11 休憩と手料理
PV20k, UV5.5k突破です。
ありがとうございます!
「ふぅ、少し休憩するか」
ダンジョンも大分進み、一階の半分くらいまで来た。ちょうど広めの空間、小部屋があったので休憩を取ることにした。
あれから何回か魔物に遭遇したが、特に大きな怪我もせずに倒してこれた。
魔物が多ければ、召喚獣を出してサポートしてきたが、魔力にはまだ余裕がありそうだ。体力は元より、ダンジョンだと魔力管理も大切になる。
節約って意味なら、マリアを解除した方がいいのだろうが、それは無理だ。ソロでダンジョンとか無理だし、それに寂しいし。
休憩するなら、今いるみたいなある程度広いスペースがないと、魔物とエンカウントした際に近すぎる。さらに、通路で休憩でもすれば、他の人の邪魔になるだろうし、驚かせてしまうだろう。
そういえば、クエストやってる時に、他の冒険者に遭遇した事がないな……。ちゃんと他にもいるよね?
「少し、腹減ったかなぁ」
今はお昼は過ぎたくらいだろうか。思わず呟いてしまった。朝一で街を出たが、今は何時だろうか。時間が分からないのは不便だ。
ダンジョンの中なので、太陽はもちろん見えないし、まだこの世界の時間に慣れていない。
何故なら一日が二十六時間なのだ。確か体内時計は二十四時間ぴったりじゃなくて、少しズレていて、朝日を浴びてズレを直すとかなんだっけ。 でもこの世界ならズレたままのがいいのかな。こればかりは慣れるしかないのかな。
「お腹が減ったの? それならご飯にする?」
さっきの呟きにマリアが反応する。
「んー、そうだな。何時か分からんがそうするか」
ご飯にする? って、なんかいい響きだよな。出来れば手料理を食べてみたい。今のところ、作って貰う機会が無かったしなぁ。まぁマリアは食事は必須ではないし、ダンジョン内なので簡単に食べられる携行食になるんだが。
サンドウィッチみたいなやつを、魔法の袋から取り出す。状態がある程度保存されているとはいえ、買ってから時間は経っている。
痛む心配はないのだが、そこはまだ慣れない。調理済みのは早めに食べるに越したことはない。
「あら、それを食べるの? 何か作らなくて平気?」
おや? 料理してくれるのか? どうしよう。もうかじってしまってるし、今更止める訳にもいかないしなぁ。
「ん、何か作ってくれるのか?」
「一応、ワタシはそのための召喚獣なんだけど?」
「そう……だったな。それじゃスープが欲しいかな」
そうだったよ。マリアは料理とか出来る召喚獣だったよ。すっかり忘れてた。
食材なども入っている魔法の袋をマリアに手渡す。マリアも使えるように、登録しておいた。
「それじゃお願い。何か手伝う事はあるか?」
「えーと、特に無いわね。料理用の魔法道具もまだ余裕があるし」
ITコンロみたいな魔法道具は魔力による充電式だ。買った後に少し使ったが、十分充電しておいたのでまだ平気だろう。
マリアの料理が始まる。
一応、能力の使用になるのか? 分からん……。戦闘用でも補助でもない能力なんて、ゲームとかにも無かったしなぁ。
食べ掛けのサンドウィッチを食べつつ、マリアの調理姿を観察する。
俺も一人暮らしをしていたので、自炊をしていた。料理にはちょっとは自身がある。
だが、目の前で繰り広げられている光景は、俺の比ではない。
なんだろ。めっちゃプロの人とか、厨房のトップとかそんな動きだ。 さすがにダンジョンなので設備は乏しいが、それでも見ていてワクワクする。
そんな事を考えている内に、出来上がったようだ。早いな……。
「出来たわよ!」
「お、うまそうだな」
宿屋で出てくるようなポトフみたいなスープだが、具材が豊富だ。食べるスープって感じか。
マリアの分は無いみたいだ。せっかくだし、食べてもいいんだけどな。
「頂きます」
まずはゴロゴロとした野菜から食べる。
「ど、どうかしら?」
マリアが感想を聞いてくるが、答えずに続いてスープ。そして野菜と、止まらずに食べ切った。
「ふぅ、ご馳走様。美味かった」
「凄い勢いだったわね……、でも良かったわ」
そう、美味かったのである。宿屋の女将……、料理はオヤジさんか? まぁそれとは違う味だが、美味かった。
なんだろうか、お袋の味って訳ではないが、安心する味だったし、具材も多く、お腹いっぱいになった。
「美味かったよ。料理上手なんだな」
再度感想を言う。これが召喚獣の能力って訳か……。俺が同じ素材で作っても、こうまで美味しく作る事は出来ないだろう。敗北だ。
「そ、そう? まぁそういう能力だし。でもありがと」
マリアの初手料理を堪能して十分休憩を取ったので、そろそろダンジョン攻略を再開したいが。
「さて、今は一階の半分くらいのところだけど、先に進むか?」
二、三時間で一階は進めると書いてあったが、さすがに俺たちは初めてなので時間は掛かっているだろう。
恐らく、同じ時間でやっとここまでというところだ。
先に進むとなると、一階の奥到達時点で、入り口からは五、六時間という計算になる。
さらに帰還も考えると、約半日だ。入り口に着く頃には、外は真っ暗だろう。一応仮眠用の道具も買い揃えたが、避けられるなら避けたい。
「クエストの進み具合はどうなの?」
「そうだな……、大体七割ぐらいかな」
受注しているクエストは魔物の素材納品だ。泥人形の腕と、コウモリの羽。
これらは魔法の袋に仕舞ってある。これが便利な事に、冒険証に登録する事で冒険証に一覧が表示されるのだ。まるでRPGのアイテムウィンドウみたいだ。
名称や数はもちろん、後どれくらい入るのかも表示される。冒険証、便利すぎるわ。
冒険証に表示されている魔物素材の数を確認しながら回答する。腕も羽も、それぞれ十必要だ。
現在の収穫は、腕が六つに羽が七つだ。羽は一匹から二つ取れるが、倒す時に羽を駄目にしてしまったので、一つ少ない。
「それならここで引き返しても、クエストは達成出来そうね」
そうなのだ。ここはフロアの半分ほど。今までの素材の進捗からすれば、帰り中に集まるだろう。なので、ここで引き返しても問題はない。
それか折角のダンジョンだし、行けるところまで行くという考えもある。もちろん危険がないように進むが、現に今のところピンチになるような状況にはなっていない。
どうするかを決めないといけない訳なんだが。
「そうだな……。もう少し進んで見るか」
「分かったわ。でも無茶だけはしちゃ駄目よ?」
「分かってるさ。魔力も回復してきたし、危なくなったらすぐに引き返すぞ」
折角なので、先に進む事にした。さすがに地下二階に行くかどうかとなると、それは考えものだが、もう少し一階を攻略する事に決めた。
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