。一般に、魔力が枯渇しそうになると、気分が悪くなったりする。枯渇すれば、気絶だってするし命の危険もある。

 実際、俺はそれで一回死にかけた。

 それまでの生活や戦闘で特に問題はなかった。今の魔力値になれば、さらに問題はないはずだ。それなのに、一向に終わりが見えない現状。

 ふと顔を上げると、マリアが心配そうにこちらを見ていた。

 ちなみにここは宿屋……ではなく、冒険者ギルドが保有する広場だ。訓練場と言ってもいいかもしれない。

 マリアには、一応離れていてもらった。特に何も無いとは思うのだが、念のためだ。

 これから召喚しようとしているのは、さすがに以前のような小さい召喚獣ではない。そんなのを宿屋の部屋内で行ったら……部屋を破壊してしまうだろう。事前に気付いてよかった。

 時間帯の問題なのか、それともそもそもの利用者が少ないのか、俺達以外には誰もいない。その点で、ひっそりと召喚することが出来ると安心していたのだが……。召喚出来ないのでは意味が無い。


 一旦やり直そうかと思っていた時、召喚陣が光りだしているのを感じた。

 もう少しだ! 気合を入れて魔力を込める。すると、輝きが一層増し……、目の前に巨体が現れた。

 やった……! 結構魔力を使ったし、疲れたけど、召喚出来た。

 目の前には、大きな盾を持った巨体――ニメートルくらいだろうか。威圧感があり、強そうだ。

 これが俺の召喚した召喚獣、スクゥトムゴーレムだ。特徴は、その盾と巨体から分かるように、盾役――つまりタンクだ。

 俺達のパーティの弱点である、防御面を担う召喚獣である。

 ゴーレムといえば、ダンジョンボスで苦戦したのもゴーレムだった。あれは砂だったが、砂故の防御の特徴を持っていて厄介だった。

 このゴーレムが持っているのは盾だけだが、その巨体と、石で出来ている全身から繰り出される打撃も、十分は攻撃力を持っているだろう。防御重視で、余裕があれば撃退する。なんとも頼もしい召喚獣である。

「守りはよろしく頼むぞ。スクゥトムゴーレム」

「ゴゴゴ……」

 ……どうやら喋ることは出来ないみたいだ。上位の召喚獣になれば、知性とか出てくるのが、ゲームや漫画のありきたりな話だが、それはファンタジーということだ。

 でも、こちらの言う事は分かっているみたいだし、意思疎通は出来ている……だろう。

「……それじゃこれからよろしくって事で。一旦戻すぞ」

 召喚したままでは邪魔になるし、今はダンジョンの中でも無いので、解除をする。

 しかし、思ったよりも手間取ってしまった。俺の魔力でこんなに苦戦するなんて……。他の召喚士だったら、もっと疲れるんじゃないのか?

「アキ、お疲れ様。無事に出来たのね」

「あぁ、ありがとな。苦労したが、なんとか出来たぞ。頑丈そうなやつだったし、これなら大丈夫だろう」

「そう、良かったわ。それでも、もう一体もこのまま契約するの?」

 実は、他にも召喚したい召喚獣がいる。防御面は、スクゥトムゴーレムでいいとして、後は攻撃面も補強したいのだ。

 なので、買った本に良さそうな召喚獣がいたので、それも契約しようと思っていたのだが。

「思ったより魔力を使っちゃったし、明日にするよ」

「そうね。大分疲れているみたいだし……。そのほうがいいわよ」


 翌日。昨日と同じ訓練場に来ていた。

「よし……。描けたっと。それじゃ、まだ手間取ると思うから、心配しないでくれ」

「頑張ってね、アキ」

 召喚陣を描き、挑む。昨日は手間取ってしまった。これくらいのランクの召喚獣だとそういうものなのかもしれない。なので、今日これから行うのも、同じくらい手間取るはずだ。

 事前に気合を入れておけば、不安も何も無い……はずだ。

「よし……行くぞ!」

 そんな事を考えながら、召喚陣に魔力を注ぎ込む。

 するとどうだろうか。昨日よりもかなり早い段階で、初級の召喚獣と同じくらいの魔力量で、召喚陣が光りだしたではないか!

 驚きながらも魔力を注いでいると、やがて目的の召喚獣が姿を現した。

 そこにいたのは、体長一三〇ほどの熊である。

「あれ……? もう出来たのか?」

「クマー!」

「クマー? あぁ、よろしくな」

「クマクマー!」

 召喚したのは、熊型の召喚獣、ベアルカスだ。腕力、敏捷、体力に優れている、攻撃重視の前衛タイプだ。反面、魔力もないし、特殊能力もない。攻撃はその打撃と爪で行う。

 何故熊を選んだのかというと、山というか森の中では、やはり動物タイプに限る。中でも熊は、その頂点近くに位置するはずだ。

 他にも、鳥系とか、犬系とか、惹かれるのもあったが、ここは分かりやすい攻撃力を取ったのである。

 しかし、熊というと実際は猛獣なんだろうけど、目の前にいるベアルカスは、少し愛嬌があるというか、そんな感じに見えた。少しデフォルメされていると言うか……。漫画調か?

 強そうには見えないのだが……。しかし熊だ。何より、推奨魔力も高かったはずだし、強いのだろう。

「まぁ……。ダンジョンでは頼むな。今は休んでてくれ」

「クマ!」

 弱かったらどうしようか……。その時に考えるとするか……。

「アキ? もう終わったの?」

「あぁ……。なんかあっさり出来ちゃった」

「ふーん……。それ、大丈夫なの?」

 昨日のゴーレムが手間取って、強そうだったために、今回のあっさり具合に、マリアも不安なようだ。

「分からない……。実戦で使ってみないことには……。ま、まぁ。ゴーレムは強いだろうし、それならそれで、他のを試すさ」

「そうね。……ワタシだって、頑張るからね?」

「そうだな。頼むよ、マリア。それじゃ武器を見に行くか」

 ともあれ、盾役は召喚出来たし、マリアも今のままの戦闘スタイルだ。保留にしていた武器を買いに行くことにしよう。


 それにしても、何でベアルカスはあっさり召喚出来たのだろうか。やはり相応の強さしか持っていない召喚獣なのか? それとも俺との相性とかあるのだろうか……。

 魔法にだって属性というのがある。向き不向きの属性だってあるはずだ。同じように、召喚獣にもそういうのがあるのかもしれない……。

 それとも、昨日の召喚陣に問題があったのか? どこか失敗していたりしただろうか。今日はうまく描けたから、あっさりいったとか?

 うーむ……。分からない。

 もしも、相性とか召喚陣の描き方が関係するなら……。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

スクゥトムゴーレム:(スクゥトム)+ゴーレム。たて座から。

ベアルカス:(ベア)+こぐま座由来。

命名には苦労しますが、星座やギリシャ神話を元にしようと思います。

ネタの宝庫ですしね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 定番なのは家事全般のメイド、盾となるゴーレム系、空からの偵察用鳥系、匂いに敏感で夜目もある獣系は必須よな。
2020/01/27 13:51 退会済み
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