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06 諦めと秘策

 二階の探索は順調に進んだ。

 歪曲や坂に注意しながらも、地図は順調に埋まっていった。

 順調に進んでいるはずなのだけど、一向に探索が完了する気配がはない。

 ネックになっているのは、やはり広さだ。

 坂も問題にはなるけれど、それが罠と成せるのは広さがあってこそだ。

 少しの坂があった程度で、フロアが狭ければそこまでの高低差は生まれない。

 しかし、現にワンフロア分くらいになる高低差を生んでいるのは、広さのせいだ。

 このままでは全探索するのに年単位掛かってしまうかもしれない。

 ダンジョンがどのくらいの規模なのか、未だに不明なのだ。

 ボス部屋もまだ見つかっていない。


「という訳で、また方針確認なんだけど」

 定期的にパーティ内で話し合いはしている。

「そろそろ……他を考えた方がいいんじゃないかしら?」

 迷路なダンジョンのため、面白みが少ないという意見も出てきている。

 魔物は脅威ではない。危険がないのはいいけれど、危険がなさ過ぎて(たぎ)らないのだ。

 ダンジョンを進んでマップを埋めて、迷子にならないように戻って……。

 似たような通路にマンネリ化しているのだ。

 簡単に言えば、飽きてきている。

 このまま、このダンジョンの攻略を進めるのはどうなのか? という事だ。

「そうじゃのぉ……。せめて、ボス部屋の在り処が分かればいいのじゃが」

 全何フロアなのかも不明なのだ。

 他のパーティも頑張っているが、ボスが見つかるのはまだ先になるだろう。

「まだ先も長そうだし。他のダンジョンならとっくに踏破出来るくらいよ」

 せめてボス部屋さえ見つかってくれれば、皆のモチベーションも上がるはずなんだけど……。

 こう、ボス部屋までの道が分かる方法はないだろうか。

 ……それが分かれば皆も苦労はしないわけなんだけどね。

「他へ行くですか?」

 俺がこのダンジョンに挑みたい理由は、ここに戸田絡みの施設があるからだ。

 恐らくは研究所で、そこには何かがあるはずだ。

 だから、ボス部屋――正確には施設に行きたいんだけど、道が分からない事には……。

「アルルがボスの匂いを嗅ぎ取れればいいんですけど……。ごめんなさい」

 匂い……。ボスの……。

「アルルは悪くないわよ。ボスの匂いなんて嗅ぎ取れたら、地図なんて意味ないじゃないの」

「そうじゃな。それを言うなら、わらわもボスの気配をよめればいいんじゃがの。さすがに知らない相手は難しいのじゃ」

 気配……。知っていればいける?

 何かを忘れているような……。何かに気づきそうな……。

「アキ……? さっきから考え込んでどうし……」

「そうか! 匂い! 気配! なんで忘れていたんだ!」

「ア、アキ? いきなりどうしたのよ。びっくりするじゃないの」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっと思いついた事があるんだ。うまくいけば、ボスまで一直線で行けるぞ!」


 翌日。

 俺達は、何の迷いもなくダンジョンを進んでいた。

 これまで通った事のない通路。見た事の無い十字路。降りた事のない階段。

 それらを経て、今は四階にいる。

「それにしても、これって合っているの?」

「あぁ、大丈夫なはずだ。だよな、トキ」

「はい、サブマスター。私がマスターの気配を間違うはずがありません」

 俺達を先導しているのはトキだ。

 トキは自身の創造主である戸田の魔力を察知することが出来る。

 そのお陰で、俺はこのダンジョンが戸田関係の場所だと知る事が出来た。

 そこまでしかトキに頼っていなかった。それが俺の落ち度であり勘違いだった。

「これって、ウィック大陸のあのダンジョンにいたボスよね?」

「でもサイズが小さいと思います」

「カワイイのです」

 これまで、トキはあまり大っぴらに見せて来なかったので、みんなには新鮮なのだろう。

 トキの姿が、ボスとして出会った時からは想像もつかないほどのサイズになっている。

 本体は未だにあのダンジョンに残っており、ここにいるのはその分身のようなもの、らしい。

 そのせいで、かなり小さくなっている。

 能力に制限はあるとはいえ、ボスとしての脅威は健在だ。

「トキならボスのいる場所が分かるんだよ」

「ふむ……。不思議な能力じゃな」

 トキは戸田の魔力を察知できる。という事は、ダンジョンの奥にあるはずの戸田の部屋の場所も分かるはず、というのが俺の考えだ。

 今のところは、トキは迷うことなく進んでくれている。

 もちろん、返りに迷ってしまうと困るため、通った道はマッピングしてある。

 それにしても、案内がいるからいいけど、普通に進めば何日掛かるか分からない広さだ。

 最深部まで攻略しているパーティはどこまで行っているんだろうか。

 チラっと聞いた話では、五階を探索中って噂は聞こえたけど、全フロアを完全に地図埋めしていたら到達は無理な話だ。

 恐らく、下に潜るのを優先しているパーティと、俺達がそうしていたように、フロアの地図を埋めるパーティがいるのだろう。

 どっちにしても、冒険者ギルドからすれば頼もしいパーティだ。

 ボスまでの道順は必要だし、他に何かあるかどうかを調べるのも重要だ。

 その辺りは、誰が命じた訳ではないと思うけど、役割分担が成されているのだろう。

 幸い、四階まで来ているというのに、魔物の強さはそこまで上がっていない。

 ただ迷路なだけで、地図が完全に完成すれば、いい感じの稼ぎダンジョンになるんじゃないだろうか。

 まぁそれよりも、今は奥の戸田の部屋を目指すのが先だけどな。


 そのまま順調に進み、また階段を見つけた。

「これで五階か。ん? トキどうしたんだ?」

 これまで迷いもなく進んでいたトキだけど、階段を降りている途中で、トキが突然立ち止まったのだ。

「はい。サブマスター。階段の途中で、マスターの気配の方向が変わりました」

「どういう事だ? 移動したって事か?」

「いえ……。お待ち下さい」

 トキが訳の分からない事を言いだしたかと思えば、階段を行ったり来たりし出した。

「ア、アキ? 大丈夫、なのよね?」

 大丈夫なはずだ。トキが気配を間違えるはずがない、と思いたい。

 しばらくうろうろとしていたトキが突然立ち止まった。

「ここです、サブマスター」

「ここ? って何が?」

「マスターの気配はここからします」

 そう言ってトキが指し示したのは、階段の途中の壁だった。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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