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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
一章 ~ワーズヴェシン街~
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24 落し物と捜索

「まだ戻って来ていないんですか?」

「はい、アキヒトさんとマリアさんはまだ戻ってきていませんね」

「そうですか……。分かりました」

 僕達は冒険者ギルドに来ていた。先日パーティを組み、ダンジョンのボスを撃破、ランクアップをした。

 最初はそのパーティは一時的に組もうと思っていたけど、アキヒト君とマリアさんと意気投合し、今後もパーティを組もうという話になっていた。

 僕達は一旦村に戻っていたので別行動だったけど、その間二人はクエストを行うためにダンジョンに行っているはずだ。

 村からワーズヴェシン街に着いたのが昨日の夜。もう遅かったため、宿屋に泊まった。

 そして今日になって、冒険者ギルドに来て、アキヒト君達と合流しようかと思って、受付の人にアキヒト君達のクエスト状況を確認してみたんだけど。

「イヴァン、どうだった? アッキーとマリっち戻ってるって?」

「いや、まだクエスト中みたいだね」

「兄さん。どんなクエストをやっているか聞けたですか?」

「うん。二階の素材納品みたいだよ」

 アキヒト君達は二階のホーンラビの角を受注したみたいだ。さすがに二人で三階は挑戦しなかったみたいだ。僕達でも三人だと厳しいしね。

「二階ですか……。それなら二日もあれば終わりそうですね。明日出直すですか?」

「それが、出発したのはニ日前らしいんだよ」

「えーっ! アッキー達なら、そのくらい一日で終わるんじゃない?」

 そう。出発したのはニ日前。アキヒト君達なら一日もあれば余裕で終わると思う。

(もしかして三階に挑戦してるのかな?)

 三階に挑んでいるのなら、二階付近で野営をしているのかもしれない。

 それでもニ日前――昨日と一昨日を過ぎ、今日になっても戻ってきていないのは、少し心配になる。

「どうする? ここでアッキー達を待ってる?」

(でも胸騒ぎがする)

「いや、ちょっとダンジョンに行ってみよう。途中に会うかもしれないし、一階ならルートも決まってるしね」

 ウィルワーズの一階ならば、通るルートは決まっているようなものだ。わざわざ一階を散策する必要がなければ、二階への最短ルートで行くのが普通だからだ。

 なので、行き違いになる可能性も少なく、途中で会える可能性が高い。

「そうですね、心配ですし行きましょう」

「はーい、了解!」




「アッキー達と合流したら、何しようかー?」

「そうですね……。私は魔法を少し練習したいです。アキヒトさんの召喚獣は色々出来て凄いのです」

 アキヒト君達を迎えに行くために、ダンジョンに向かっている途中。

 ウィルワーズへの道も慣れたものだ。街道ならば魔物もあまり出てこないし、今は昼前なので視界もいい。

(ミネットが魔法の練習だなんて……。攻撃魔法以外も出来た方がいいからなぁ……)

 なので、雑談交じりに歩いていた。

 そんな時だった。

(あれ? 何か落ちているね)

 少し先に何か落ちているのを見つけた。少し道から外れてはいるので、気付いたのはたまたまだった。

 別に何か落ちているのが珍しい訳でもない。

 この街道は、ダンジョンに向かうくらいにしか使われていないが、たまに遭遇する魔物の死骸などが放置されているのを何回か見たことがある。

 遠目に見ても、それは死骸などではない。もっと小さくて、細いものだった。

(誰かの落し物かな?)

「どうかしましたか、兄さん?」

「ん? 何か落ちているのが見えてね」

「どうせ魔物じゃないのー?」

「いや、どうもそうじゃないみたいだよ」

「誰かの落し物かもしれないのです。拾ってあげるのです」

 何かを落とすなんて行為は自己責任だ。増して、ここはダンジョンへの街道。恐らくはどこかの冒険者ということになるだろう。

 通常ならば、落としたものは戻ってこない事が多い。魔物に壊されるか持っていかれるか、誰かに拾われてそのままネコババになる事が多いからだ。

 これが高価なもので、クエストの対象などの場合は当てはまらない。


「これは……杖かな?」

 落ちていたのは杖だった。冒険者が落としたのか、捨てていったのかもしれない。

 高価な武器ならば、武器屋に下取りが出来る。なので捨てられた物ならば、それは安物ということになる。

 しかし、落ちていた杖はかなり良い物に見える。上質な木で出来ており、上部には青い宝石が付いている。

(これは高そうな杖だね……。誰かが落としていったのかな)

「兄さん、何でしたか?」

「どうせガラクタじゃないのー?」

「いや、杖だったよ。それに結構良さそうな杖だよ」

「へー。ミーちゃん使ってみれば?」

「誰かの落し物かもしれないです。それに、必要な能力値も分からないですよ?」

 武器や防具は、その性能を十分に発揮するのに必要な能力値というのがある。杖ならば魔力がそれになる。

「それもそっかー。じゃあ後で武器屋に見てもらう?」

「そうだね。でも持ち主がいたら返さないとね。後で冒険者ギルドにも聞いてみるよ」

 良さそうな杖だし、無くした人が冒険者ギルドに捜索のクエストをしているかもしれない。それか武器屋に行けば、買った人とかが分かるかもしれない。

 二人はそんなに興味がないようで、遠巻きに見ていた。

「あ、でも使えるか試してみたいです。見せてください、兄さん」

「ん? いいよ」

 落ちていた杖を使ってみる。冒険者ならば思ってしまうことだ。

 そう思い、杖をミネットに手渡した。

「確かに良い杖ですね……。あれ、でもこの杖ってどこかで……」

「あれ? それアッキーの杖と同じじゃない?」


 言われてみると、そうだった。

 ミネットも杖を持ってはいるが、アキヒト君の持っていた杖とは違かった。アキヒト君のは、高そうで、いかにも強そうな杖だった。

 普通ならば同じ物を装備している人がいても不思議ではない。街で買えば同じ物になるのは当然だし、この辺りの実力の冒険者ならば似たような強さになる。ならば、装備も似ているものになるケースも多い。

 だが、この杖はそれではない。

(かなりいい杖だろうし。でも街の武器屋では見たことないからなぁ)

 この辺りでは手に入らないだろういい杖。持っているのはそうはいないはずの杖。

(ということは事は、これはアキヒト君の?)

「兄さん? どうかしたですか?」

「ミネット、ローザ。この杖、アキヒト君のじゃないかな」

「そんな訳ないじゃん、イヴァン。アッキーが杖を捨てる訳ないでしょー」

「そうですよ。こんなにいい杖を捨てる訳がありません。不要になったら売ればいいんですから」

 確かにそうだ。いい杖ならば武器屋に売れば、それなりの金で引き取って貰えるだろう。

 でも捨てたんじゃなくて、落としたとしたら?

「……実は冒険者ギルドで、最近盗賊が商人を襲っているという話を聞いたんだよ」

 今はまだ商人だけしか被害を受けていないけど、冒険者の皆さんも気をつけてくださいね、と。

「つまり兄さんは、アキヒトさん達が盗賊に襲われたと思っているんですか?」

「まさか! アッキーもマリっちも強いし、そんな訳ないでしょ!」

 仮に盗賊に襲われたとしたら、強い冒険者でも危険だろう。強い相手は襲わないのが盗賊だ。だから勝てる相手しか襲わない。

 アキヒト君達は確かに強い。でもまだ冒険者ランクはEだ。

 本物の盗賊相手には、勝てるかどうか分からない。

「アキヒト君達を探そうか」


 それから、ダンジョンの二階まで急いで進んだ。

 きっとクエストに時間が掛かっているだけだ。盗賊になんて会っているはずがない。

 その望みをかけて、ダンジョンでの捜索を行った。

 ダンジョンは広い。人探し、なんてものをするような場所ではない。こちらは三人。人海戦術も出来ない。

 なので、二階へ繋がる階段まで急いで来た訳だが。

「ここにはいないみたいだね……」

「なら三階への階段でしょうか?」

「行ってみよう」

 アキヒト君達はいなかった。ここにいないとなると、一階にはいないという事になる。

 ならば二階の途中か、三階への階段で休憩しているのかもしれない。

「早くアッキー達を見つけて、一緒のパーティで頑張りたいしね!」

(うん。パーティを組むって言ってくれたんだ。ボスの時は一時的なパーティだったけど……。ってそうか!)

「パーティ……そうだ、パーティだよ! ローザ、ありがとう!」

「え? 何? どうしたのさ、イヴァン」

 忘れていた。すっかり忘れていた。

「パーティがどうかしてんですか、兄さん?」

「うん。あぁごめんね。えっと、ボスの時にアキヒト君達をパーティを組んだのは覚えているよね?」

「忘れるはずないじゃないですか」

「そうだよー」

「うん、でね。その時のパーティはね。解散していないんだよ。今も僕達とアキヒト君達は同じパーティって事になるんだ」

「そういえば、そのままだったね。でもそれがどうしたって言うのさ!」

 まだパーティは組んだまま。これが重要になるんだ。

「あ……! 冒険証のパーティ位置ですね」

 ミネットは気づいたみたいだ。

 そう。同じパーティを組んでいるメンバーは、その冒険証でおおよその位置が分かるようになっている。これは、分断された時とか色々便利に使える機能だ。

 今回で言えば、これを使えばアキヒト達の居場所が分かるはず。ダンジョンにいるかどうかが分かると言う事になる。

「あ! なるほどね!」

「うん。見てみよう」

 冒険証を取り出し、確認してみる。

 自分が緑の点で、仲間が青の点で表示される。Mapを購入しておけば、地図も出てくるんだけど、僕達はこのダンジョンの地図は買ってはいないが、自分達でマッピングしているので、二階までなら表示される。

 僕の緑の近くに青が二つ。ミネットとローザだ。

 そのままダンジョン内を確認してみる。三階以降は詳細な地図は出ないけど、いるかどうかは分かる。

「……五階までみたけど、いないみたいだね」

「ですね」

「って事は、このダンジョンにはいないって事?」

 そうなる。

「ダンジョンから出て確認してみよう」




「これは……どこだろうね?」

 ダンジョンから出て確認してみると、街でもダンジョンでもない所に、青い点が表示されていた。

 それも一つだ。

(なんで一つなんだろう……。どちらかは、既に近くにいない?)

 まだ行ったことがない地域のため、点が表示されているだけで、詳しい地図情報は表示されていなかった。

「ここは……街道からは外れていますが、そう遠くないと思うですよ」

「ミーちゃん分かるの?」

「大体ですが……」

「なら行ってみよう。もちろん慎重にね」

 盗賊にしろ魔物にしろ、街道から外れる事になるなら、慎重に行動しないといけない。

 本当ならば、誰かに救援を頼むのが正解だったが、既にイヴァン達も冷静な判断が出来ていなかった。




「そろそろアキヒト君達のいる場所だね」

 青い点はまだ一つしか表示されていない。それでもアキヒト君達()と呼ぶことにしている。

(大丈夫さ。二人共きっと大丈夫なはずさ)

 盗賊がいるかもしれない。なのでより慎重に行動をすることにした。

 辺りは静かだった。既に、かなり近くまで来ているはずだ。なのに、人がいる気配がない。

(盗賊じゃなかった? それとも、ここはアジトではないのかもしれないね)

 盗賊ならば、きっとアジトがあるのだろう。そう思っていただけに、いくらなんでもこの静けさは不思議だった。

 アジトだった場合は、さすがに三人ではどうにも出来ない。なので、すぐに引き返す事になっていたのだが。

「誰もいない……ね」

 思わず口に出てしまった。それくらい人の気配がしないのだ。

 おまけに、辺りに漂う臭い。

「この臭い……血の臭いみたい……」

 鼻がいい、ローザがそう言った。

 そうだ。これは血の臭いだ。

 恐らくは盗賊。一つしかない青い点。人気のない場所。

 これらのピースを合わせると、嫌な事しか思い浮かばいない。

「警戒しつつ、もっと近くにいこう」


 青い点が表示されていた場所。そこに辿り着いた。

 しかし、辺りの惨状に、言葉が出なかった。

「……アキヒト君を探そう」

 辺りには、真っ二つになっている人の死骸、この真っ黒なのも恐らくは人だったものだろう。それらが散乱していた。

(一体、ここで何が起こったんだ……)

 こんな場所に、アキヒト君達がいるとは思えない。いや、思いたくない。

 もしかしたら、あの黒い塊がアキヒト君なのかもしれない。

(これは、ここに冒険証を落としてしまったと考えたくなるね)

 本人がどこか別な場所で無事で、たまたま冒険証だけ落としてしまった。そうであって欲しいと思っていた。

 しかし、その思いは打ち消された。

「アキヒト……さん?」

「イヴァン! アッキーが、アッキーが!」

 どうやら見つけたみたいだ。

「無事かい?」

 辺りの状況で無事だとは思えない。しかし、望みは捨てることは出来なかった。

「酷い怪我です……。意識もないです……」

 生きていた……。今は生きている。

 しかし酷い怪我で、いつ死んでもおかしくない状態だった。

「ポ、ポーションを使おう!」

 体力を回復させるポーションは、いくつか持っていた。

 この怪我を回復させるには足りないし、安いポーションなので回復出来るかも分からない。

 それでも使わなずはいられなかった。

「アッキー……。イヴァン、もっとポーションは無いの?」

 ありったけのポーションを使った。それでも、アキヒト君の怪我はさほど治っていないし、意識も戻らない。

「……もう無いよ……。とりあえず、街まで運ぼう。そういえば、アキヒト君だけなのかい?」

 青い点は一つだった。アキヒト君は見つかった。だけどマリアさんは見つかっていない。

「マリアさんは……探しましょう!」

「そうだよ! マリっちもどこかにいるはずだよ。だから探そうよ!」

 僕だってそうしたい。でもアキヒト君をこのままにもしておけない。

 探すにしても、こんな場所でパーティを分断するには得策ではない。

「……まずはアキヒト君を助けよう。冒険者ギルドに報告して、マリアさんを捜索してもらおう」

 苦渋の判断だ。

「で、でも!」

「アキヒト君も、このままだと危ない。それは分かるね?」

「……分かりましたです」

 ミネットは納得がいかないみたいだったが、分かってはくれたみたいだ。




 ワーズヴェシン街の冒険者ギルドに、大怪我を負った青年が運び込まれたのは、昼過ぎの事であった。


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