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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
一章 ~ワーズヴェシン街~
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10 ダンジョンと凡打

 ウィルワーズ。

 全五フロアからなる洞窟タイプのダンジョン。各フロアはそんなに広くなく、最短で進めば二日掛からず最深部まで到達出来る。

 出現する魔物も弱い部類に入り、ボスも最深部にしかいない。ボスは数日で再発生する。


「ボスはいるが、ダンジョンとしては楽な方っぽいな」

 俺達は今、ダンジョンに向かっている。

 昨日、クエストを受注した後に宿でダンジョンの情報を確認、必要そうな物資の買い出しを行った。

 買った物は、鍋や包丁といった調理道具に、食料や水などの食料品、さらにいくつかの魔法道具だ。魔法道具は、懐中電灯みたいなやつとガスコンロみたいなやつだ。火は出ないから、IH式みたいなもんかな。魔力で動くので、燃料切れの心配もない。

 これらは冒険者ギルド内の店で買うことが出来た。店主に聞いて、ダンジョン探索に必要な物を聞いて揃えた。銀貨三枚ちょいといい値段はしたが、必要経費と割り切った。いらない物はないだろう。そう考えると、ダンジョンの情報は高いんだな……。

 買ったものはもちろん全部、魔法の袋に入れてある。便利なアイテムだと、しみじみ思った。


「お、あれがそうかな?」

 西門を出て三十分。ダンジョンらしき洞窟が見えてきた。

「そうみたいね」

 道中は楽だった。街道は整備されており、歩くのも楽だったし、魔物との遭遇もなかった。どうやら、なんかの魔法効果で魔物を近づけないようにしているらしい。結界みたいなものかな?

 それでも、たまに近づいてきたりするらしいので、油断は出来ないらしいが。

「到着、っと」

 洞窟と言うと誤解されそうだが、山がある訳ではない。地下へ続く洞穴と言ったほうが正しいかもしれない。

 入り口に立つと、少し冷んやりする。気温が低いのか、それとも無意識の恐れから来るものなのかは分からない。

 それにしても。

「……明るいな」

「……明るいわね」

「ダンジョンってこうなの?」

「ワタシも見るのは初めてだから分からないけど、ここは踏破済だからじゃないかしら」

 ダンジョンというから真っ暗だと思っていたが、なんか電灯みたいのが張り巡っているようだ。それでも日本の室内みたいな明るさではなく、足元は少し暗くなる程度ではあるが。

 いや、真っ暗だと困るのは確かだけど、こうまで整備されているとは思わなかった。

 マリアの言う通り、踏破済のダンジョンだからだろうか? それとも初心者向けの措置だろうか?

 どちらにしろ、歩くのや索敵に困るレベルではない。常時懐中電灯を付けておくのも面倒だと思っていたので、これはこれで嬉しい。ダンジョンっていう風情はないが。

「まぁ入るか。マリア、頼む」

 ここにいても仕方がないので入ることにする。マリアが先だ。

 レディーファーストとかいう意味ではない。マリアが前衛、俺が後衛だからだ。


「これくらい明るいと、敵が来ても分かるわね」

「そうだな。目も慣れて来た」

 ダンジョンに入ると、まず小部屋があった。床には魔法陣らしきものが描いてある。これがワープ用の魔法陣だろうか。まぁ俺達には関係ない。

 先に進む。通路はそこそこ広かった。車なら余裕で一台は通れる幅はある。

 一階、いや入り口で既に地下に潜っているから地下一階が正しいか。ともかく、地下一階は一番奥に下り階段がある。何事も無ければ二、三時間で到達出来るようだ。

 だがそこはダンジョン。何事も無い訳がない。そう、魔物とのエンカウントである。


「魔物…….ね。一匹みたい」

 先を歩いていたマリアが呟いた。魔物を発見したようだ。

 リトルホーンラビ以外の魔物は初めてになる。リトルホーンラビは兎に近く、魔物というより動物ぽかったので、すぐに受け入れる事が出来た。

 だが、目の前にいるのはそんな動物チックな物ではない。

 マッドプーぺ。いわゆる泥人形だ。人型で身長が約一メートルほど。人型と言っても、顔がある訳ではなく、デッサン用に使う人形を大きくしたような感じだ。

 なんで人形が動いているのかは、それが魔物だからだ。魔物らしい魔物。

 地球でこんなのがいたら、混乱してしまうだろう。だがここは異世界。俺も少しは順応してきているのか、明らかな魔物の出現という緊張感はあったが、怖くは無かった。

 さすがに人間の姿に近いと倒すのに気が引けるが、これなら大丈夫そうか。

「一匹だけだけど、どうするの?」

「相手の動きに慣れておくか。まずは回避中心で頼む」

 こいつはリトルホーンラビよりは強いが、それでも弱い部類に入る。動きは遅く、攻撃も単調。落ち着いて対処すれば雑魚という訳だ。

 マリアの質問に対し、まずは魔物の動きを見極める事にして指示を出す。

 泥人形が近づいてくる。動きは遅い。そのままマリアのそばまで来て、殴って来た。

 こいつの攻撃方法は、近づいて殴るだけだ。だから遠距離からすれば、格好の的になる。

 マリアはそんな泥人形の攻撃を余裕で避ける。泥人形はさらに殴ってくるが、全て余裕で回避するマリア。

 うん、こいつ雑魚だな。パンチも単調だし、遅い。タイマンなら何の問題無いな。

 数分間マリアに回避させた所で、俺が前に出る。

「今度は俺の番な」

 近くで見ると、さすがに少し不気味に見える。だがそう考えている暇は無い。魔物は待ってくれないからだ。

 まぁ、余裕で避けることが出来ましたけど。しばらく俺も攻撃を避けるのに専念する。

「もう十分かな。マリア、攻撃してくれ」

 魔物の動きに慣れたので、サクッと倒す事に決めた。ちなみに、こいつはクエストの対象だ。納品部分は腕になる。

「せいっ!」

 マリアがレイピアで突いた。良かった、ちゃんと胸だ。腕が破損したら納品出来なくなるからな。

 胸を突かれたが、泥人形はまだ倒れないようだ。うーむ。武器との相性かな? レイピアは点での攻撃が主だ。しかし、泥人形は泥で出来ている。泥に綺麗な穴が空いても、見た目ほどダメージはないのだろう。

 こいつは、面での攻撃。つまり、ハンマーなどで殴るのが効果的だ。

 まぁ、魔物の名前から特徴、有効な攻撃などは、冒険者ギルドで購入した情報書かれていたものだがな。

 マリアもそれは知っていたので、一撃で倒せなかった事に動揺はせずに、冷静に追撃を加えていた。

「はっ!」

 追撃を頭に受け、さすがの泥人形も倒れた。武器の相性はあるとはいえ、やはり兎よりは体力あるのかな。

「お疲れ、マリア」

「ふぅ、二発必要になるのね」

「みたいだな。まぁ敵が一匹ならこのままでいいだろ」

 初めて戦う敵なので、慎重に対応するつもりだったが、一体だったので他の召喚獣は使わなかった。敵が多ければ、サポートするつもりだったが、無しでも戦える事が分かったのは僥倖だ。

 腕を回収し、先に進む。まだまだ一階の序盤だ。


「兎よりは強いみたいだけど、動きが遅かったから、楽だったな」

「そうね。でもダンジョンだし、沢山来ることもあるんじゃない?」

「その時は、補助とかするよ。俺も避ける事は出来たしな」

 魔物とも戦えるじゃないか、俺。冒険者っぽいな。ちょっと格好いいかも。

 兎ではない魔物との戦闘は初めてだったので少し緊張していたが、案外余裕だったのでほっとしながら、内心で喜ぶ。

 しかしここはダンジョン。魔物がそんな空気を読んでくれる訳もなく、しばらく進むとまたエンカウントした。

 バサバサと音が聞こえる。これは……。

「今度はケイブバットかしら? 複数いるみたいね」

「みたいだな。来い、シルフ!」

「はーい!」

 コウモリ型の魔物、ケイブバットだな。空を飛ぶ上、そこそこ素早いので注意が必要だ。体当たり気味に爪と牙での攻撃をしてくる。

 まだ見えてはいないが、音から複数いるのが分かったので、保険も兼ねてシルフを召喚しておく。空を飛ぶ魔物は、風とか雷に弱いのが定番だからな。

 バサバサの音が近づいてくる。

 やっと見えた。うーんと、三匹いるな。シルフを召喚しておいて正解だ。さすがに三匹は多い。

「三匹は多いな。二匹削ろう。シルフ、二匹を攻撃してくれ!」

「はーい、いくわよー!」

 一匹だけ残して、また回避練習をするためにシルフに先制攻撃させる。

 ボール上の風がシルフの前に二つ形成される。大きさはピンポン球くらいだろうか。名前があるならウインドボールって感じだ。

「えいっ!」

 ウインドボールがケイブバットに向かって飛んでいく。いいコースだ、これは当たる!

 一番手前側にいたケイブバットにウインドボールが当たり、そのまま墜落、動かないところを見ると、死んだか瀕死になったのだろう。

 すぐ後ろにいたケイブバットに向かって、二つ目のウインドボールが飛んでいくが、前にいた奴より一瞬だけ間があったせいか、ギリギリで避けられてしまった。

 おいおい、避けちゃうのかよ……。

「えー? 避けられたー?」

 ほら、シルフが悔しがってるじゃないか。

「一匹は倒したみたいだし、よくやったぞシルフ。とりあえず待機だ」

「はーい!」

「マリア、二匹いけそうか?」

「やってみるわ」

 二匹なら、避けるのに注力すれば平気そうかな。危なくなったら加勢しよう。

「よっ、とっ。速いけ……ど、なんとかいけるわね」

 ケイブバットの攻撃は速いが直線的だ。注意さえしていれば、二匹相手でも回避は簡単そうに見える。まぁマリアだから簡単に見えるのかもしれない。俺だとどうかなぁ。

 マリアも慣れてきた頃だと思ったので、今度は俺の番なんだが……。とりあえず、一匹に減らすか。

「マリア、一匹倒せそうか?」

「っと、やってみるわ」

 二匹を相手に、避けながらの攻撃だ。

「はっ!」

 マリアが攻撃するが、突いたレイピアは空を突いた。さすがに無理をさせすぎたか。

「マリア、無理するな。シルフ、一匹攻撃だ!」

 待機させていたシルフで加勢する。俺はほら、後衛だし。

「今度こそいくわよ!」

 シルフのウインドボールがケイブバットに向かう。うまく当たれば、倒せるのは最初で分かっている。当たればだが。

 そんな思いも虚しく、ウインドボールはカスるくらいにしか当たらなかった。ケイブバットさん、意外に強くないか?

「ここっ!」

 だが、体勢を崩した隙を、マリアが文字通り突いた。ナイスコンビネーションだな。結果オーライだ。

 一突きにされたケイブバットは地面に落ち、動いていない。さすがに倒しただろう。最初の一匹もあれから動いていない。あっちも死んでいるだろう。

「マリア、ナイス! シルフもありがとうな」

 これで後一匹なので、シルフは解除する。節約だ。

 さて、一匹なら俺でも相手に出来るだろう。そう思って前に出ようとしたのだが。

「アキ! そっちにいったわ!」

 なんと残った一匹がこっちに向かってきた。

 仲間を倒された仇ってやつか? だけど、たかがコウモリ、恐るるに足らん!

 って意外に速い! なんとか避けることが出来たが、ケイブバットはそのまま迂回して、再度体当たりをしてくる。

 だが、俺も体勢を立て直す事が出来た。杖を両手で握る。来やがれ、ケイブバット!

 迎撃の準備万端な俺に向かって体当たりしてくるケイブバット。確かに速い。が、打てない訳じゃない!

「ここだ!」

 杖を大きく振り切る。杖を野球のバットのように握り、向かってくるケイブバットをボールのように打った。コウモリだけに、バットって訳だ。

「やったか?!」

 ジャストミート、ホームランだ! 受験勉強のストレス発散で、一時期バッティングセンターに通っただけの事はある。速い動きとはいえ、時速百五十キロメートルのボールよりは遅い。まぁ、それは打てなかったけど。

 ケイブバットの様子を確認すると、なんとフラフラながらも飛んでいた。あれで倒せなかったのか……。結果もバッドだよ。化け物じゃねえかよ……。いや、魔物は化け物だよな……。

 軽くショックを受けつつも、再度の攻撃に備えようと気を引き締めたが、それは不要だった。

 後ろにいたはずのマリアが、俺の前に出て来ており、フラフラ飛行のケイブバットに止めの突きをしたからだ。

 ……うん、いい連携だ。作戦通りさ!


「ありがとうな、マリア」

「怪我は……ないわね。それにしても凄いじゃない。まさか杖で殴り飛ばすなんて」

「ああ、元の世界にいた頃に、向かってるボールを打つスポーツがあってな。あれくらいの速さとサイズなら余裕だ」

 このコウモリもクエストの素材対象なので、解体をしてもらう。兎で少しは慣れたが、さすがに初見の魔物はマリアにお任せだ。

「そう。ならケイブバットはアキにお任せしようかな。っと、解体出来たわよ」

「お、ありがと。んじゃ仕舞うわ。まぁマリアがいてこそだからな。頼むよ」

「了解よ。ふふ」

 解体して貰ったので、魔法の袋に仕舞う。

 地下一階に出る魔物は以上の二種類だ。なんとか戦っていけそうだな。

「よし、先に進むか」

 クエスト素材もまだ集まってないし、まだまだ地下一階の序盤だ。油断は出来ないが、ダンジョンの手応えはある。思ったよりやっていけそうだ。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

12/14:誤字脱字修正

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