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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
一章 ~ワーズヴェシン街~
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25 目覚めと面会

「ん……?」

 天井が見える。どこだここは。どこかの部屋か? 記憶がぼんやりしている。

「あ、気が付きましたか。ちょっと待っていてください。先生を呼んできますから。あ、まだ起き上がらないで」

 誰かに声を掛けられた。体を動かそうとするが、うまく動くことが出来ない。

 何が起こったんだ。

 確か部屋で久々にゲームをしていたはずだ。

 でもここは俺の部屋じゃない。ベッドに寝かされているようだし、ここは病院か?

 部屋にいたのになんで病院にいるんだ。それに体が動かないし、一体何が起こったんだ?

 強盗にでも襲われたか? それとも火事か? どちらにしろ生きててよかった……のか?

 今がいつだか知らないが、受験勉強に影響は出ないだろうか。さすがに二浪は親も怒るだろう。いや、そもそもこの状況を心配して許してくれるだろうか。

 まずは状況が知りたい。俺は無事なんだろうか。

 誰かが部屋に入ってきた。さっき言ってた先生ってやつかな。

 白衣を着たおっさんが近づいてくる。軽く診察をしたようだ。先生、俺は大丈夫なんですか?

「アキヒトさん、よかった。貴方は三日間ずっと寝ていたんですよ。まだうまく動けないでしょうが、それは魔力枯渇による影響なので、もう二三日すれば大丈夫でしょう。それまでは安静にしていてください。何かあれば呼んでくださいね。怪我は治しましたし、特に後遺症もなかったです。あぁ、お友達が来ているのでお通ししますね。少しならお話してもいいでしょう。では私はこれで」

 先生はそう言って、部屋から出て行った。

 入院ってのはしたことないが、結構簡単な診察だったな。そんなもんなのかな。

 しかし、三日間か。結構短くてよかった。数日安静にしてれば大丈夫って言ってたし、気分転換代わりになるかな。しかし、妙なことを言っていたな。何かが枯渇した? とか。


「ア、アキヒト君! 気が付きましたか。よかった。三日間ずっと意識がなくてどうしようかと」

 また誰かが入ってきた。さっき言ってた友達か。お見舞いかな。男一人に女二人だ。

 お見舞いにきてくれる女の子なんていたっけなぁ。従妹か? それにしてはちょっと雰囲気が違うし、それに従妹は一人だ。高校時代のクラスメイトは……さすがに女の子は来るわけないよなぁ。

 うん。良く見ても、三人ともクラスメイトではなかった。

「アキヒトさん……良かったです……。痛みはあるですか? 大丈夫ですか?」

「ほらー。アッキーなら大丈夫って言ったじゃん! でも良かったよ!」

 なんだ? 三人とも馴れ馴れしいな。名前で呼んでくるし、アッキーってなんだ。

「でも全身酷い怪我でしたし、魔力も空っぽだったんですよ……。このまま死んじゃうじゃないかって、私心配してたです!」

「そうだね。アキヒト君だけでも無事で良かったよ。マリアさんはまだ……見つかってないんだ、ごめん」

「ちょっと、イヴァン! まだアッキーは起きたばっかなんだから、マリアさんの事言っちゃダメでしょ!」

 全身怪我……? 魔力……? マリア……?

 あぁ、そうだ。似たようなボケをやった記憶がある。

 俺は昌人。マリアに呼ばれて異世界に来て、召喚士で冒険者になった男だ!


 お見舞いに来てくれたのはイヴァン達だ。口ぶりからすると、マリアは行方不明って事なのか?

 えっと、盗賊に襲われて、決死の思いで戦って、倒したはいいけど、魔力が切れたのか……。

 あぁ、そうか。魔力が無くなったのか。今は……。うん、大丈夫そうだな。

「大丈夫だよ、イヴァン、ミネット、ローザ。それにマリアの事も心配はないさ」

 まだ満足に動けないけど、頭は働くし、口も動く。魔力も十分に回復している。ならば。

「来い! マリア!」

 念じ、叫ぶ。

 部屋の中に光が集まり、人の形を成し、そして……マリアが現れた。

「アキ……? アキなの? 本物……よね?」

「あぁ、本物だよ、マリア」

「無事? 無事なのよね? 怪我は平気なのよね? よかった……」

 泣きながら抱きついてきた。顔が近い。可愛い。ってか痛い。

「お、落ち着けマリア。俺は大丈夫だ。ってか離れてくれ、痛い」

「ぐず……。えっ、あ。ご、ごめんなさい」

「俺は大丈夫だよ」

「良かった……」

「ただいま、マリア」

「おかえり、アキ!」


「えーっと、いいかい? 状況分かってないんだけど、どういう事なんだい?」

 おっと、イヴァン達がいるのを忘れていた。

「あぁ。マリアは俺の召喚獣って事は話したよな?」

「はい、聞いたです」

「召喚獣は、術者の魔力が無くなると、消えちゃうんだよ。俺はマリアを常時召喚していたけど、俺の魔力が無くなったから、解除されたんだな」

「な、なるほど。確かに召喚獣はそうだったね……。マリアさんが召喚獣だって事を忘れていたよ……」

「ん? マリっちも無事って事だよね? 怪我も無さそうだし!」

「えぇ、ワタシも大丈夫よ」


 マリアも無事と分かった後で、俺達はイヴァン達から状況を聞いた。

 俺は全身に怪我を負い、魔力もすっからかんの状態で倒れていたところを、心配で探しに来たイヴァン達に保護されたようだ。

 怪我は回復魔法で治ったが、無茶したせいで意識が戻らなかった。なので、冒険者ギルド経由で病院に運び、一連の事を冒険者ギルドに報告して、俺が目を覚ますのを待っていた。

 盗賊は全滅したらしい。冒険者ギルドが調査を派遣したが、全員死んでいるだろうというのが調査結果だった。

「そうか……。助けてくれて、ありがとうな」

「僕達は見つけただけだよ」

「見つけてくれなければ、俺も死んでいただろうさ」

 ざっと情報を聞いた所で、イヴァン達は部屋から出ていった。俺も目を覚ましたばかりだし、長話をするのも疲れるだろうという気遣いだ。

 マリアは俺のそばにいた。マリアの事も、イヴァン達が冒険者ギルドに報告してくれるようだ。

「まだ動けないし、しばらく安静だってさ」

「ワタシがそばにいるから、寝てていいわよ」

「ありがとな。さて、んじゃお言葉に甘えて寝ることにするよ。おやすみ」

「おやすみ、アキ」


 三日後。

 あれから俺はベッドの上で言う通りに安静にしていた。まぁ最初の一日はほとんど動けなかったので、強制的な安静だ。

 かなり回復してきており、日常生活には支障がないくらいになっていた。

 今日まで、マリアはかなり面倒を見てくれた。何でもかんでも『ワタシがやるわ!』状態だった。

 さすがにトイレは病院の人にやって貰った。さすがにマリアにそんな事はさせられないし、やってもらっても俺が困る。

 まぁどっちにしろ、恥ずかしかったのは変わりないが。

 もう問題はないという事なので、退院という事になった。日常生活には問題はないが、過度な運動はしばらく避けるようにと注意と受けた。

 通院とかしなくていいのかな? 薬とかも、って魔法で治るんだな。後お金は払わなくていいんだろうか。

 結構心配していたんだが、請求はされなかった。代わりに、冒険者ギルドに出頭せよと何故か医者言われた。どうやら、ここは冒険者ギルド提携の病院らしい。

 にしても、出頭? 何か悪い事でもしたかな……。思い当たるのは盗賊の事だけど、あれは正当防衛みたいなものだし。

 とりあえず、行ってみるか。


 冒険者ギルドの受付に事情を話すと、二階の部屋へどうぞと案内された。

 案内された部屋に入ると、そこは質素ながらもしっかりとした部屋だった。

 机にソファ、棚などがあり、会議室というよりは、学校の校長室みたいな感じだった。

 二人の人が座っていた。

 一人はお婆さんだ。背は小さく、見た目からしてのお婆さんだが、なんか威圧感がある。

 もう一人はメガネを掛けたお姉さんだった。仕事が出来そうな、秘書みたいな感じだ。

「お、やっと来たの。まぁ座りなさいな」

「はぁ……分かりました」

 いまいち状況が飲み込めない。出頭というから、もっと取り調べみたいな扱いをされるのかと思った。

 勧められるままにソファに座る。

「そちらのお嬢さんも座りなさいな」

 マリアは立っているつもりだったのか? 俺の後ろにいたが、結局座った。

「さて、自己紹介をしようかね。私はモニカ・ヴィーベリ。この街の冒険者ギルド長じゃ。こっちの若いのはノーラ・バーリルンド。副ギルド長じゃ」

「ノーラです。よろしくお願いします」

 なんか偉い人が目の前にいた。まさかのギルド長と副ギルド長だと? この建物のツートップじゃないか! 一体何の用なんだ……。もしかして、逮捕とかそういうのはないよね?

「おや? 緊張しとるのかの。まぁ無理もないじゃろう。安心せぇ。別に二人をどうこうしようというつもりはないのでな」

 大丈夫なのか?

「まず確認ですが、お二人はアキヒト殿とマリア殿で間違いないですね?」

 この副ギルド長さん、殿付けだよ!

「えぇ。そうですが……。一体、何のお話でしょうか?」

「だからそう緊張するなと言うに」

「お言葉ですが、ギルド長。ギルド長が出てくれば、大抵の方は緊張されると思われます」

「ただの婆さんだというのに。全く」

 うーん。いい人なんだろうか?

「まぁわざわざ来て貰ったのはじゃな。盗賊団、デルバートについてじゃ」


 最近国を脅かしていた盗賊団――デルバート盗賊団が壊滅したという話だった。

 ある冒険者が発見し、冒険者ギルドが調査した結果、主だった幹部の死亡が確認された。構成員のほとんども人数的に死んでいるのが確認されたので、壊滅したと判断したようだ。

 状況から見て、何者かに駆逐されたと判断した冒険者ギルドは、人物を探す事にした。

「何でその人を探すんですか?」

 あの盗賊の名前を初めて知った。そういえば名乗ってなかったし、知りたくもなかったけど。

 しかし、 この周辺だけでなく、国を脅かすほどの盗賊団だったんだな……。よく勝てたものだ。

 それにしても、何故探す? 多分それは俺の事だろう。まぁあの時の事はなんとなく覚えてる。記憶の通りならば、盗賊を倒したのは俺だ。

 最初はゲームのつもりだったけど、朧げながらも記憶には残っていた。

 なので警戒する。何の目的で探すのか、気になってしまうからだ。

「いや何。実は盗賊の何人かには懸賞金が掛かっておってな。出来れば生かしたままというのが理想だったが、まぁ死んでいても構わないのでな。だから懸賞金を渡さないといけないんじゃよ」

 なるほど……。懸賞金か。そういう事もあるのか。

「なるほど。そういう事でしたか。それなら何故私達にその話を?」

「それは、お主達。正確にはアキヒトがその対象じゃからな。じゃから呼んだのじゃよ。まぁもっと前から呼んでいたのじゃが、怪我をしておったそうじゃしな。治るまで待っておったのじゃ。早く渡して仕事を終わらせたいのにのぉ」

「お言葉ですが、ギルド長。ほとんど私が事務処理をしたのですが……」

「私はギルド長だからいいんじゃよ! あぁ、そうじゃった。治療費は報奨金から引いておいたぞい。請求されんかったじゃろ?」

 あれ、バレてる? なんでだ? ってか治療費天引きかよ! いやいいけどさ。

「何故私がやったと?」

「はい。実は冒険証にそういうのが分かる仕組みがありまして。これは冒険者ギルドでしか調べる事は出来ないんですけどね」

「という訳じゃ。あぁ。調査のために冒険証は少し預かっておった。返しておくかの。おまけで能力値の更新をしたので、確認してみるといいぞ」

 冒険証……。そういえば忘れていたけど無かったのか。ってか本人いないのにそんな事していいのかよ。

「ノーラ」

「はい。こちらになります」

 まぁ返して貰えたしいいか。にしても、能力値は測ったばかりだしなぁ。そんなに変わってないだ……ん?

「あの……魔力の値がおかしいんですけど?」

「ほぉ? おかしいとはどういう事じゃ?」

 あぁ、おかしい。魔力が最早数字ではない。☆マークになっている。他の能力値も軒並み二倍ほどになっているのも不思議だが。故障か?

「いえ、数値ではなくてですね。なんだか☆マークになっているんですよ。故障ですかね?」

「☆マークじゃと?」

「まさか……!」

 おや、驚いている? 故障は珍しいのかな?

「ふむ。そちらのお嬢さんはどうじゃ? ☆マークはあるかの?」

「いいえ、少しずつ上がってはいるけど普通の数値よ」

 マリアは普通だったのか。なら俺だけか。

「ほぉ……。なるほどの。さすがはデルバードを倒すだけはあるのぉ。ちなみに、そちらのお嬢さんは召喚獣じゃろ?」

 なっ……! それもバレてる?

「あぁ、私くらいになるとそれくらいは分かるんじゃよ。誰かが言ったとかではないから安心するんじゃ。それにしても召喚士でデルバードをなぁ……。一体、どんな奴を召喚したんじゃ?」

「あの……それは……」

 マリアが召喚獣だってことは分かってしまうものなのか。それは意外だ。何者なんだ。ギルド長だけど。

 しかしなぁ……。何を召喚したかって、俺の世界のゲームのキャラなんだよなぁ。どう言えばいいのか。

「ギルド長。そういうのは普通の術者は晒さないものですよ。なので、アキヒト殿。言わないで下さい」

「むぅ。残念じゃの」

 助かった。しかし、副ギルド長さんはやはりしっかり者の秘書という感じだ。しかし、話が脱線している。

「あの、それで☆マークなんですが」

「おっと。そうじゃったな。☆マークというのはな、簡単に言うと計測不能という事じゃ」

 は? どういう事だ? 計測不能?

「普通は数値になるじゃろ? じゃが、それにも上限があっての。計測して数値化出来るのは九十九までなんじゃ。それ以上になると計測不能で☆マークになるという訳じゃ」

 なぬ? 上限があったのか。ステータスのMaxになったって事か?

「つまりは、お主の魔力は百以上、あぁ、どれくらいかは計測出来ぬから分からんが、少なくとも百はあるという事じゃ。それが二百かもしれんし、百かもしれん。測れんのでな、分からんのじゃよ」

 マジかよ。最低でも百はあるって事になるんじゃん。測れないだけで、実はもっとあるかもしれない? 数値化してほしい……。

「☆マークについては分かりました……。あの、これって珍しいですか? それになんでこんなに上がっているんでしょうか?」

 気になるのはそこだ。強いのはいい。でも目立ってしまうと困る。

 どんなに数値が高くても、所詮は魔力。盗賊の集団の前には無力だ。

 まぁ実際は屠ったのだけど、あんなのは反則というものだろう。

「どうじゃったかな、ノーラ」

「そうですね……。現存する限りではかなり少ないかと思われます。Sランクの冒険者でも平均で七十ですし、トップレベルでも八十あればいいほうです。少なくとも、我が国では現在一人も――アキヒト殿だけになるかと思います」

 ナンバーワンでオンリーワンじゃん! 駄目だよ、目立つよ!

「ほぉ。そうじゃったか。昔は結構いたもんじゃがの。最近のは弱くなったものじゃな。私も若い頃は、そりゃ強かっ」

「それと能力値は、行動によって上昇する事が出来ます。魔力で言えば、魔法や召喚を使っていれば上昇します」

 話遮ったよ!

 そしてその事は知っている。使っていれば成長する。だから腕立て伏せとかしていた。効果はあまり無かったけどね。

「……ノーラよ。私の昔話をじゃな……。はぁ、まぁよい。急上昇した訳じゃな? それは恐らく魔力枯渇が影響しておるのぉ。それほど魔力を酷使すれば、まぁ上がるというものじゃ。ただし、今回は助かったが、魔力枯渇は危険な状態じゃ。下手をすれば死ぬ事もある。なので、もうやってはならんぞ」

 魔力枯渇……。無茶したせいで、全部使いきってしまったけど、そのお陰で盗賊は倒せた。だけどそのせいで、俺は死にそうになってしまった。

 確かにあの状態は危険だろう。今回だって、イヴァン達が助けに来てくれなかったら死んでいたはずだ。

 だから、もう無茶はしないでおこう。

 まぁ、魔力が☆マークなので、枯渇とか結構難しいのかもしれないけど。

「危険じゃ。私の若い頃も……」

「ギルド長、報酬の件がまだ済んでおりません」

「……ノーラは意地悪じゃのぉ」

 このギルド長も、やはり強いのだろうか。そうじゃなきゃギルド長なんて役職に就いていないだろう。


 報酬――盗賊の懸賞金か。☆マークの印象が大きくて忘れていた。

「報奨金は全部で金貨五十枚になります。白金貨五枚でもいいのですが、それでは使いにくいと思いまして、金貨にさせて頂きました。よろしいでしょうか?」

 金貨? 金貨だって? 銀板の上って事じゃん。多くないか? 銀板だって、二枚しか持ってないぞ。

 最低通貨の銅貨を百円相当とすると、金貨は一枚で百万円だ。万円だ。それが五十枚。五千万円だ。

 何これ、大金じゃないか? 本当に?

「実際はもっと多いんじゃが、判定出来んものいたのでな。一体、何をやれば人間が炭になるんじゃか……」

「いえ……。それでも大金ですよね……。いいんですか、そんなに」

 炭……。雷魔法で倒した奴かな。炭にしちゃった奴の分は貰えないって事か。

 失敗したなぁ……。でも勇者と言えば雷魔法だし、好んで使っていたのも雷魔法だしなぁ。

「結構長い間活動していた盗賊団でな。討伐に向かっても、頭目はいつもうまく逃げてしまっての。なので、報奨金も多くなっていったんじゃよ」

「報奨金はこちらになります。ご確認下さい」

 副ギルド長さんが机に置いたのは、袋だ。ジャラっと音がして少し重そうな袋だ。

 五十枚となると、さすがに重そうだ。それに五十枚を数えるのも辛いし、目の前で数えるのも失礼じゃないかな。

「ありがとうございます」

「おや? 数えなくていいのかね?」

「冒険者ギルドが、それもギルド長と副ギルド長が変な事をするはずもないでしょう」

 まぁ機嫌を曲げられると困るというのが真実だ。実力で言えば、向こうが上だし、冒険者ギルドと敵対してもメリットはない。

「ほっほっほ。そう思うかの?」

「私がしっかりと管理しておきましたので大丈夫です。万が一足りない場合は、ギルド長の給料から差し引いてでもお渡ししますので」

「……まぁ我々冒険者ギルドも信用と信頼を大事にしておる。冒険者達、それも有能な者にはより期待もするのでな。もちろん、報酬を誤魔化すという事はせん」

 お茶目な感じのギルド長だが、やっぱりギルド長だ。仕事は真面目なんだろうか。


「さて、報酬も渡したんじゃが、連絡事項がまだ二点ある。ノーラ」

「はい。デルバート盗賊団を壊滅した功績と実力から、お二人の冒険者ランクをDにランクアップ致しました」

 なぬ! まだDに必要なポイントには全然遠かったはずだ。それに昇級クエストもやらなくていいのか?

「まぁデルバート盗賊団を倒せるだけの実力があれば、Dであっても不思議ではない。むしろCでもいいと言ったんじゃが」

「さすがにそれは他の目もありますので……。ですが、実力的にはお二方はそれ相応のも持っていると推測できます」

 聞けば、ランクはあくまでも冒険者ギルド側の指標であって、相応の実力が確認出来ればいいらしい。ランクアップのポイントや昇級クエストも、経験を積ませる事と相応のクエストがクリア出来る事を確認するだけのものらしい。

 ギルド長や高ランク者の推薦と、それを裏付ける実力があれば、ポイントや昇級クエストをやらなくても昇級できるそうだ。

 今回で言えば、デルバート盗賊団を壊滅させた事で、それが示されたという訳だ。

「デルバート盗賊団は、冒険者では無いが、そのランクで表すと頭目や幹部連中はBやCランク相当のはずじゃ。それを重傷を負いつつも壊滅させる事が出来るのならば、Cでも問題はないはずなんじゃがな。まぁこれも仕方のないのでな、すまんの」

「いえ……。Dランクは当分先と思っていましたので、ありがとうございます」

 BとかCランクだって? 盗賊団強いんじゃん……。そりゃ、俺もマリアも敵わない訳だ……。よく生き残る事が出来たものだ。

「それで最後の連絡事項なのですが……」

 報奨金に大幅なステータスアップにランクアップ。大変だったけど、良い事ばかりだ。

 もう一回やれと言われて出来る事じゃないけど。

 そしてまだお話は続くようだ。他に何があるのかな。

「アキヒト殿、マリア殿。お二方にはこの街から出て行って頂きます」


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