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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
二章 ~王都グーベラッハ~
35/126

01 王都グーベラッハと冒険者ギルドの日常

新章です。

第三者視点です。

 王都グーベラッハ。

 その名の通り、国王が住む王城がある都であり、この国の名前でもある。もちろんこの国で最も大きく、最も栄えている都である。

 遠くからみると、ちょっとした山の様になっており、その中央には城が見える。

 その城こそ王族が住まう城であり、王都の象徴でもある。中央は王族や高い位の貴族が住んでいる区画で、騎士団や警護を行う兵士などの詰め所もここにある。城の周りは防壁で囲まれており、防御は万全である。

 その王城のある区画より一段下がった部分には、他の貴族や裕福な商人などが住む区画がある。もちろん平民が立ち入る事は通常は出来ない。ここも周りには防壁があり、平民が入らないように門番が立っている。

 そのさらに外側の一段下がった部分、王都の一番の外側は平民が住む区画である。最も広く最も人が多い。冒険者ギルドもこの区画に構えている。もちろん、この区画も周りには壁が建っており、王都の玄関が存在する。

 この世界にはないが、知っている人が遠くから見れば、まるで三段のちょっとしたウエディングケーキのように見える、それがこの国の王都である。

 北と西には山がそびえ立っており、東と南には平原が広がっている。

 山にはダンジョンがあり、冒険者や騎士や兵士の訓練に人気の場所となっている。

 平原には中型や大型の魔物はおらず、旅の商人が安心して歩けるようになっている。


 貴族はその国の民を守る事を役目としており、そのために日夜仕事をしている。

 農地の管理や民に危害を加える魔物への対応、街道の整備などその仕事は多様だ。その内容故、貴族は二種類に分類できる。

 頭脳派と武芸派である。

 武芸派といって頭を使うのが苦手ではなく、魔物を討伐したり騎士の訓練行い、武の面で国により貢献している貴族である。

 それは王族も例外ではない。


 そんな王族の武の代表とも言える人物、それがこの国の第三王女のエリーザ・ブリッツェ・グーベラッハ。通称姫騎士である。

 日夜ダンジョンに潜り、魔物を狩り鍛錬を行っており、その実力は折り紙付きだ。

 さらに、見る人が思わず立ち止まってしまう美貌も持っており、王女たるカリスマ性も兼ね備えている、天が二物も三物も与えた存在、それが姫騎士である。

 そんな姫騎士は、いつものようにダンジョンに向かうべく冒険者ギルドにいた。普段は王族はおろか貴族さえ立ち入らない場所であるが、先の通り武芸派はダンジョンに潜るのは普通であり、姫騎士が冒険者ギルドにいるのも普通だったりする。

 無論、だからと言って平民が気軽に接する事は出来ない。対応する職員は、教養と礼儀が完璧な貴族担当の者に限られるし、話しかける者も限られる。

 そのはずであるが、姫騎士はその美貌とカリスマ性、そして強さをも持ち合わせているため、平民や冒険者に人気が高く、姫騎士自身も階級関係なく民に優しかった。そのため、話しかける者も多い。


「エリーザ様、どうかお気をつけを」

「エ、エリーザ様! あの、握手してもよろしいでしょうか!」

「姫騎士様、どうか私をパーティに。力には自信があります!」

「そんな奴よりも(わたくし)めの方がお役に立てますわ。私の魔法なら、魔物なんて余裕でございます!」

「荷物持ちでも構いません。姫騎士様、是非ご一緒したく……」

 このように、姫騎士の身を案じる者、姫騎士に心酔する者、そしてなんとかパーティに入れてもらおうとする者。

 同じパーティになれば、姫騎士と一緒にいられる。その美貌と地位と強さ故に、姫騎士本人だけではなく、パーティメンバーも注目されるだろう。つまり、同じパーティに入り名前を売ろうとする者もいた。

「あぁ、うむ。(みな)の心配、ありがたく思う。握手は、すまぬ。王族故、簡単には出来ぬのだ。分かって欲しい」

「い、いえ。ありがとうございます!!」

「すまぬな。それとパーティの誘いも嬉しく思うが、それもすまぬ。見て分かる通り、私には既に良き同行者がいる。そなた等が決して良くないという事ではないのだが」

「そう……ですか。分かりました……」

 大抵は、姫騎士の丁寧な対応で納得し引き下がる。彼らも本気ではなく、万が一にもうまくいけば御の字、くらいに考えているためだ。

 だが、中にはそれでも強引に迫る者もいた。

「で、でも! (わたくし)の方が……!」

「お嬢様には我らが付いております。ご安心下さいませ。それとも、我らの実力にご不満がおありでしょうか?」

 そういう者には、姫騎士のパーティメンバーであり、姫騎士の執事であるセバスが対応を行っている。

 執事としての能力はもちろん高く、戦闘力も高い。仮に冒険者に当てはめれば、ランクBに相当するだろう。

 姫騎士のパーティメンバーには他にも、国の騎士が二名、仲が良く信頼のおける伯爵家から兵士二名で、姫騎士とセバスを含めて、パーティとしての上限であるこの六名が、姫騎士のパーティであった。

 どの者も優れた人材であり、彼らを超える冒険者はそうはいない。

 そのため、姫騎士のパーティに加わるのは実質不可能なのであった。彼らを超える人材など、そうはいない。

 先ほどのセバスは暗に、

『パーティに加わりたいのであれば、もちろんお強いのでしょう? 是非お手合わせをしたいものですな』

 と威圧しているのある。

「ひっ! い、いえ、そのような事では決して……。申し訳ありませんでした……」

「いえいえ、姫様を心配するお気持ち、感謝致しますぞ」

 冒険者が姫騎士に声を掛け、断られて、それでも食い下がる者は威圧される、このような一連の流れは、日常の光景であった。


「姫様! 今日こそ私を連れて行って下さい!」

 そんな光景には続きがある。

 先ほども他の冒険者が断られたばかりなのに、果敢にも、そして無謀にも声を掛ける少女がいた。

 冒険者相手ならば、またセバスが対応をすれば良い。しかし、この少女相手には姫騎士自らが()()必要があった。

 その少女は、伯爵家の娘であり、姫騎士とも仲の良いカタリーナ・クルーグハルトだったからだ。

「カタリーナ殿。嬉しいのではあるが、ダンジョンは危険だ。お父上も心配されるであろう」

「しかし姫様。私は弓と魔法が得意です。姫様のお役に立てることでしょう」

「確かに貴女の弓と魔法はいい腕だ。しかし、魔物は厄介であり、ダンジョンも一筋縄ではいかない。浅い層ならば良いが、我らが向かう奥深くでは苦戦するであろう」

「確かに私はまだ未熟なのかもしれません。しかし、姫様の事が心配なのです。お供をさせて下さい」

 姫騎士からすれば、カタリーナは妹同然に可愛がっている女の子であり、そのため強くは断れない。しかし、ダンジョンの浅い層ならばいざというときに守ってやれるが、深い層ならばそうはいかない。そのくらいになると、カタリーナの実力では、かなり辛くなるレベルであった。

「心配してくれるのは嬉しいが、既にクルーグハルト家からは優秀な兵士をお借りしている。クルーグハルト家は、その私兵を信用出来ないという事か?」

 パーティメンバーである伯爵家からの兵士二名というのは、クルーグハルト家に所属する兵士であった。

「いえ、そういう訳ではありませんが……」

「カタリーナ様。クルーグハルト様も心配なさるでしょうし、申し訳ございませんが、本日はこの六名で潜らせて下さいませ」

「う……。セバスはいつもそう言うな。分かった、分かりました! 次こそは絶対ですからね!」

 傍から見ていると、カタリーナが我儘を言って、姫騎士とセバスが宥めているようにしか見えないが、さすがにそれを言える者はこの場にいない。

 もちろん、カタリーナがパーティに加わることが出来る、()の機会はいつまでも来ない。いつも何だかんだで断られてしまい、カタリーナがパーティに加わる事は出来ない。だからこそ、カタリーナの我儘も冒険者ギルドでの日常の一幕になっているのであった。

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