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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
六章 ~フルト村と帰省~
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02 これからと目的

 イヴァン達の村では、簡単な宴が催された。

 国からの要請とは言え、冒険者を引退した若者――イヴァンが応じ、無事に戻ってきた事への宴だ。

 村からすれば、貴重な若者を危険な場所に送り出した事になる。

 さらに、新婚で子供も産まれたばかりの大事な若者だ。

 村としては苦渋の選択だっただろう。

 しかし、そんなイヴァンが無事に帰ってきたのだ。それも、妹であるミネットと共に。

 祝わない訳がなかった。


「ごめんね、なんか騒がしくて」

「いや、楽しいからいいよ」

 宴と言っても、騒いでいるのは大人達だ。

 いつもよりも豪華な食事に酒。そして、イヴァン達の帰還という話で盛り上がっているのだ。

 俺達はというと、一応客人という立場だ。イヴァンが色々気を使ってくれるけど、イヴァン自身も村人の相手をするのに忙しそうだ。

 こういう賑やかなのは嫌いじゃないけど、酒が絡んだ騒ぎは少し苦手だ。

 一応俺は未成年になる訳だし、酒は苦手だ。

 俺達の中だと……ヴァルマが成人という事になるのだろうか? 龍人にも成人ってあるのかな?

 マリアもアルルも、カタリーナもミネットも俺よりも若い。

 なので、ヴァルマだけが村人達とお酒を楽しんでいる。あの容姿だしあの性格だ。すぐに打ち解けていた。


 そんなイヴァン達帰還の宴から数日後。

 俺達はまだ、イヴァン達の村に滞在していた。

 イヴァン達を含む村人達は、いつもの日常の生活に戻っていた。

 さすがにずっとここにお世話になっている訳にもいかないので、今後の方針を立てないといけない。

 当面のパーティの目標であった、イヴァン達との合流は果たせた。

 そして俺個人が気になっている、戸田の痕跡。それらしきものが、イヴァン達と攻略したダンジョンにあるかもしれないのだ。

 その証拠となるものもあった。

 戸田の召喚獣であるトキに聞いてみたけど、デラクルス国では全くなかった戸田の気配が、この村では少しするみたいだ。

 たまにダンジョン方面からやってくる冒険者もいるというので、それのせいだろう。

 となると、ダンジョンに行ってみたい気もするけど……。

「という訳で、これからどうしようかなって思っているんだけど」

 なので、パーティ全員で会議だ。

「そうね……。ここでずっとお世話になる訳にもいかないわよね」

 ここの生活は楽しい。のんびりとまったりと。村人もいい人ばかりだし、過ごしやすい。

 でも、ずっと客人でいる訳にもいかない。

 やはり、村人と客人という壁が存在してしまうし、何より俺達は冒険者だ。

「村人から聞いた話じゃが、もう少し北西に行った所にあるワーズヴェシンという街があるそうじゃ。その近くのダンジョンが最近賑やかなようじゃぞ?」

「アルルも聞きました。隠されていたダンジョンがあったみたいです」

 それは俺もイヴァンに聞いた。そのダンジョンには行ってみたいけれど。

「ワーズヴェシン……ね」

「それは私も兄さんと義姉さんに聞きましたけど……」

「どうしました、マリアお姉様? ミネットさんも……」

「それはだな……」

 これまで、イヴァン達と別れた経緯は詳しく話した事は無かったかもしれない。いい話でもないし。

 でもここまで来てしまったら、皆にも知っておいて欲しい。

 俺は皆に説明をした。何故マリアやミネットが微妙な表情をしているのか。

 ワーズヴェシンでイヴァン達と出会った事。

 一緒にダンジョン攻略をした事。

 俺の召喚の事が第三者に漏れた事。

 それが原因で、マリアが盗賊に狙われた事。

 そして俺が瀕死になった事。

 諸々のせいで、俺達とイヴァン達が引き離された事。

「だから、あの街には行きにくいんだ。ダンジョンには行ってみたいけどな……」

「そういえば、ダンジョンの付近が簡単な村みたいになっているようじゃぞ? そこなら気兼ねがないのではないかの?」

 似たような意味で、ワーズヴェシンの先のグーベラッハにも行く事は厳しい。

 色々買い足したりとかの補給をしたいけど、そうなるとデラクルス国まで戻るか、その村で補給するしかない。

 それからも色々と意見を交換した。

「攻略されていないダンジョン……危険もあると思いますけど、マリアお姉様達なら大丈夫です。それにそういうダンジョンを攻略するのが冒険者です!」

「デラクルス国にもダンジョンはあったと思うわ」

「アルルは……アキヒト様に着いていきます」


「それじゃ、ひとまずはその新しいダンジョンの様子を見に行くって事でいいな」

 話し合いの結果、新しいダンジョンに行く事になった。

 やはり、皆も新しいダンジョンというのが気になるみたいだ。

 色んな冒険者が集まっているみたいだから、俺達が会った事もある人達もいるかもしれない。

 グーベラッハ関係の冒険者が来ていると少し危ない気もするけど、カタリーナの存在はそこまで隠さないといけないものでも無かった気がする。

 本人も、別に気にしていないみたいだし。

 となると、この村を発たないといけない。

 イヴァン達にもお世話になったし、この村の人達にもお世話になった。別れは辛いけど、またいつでも来ればいいしな。

「そうかい……旅立っちゃうんだね。寂しいけど、アキヒト君なら大丈夫だね」

「アッキーにマリっち、それに皆と会えたのはとても嬉しいよ。またいつでも来てね。うちのリーゼちゃんも待ってるしね」

 二人の赤ちゃんのリーゼは、まだ赤ちゃんだけれど、人見知りもせずに俺達によく懐いていた。

 特にマリアは懐かれて困り気味だったみたいだけど、卒なく対応していた。さすがはマリアだ。

 赤ちゃんは可愛い。

 イヴァンはパパになってしまったけど、それまでと同じように接してくれたし、俺としては嬉しい。

 でもやっぱり、男として、パパとして大人になってしまった気がする。

 ミネットの事も頼まれたし、俺もしっかりしていかないとな……。


 翌日。すっかり慣れてきたこの村とも別れる時が来た。

 滞在したのは数日だけど、それでも第二の故郷のように思えてきたので、寂しい。

 冒険が落ち着いたら、こんな村で過ごすのも悪くないかもしれない。

「それじゃ、イヴァン。色々ありがとうな」

「こっちこそありがとうね。いつでも来てね。歓迎するから」

「ほら、リーゼちゃん、泣かないの。マリっちが困っちゃうでしょ」

「あらあら……。こんなに泣かれちゃうと、後ろ髪を引かれちゃうわね。でもごめんね。また来るからね」

 マリアがリーゼに向ける表情は、すごく優しい。

 女の子のようで、女性のようで、母のようで……。ドキっとしてしまったのは内緒だ。

 他のメンバーも皆見たような感じだ。

 さすがに、アルルやカタリーナに母性は感じないけど、お姉ちゃんって感じがしてる。

「ほら行くぞー!」

「じゃーねー! アキヒト君にマリアさん!」

 こうして、俺達は短いようで楽しいフルト村を出発したのだった。




「……行っちゃったね」

「うん、そうだね。イヴァンも一緒に行きたかった?」

「僕は……行きたくないって言えば嘘になっちゃうけど、愛する妻と娘を守りたいからね。それに、ミネットの事もアキヒト君達なら大丈夫だよ」

「うーん……。ミネットちゃん、競争率高そうだけど、大丈夫かなー」

「マリアさんがいるからね……。でもそれを含めて、アキヒト君なら大丈夫だよ。僕はそう思うよ」

「イヴァンがそう言うなら大丈夫なのかもね」

「さて、それじゃ妻と娘のために、頑張るよ!」

「うふふ、無理しないでね、あなた」


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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