04 迷路と迷宮
休憩も終わったので、新ダンジョン突入用の列へと並ぶ。
他のパーティが出てきたら、一番前に並んでいるパーティが入る事が出来るシステムだ。
入場規制みたいだ。
まだまだ出来たばかりのダンジョンだけど、調査は進んでいる。
いくら広くて迷路なダンジョンとはいえ、時間と人を費やせば、いつか全部の道が解明するはずだ。
そうなれば、ボスの部屋も分かるはずなんだけど……。
出てくるパーティの人達の表情は明るくない。
もちろん、大事な情報を掴んでいたとしても、こんなダンジョンの中で話を広める行為はしないだろう。
つまり、何の成果も得られなかった演技をしているという可能性がある。
俺達はダンジョンの前情報は知っているけれど、実際の地図なんかは持っていない。
地図は売られていたけど、信ぴょう性がなかったため、買っていない。
そこは脚で稼ぐしかない。
しばらく待ってやっと俺達の番になった。
ちなみに、途中でこの部屋のボスが復活するかもと思っていたけど、何事もなかった。
まぁ復活したとしても、対応するのは一番後ろに並んでいるパーティなので、俺達は何かをする必要はないのだけれど。
初めてのダンジョンに挑む時、楽しさと怖さのなんとも言えない気持ちが湧いてくる。
「いよいよだな」
「えぇ。でもなんで見つからなかったのかしらね、これ」
目の前にあるのは見た事のない扉だ。
このダンジョンは昔にクリアしたことがある。
その時の記憶を思い出してみても……多分この扉は無かったはずだ。
なんで今まで見つからなかったのかってくらい、普通にある扉だ。
これは、何かのきっかけで露出したとかなのだろうか。
そういう、フラグとか封印要素があるダンジョンって他にも……。いや、きっとこれは戸田の研究所だからって事だろうな。
扉を開けると……。目の前には通路が広がっていた。
このダンジョンの主な脅威は迷路だ。魔物の危険は大きくないと思うけれど、それでも注意はしていきたい。
布陣はいつもの通り。
マリアとアルルの前衛組に俺とカタリーナとミネットの魔法系組。殿にヴァルマだ。
「魔物との戦闘は避けつつ、まずは地図の作成からしていこう。迷路らしいから迷ったら大変だ」
一番の脅威は迷路。迷ったら出てこれなくなる。そうしたら、もう二度と日の目を見る事はなくなるだろう。
「何か目印みたいのを残しておきたいのだけれど……」
「他のパーティの邪魔のなっちゃいますね、きっと」
十字路なんかに目印を付けられればいいけど、他のパーティに消されるかもしれないし、混乱の元になってしまうだろう。
「臭いもあまりしない、です」
アルルなら臭いで五階のボス部屋まで戻れるかと思ったけれど、扉を閉めると臭いはしなくなるみたいだ。
最悪、ここに何かを残しておけば匂いは辿れるのだけれど、それこそ邪魔になってしまうだろう。
その匂いの元を他の場所に移されでもしたら、迷子になってしまう。
そんな妨害はされる可能性もある……はずだ。
やはり地道に地図を作成していくしかない。
こういう迷路では、右か左の壁に手を付いて、そのままぐるりと回っていけば、迷う事なく地図のほとんどを埋められるはずだ。
もちろん、階段があった場合どうするかだが、階段で移動してしまうと際限がない。
まずはこの階層で行ける所を埋めていくのがいいだろう。
「それじゃカタリーナは地図作成に注力、他で罠や魔物に対応していくって事でいいな。それじゃ……ベアルカス、最前線を頼むぞ」
俺達の布陣から少し前に離れた位置に、召喚獣であるベアルカスを配置する。
ベアルカスは、耐久もそれなりにある上に素早い。それに召喚獣なので、やられたとしても送還しておけば回復する。
なので、罠察知のためにベアルカスを前方に設置しておく。
だとしても、目の前で自分の召喚獣がやられる姿はみたくないので、ベアルカスには細心の注意を払って欲しい。
「それじゃ出発だ」
「おっと階段か……。しかし広いな……」
途中出てくる魔物は脅威ではなかった。
先行するベアルカス単体でもある程度は対応可能だし、漏らした敵もマリアとアルルで打ち倒している。
罠も少ない。あったとしても、矢が出てくるとか、毒ガスが出てくるという物ではない。
十センチくらいの落とし穴とかの子供のいたずらレベルだ。
そしてというか、やはり一番の鬼門は、この広さだ。
「五階まで行けるくらいは歩いたかしら」
「そうですね……地図でもそのくらいはあります」
途中に休憩を挟みながら歩いてきたけれど、広い。
既に、数フロア分――五階まで最短距離で歩いて来た程度は歩いた。
それで見つかったのが階段一つに、数えきれないほどの交差点だ。
これを全て網羅するとなると、骨が折れる作業だ。
このフロアの完成だけで、どのくらい費やさないといけないのだろうか……。
「今日は初日だし、階段も見つけた。一旦五階のボス部屋まで戻ろうか」
先も長いし、深入りしても駄目だ。焦らないで攻略をする。これは決めてあった事なので、戻る事に反対意見は出なかった。
「えっと……。今がここで、来た道がこっちだから……。あっちよ!」
ただ戻るだけなのに、こうも交差点が多いと、それだけで現在地が分かりにくくなってしまう。
見たような道や交差点が多いので、何か目印や名前が欲しい所だ。
……あぁ。番号とか付ければいいのか。
でもダンジョン内に刻む訳にはいかないから、地図に落とすしかないって事だな。
「そのまままっすぐで戻れるわよ」
地図役のカタリーナはしっかりやっている。書いている地図も見せて貰ったけど、分かりやすいし拡張性もありそうだ。
誘導の元進むと、無事に扉が見えてきた。
扉を開けると、五階の休憩部屋だ。無事に戻ってこれたという事だ。
「戻ってこれたか」
「アキ、今日はどうするのかしら?」
「ここで少し休んで、上に戻ろうか」
「分かったわ」
戦闘もあったけど、一番の疲労はゴールが見えないって事だった。
地図が完成していないと、どこを進めばいいのか分からない。先が見えない不安という奴だ。
完全に地図を作る必要もないのだろうけど、やはり全部埋めたくなるというものだ。
それにしても、道中は他の冒険者に遭遇しなかったな。
あれだけ広いといっても、このダンジョンに潜っているパーティは多いはずだ。それなのに、一組も、それこそ気配すら無かったというのが不思議。
……まぁ、みんなはもっと下の階層に挑んでいるだけなのだろうけど。
それだけ出会わないってことは、それだけ広いって事なんだろうな。
結局、五階のボスも拝めないまま、俺達は無事に地上へと帰還した。
ご意見ご感想があれば嬉しいです。
が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……




