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12 ハーレムとこれから

最終話

 自分の想い。

 緊張する。

 盗賊達よりも、オークジェネラルよりも、龍より。

 そのどれと対峙した時よりも緊張する。




 アキが宿屋からいなくなったけど、まだこの世界にいるのはすぐに分かったわ。

 ワタシとアキは、魔力で繋がっているから。

 アキは……あの森にいたわ。

 大事な話がある……みたい。

「……分かったわ」

 元の世界に戻るから、契約を解除したい?

 魔力が不足しないように、何か対策をしてみる?

 他の人に契約を譲渡する?

 そんな話かもしれない。聞きたくない。本当は聞きたくない。

 でも……アキの気持ちを、真剣な気持ちに応えないとダメよね。




「マリア……俺は……」

 初めから分かっていたじゃないか。

 マリアがいなければ、俺はマリアとも皆とも出会う事は無かった。

 これまで、楽しい事、悲しい事、ムカついた事、嬉しい事が色々あった。

 ゲームみたいな冒険が出来るから?

 色々な召喚が使えるから?

 違う。

 そのどの時も近くにマリアがいた。いてくれたからだ。


「俺はマリアが好きだ。マリアと一緒にいたい」

 一目で気になっていた。

 一緒にいる内にもっと気になっていた。

 妹みたいと思いこんだ事もあったけど、違う。

 俺は、マリアが好きなんだ。

「元の世界も気になるけど、それよりも俺はマリアと一緒にいたいんだ。だから……俺と付き合って下さい!」

 言った。言ってしまった。

 元の世界? そりゃ気にはなるさ。家族に友達。

 でも……俺はこの女の子の方が大切なんだ。好きになっちゃったんだ……。




「俺はマリアが好きだ。マリアと一緒にいたい」

 ……え?

「元の世界も気になるけど、それよりも俺はマリアと一緒にいたいんだ。だから……俺と付き合って下さい!」

 ……え?

 アキは……何を言っているのかしら。

 ワタシの事が……好き? 元の世界よりも?

 た、確かにワタシは『カノジョ』の召喚獣だし。ってアキもこれ忘れているのかもしれないわね。

 だから、ワタシはアキの『カノジョ』な訳なんだけど……付き合って欲しいって、ワタシは召喚獣なのにいいの?

 ワタシは……ワタシは召喚獣だから。だから今までアキとは召喚獣とそのマスターだって、ずっとその関係だって思ってきた。

 でも、他の女の子とアキが仲良く話しているのを見ると、胸の奥が少しチクってするのを感じていたし、イライラもしたいた。

 それってつまり……。

「ワタシも、アキの事が好き……。マスターとしてじゃなくて、一人の男として好きなの」

 ワタシもアキの事が好きなんだ。

 召喚獣だから、マスターだから一緒にいたんじゃなくて、アキだから一緒にいたんだ。

 アキだから、ワタシはアキと一緒に過ごせた。毎日楽しかった。




「ほ……本当に? マリアも好き、なのか?」

「えぇ、ワタシもアキの事が好きよ」

「や」

「や?」

「やったぁぁぁぁぁ!」


「落ち着いた、かしら?」

 あまりの嬉しさに、我を忘れた叫んでしまった。

「あぁ、ごめん。なんか嬉しくて。えっと、マリアも俺の事が好き、なんだよな」

「えぇ。ワタシもアキが好きよ」

「彼女……って事だな。彼女……」

 あれ。そういえばマリアって確か、彼女の召喚獣とかじゃなかったっけ?

「マリアって彼女の召喚獣だっけ?」

「ふふ。そうよ。彼女の代わりをするために創られたのよ、ワタシ」

 彼女……の召喚獣か。

「これで名実ともに、マリアは彼女って事だな」

「よろしくね、大好きなアキ」

「よろしくな、大好きなマリア」

 こうして、俺とマリアは恋人同士になった。

 俺とマリアはいつの間にか抱き合って、唇を重ねていた。




「なんか……緊張して疲れちゃったな。宿に戻るか」

「ふふ。そうね。戻りましょうか。皆も心配してるでしょうしね」

 そうだ。誰にも内緒でここに来たんだった。

 でも俺がこの世界にいる事も、生きていることも、冒険証を見れば分かるし、大丈夫かな。大丈夫だよね?

 それよりも、だ。

 二人なんだし、恋人らしく歩きたいよな。

「マリア……手、繋ごうか」

 まずは手を繋ぐのが定番だろう。

 ここで躓く事が多いとも聞くけど、手なら前にも繋いだ事もある。

 その時は恋人って関係じゃなかったけど、今ならあの時とは違った感じになるはずだ。

 そう思っていたのに、マリアは予想外の返しをしてきたのだ。

「腕……組んじゃダメ?」

 なんだ、この可愛い生き物。

 あ、マリアだ。

 上目遣いで俺にお願いしている図だ。

 クールな感じだと思っていたのに、なんか甘えてくる感じに変わったのか? 恋人だからそう思うだけか?

 恥ずかしい、って思っちゃうけど、今の俺は違う。

「あぁ、もちろんだ」

「ありがと、アキ」

 悩みと緊張と疲れと嬉しさから、テンションがおかしくなっている。

 あれ、これって公共の場所でイチャイチャしてるバカップルって奴じゃね?

「あ……皆びっくりしちゃうわね、きっと。どうしましょ……」


 マリアと腕を組みながらワーズヴェシンの入口まで戻ってくると、何故か皆勢ぞろいで待っていた。

「アキヒト様……よかった、無事……で?」

「マ、マリアお姉様? そ、それは一体……」

「おやおや。これは先を越されたという事かの?」

「はわわ、大胆です。でも羨ましいのです」

「あれ、なんで皆勢ぞろいしてるんだ?」

 確かに俺がまだこっちにいるのが分かるとは思っていたけど、勢ぞろいしてるなんて。

「皆、心配かけてごめんな。色々あったけど、俺は大丈夫だから」

「そ、それよりも! なんでマリアお姉様とそんなにくっ付いてるんですか! ま、まさか……」

「そうなの、カタリーナ。ワタシとアキは恋人になったのよ」

「まぁ、そういう訳だ。俺はマリアの事が好きだからな。元の世界も気になるけど、マリアを選んじゃったんだ」

 冒険者同士のカップルなんて珍しくないからな。

 まぁ、部屋とかはまだ皆と一緒でも……。さすがに即二人で部屋とかはな。まだ早いでしょ?

「そ、それなら。アルルもアキヒト様の事が好きです!」

「わ、私は……。まぁ一緒にいてあげなくもないわ」

「わらわも恋人になってもいいのかの? アキヒト殿」

「私も、アキヒトさんの事が好きなのです! 是非お付き合いをです」

「え、えぇー?」

 なんかいきなり全員に告白されたぞ?

 カタリーナは微妙な表現だったけど。

 これ、モテ期って奴か? でも困っちゃうな。

 俺にはマリアがいるんだし。

 皆の事は嫌いじゃないし。むしろ好きだ。

 多分、最初にマリアに出会わずに、皆それぞれと出会っていたら、俺と腕を組んでいるのはその女の子になっていたかもしれない。

「皆の気持ちは嬉しいけど、マリアがいるし……」

「そうね。それじゃ、ワタシが正妻の位置で、皆は側室って感じかしら? 順番は……どうするのがいいかしら」

「マ、マリアさん?」

 正妻? 側室? いきなり話が色々飛んでいるぞ?

 まだ恋人になったばかりなんだし、妻っていうのは早いよね。

 なにより、側室って何ですか? いや、意味は分かるよ? でも妻は一人じゃないと駄目でしょ、法律的に……ってここ異世界だった。

 この世界だとOKなの?

 そういや、貴族とかもいるし、側室とかもありって事なのか……?

 いやいや、でも俺って貴族じゃないし、やっぱりここはマリア一筋で……。

「ふむ。アキヒト殿に決めて貰うのが一番良いのじゃが……混乱しておるようじゃの」

「はい! アルルはアキヒト様に出会った順番がいいと思います!」

「アルルちゃん、大胆なのです」

「それならマリア殿が一番というのも納得は行くが……。しかしいいのかの、アルル殿。()()()()順で」

「出会った順だと、ワタシが最初で、次はミネットになるのかしら。アルルにカタリーナに最後がヴァルマね」

「そ、そんな……」

「わ、私が二番目なんです?」

「私は別に……」

「ふむ。わらわが最後になるんじゃな。まぁ別に良いかの」

 ちょ、ちょっと待って欲しい。

「え、あの……俺はマリアが恋人同士なんだけど……。正妻とか側室って何? マリアだってイヤだろ、それ」

「イヤだけど仕方ないわ。強い男には女は惹かれるものだし、皆なら大丈夫よ。それとも、アキは皆の事嫌いなのかしら?」

 好きか嫌いかで言われれば。

「嫌いじゃないけど……。マリアに告白して言うのもなんだけど、むしろ好きだよ? でも……皆もいいの?」

「アルルは問題ないです」

「私も……まぁ、嫌いじゃないし」

「わらわも大丈夫じゃ」

「私もお願いしますです!」

 えーっと。いいのか、いいんだよな?

「よ、よろしくな。みんな」

 女の子五人と付き合うだなんて……まるでハーレム……ハーレムじゃん!

「はい!」


 こうして俺は、マリア、ミネット、アルル、カタリーナ、ヴァルマと付き合う事になった。

 付き合う事になっても、冒険者としての生活は変わらない。

 クエストをやったり、魔物を倒したり、ダンジョンに潜ったり……。

 その合間に、皆とイチャイチャする時間が加わっただけだ。


 イヴァン達に改めて挨拶にも行った。

 イヴァン達は少し怒っていたけど、ミネット自身が納得しているならと、最終的には納得してくれた。

 ローザは、皆の気持ちに気付いていたみたいだ。だけど、まさか全員と付き合うっていうのは考えてなかったらしい。


 ヴィータネンの人達には、やっぱりハーレムじゃんと弄られた。

 なら私もハーレムに加えてよと言ってくる女の子がいたけど、マリア達が断固拒否していた。

 ハーレム要員の追加は駄目なようだ。


 トーダの国にも顔を出した。

 エルフの里とも協力して、召喚により力を入れているみたいだ。

 俺の召喚とか見せて欲しいと強請(ねだ)られたが、ヴァルマが睨みを効かせる事で収まった。


 グーベラッハにもこっそり滞在してきた。

 さすがに王様には会う事は出来なかったけど、姫騎士こと第三王女のエリーザ様は冒険者ギルドで会えた。

 カタリーナが元気で幸せにしている事を確認出来て、喜んでいた。

 カタリーナの貴族騒動も落ち着いてきたので、王都に残る事も出来ると言われたけど、カタリーナがそれを断った。

 なんだかんだで、俺達といるのが楽しいらしい。


「それじゃ次は……デラクルス国を見てなかったから行ってみるか……って二人とも何してるんだ」

「今日はアルルがイチャイチャする日ですよ。さぁ、アキヒト様! 耳をモフモフ撫でて下さい」

「昨日はあまりアキヒトさんとぎゅーって出来なかったのです。だからちょっとだけいいでしょ、アルルちゃん」

「いやアルルにミネット……。今日はアルルの順番だし、ミネットは次に倍増ししてやるから。くっ付くと歩きにくいんだけど」

 ハーレムになる前では信じられないくらい、アルルもミネットも甘えるようになってきた。

 もちろん、マリアもヴァルマもだ。あのカタリーナでさえ、少しデレてきた。

 ハーレムって最初は不誠実って思ったけど、皆幸せだし、この形もいいと思う。

「ミネット殿。順番は守らないと駄目じゃ。わらわも我慢しておるのじゃぞ」

「皆どうしたん……。もう、アキヒトさんったら……」

「ほら、アキもアルルもミネットも。早くしないと置いていくわよ?」

 元の世界の事が気にならない訳じゃない。

 でも、俺は異世界で召喚士でハーレムなこの生活が、とっても楽しいんだ。

 だから……。

「あ、おーい。待ってってば、マリア!」

 いつまでも、こんな感じで過ごせたらと思う。



ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


初投稿のため、拙い部分も多かったと思いますが、まず最後までと思い書き上げました。

これまでお読みくださった方、ご指摘してくださった方、ありがとうございました。


その場で考えていた部分も多かったので、次回はちゃんと練ってからと思います。


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