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03 成長とルール

「ここは真っすぐね」

「よく覚えてるな、マリア」

 翌日。

 ダンジョンに潜っている俺達だけど、この辺りは余裕といった所だ。

 以前にマリアと二人で挑んだ時は、結構苦労していたはずだというのに、今では二人でも余裕で五階までいけそうな感じだ。

 もちろん、今は二人ではない。

 前にはマリアとアルル。次には地図を持った俺。その後ろにはカタリーナとミネット。最後尾にヴァルマという布陣だ。

 基本的には前衛の二人で事足りるため、俺は地図で案内に徹している。

 そのはずだったのに、結構マリアが道を覚えているので、俺が二重チェックをしているという流れになっている。


「もうすぐ五階ね」

「余裕だとは思っていたけど、ここまで余裕だとなんだかなぁ……」

「そ、それだけアキヒトさん達が強くなったって事です!」

 あれから結構な日数が経っているはずなのに、ダンジョンは何も変わっていない。

 対して、俺達は変わっている。

 俺の召喚もパワーアップしているし、種類も充実している。

 それに、俺自身のステータスも上がっている。

 試しに一匹だけ魔物と対峙したけど、全然威圧感もなければ恐怖心もなかった。

 もちろん、魔物を侮ってはいけないけれど、俺の杖の一振りで倒せてしまったのだ。

 召喚獣の補助があれば、俺一人でも五階までいけてしまうかもしれない……。

 自分の成長を実感出来たのは嬉しかった。


「もうボス部屋なの?」

「最短距離とはいえ、さすがは初級向けといった所じゃな」

 さすがにここまででピンチもなく進んできているため、ほぼ出番のなかった後ろの三人は不満気だ。

「ここからが本番だからな。ボスはいないはずだから、少し休憩していくぞー」

 五階のボスについては情報収集しておいた。

 昇級をしたい冒険者もいないため、見つけたら即座に倒されてしまうらしい。

 一応はボスなのに、雑魚扱いになってしまっている、不憫なボスだ。

 ……今の俺達でも雑魚扱いに出来るって事になるのだろうか。

 ここのボスは、俺とマリア、そしてイヴァン達五人で倒した思い出のボスだ。

 それだけ強くなったって事だけど、それはそれでなんか悲しい気持ちになってしまう。


 そのまま何の問題もなく、ボス部屋まで辿り着いた。

 ここまで最短距離で進んできたし、戦闘回数も戦闘時間も少ない。

 疲れはそんなに無いと思うけど、安心して休める場所はここなので、ここで一休みする事にする。

 もちろん、ボスが湧いてしまうと大変だけど、まだ数日余裕があるはずだ。

 ボス部屋に入ると、案の定ボスはいなかった。

 他に何組か休憩をしているパーティもいるし、ここが休憩所になっているというのは情報通りのようだ。

 ここにいるパーティは、新ダンジョンの攻略を目標にしているパーティのはずだ。


「おい、お前ら。見た事ない顔だが……。休憩か? それとも先に進むのか?」

 部屋に入るや否や、休憩しているパーティの内の一人が声を掛けてきた。

 見た目はいかつい男だ。

 その男の周りにいた――恐らくはパーティメンバーなのだろう。男だけのパーティだ。

 こちらが一見ハーレムパーティだ。そのせいもあって、ナンパしてくる奴は後を絶たない。

 その場合は、俺に襲い掛かってくるパターンになる。

 ここはダンジョンの中で、周りは知らないパーティしかない。

 休憩しにきたのに、気は抜けない状態という訳だ。

「あー……怖がらせたな。別にどうこうしようって訳じゃない。一応、この部屋にはルールがあるんだが、知ってるか?」

 ルール。

 それはダンジョン村で聞いている。

「あぁ。知っているよ。俺達はひとまず休憩しようと思うから、休憩側に移動するよ」

 冒険者で殺到して人気の新ダンジョン。

 休憩するパーティと挑むパーティが多く、当初は混乱が見られたらしい。

 混乱だけならいいが、そのせいで喧嘩が起こったり、攻略に支障が出始めた。

 これに業を煮やした冒険者ギルドが、新ダンジョン攻略中のみのルールを設けた。

「分かってるならいい。たまに、ルールを知らないパーティがあってな。勝手に作ったルールだろとかぬかして、守らない奴らもいてなぁ。あぁ、すまん。引き止めちまってるな。俺は戻るわ」

 ボス部屋は二グループに分かれている。

 右側に並ぶように立っているパーティ群と、左側に座っているパーティ群。

 これがこの部屋のルールだ。


 新ダンジョンに突入する場合。前の組から時間を置いて侵入をする事。

 多くのパーティが一度に侵入をすると、中でかち合ってしまうかもしれないし、すぐ後ろに他のパーティが着いてきているのは、精神的に不安になるためだ。

 そのため、順番待ちをしないといけないので、突入の順番を待つパーティは、ボス部屋向かって右側に並ぶ。


 突入をしないで休憩をするパーティは、ボス部屋向かって左側で休憩をする事。

 これは並ばなくてもいい。

 他のパーティの迷惑にならないように、広がりすぎずに纏まっていればよい。


 仮にボスが出現をした場合は、順番待ちをしているパーティで、一番後ろの組が対応をする事。

 全員でボスに挑むと、いらぬ怪我をしたり、喧嘩の元になる。

 そのため、対応するパーティを決めて置いて、ボスに素早くかつ安全に対応出来るようにした。

 ボス対応中は、新規に順番待ちの列に並んではいけない。ボスに対応しているパーティが追い抜かれないようにするためだ。

 ボスに対応した結果、休憩を要する事になり順番の列から離れる事も自由だ。


 これらが冒険者ギルドが決めたルールだ。

 一時的な措置とはいえ、冒険者ギルドが決めたルール。これを守らないと、冒険者ギルドから罰則がある。

 新ダンジョンに挑むなら、情報収集をするのは冒険者として当然の行為だ。

 そのため、これらのルールも知っているはずなのが前提だ。

 これを知らないで挑むのは、冒険者としては三流と言う事になる。

 俺も、最初に冒険者ギルドで聞いた時には教えて貰えなかった。

 冷やかしに来る冒険者が多いため、一回目の説明ではされないという事だった。

 その後に冒険者ギルドや街で情報収集をしたおかげで、俺達はそのルールを知る事が出来た。


 さっきのいかつい男は、俺達がルールを知っているかを確認しにきたのだろう。

 何か文句でも言ってきそうとか身構えてしまったけど、見た目で判断をしてはいけないな。

「よし。ひとまずは休憩だ」

 休憩をする目的は、休む以外にもある。

 他のパーティの状況を観察するのだ。

 どんな構成、装備で挑んでいるのか。どのくらいの数が挑んでいるのか。戻ってくるパーティはいるのか。怪我はしているのか。

 などだ。

 さっき俺に話しかけてきたパーティは、性別こそ男で統一されているが、見た感じの職業はばらけていてバランスが良さそうだ。

 恐らくはベテランに分類されるパーティなのだろう。雑談もしているし、雰囲気も良さそうだ。

 他のパーティも、険悪な雰囲気は無さそうだ。

 いつまでもボス部屋が見つからないダンジョンなので、イラついているパーティもいるのかと思ったけど、そうでもないみたいだ。


 しばらく休んでいると、探索から戻ってくるパーティも幾つかあった。

「ふぅ~。やっと戻って来れた……」

「五番方面は広かったなぁ」

「あっちは後回しだな。先に他を潰していこうか」

「まぁ明日だな。ちょっと休んだら上に戻るぞー」

 特に怪我をしているようには見えないし、装備している武具も破損はしていないようだ。

 となると、魔物に追われて撤退してきたのではなく、予定通りの探索を終えて帰還してきたパーティなのだろう。

 しかし、気になる単語を言っていたな。

「五番ってなんだろ……」

 思わず口に出てしまったのを気付いたのは、相手に聞こえてしまった後だった。

「ん? なんだ新人か?」

「おい、坊主。他のパーティを観察するのもいいけど、あまりバレナイようにやれよ」

「五番が何かは教えてやらねーよ」

 俺にそう言って、そのパーティは離れた所で座って休憩を始めた。

 ……危うく、トラブルになるところだった。気を付けてないといけないなぁ。

 ちなみに、あのパーティが俺達に詳細を教えてくれなかったのは、意地悪でもなんでもない。

 パーティ自身が調べた情報は重要だ。冒険者ギルドに情報を報告したり、他のパーティに売ったり出来る。

 番号を言っていたから、恐らく通路とか部屋に番号を振っていて探索をしているんだと思うけど……。

 情報が足りないけど、こればかりは後発な俺達が不利になるのは当たり前だ。


「アキ。あまり他のパーティに迷惑を掛けちゃダメよ」

「村だとじろじろと見られますけど、ここの人達はまた違った視線を感じますね」

「嫌じゃないけど……なんか嫌」

「互いに監視しあっているというのが近いのかと思うがの」

「なんか、怖いのです」

 女の子達のが冷静だ。

 コホン。

 五階まで来るのに、そんなに消耗はしていない。

 ここで休んでいるのは、俺達がルールを知っていると知らせるためもある。

 他のパーティの様子というか、雰囲気を見ると言うもあったけれど、それは十分に出来ただろう。

 ここまでの疲れも取れたし、もう休憩している理由はない。

「……もうちょい休んだら、あっちの列に並ぶか」

 探索開始まで、もう少しだ。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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