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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
一章 ~ワーズヴェシン街~
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17 プチ女子会と苦戦

 楽しい食事も終わったので、交代で睡眠を取る事になった。五人いるので、ペアと三人の二組体制だ。

 振り分けは、俺とイヴァン組と、女の子三人組になった。やはり同姓同士というのもあるが、元々のパーティメンバー同士というのを避けたようだ。

 臨時で組んでいる場合は野営中が一番危険だ。それまでは協力していても、寝ている間に他パーティを襲う、という手法があるためだ。

 なのでこのような場合は、それぞれのパーティを分散するのがいい。

 もちろんイヴァン達はそんな事しないと思っているし、俺達もそんな事はしないが、まぁそういう物という事だ。

 まぁミネットやローザといった女の子と一緒に見張りをするというのは、なんとなく気まずいという方が大きい。

 という訳で、今はイヴァンと二人で見張り中だ。女の子組は仲良く寝ている。

「しかし、マリアと二人の時は二階でいっぱいいっぱいだったのに、こんなところまで来れるなんてな。イヴァン達のお陰だな」

「僕達も三階でいっぱいいっぱいだったし、同じだよ。アキヒト君達と組めて良かったよ。ありがとうね」

「お礼はボスを倒してからだぞ」

「それもそうだね」

 イヴァンと話している内に、交代の時間になった。

 ちなみに時計は持ってないので、こうした交代などで時間を測りたい場合は、一定時間で燃え尽きるロウソクを使用する。タイマーみたいなものだ。

「それじゃ、女の子達を起こして交代するか」




「んーっ、眠いなぁ」

「私も眠いです……。マリアさんは平気ですか?」

「えぇ、ワタシは平気よ。でも二人ともきちんと起きていないと駄目よ」

 二人とも眠そうね。ワタシは寝る必要もないから平気だけど、さすがにそういう訳にもいかないものね。それにしても、こんな風にアキ以外の人と冒険するのも楽しいかもしれないわ。

 みんないい人だし、このまま一緒にパーティ組むのもいいかもしれないわね。ちょっと女の子多いのがあれだけど。

「やっぱさー。ミーちゃんは料理きちんと覚えた方がいいよ? この前だって、ミーちゃんが作った料理を食べたイヴァンが倒れたくらいだしさー」

「あ、あれは! そう、美味しすぎたんですよ! だから兄さんは驚いて倒れてしまったのです!」

 多分だけど、違うと思うわ。ミネットは料理苦手なのね。

「そうかなー? でも好きな人とか出来た時に、料理作れた方がいいよー?」

「という事は、ローザは好きな人がいるのかしら?」

「え? んー、どうだろうねー。あははー」

 多分だけど、相手はイヴァンかしら。

「そう言うマリっちはどうなの? アッキーとか?」

「さぁ? どうかしらね」

 アキは(マスター)だしね。能力的には『彼女』という事になるのかもしれないけど。

「むー。やはり料理出来た方がいいです?」

「お? って事は好きな人出来た? ミーちゃん」

「ち、違うです! 出来た時のためです!」

 なんか女の子達と話すのも楽しいわね。ワタシも『女の子』という事なのかしら。

「ほらほら、喋ってないできちんと見張るわよ」

「そうです、ローザさん。見張るですよ!」

「ちぇー。分かりましたよー」

 あら、そろそろ交代の時間かしら。いつもは一人でつまらなかった見張りも、今回は楽しい時間だったわね。




 十分に睡眠を取ったところで、四階攻略が開始された。

 四階は赤コウモリと、ノッカーというモグラの魔物が出てくる。が、最早俺達五人の敵では無かった。

 赤コウモリはもちろんの事、ノッカーも鋭い爪が脅威ではあるが、イヴァンの盾で防げるし、ローザとマリアなら回避は余裕だった。もちろん俺達後衛組ならば危ないかもしれないが、敵を後衛にまで行かせる事のない前衛メンバーのお陰で、安心してサポート出来た。

 そのため、未知の四階といえど特に危ない事も無く進む事が出来た。

 いい調子じゃないか。初級なダンジョンとはいえ、破竹の勢いじゃないかな。これならボスも倒せちゃうかな。そんな事を思ってしまう余裕すらあった。

 ここは五階。ボス手前である。

 ボスのいるフロアは、ボスのいる部屋だけになっている。部屋には誰が設置したんだとツッコミたくなるような立派な扉があるので、ボス部屋の前、というのが分かる。

「よし、皆準備はいいかな? 開けるよ」

 いよいよボスだ。イヴァンが扉を開け、中に入る。俺達も続く。

「広いな……」

 学校の体育館よりも広く、ちょっとしたイベントホール並だな。それに何故だか今までの通路よりも明るい。これがボス部屋って奴なのか。

「気をつけて、もういるみたいよ」

 呑気に部屋を見渡していたらマリアが忠告をしてきた。そうだ、ボス部屋だった。

「うわー、おっきいねー」

「凄く……大きいのです」

 女の子が思わず大きいと唸ってしまう……それがこのダンジョンのボス、サービラゴーレムだ。

 大きさはおよそ四メートルほどの砂のゴーレム。砂と言っても、手足はしっかりとあるため、泥人形の親分みたいなものだ。その巨体に違わぬパワーと、撃たれ強さを併せ持つ。反面、スピードはいまいちという普通のゴーレムだ。

 だが大きい。これまで出会った魔物は、泥人形が最大であった。俺よりも小さいというのが普通であったため、魔物といってもそこまで怖いものでもなかった。

 しかし目の前に立っているのは俺の身長の二倍以上ある巨大な魔物。ビビらない方がおかしいレベルだ。

「グオオオオオオオオォォォォォ!!!」

「来るよ! ローザが攻撃、僕とマリアさんは牽制、アキヒト君とミネットは後方から支援攻撃をお願い!」

 事前の打ち合わせ通りの策をイヴァンが叫ぶ。喝を入れる意味もあったのだろう。

 こうしてはいられない。俺の役目は補助と回復がメインだ。

「サラマンダーは前衛に、シルフは全員に頼む!」

「ぎゃおー!」

「了解なのー!」

 まずは補助だ。見るからに攻撃型なゴーレム相手なので、出来れば防御アップとか欲しいけど、そんな召喚獣知らないし無いものは仕方ない。避けてくれる事を願うしかない。

 前衛組がゴーレムに向かう。ゴーレムも既に戦闘態勢のようだ。

 ゴーレムが右腕を振り上げ、イヴァンにパンチを放ってくる。あれだけの巨体だ。ただのパンチでもかなりの威力になるだろう。

 だが、イヴァンがその攻撃を盾を受けきった。少し後ずさってしまっているが、大丈夫だろうか。少なくとも、俺が受けたら死んでしまうレベルに見えたが。

「イヴァン、大丈夫か?」

「ぐっ……! 大丈夫だよ」

 イヴァンが無事なのを確認したのか、それともあれくらいなら大丈夫と思っていたのか、マリアとローザが攻撃後の隙をつくかのようにゴーレムに攻撃を仕掛ける。

「せいっ!」

「うっりゃあ!」

 機動性がどこまであるか不明だが、まずはゴーレムの足を潰すという作戦だ。

 マリアのレイピアがゴーレムの左足に深々を刺さる。ローザの斧がゴーレムの右足を大きく切り裂く。ゴーレムといっても、そこは砂なのか大して硬くはないようだな。これなら倒すのも容易かもしれない。

 そう外野からはそう思えてしまうのかもしれない。しかしさすがはボスというべきか。

 見るからに大ダメージを受けているはずのゴーレム。だがしばらくすると、レイピアで空いた穴も斧で大きく切り裂かれた部分も、砂が覆い再生していった。

「効いて……ない?」

「砂なのです。だから少しの傷は平気……なのかもしれないです」

 思わず口に出してしまったひとり事なので、隣にいるミネットから反応があったのは驚いた。

 砂……か。少しのダメージは意味がないということか。すぐに砂で再生してしまうのか。脆いと思っていたけど、あえてそういう事なのかもしれない。

 それにしてもローザの攻撃で結構深く足が抉れていたように見えたが、あれでも駄目なのか。こりゃ厳しいかもしれないな。

 でも全くダメージが無い訳じゃないだろう。じゃなければ一撃で倒すレベルの攻撃が必要になってしまう。そんなのがこのダンジョンのボスな訳がない。

 このボス撃破はランクDへの昇級クエストになっている。なのでそれ相応の腕前があれば平気なはずだ。さすがにあのゴーレムを一撃で倒せるくらいじゃないと、ランクDになれないという訳でもないだろう。

 つまり、戦い方でどうにか出来るって事だ。さすがに冒険者ギルドで買った攻略情報に、攻略法は載っていなかった。その点についてだけはイヴァンにも共有して教えてある。

 こう考えている間にも、前衛組が攻撃を続けている。イヴァンはゴーレムの攻撃を受け流しつつ、他の二人が足を突き、切り裂いている。

 それでもすぐにゴーレムは回復してしまっている。結構なダメージを与えているはずだが、堪えていないようだ。

「グオオオオォォ!!!」

「ぐはっ!」

「イヴァン! 大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。少し受け損ねたよ……」

「ウンディーネ! イヴァンを頼む!」

「了解です、(マスター)

「ありがとうね、アキヒト君」

 対してこちらは徐々にだが、攻撃を受けてしまっている。その都度ウンディーネで回復してはいるが、いつまで持つか分からない。

 物理攻撃で駄目なら、魔法攻撃が効くのか?

「魔法攻撃、行きます! 避けて下さい!」

 ミネットもそう思っていたようで、魔法の準備をしていたようだ。

「ファイアアロー!」

 炎の矢がゴーレムに飛んで行く。ミネットが使えるのは炎と風の攻撃魔法だ。今回は炎属性を選択したみたいだ。

 ミネットの放った魔法がゴーレムの胴体に当たった。普通の人間――地球人があれに当たれば、いずれ火だるまになって死んでしまうレベル、そんな炎の矢だ。

 相手は魔物でゴーレム。さすがにこれでケリが付くとは思えないが、それでも少しは効いていないと厳しい。

 そんな思いも虚しく、件のゴーレムはいたって平気な様子だった。

「魔法も効かないのかな……」

「え~? ちょっときついね……」

「これは厳しいわね……」

 前衛組三人も攻撃が効いてないという状況に、士気も下がっているようだ。

 どこかに活路はないものか……。倒せない相手じゃないはずだ。よく言われているのは、どこかに刻まれている『emeth』の文字の一文字目を消して、『meth』にするとかだが、あの砂のゴーレムにはそんな文字があるようには見えない。

 ならばどこかに核のようなものがあって、それを壊せば倒せるとかだろうか。体の中にあれば手当たり次第に攻撃するしかないが、この部屋のどこかにあるのだろうか。

 いや、さすがに部屋にそんな物は見当たらない。そこまで遠隔な装置とかではないだろう。

 ならば、やはりゴーレム自体を攻撃して倒すという手しかない。

 しかし、物理攻撃も魔法攻撃も効いているようには見えない。効いていないように見えて、実は効いているのだろうか。だとしても、かなり微々たるダメージという事になるだろう。

 属性的には砂――つまり土というのは火に弱い。弱点属性でダメージがないのはまだまだ力不足だったという事か?

 少しくらいは、とミネットの魔法が当たった箇所を再度見てみる。

 ん? なんか砂の色が他と違う?

「マリア。さっき炎が当たった箇所を攻撃してくれないか」

「胴体よね? 足よりも攻撃が効かないと思うけど?」

「ちょっと確認したい事がある。やってみてくれ」

「分かったわ」

 叫んでマリアに頼む。

 ゴーレムの攻撃に対応しつつ足を攻撃しているが、攻撃を受ける度に砂で回復されていて全く進展が無い今の状況。だが、さっき炎の矢が当たった箇所は砂の色が他と少し変わっている。

 当たる前を見ていた訳じゃないので比較は出来ないが、炎が当たった箇所だ。気になる。

「行くわよ……っと。たぁ!」

 ゴーレムの攻撃を掻い潜り、マリアが高く跳躍、胴体を攻撃する。

 攻撃は問題なくさきほどの箇所に当たった。と、僅かだがその周辺の砂がゴーレムから剥がれ落ちた。

 今までのマリアの攻撃だと、綺麗に穴が空くだけだった。だが今回の攻撃では穴はもちろん空いているが、その周辺の――焼かれた部分の砂がゴーレムから剥がれ落ちたのだ。

 そのまましばらく待っても、その部分は再生していない。

「やはりそうか」

「なるほど……ね!」

「再生しないって事ね」

「えー? 何が起きたの?」

 何が起きたのか分かっている面々と、分かっていないローザ。

 よし、説明タイムだ。

「炎……ですね。炎で焼かれた部分は硬質化して脆くなるのです。そこを攻撃すれば、砂が崩れてゴーレムは再生出来ないという訳ですね」

「お、おう。そうだな」

 言いたかったのに……。ミネット饒舌じゃん?

「という訳だから、まず俺とミネットで炎で攻撃する。当たった箇所をイヴァン達が攻撃する。これを繰り返せばゴーレムを倒せるはずだ」

 これが倒し方という訳だな。見えたぞ、活路。これで勝てる!


「ぐぅ!」

「ファイア……アロー!」

「せいぁ!」

「うっりゃ!」

 それからは、イヴァンが攻撃を防ぎ、俺はサラマンダーで、ミネットはファイアアローで攻撃、その後にマリアとローザが固まった砂を崩す、という手順で攻撃を続けた。

 どのくらいの時間が経ったのか分からない。初のボスとの戦闘という事で、時間の感覚もおかしくなっているのかもしれない。

 段々体力も厳しくなってきた。皆の疲労も見て分かるように溜まってきているようだ。怪我は治す事が出来るが疲労はそういう訳にはいかない。早めにケリを付けないと拙そうだ。

 さらに魔力の限界という問題もある。かなり攻撃をしているが、焼ける範囲は狭く、さらにほぼ表面だけしか焼くことが出来ないため、時間が掛かっている。

 このままじゃ……いつか詰むだろう……。一応来た扉から出れば撤退も可能だ。撤退も考慮する必要もあるか。

「ちょっち拙いかなー?」

「そうだね……。このままだと倒す前にこちらがダウンしてしまうだろうね。引くもの考えないとだね」

「どうする? 撤退するか?」

 イヴァン達も同じ事を思っているようだ。活路が見出だせただけでも今回の挑戦は意味があった。また改めて挑むというのも手か。

「はぁはぁ……。まだです。まだ手はあるです」

「ミネット? でも魔力もそろそろ限界だろ? 無茶するなよ」

「そうですが……。ですが無茶をします」

 かなり辛そうに見える。まだまだ子ども――それも女の子だと言うのに何がミネットをここまで動かすんだ。

「私は……補助魔法も回復魔法も料理も駄目な魔術師です。だから……攻撃魔法で頑張るしかないです。無茶するしかないです!」

 日本にいれば、まだ中学生かそこらだろう。まだ親の元で暮らしている歳のはずだ。そんな女の子がここまで頑張ると言う。凄いな、俺には真似出来ない。

「分かった。本当に拙そうなら担いででも逃げるからな」

「はいです。その時はお願いします」

「それで、どんな無茶をするんだ?」

 こういう場面でゲームなんかでよくあるのが、命を削っての攻撃とか、自爆技とかそういう部類だ。

 さすがにそんな物をミネットを撃たせる訳にはいかない。確かに現状は厳しいが、撤退もまだ出来るし、こんなボスで使うような物じゃない。魔王とかラスボスとか、仲間のピンチにとか使うものだ。

 さすがにそんな物を使うはずも無いだろうが、一応気になる。

「ちょっと時間は掛かるですが、大技を使います」

 あれれ?

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

12/14:誤字脱字修正

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