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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
六章 ~フルト村と帰省~
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01 故郷と稽古

「あ、見えてきたよ」

「あれが……」

「うん。僕達の故郷……フルト村だよ」

 デラクルス国を無事に出立した俺達は、途中いくつかの街や村を経て、イヴァン達の故郷のフルト村に到着した。

 デラクルス国で一緒に数日過ごしたお陰もあり、旅の途中も皆仲良く過ごす事が出来た。

 イヴァンが親しみやすい性格な事もあるけど、やっぱり兄妹が一緒という事もあるのだと思う。

 道中も盗賊なんて者はおらず、平和だった。

「俺達の事はいいから、先に行ってていいぞ、イヴァン」

「そ、そうかい? それじゃそうさせてもらうね」

 村に近づくにつれ、イヴァンがそわそわとし出したのだ。

 明らかに早く村に帰りたい――ローザに会いたいのがバレバレだ。

 そのままイヴァンは馬車を降りて、ダッシュで村へ駆けこんでいった。

「ふふ。兄さんったら。でも私も帰るの久しぶりなのです」

 ミネットにとっても故郷だ。やっぱり故郷っていうのはいいものだ……。


 イヴァンに遅れて村に入ってみたけど、本当にのどかな村だ。

 これまでにも、こういう村っていくつか寄った事はあるけれど、ここはさらにのどかだ。

 村に門がある訳でもないし、門番もいないので、心配になってしまうくらいののどかさだ。

 イヴァンの優しい性格も、この村で育ったお陰なのかもしれない。

「あそこがうちです。今は兄さんとローザ義姉さんが住んでます」

 ミネットが指差す先には、さっきまで一緒だったイヴァンと、その隣にはローザが立っていた。

 出迎えてくれるみたいだ。

「あ、おーい。こっちだよ。アキヒト君」

 イヴァンの声だ。こっちが恥ずかしくなるくらいの大きな声だ。少し前まで一緒だったっていうのに。

「到着っと。皆お疲れ。アルルもありがとうな」

「ここが……イヴァン達の村なのね」

「のんびり、してますね」

「ここってグーベラッハに近いのよね。こんな村があるなんて知らなかったわ」

「ふむ。遠くまで来たのぉ」

「ただいま。兄さんに義姉さん」

 それにしてもあれだ。

 ローザに会うのも久しぶりだ。

 以前よりもなんか綺麗になったというか、雰囲気が柔らかくなったような感じがする。

 これが恋する乙女。人妻なのか?

 というか、ずっと気になっていたんだけど、ローザが抱えているそれは……まさか……。

「久しぶりね、ミネットちゃん。ほーら、リーゼちゃん。ミネット()()()()()ですよー」

「わぁ。私も見るのは始めてです。こんにちは、ミネット()()()()()ですよー」

 そう。ローザが抱っこしている赤ちゃん。。

「イヴァンとローザの子供、か」

「うん、そうだよ。リーゼっていうんだ。可愛いんだよ」

 好きあって、子供が出来たから冒険者を引退したとか聞いたけど、赤ちゃんだよ。

「ここじゃなんだし中へどうぞ」

 家の前で騒ぐの迷惑になるし、何より俺達は旅をしてきたばかりだ。

 イヴァンの好意に甘えるとしよう。


「改めて、ようこそフルト村へ」

「小さな村だけど、ゆっくりしていってね」

 イヴァン達の家に案内され、一息つくことが出来た。

 それぞれ簡単に自己紹介をした後は、赤ちゃんを愛でる会になった。

「これが赤ちゃん……小さくて可愛いわね」

「すごい……ふにゃふにゃです」

「か、可愛いですわ」

「やはり赤ん坊はいいのぉ……」

「なんだか歳の離れた妹みたいです」

 赤ちゃんは大人気だな。確かに、可愛い。赤ちゃんというだけで可愛い。

「それにしても、ローザはなんか雰囲気が変わったな。前はもっと勝気というか、やんちゃというか、そんな感じだったと思うけど」

「ふふ。私ももうお母さんだからね。大好きな人と赤ちゃんがいるから……。変わりもするよ」

 夫婦……。赤ちゃんか。いいなぁ。

 仲の良い夫婦を見るとほっこりするし、仲の良い親子を見てもほっこりする。

 そして、いるだけでその場を和やかにする天使のような赤ちゃん。

 イヴァン達親子三人は、とってもいい家族だ。

 俺もそんな家庭を……って、その前に彼女を作らないとね。


 ミネットは久々の帰省を。他の女の子達は、赤ちゃんに首ったけだったり、ローザとの会話を楽しんでいた。

 そんな中。俺はイヴァンに呼ばれて、家から少し離れた、広い箇所に来ていた。

「こんな場所に連れてきて、何をするんだ、イヴァン」

「久しぶりに打ち合いでもしようと思ってね」

 俺は召喚士の後衛。イヴァンは盾重視の前衛だ。

 昔、パーティを組んでいた時に、イヴァンと俺は、木剣で稽古を行っていた。

 後衛の俺の攻撃でも、イヴァンの練習相手は務まるみたいだし、俺の訓練にもなっていた。

 後衛といえど、基本的な体力は必要だし、近接戦闘の訓練はやっておいて損は無いいうことだ。

「別にいいけど」

 冒険者を引退したとはいえ、イヴァンはこの村での貴重な戦力。

 村に侵入する獣や魔物を退治したり、近くの町などに買い出しに行ったりするのに、元冒険者の力は重要だ。

 なので身体が鈍らないように、日頃から運動は欠かせない。と、そう言っていたのだ。

 木剣を持った俺とイヴァン。イヴァンは盾は持っていない。

「それじゃ行くよ」

 その声を共に、イヴァンが攻めてくる。

「くっ」

 驚きだ。イヴァンは冒険者時代は盾使いだ。そのため、初手で自分から攻めるという手は取った事が無い。

 驚いたけれど、きっちりと防御する事が出来た。

「それじゃ今度は俺から行くぞ!」

 後衛である俺の攻撃は弱い。殴っても魔物は倒せない所は、ダメージにすらならない。牽制にもならない。

 なので、戦闘ではもう召喚頼りになっている。

 でも、冒険者は身体が資本だ。旅やダンジョンと歩く事は多い。体力はあって困るものではない。

「てぃ!」

 俺の繰り出した攻撃も、イヴァンは易々と受けていた。

「……やっぱり、だね」

「ん?」

 イヴァンが何か言ったような気もするけど、その後が続かなかったので、空耳なのかもしれない。


 その後、しばらく打ち合っていたけど、さすがに俺もイヴァンも疲れたため、稽古は終了となった。

「はぁはぁ……。久々にやったけど、やっぱ疲れるな、これ」

「うん……。そう、だね。僕もここまでやったのは久しぶりだよ」

「それで……。何か用なのか、イヴァン」

 いきなりこんな稽古を申し出てきたのだ。何か俺に用があるに違いない。

 それも言いにくいというか、そんな感じのだ。

「君の……アキヒト君の強さを見たくてね」

 俺の強さ? 戦いなら、盗賊退治をした時に、魔物とか盗賊とかでやったし、イヴァンも見ているはずなんだけどなぁ。

「アキヒト君の周りには強い仲間が沢山いる。みんな、僕よりも強いと思うよ。それに素敵な女性ばかりだしね」

 最後の部分だけ、ローザに言いつけてやろうか。

「アキヒト君の召喚の強さは知ってるよ。とても強いよ。今まで見た事もない召喚を使っているしね。でも、僕は確かめたかったんだ」

 こういうシリアスな雰囲気は慣れない。でもイヴァンも真剣だ。チャらける訳にもいかない。

「でも分かったよ。確かめる事が出来たよ。アキヒト君。君は強い。こう言うと怒るかもしれないけど、昔、君と稽古した時は手加減をしていたんだよ。前衛と後衛じゃ、力の差が歴然だしね。でも今日の僕は本気だったんだ。でも互角に……いや、僕の方が劣勢だったかな」

 そう……だったのか? そうなのか?

 いくら俺でも、イヴァンが全力だったとは思っていなかった。イヴァンが本気になれば、俺なんか容易に倒せていただろう。だから、()()をしてくれていると感謝していた。

 でも、今日は本気だった……? いい勝負が出来ているとは思っていたけど。

「やっぱり現役っていうのもあると思うけど、アキヒト君は、色々な戦いを経験してきたんだね。能力値もきっと高くなっていると思う」

 確かに色々と戦いは経験してきた。死ぬと覚悟した事もあった。でも、皆のお陰で乗り切る事が出来た。

 能力値……。最近測ってなかったなー……。上がってるのかな。

「悔しいけど、でも安心したよ。アキヒト君。妹を……ミネットをよろしく頼むね」

「……あぁ。任せとけ!」

 そうだ。イヴァンはミネットの兄だ。イヴァンは妹のミネットを心配していたんだ。

 自分とローザだけ引退して、ミネットを一人にしてしまっていた事。

 俺達とパーティを組む約束を守れなった事。

 ミネットが俺達に再会し、パーティに加わった事。

 冒険者には危険が付き物だ。それはパーティに加入していても同じだ。

 実力が無いパーティならば、人数がいたところで意味は無いし、パーティだからこそ、いざこざに巻き込まれる危険もある。

 俺達の実力は知っていると思うし、俺達の事も知っているはずだ。

 危険はない。ミネットを危ない目に合わせないとは誓えないけど。でも……。

「大丈夫だ。ミネットに何かあっても、俺が守ってやるよ」

 これはイヴァンのけじめだ。そして俺のけじめでもある。

「うん。お願いだよ」


「そういえば知っているかい? 僕達が挑戦したあのダンジョンは覚えている?」

「あぁ、もちろんだよ。ゴーレムが出てくる昇級出来るダンジョンだろ?」

「うん。そのダンジョンね。最近奥に繋がる道が見つかったんだよ。かなり深いみたいでね。まだ攻略中みたいで、ダンジョンの周りがちょっとした村みたいになっているんだよ」

「へー……。機会があったら行ってみようかな」

「うん。そうするといいよ」

 ダンジョンの中に隠れていた通路。深い……。位置的にもあのダンジョンの辺りは北側だ。これはもしかして……。

 その新しいダンジョン。行ってみないとな……。あの辺りには良い思い出も悪い思い出もあるから、複雑なんだけどな。

 でも決まった。

 最初はイヴァン達と合流する旅だった。

 それが、イヴァンとローザは引退。ミネットと合流してイヴァン達に会いに行こうとしていた所で、イヴァンだけ先に再会。

 そして、今こうやってローザとも再会出来た。

 もうパーティは組めないけど、やっと皆揃ったんだ。

 この先どうしようかと思っていたけど、手がかりがあるなら……。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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