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07 壁破りと長い通路

 世界には様々なダンジョンがある。

 大きくは洞窟タイプのダンジョンと自然たっぷりの森や山タイプのダンジョンに分かれる。

 一見すると普通の山や森に見えるけれど、魔物はもちろん、罠もあるし奥にはボスもいるダンジョンになる。

 通路は山道や獣道だし、崖などを使えばショートカットも可能になるため、自由度は高いダンジョンだ。

 対して、洞窟タイプは所謂普通のダンジョンだ。

 誰が作ったのか分からない通路と部屋があり、最奥にはボスが待ち構えている。

 通路や部屋の壁は、土だったり岩だったりだ。

 もちろん、崩そうと思えば崩せるし、穴を掘ろうと思えば掘れるだろう。

 しかし、それは通常は行われない。

 極稀に、入り口と下り階段が実は壁越しにあるなどで、壁を壊した方がショートカット出来るという場合は、そのダンジョンがある国と、冒険者ギルドの許可を得て、専用の冒険者に発注される。

 勝手に穴を掘ってはいけないのは、安全のためだ。

 無闇やたらに穴を掘られると、崩壊の危険があるし、何より地図が意味を成さなくなる。

 魔物が隠れ潜んだりもするだろうし、冒険者からすれば危険度が増してしまうのだ。

 そういった事情があるため、ダンジョン内の壁に穴を掘ってはいけないし、意図せず穴を開けてしまった場合は、速やかに冒険者ギルドに報告をする義務がある。




「こっちの方角って事か?」

 トキが壁を指し示した理由が不明だ。

 ここまで、何の迷いもなく進んできていた。

 そして階段を下っている途中で迷い、そして次を示したのが壁だ。

 この階段を下った先に目的地があるんじゃないのか? 突然方角が変わったのか?

「いえ、この壁の向こう側です。正確にはここが入り口となっています」

 入り口? 訳が分からないぞ。

 ダンジョンっていうのは、迷路や罠はあるだろうけど、歩いていけばいつかは最奥に達するはずだ。

 それなのに、こんな何でもない階段の途中に入り口?

「壁にしか見えないけど、どういうことなんだ?」

「恐らく、マスターの召喚獣が関係していると思われます」

 トキの説明によると。

 この壁の向こう側からマスター――戸田の気配が漏れている。

 戸田がトキを創ったように、このダンジョンでも何か特別な召喚獣を創造しているはず。

 この現象を生み出しているのが、その召喚獣の可能性が高い、との事だ。

 だとしてもだ。

「この壁を掘れっていうのか? さすがに今すぐにどうこうは出来ないぞ」

 壁を掘るなんて想定していないから、装備も準備も何も出来ていない。

 壁を掘る召喚獣でも創ればとも思ってしまうけれど、その前に冒険者ギルドに報告しないといけない。

 そっちも問題だ。なんで壁を掘るのかという理由が説明出来ない。

 ボスがこの壁の向こうにいるんです! と言ったとしても、聞く耳は持ってくれないだろう。

「いえ。壁を掘る必要はありません。ここが入り口になっているだけですので……この辺りから手を入れてみて下さい」

 トキはそうは言うけれど、この辺りってまんま壁なんですけど……。

 それにちょっと怖いぞ。一体何が起こるって言うんだ?

「ちょっと……。それっって危なくないの? アキに何かあったら……」

「ア、アルルがやります! やらせてください!」

「いや。アルルに何かあったら、それもダメだろう。何か適当な召喚獣でやったほうが……」

「でもそれじゃ召喚獣さんがかわいそうです」

「お主ら、何をしておるのじゃ……。ほぉ、こうなるんじゃな」

 訳の分からない事に誰がやるかで揉めていたら、いつの間にか壁に穴が空いていた。

「……これ、ヴァルマがやったのか?」

「そうじゃが、壊した訳じゃないのじゃぞ? 壁に手を置こうとしたら、壁が消えたのじゃ」

 壁があった場所は、あたかも最初からそうだったかのように、穴が空いており、その先には通路となっていた。

「これは……」

「どうやら、ここを管理しているマスターの召喚獣の能力のようですね。マスターの気配もこの先です」

 隠し通路となっていたこの通路は、これまでの通路とは様子が違っている。

 まず、通路の壁がこれまでの土や石といったものではなく、加工された石材で出来ているみたいだ。

 誰かが意図的に作った建造物。それが隠し通路であり、その先に戸田の気配がしている……。

「……進もう」


「どこまで続くのかしら、これ」

 隠し通路に侵入した俺達。大分歩いたものの、その通路の先はまだ見えてこない。

「トキ。この通路で合っているんだよな?」

「はい。気配の方向に代わりはありません。……ただ」

「ただ?」

「マスターの気配に変化がありません」

 これまでは、歩いていけばマスター――戸田の気配が強くなってきていたけど、あの変な壁と通ってからは変化がないそうだ。

 つまり、近づいても遠のいてもないらしい。

 どういう事だろうか?

「ものすごく遠いって事か?」

「いえ……。一度戻る事を推奨致します、サブマスター」

 どうもいい予感はしないみたいだ。ここまで慎重なトキを見るのは初めてだ。

 このままでは埒が明かないので、トキの勧め通りに、元の階段まで戻る事にした。


「……少し休憩しようか」

 壁の向こうの通路は先が見えないくらいの綺麗な一直線だった。

 幸い、魔物はいないみたいなので、ただ歩くだけだけど、終わりのない通路は心身共に疲れてしまうのだろう。

 階段まで戻った俺達は、これまでの探索の中で一番疲れが溜まっていた。

「あの通路は一体なんなんだ……」

 いくらなんでも長すぎる。歩いても歩いても先が見えないってどういう事なんだろうか。

 何十キロという単位の長さなのだろうか。だとすると、徒歩だと厳しい。

 だとしても、馬車とかは持ってこれない。ダンジョンに馬車を持ち込むなんて無理だし、あの通路はそこまで広くないし。

 どのくらいの距離かどうかが分かれば、目安になるのだけど……。

 もしくは乗り物を創るとかだろうけど、さすがにずっと召喚を維持するのはキツイ。

 何か対策を考えないといけないけれど……。

 その時、座っている俺の手に、ある物が当たった。

 あぁそうだ。()()は使えそうかな。


 しばらく休憩をして、体力も気力も回復させたところで、再度あの壁の向こうへ挑戦をする。

「ねぇ、アキ。あの通路大丈夫なの? いくら歩いても何もないのだけれど」

「なんか、変な感じもしますし」

「マ、マリアお姉様がいるから大丈夫よ!」

「確かに、何かに見られているような、そんな感じはするがのぉ」

「お、お化けですか?!」

「いや……お化けって……。今回はこれを使ってみる」

 魔物がいる世界なんだし、幽霊もいたりするんだろう、きっと。

 その前に、この通路だ。

「これって……。ビー玉? だったかしら」

「そう、ビー玉だ」

 ダンジョンの坂を検出するために創ったビー玉。

 この階段までは地味にコロコロと転がって役立ってくれていたビー玉。

 あの壁ですっかり存在を忘れていたビー玉。

「これをどうするんですか?」

「これをだな……。アルル、このビー玉を奥に思いっきり転がしてくれないか?」

「転がすんですか?」

「あぁ。投げたほうがいいかな、遠くまで行けばいい」

 ビー玉を投げて、どこまで行くかで距離を測ってみる方式だ。

 ビー玉がそこまで遠くに転がるのか? 距離までは分からないだろ? とか思ってしまうけれど、そこは大丈夫だ。

 悲しいけど、アルルは俺よりも力がある。そのアルルが力いっぱい投擲すれば、かなり遠くまで転がるだろう。

 この通路は凹凸もないし、綺麗な床だ。

 そして距離だけど、さすがに正確な距離は分からない。

 でも、このビー玉は俺が創った召喚物だ。

 俺の魔力で出来ているので、意識すれば大体の位置が分かるので、それでどのくらい遠いか、壁はあるのかは分かる。

 戻すのも、俺の召喚物なので送還すればいいだけだ。

「それじゃ……行きます! てえぃ!」

 アルルが大きく振りかぶってビー玉を投げると、ビー玉は恐ろしいスピードで飛んでいき、あっという間に見えなくなった。

 ……ビー玉は投げにくいだろうに、一体何キロ出ているんだろうか。

 だけれども、そんなに速く飛んで行ったビー玉は、どんどんと進んでいっているようだ。

 反応はまだ遠ざかって……?! あれ、いきなり反応が変わったぞ。

「うむ? 何か後ろから来るぞ」

「アルルにも聞こえました。何かが飛んできます」

 俺には何も感じられないけど、チート級のヴァルマと耳が良いアルルは何かを察知したようだ。

 あれ、でもこの反応は……。

「いや、でもこれは……」

「小さいのが飛んできたな……。ふむ、これは」

 小さくて速い何かが飛んできたけど、ヴァルマがあっさりとそれを捕まえた。

 ヴァルマが捕まえたそれは。

「ビー玉、じゃな」

 さっきアルルが投げたはずのビー玉だった。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


やっぱ使い慣れた専用のエディタのが書きやすいですね。

Evernote で書いて管理してましたけど、書くのは sakura にするようにしてストレス無くなりました。

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