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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
六章 ~フルト村と帰省~
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d1 お節介とインタビュー

もう次の章にいきますが、さすがに短いのでその補填。

「そうね。赤ちゃんは可愛いし、二人も幸せそうだし、いい家族だと思うわ」

 フルト村に滞在中。ワタシはある質問をされていたわ。

「結婚……。憧れもするし願望もあるけれど……。ほら、知っているでしょ。ワタシは普通とは違うって。だから、ね」

 幸せそうな夫婦とその赤ちゃん。それを見ていると、やっぱりワタシもって気持ちは芽生えてくるわね。

 でも、ワタシは召喚獣だから。人間の見た目をしているけれど、召喚獣だから……。

「え? 好きな人? だから……。……えぇ、そうね。好きっていうか、気になるっていうか。そういうの感じはあるわよ」

 ずっと一緒に旅をしてきた人。ずっと近くにいた人。ワタシはあの人が好き……なんだと思う。

 でもその想いは伝えられない。だってワタシは召喚獣だから。

「えぇ。だから付き合ってるとかじゃないわ。え? パーティで他に恋愛関係があるか、ですって?」

 ワタシのパーティは男一人の女五人。

「それは女同士って意味じゃ……ないわよね。うーん、そうね……。ヴァルマは好きって感じではないのよね。他のメンバーも、多分嫌いかってよりは好きなんじゃないかと思うのだけれど」

 ヴァルマは単純に赤ちゃんを宿したいだけのはず。でもそれを嫌だって思っている子がワタシ以外にもいるから、多分ライバルって事になるのかしら。

「女の子じゃなくて、男の方の気持ち? 誰が好きなのかしらね……。興味が無いって訳じゃないと思うわ。視線というか、そういうのは分かるでしょ?」

 こちらからアプローチをすると、恥ずかしそうにして逃げてしまう。

 かと言って、嫌いという訳でもないみたい。チラチラとこちらを見ている事もあるし、胸や太ももに視線を感じる事も多い。

 そういう所を見ると、少し可愛いって思ってしまう。

「はいはい。惚気はいいから……。でもそうね。パーティもフルになったし、恋愛とかも起きるかもしれないわね」

 冒険者同士の恋愛は多い。毎日を共に過ごし、死線を乗り越えてくれば、友情以上の感情が芽生えるのも納得がいく。

 目の前の事例は、そもそも幼馴染だったので、それには当てはまらないのかもしれないけれど。

「誰かが結婚して、生活を落ちつけるなら、この村をお勧めしてあげるわ。と言っても、皆この村は気に入っているみたいだけれど」

 都などの都会もいいけれど、こういう村で夫婦力を合わせて、そして家族になって暮らしていくのもいい生活よね。

「え、もういいの? なんか気になるけれど、まぁいいわ。それじゃね」




「可愛いですね、赤ちゃん……。こんなに小さいのに、いつか大きくなるなんて信じられません」

 奴隷商店にいた頃でも、さすがに赤ん坊はいなかったです。

 小さい子供はいましたし、その面倒も見ていたりもしていましたけれど、赤ん坊はまた別格です。

「そうですね。アルルもいつか赤ん坊が欲しいです」

 願望はあります。でもアルルは奴隷です。奴隷はご主人様に尽くし、そのために生きます。

「でもアルルは奴隷です。なので、結婚とかは出来ないですね。許されません」

 奴隷はご主人様の持ち物。なので他の人と結婚は出来ません。つまり赤ちゃんを作るとなると……。

「ご主人様との子供、という事になりますね。え? まだ小さいのに、ですか? 奴隷ですから……奴隷商店にいた頃に、知識だけは教えられました」

 奴隷商店の店員やお姉さんに教育は施されました。価値を高めるためにです。

 何も知らない初心(うぶ)な需要もあるらしいのですが、アルルはそうじゃなかったみたいです。

 行為自体はしていませんが、行為を見て勉強する事もありました。

 なので、どうすればご主人様に尽くせるか、どうすれば赤ちゃんが出来るかは知っています。

「実は、今のご主人様に買われた日に、裸で尽くそうとしたのですが……」

 忘れもしません。

 アルルも初めてで、怖かったですが、尽くさなきゃという思いで裸でご奉仕しようとしました。

「はい……。止められちゃいました。そういうつもりで選んだんじゃないって言われました」

 ばっさりと断られました。決心した気持ちはなんだったんだろうって思うのと、ホッとしました。

 アルルは怖かったんです。知らない人ご主人様と赤ちゃんを作る行為をするのが。

「でも……アルルはご主人様の事が大好きです。優しくて、強くて。でもどこか情けなくて」

 ご主人様は優しいです。奴隷であるアルルに対しても、奴隷のように扱いません。普通のパーティメンバー以上に。妹みたいに扱ってくれます。

 それに強いです。色んなモノを召喚して戦います。アルルも一緒に戦う事が出来ます。

 そんな完璧のようなご主人様ですが、女性が苦手みたいです。

「アルルは奴隷なので、結婚は出来ません。妾で構いません。いつかご主人様との赤ちゃんを……。え? じゃあ夫人はだれになるのですか?」

 ご主人様の周りには女性が多いです。苦手と言いましたが、嫌いではないようです。

 アルルもよく頭を撫でて貰います。とっても気持ちいいです。

 それも含めると……。

「やはりマリア様ではないでしょうか? 一番親しいですし、マリア様ならお似合いです」

 アルルのもう一人のご主人様と言ってもいい人物。

 綺麗で可愛くて可憐で優雅で。家事も出来るし戦闘も出来る。まさに完璧な女性。それがマリア様。とってもお似合いでしょう。

「はい。なのでアルルは何番目でもいいです。……こんな答えでよかったでしょうか? 大丈夫? よく分かりませんが、問題ないのでしたら良かったです。はい、それでは」




「昔は結婚は義務だって思っていたの。でも今は冒険者だから、必ずって訳じゃないわよ」

 貴族には暗黙の義務がある。

 それは、血筋を絶やさない事。そのために結婚は義務のようなものであり、個人の意思は尊重されない。

 主に親が結婚相手を決める。産まれた瞬間に婚約者がいるというのも珍しくはない。

 だが、家が取り潰しになってしまえば、それは無かった事になる。

「じゃあ結婚はどうするのかって? そうね……。今はまだ考えられないわね。その内って事になるんでしょうけど」

 冒険者は自由。何をするにも自由。戦うのも休むのも、結婚するのも自分で決めるわ。

 昔は結婚する事が決まっていたけれど、今はそんな予定はない。でもいつかはしたいという思いはもちろんあります。

「マリアお姉様……? そうね、憧れはあるけれど、恋愛対象じゃないわ」

 確かにマリアお姉様は素敵。好きだけれど、愛ではない。さすがに同性だし、私もそこまでじゃない……はず。

「じゃあ誰かって? うーん……。え? いやいや、さすがにそれはないわよ。嫌いって訳じゃないんだけどね」

 一緒のパーティの男性。それは一人しかいない。

 初めはそこまで興味が無かった。むしろマリアお姉様と親しくしていて、嫌な人って目で見ていたわね。

「でも……。そうね。そういう人じゃないって分かったわ。いざって時は頼れるし、優しいしね。でも恋愛対象じゃないわね」

 一緒に冒険している内に、あの人は誰にでも優しくて、そして頼れるリーダーって事が分かってきた。

「でも他の人はそうじゃないと思うわよ。ヴァルマさんは少し違うけれど……。私にもいつか白馬に乗った王子様が……。いいじゃない、夢見たって!」

 決められた人生。決められた相手。それらを全て捨てて、無くして、今私は冒険者をしている。

 先の事は分からないけれど、少なくとも周りの人達が幸せで、そして私も幸せになれればいいなって思っている。

「なんかお節介のような気もするけれど……。うちのパーティを引っ掻き回したりは……しないわよね。うん、それじゃね」




「無論、それはアキヒト殿じゃな」

 何か質問があるというから聞いてみれば、何てことない質問じゃな。

「好きじゃなくて子供が欲しいだけじゃないかって? 最初はそうじゃったがな。強い遺伝子を欲するのは、本能のままじゃ」

 最初はただ子供を宿したいだけじゃった。

 あの強さ、あの魔力の人間との子供。強い遺伝子を遺すのは、動物の本能によるもの。そのはずじゃった。

「一緒にいる間にの。男としても惹かれるようになっての」

 パーティに入れてもらい、一緒に冒険をしてきて分かったのじゃ。

 あの男は強いだけではないとな。強さで惹かれていたのじゃが、いつの間にかその性格にも惚れてしまったのじゃ。

「もちろん子供は欲しいのじゃ。お主の赤ん坊を見て、その気持ちは強まった。じゃが、夫婦という形も悪くはないと、そう思ったのじゃ」

 赤ん坊は欲しい。わらわとの赤ん坊。さぞかし強く、そして可愛いのじゃろうな。

「ん? 他の人はどうかとな? ふむ。まぁ夫婦二人というのはわらわの願望じゃ。妻が何人いても構わぬ。たまに、わらわと二人の時間を過ごしてくれえばの」

 出来れば独占はしたいが、本人の気持ちにも応えてやらないといけない。

 も、もちろん。本人がわらわだけが好きというのなら、それに応えてやるつもりじゃが。

「十中八九、他のメンバーは惚れておるじゃろう。あぁ、カタリーナ殿は多分違うがの。除いて四人じゃな。やはりマリア殿が優勢かのぉ」

 わらわ達のパーティの女性が五人。カタリーナを除けば四人じゃ。

 英雄色を好むというしな。四人くらいならば問題はないじゃろう。

「ふむ。もういいのかの? ならな義妹殿によろしく頼むのじゃ」




「これは強敵揃いだね!」

「急にどうしたの、ローザ」

 一日掛けて、皆にインタビューをした結果。アッキーを巡る戦いは激しいというのが分かった。

「いやー。ミーちゃんのためにね。他の女性がアッキーの事をどう思っているのかなーって聞いてみたんだよ」

「何をしているのか思ったら……」

「でもイヴァンも気になるでしょ? 実の妹の恋が成就するかどうか」

「まぁ気にはなるけどね。アキヒト君に託したわけだし」

 ミーちゃん――ミネットちゃんがアッキーの事を好きだっていうのはバレバレだった。というか、恋の相談もされた事もある。

 そんなミーちゃんが、念願叶ってアッキーと同じパーティに加入して、私達の村に来たのだ。

 これは恋が成就したのかと思っていたけど、まさかマリっち以外にも女の子を連れているなんて……。

 何回か会話している内に、全員がアッキーの事を気になってる感じがしたので、ここは義妹のためにひと肌抜いて、皆の想いを聞いてきたのだ。

「それで、どうだったの?」

「だから強敵揃いだね。ヴァルマさんには、こっちの意図がバレていたみたいだし」

 一人――カタリーナちゃんだけはそうじゃないみたいだけど、他の皆はアッキーの事が好きみたい。恋してるみたいだね。

 関係とか身分とかで、一歩引いている感じもあったけど、そうなるとヴァルマさんが優勢なのかな?

「はぁ……。あまりアキヒト君達に迷惑を掛けちゃダメだよ?」

「分かってるって! でも恋を応援したいなーって思って」

 今こうしてイヴァンと夫婦が出来ているのは、ミーちゃんが応援してくれたお陰。

 ……きっとそのはず。

 イヴァンと付き合うってなった時も、赤ちゃんが出来た時も、おめでとうって言ってくれた。

 だから、私も義姉さんとして、ミーちゃんの恋を応援したいんだけど……。

「それはアキヒト君達の問題だからね」

「分かったって!」

 でも、一見するとハーレムのようなパーティなのに、よくアッキーは誰にも手を出していないなって不思議だった。

 女の子が嫌いって訳じゃないから、昔のイヴァンみたいに、積極的になれないだけなのかなー。

「アッキー達が幸せならそれでいいね。いつか子供を見せにきたりして」

「はは。そうだね」




「ん……。なんか寒気が」

「大丈夫ですか、アキヒトさん。これ、温かいミルクです」

「あぁ、ありがとなミネット。飲んだら少し休むかなぁ」

「はい。アキヒトさん達はお客様なんですから、村の仕事を手伝わなくてもいいんですよ?」

「世話になりっぱなしってのもあれだしな」

 お節介なインタビューは、その対象者であるアキヒトと、応援される側のミネットには、何も知らされず、気付かれずに完了した。



ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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