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06 快勝と手がかり

「兵士達、そして冒険者らの活躍により、この国に蔓延っていた盗賊共を駆逐する事に成功した! これまで我慢を強いていて申し訳なかった。これも皆の協力のお陰だ。感謝を!」

「うおぉぉぉ! 国王様、万歳!」

 盗賊の討伐作戦は、その後時間を置かずに終了となった。

 あれ以外に盗賊の脱走者はいなかったので、俺達の戦いは一回だけで済んだ。

 それも圧勝だった。出し惜しみ無しの全力だったので、消耗もそれなりにあったけど、怪我もなかったので大成功だ。

「今回協力してくれた冒険者達への報酬は、冒険者ギルドを通じて行う! 特に受け取り期限はないが、あまり遅れると困るので、なるべく早く受け取って欲しい。以上だ」

 今回参加した冒険者、それに引退済の冒険者や他の協力者は多い。

 確かに、あまり遅くなってもあれだけど、一斉に行くと混雑してしまって大変になるだろう。

 少しずらして受け取りに行きたい所ではあるが……。

「僕はあまり遅くなるのは……ローザが待っているしね」

 盗賊討伐作戦で冒険者側に死者は出ていない。重軽傷者は出てはいるが、どれも命に問題はないし、回復魔法で治癒できるレベルだ。

 俺達は全員軽傷だ。イヴァンが無事という連絡は、既にローザの所に行っているだろう。

 それでも、やっぱり元気な姿を早く見せてあげたいという事なんだと思う。

 夫婦。

 俺にはまだ分からない関係だ。

 恋人だっていないんだし……。夫婦なんてまだまだ先の話だろう。

 でも俺には大切なパーティメンバーがいる。友達ではなく仲間。仲間ではなく家族。そんな関係だと思っている。

「でもさすがに今日は混むと思うし、明日にしよう」

 俺達も元々この国に長く滞在する予定ではなかった。

 それがイヴァンと出会い、盗賊討伐に参加し、気付けば半月ほどと長いしてしまっていた。

 先を急ぎたいのは俺も同じだけど、ちらっと見えた冒険者ギルドの様子を見るに、今日は行かないほうがいいだろう。

 ここまで来たら、一日二日くらいの滞在は別にいいし、好き混んで満員な冒険者ギルドに行きたい奴はいない。


 翌日。

 少しは収まったけど、普段よりは混んでいる冒険者ギルドで、報酬を受け取る事が出来た。

「じゃあ、俺は先に戻ってるよ」

「うん。ごめんね。アキヒト君」

 どうやらイヴァンは時間が掛かるようだ。

 イヴァンは冒険者を引退している。そのため、今回の作成に参加するのは特別枠だった。なので、その後処理の手続きが長くなるみたいなので、俺は先に宿に戻らせて貰ったのだ。

 部屋は二部屋確保している。

 俺とイヴァンの男性組と、マリア達の女性組で別れている。

 イヴァンと再会してからはずっと二人だったので、機会がなかったけど、今は一人だ。

 やる事は決まっている。


「気配はあった?」

「はい。少しですが感じる事が出来ました」

 トキだ。この国に来てすぐの時に確認したときは、気配はなかった。

 イヴァンがいると確認が出来なかったけど、盗賊討伐で沢山の人がまだこの国にいる今がチャンスだ。

「本当か? どことか、誰とか分かるのか?」

「サブマスターと同行している男性。彼から少しマスターの匂いがします」

「……イヴァンだけか? 俺達はしないのか?」

「はい。その男性だけで、サブマスター達からはしません」

 イヴァンと再会してからは、ずっと行動を共にしていた。その時に戸田の研究所絡みの場所に行っているなら、俺達も近くに行っているはずだ。

 でも、トキは俺からは気配はしないと言っている。

 イヴァンは冒険者ではない。なので、どこかに冒険するという事はない。

 可能性があるとすれば、イヴァンの故郷からこの国の道中にあるという事だろうか?

 だとすれば、もっと多くの人から気配がしてもいい気もするが、となると。

「イヴァンの故郷付近って事か?」

「その可能性が高いと思われます。匂いは薄いので、本人ではなく、他の誰かから移ったと思われます」

「そうか……」

 たしか、ここから北に向かった場所だったっけか。位置的にはトキがいた研究所から少し東にそれた北方面って事になる。

 イヴァン達の故郷。そこに行けば、戸田の研究所の在処が分かるかもしれない。

 イヴァン達の故郷には行くつもりだったけど、行く理由が増えたな……。


「やぁごめん。待たせたね」

「兄さん。手続きは終わったのですか?」

「うん。色々と面倒だったけど、やっと終わったよ。もう帰ってもいいってさ」

「お疲れイヴァン」

 イヴァンも戻ってきて、皆で夕食タイムだ。

「それで、明日にも発とうと思うんだけど、皆いいかな?」

「また急ね……。ワタシは問題ないけれど」

 盗賊討伐というクエストがあったけれど、この国もざっとは見て回る事は出来た。

「皆ごめんね。僕のために……」

「イヴァン達に会いに行くのが目的だったからな、気にするなよ」

 この国にも愛着は出てきてはいたけど、それはそれだ。

 イヴァンとローザ。この二人に会いに行くのが目的だった。たまたまイヴァンだけ先に再会してしまったけれど、ローザにも会いに行かないといけない。

 そして、戸田の研究所の手がかりであるイヴァン。その故郷に行けば、もっと濃い気配を感じ取れるだろう。

「それじゃ出発は明日だ。皆、準備よろしくな!」




 王宮の一室。王と宰相、近衛達が盗賊討伐の後処理をしていた。

「何? 頭領がいないだと? 頭領は冒険者達が捕まえた奴らの一人じゃないのか?」

「はい。本人もそう言っていますが、どうも違うようです。他の盗賊達の証言も曖昧ですし」

「ふむ……。逃げられたということか」

「そのようですね。それに盗賊というのも隠れ蓑のようです。本業はなんでもある裏の家業みたいですね」

 よくそこまで調べられたものじゃな。

「トップを逃がしたのは大きいですが、この国での悪党はほとんど掃除する事が出来ました。作戦は成功かと」

「ふむ。そうじゃな。今頃はどこか他の国に逃げておるだろうしな」

「はい。それよりも、よかったのですか? てっきり、王は勧誘されると思っていましたが」

 さすがは宰相。お見通しか。

「あの冒険者じゃな」

「はい。あの冒険者の力は素晴らしいです。勧誘し、我が国で抱える事が出来ればと思っていましたが」

 そこまで儂の事を見抜いていて、気付かぬか。

「理由は二つじゃ。まず、彼らは流れの冒険者。どこにも属していないからこそ、抱え込むことも可能じゃが、どこかに属する気がないからこその流れだと判断した」

「な、なるほど……」

「二つ目はあの強さじゃ。特に、龍の装備を纏っていた長身の女性。あの者は強い。抱え込むのは容易ではないぞ?」

「王よりも、でしょうか?」

「儂の方が強いじゃろうな。儂が全力で戦い、あの者の実力があれで全力ならばな。もちろん、あれが全力ではないと思っておる。なので、抱えるのはリスクが多きするのじゃ」

 他に不思議な武具を有していた二人。あの者達も恐らくは同格の強さ……。恐らくあの三人だけで……いや、一人だけでこの国の軍力を凌ぐ強さじゃろう。

「そ、そうですか……」

「それに、あの者達は個の強さ。儂の国では、兵たちの群の強さがある。今回の事は兵士達にもいい鍛錬になったじゃろう。今後も期待しておる」

「承知致しました」

 欲を言えば、あの者達と闘ってみたかったのじゃが、王という立場になってからは自由に闘えなくなってしまった。

 それだけが心残りじゃな……。




「ふぅ……。ここまで来れば安心ですかね」

 デラクルス国から離れ、ウィック大陸への船に潜入。無事にウィック大陸まで辿り着けました。

 二つあったアジトは壊滅しているでしょうかね。

「部下も来ませんか……」

 途中に出会った冒険者達。こちらは五人。相手は七人でしたが、四人を向かわせ、私だけ逃げだす事に成功しました。

 そこらの冒険者よりも強い、選りすぐりのお気に入りの部下達。まさか負けてしまったとは思いたくありませんが、来ないとなるとそうなのでしょう。

「この国のアジトに行きますかね」

 アジトは世界中に散らばっている。

 一つや二つ壊滅させられたところで、痛くも痒くも無い。

 それでも。

「少し派手に動き過ぎましたかねぇ……。しばらくは大人しくしていましょうか」



ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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