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召喚獣による召喚で異世界で召喚士になりました  作者: bamleace
一章 ~ワーズヴェシン街~
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08 初クエストと初戦闘

 俺達は街の東にある森にいた。薬草納品の薬草を集めるためだ。

「しっかし、結構簡単に見つかるものだな」

 気合を入れた割には何も起らず、サクサクと薬草を採取している。こう、冒険って感じがしない。

「Fランクの、それも一番簡単なクエストだしね。こんなもんよ?」

「そういうもんかねぇ」

 ちなみに、この森は俺が異世界で初めての地だが、さすがに降り立った場所には行っていない。だって爺さんが眠っているしな。安からに眠らせてあげよう。

「ワタシは半分取り終わったわよ」

「俺も終わったぞ」

 それほどノルマは多くはないが、折角二人でやっているんだし半分ずつ分担していた。その甲斐もあって、早くも規定分の量が集まってしまったのだ。

 さてどうするか。戻って、クエスト報告をして他のクエストをやってもいいが、森の往復は面倒なんだよなぁ。森の入口まで徒歩で三十分だし、今いる地点も十分ほど歩いたし所だしな。

 少し散策してから帰るのもいいかもなぁ。ここには弱いとはいえ、魔物がいるらしいし、初めてなら打って付けだろう。

「さてどうするか。少し森の中を歩いて魔物と戦ってみたいけど、どう思う?」

「そうね。折角来たし、薬草採取だけっていうのもつまらないわね」

 賛同を得られたのはいいが、マリアは意外に好戦的だ。怖い。……魔物を探してみるか。


 魔物を探すこと、十分ほど。さすがに魔物が少ないのか、全然エンカウントしなかったが、やっと見つかった。

 リトルホーンラビ。小さい角を生やした大きめのウサギだ。角と言われるとちょっと恐いが、先は丸まっており刺さることはない。攻撃方法は角での体当たりだが、人間に殴られる程度の攻撃力しかない。

 毎年、何人かの子供が攻撃されて怪我をするが、回復魔法やポーションで治るため、惨事にはならないらしい。ちなみに魔物としては最弱の部類に入る。

 以上が冒険者冊子に書いてあった、初心者への説明内容だ。

 つまりは、RPGで最初の街付近に出てくるお決まりの雑魚敵ってことだな。

 雑魚敵とはいえ、魔物だ。二匹いるが、こちらも二人なので条件は同じだ。さぁ、初戦闘だ!


 初戦闘、そう思っていた時期もありました。蓋を開けてみれば、マリアが瞬殺してくれました。

 二匹の内、手前にいた一匹は数回斬って、奥にいた一匹は一突きで。うん、相手は雑魚敵とはいえ、マリア強いんじゃない? 確かにステータスは平均的な前衛タイプだったけど、こんな簡単に倒せちゃうのか。

 いやいや、一方的に倒せたのはいいけど、戦闘をしたいんだよね。雑魚な敵を相手に、避ける練習とか、覚えた召喚獣の練習とかね。

「マリア、倒してくれたのは嬉しいけど、俺もどの程度戦えるか試したかったんだが」

「え? ごめんなさい。つい……」

 つい、で瞬殺かよ。マリアって脳筋なんじゃね……? 仕方がないので次を探すか。その前に、倒した魔物から素材を取らないとな。

「これって解体とかしないとダメなのか?」

「さすがにこのままじゃ駄目よ。この魔物だと、角と皮と肉かしら」

 そう言って武器屋で買ったナイフでどんどん解体していくマリア。うーむ、日本にいた頃は、こんなグロいのは見る機会も無かったし、例えあったとしてもいい気分ではなかっただろう。

 しかし、異世界補正なのか、そんなに気分は悪くならなかった。もちろん自分でやるのはまだ抵抗はある。

「ごめんな。俺にはまだ無理だわ」

「はいはい、ワタシがやるからいいわよ。でもアキも出来るようになったほうがいいわよ?」

 気づいたら二匹とも綺麗に解体されていた。口を動かしながら手も器用に動かすマリアさん優秀。

 解体し終わった素材を、魔法の袋に仕舞う。便利なものだ。荷物を持ったまま移動とか嫌だしな。肉とか入れていると、匂いとか腐ったりしそうだが、そこは魔法道具。状態が保存されていて、腐ったりしないそうだ。

「さて、俺も戦ってみたいし、また探すぞ」

「了解よ」


 あまり森の奥に行くのも危険なので、奥に行かないように散策をする。五分ほどで魔物を見つけた。

「またリトルホーンラビか。それに二匹」

「どうするの?」

「そうだな。避ける練習もしておいたほうがいいだろう。マリア、攻撃せずにしばらく敵の攻撃を避け続けてくれ」

「分かったわ。アキはどうするの?」

「覚えた召喚獣を使ってみる。俺も避けるから、俺に構わなくていいぞ」

 さっきみたいに、マリアが瞬殺しては戦闘の練習にはならない。この程度の敵ならいいが、もっと強い敵相手になると瞬殺は出来ないだろう。そうなると、避ける行為も必要だ。

 さらに言えば、攻撃を喰らっておくのもいいだろう。この敵なら喰らっても、最悪多少の怪我にしかならない。敵が弱いうちに、怪我をする経験もしておいたほうがいい。

「それじゃ……、行くわよ!」

 まだこちらに気づいていなかった敵に向かっていくマリア。さすがに声と接近で敵がマリアに気づき、体当たりしてくる。それを苦も無く避けるマリア。敵は二匹だというのに、余裕そうだ。

 うーん、今のままでも余裕そうだな。さすがに雑魚相手では遅れは取らないか。

 でも実験だ。

「来い、シルフ!」

 声に出さなくてもいいけど、こういうのは声に出すのが重要なんだ。

 シルフは風による攻撃と、敏捷上昇の補助が出来る。素早さアップだな。まずは補助を試してみるか。

「シルフ、マリアの敏捷アップだ!」

「はーい、いっくよー!」

 どうでもいいけど、召喚獣って軽い性格多いような気がする。もっとこう、「かしこまりました」みたいに召喚主を敬う系じゃないの? まぁ固いの嫌いだから、別にいいんだけど。

 シルフの風がマリアを覆う。魔力、かな? 攻撃ではないし、これが補助なのだろう。

「どうだ、マリア? 敏捷アップなんだが」

「よっと、確かに少し動きやすくなったかも?」

 いまだに魔物二匹を相手に回避し続けているマリアだが、見た目にも少し早くなった気がする。

 俺の立ち位置的は、召喚獣で補助をしつつ攻撃という感じだろう。今覚えている召喚獣だと、腕力と敏捷アップ、さらに回復まで出来る。まぁ初級の召喚獣だし効果は低いだろうが、それでも無いよりはマシだろう。

「ありがとう、シルフ。もういいぞ。来い、サラマンダー!」

 敏捷アップが確認出来たので、次はサラマンダーだ。腕力アップが出来る。ちなみに一度補助を掛ければ、召喚獣を消しても効果はしばらく続く。もちろん召喚中じゃないとダメって召喚獣もいるかもしれないが、さすがにまだお手軽レベルらしい。

「サラマンダー、マリアの腕力アップだ!」

「ギャオォ!」

 この命令の掛け声も実はいらない。念じて召喚獣に命令すればいいだけなんだが、声に出すことでパーティメンバーに知らせるという目的がある。

 どの召喚獣を出して、どういう事をさせるかっていうのは、連携に必要になる。もっと慣れれば、阿吽の呼吸で出来るんだろうけど、俺達にはまだ無理だ。

 サラマンダーが赤く光りだしたと思ったら、マリアも赤く光りだした。時間にして数秒だ。これでもう腕力が上がったのだろう。

「今度は腕力アップだ。一匹攻撃してみてくれ」

「分かった……、わ!」

 腕力アップの効果を確かめるため、マリアに攻撃させる。突けば一撃だろうが、感触は変わるだろう。

「せいっ!」

 やっぱ突いた。いや、レイピアとしては正しい攻撃方法なんだが……。

「さっきと比べてどうだ?」

「さっきよりも楽ね」

 効果はあったようだ。一突きには変わりないが。

「もう一匹は召喚獣で攻撃させるぞ。あ、マリアの事じゃないからな!」

 残った一匹は召喚獣で倒そうと思って言ったが、マリアが自分の事だと勘違いして、残った一匹も一突きにしようとしていたので、慌てて訂正をする。

「え? あ、他の召喚獣ね。分かったわ」

「戻れ、サラマンダー。来い、ノーム!」

「来たぞぃ」

 手乗りサイズの爺さんだ。偉そうだけど手乗りサイズだ。

「ノーム、あいつに攻撃だ!」

「分かったぞぃ」

 ノームに攻撃を命じる。ノームが力を込める動作をして手を前に出す。

 すると、リトルホーンラビの足元の地面が動いた。次の瞬間、土の杭が飛び出してリトルホーンラビを下から突いた。地面から一突き。大きさはリトルホーンラビに風穴を開け、絶命させるのに十分だ。

 うーん、これオーバーキルだな。しかし強いのは嬉しい限りだ。


 またマリアに解体してもらった。そこそこ戦闘も出来たし、そろそろ腹が減ってきたので街に戻る事にした。

 途中でリトルホーンラビが一匹だけいたので、俺が対応した。召喚獣を使わずに杖での近接戦闘だ。避けつつ攻撃をする。途中で一回攻撃を喰らってしまい怪我をしたが、五回殴った所で倒せた。大きな怪我ではなかったが、マリアが心配したのでウンディーネで治療した。

 怪我も痛みも綺麗に無くなり、回復能力の確認も出来たし、マリアも安心したしでよかった。それにしても、杖とはいえ五発必要か……。


 街に戻ってきたので、クエストの報告と素材の売却をした。

 クエスト報酬は、銅板一枚にポイントが十だ。二人で分配なのでポイントは五になる。ランクEになるためには百ポイント必要になる。この調子だと後十九回しないと駄目だ。結構遠いかな? ちなみにリトルホーンラビの素材は全部で銅板一枚になった。

 リトルホーンラビの討伐クエストを受けていればよかったが、クエストは基本一つまでしか受注できない。なので最初だし、薬草納品を受注したんだが失敗だったかな。

 討伐系のクエストを受注して、素材を採取しつつ魔物を討伐して、討伐の報告した後に納品系のクエストを受注、即納品って小技も使えるらしい。そうすれば、一回の移動で複数のクエストが擬似的に行える。

 さっきの俺たちで言うと、リトルホーンラビ討伐のクエストを受注しておいて、薬草を採取しつつリトルホーンラビを倒せば、リトルホーンラビ討伐と、薬草納品の二つのクエストがクリア出来ていた訳だ。

 ちなみに同じクエストは、一日一回までしか受注できないので、薬草を沢山採取して複数回クリアというのは出来ない。

 まぁ、納品系のクエストも常時ある訳でもないし、あればラッキーって感じになるのだろう。今回は仕方ない。これも経験って事になるんだよ、うん。

 お腹が空いていたし、ちょうどお昼の鐘が鳴ったのもあり冒険者ギルド内の食事スペースで昼飯を食べた。一人銅貨三枚で宿の値段と変わらなかった。

 出てきたのは、トマトなどの野菜のサンドイッチみたいものと、スープだった。……宿とあまり変わらないな。この世界には米が無いのか? ジャパニーズフードよ……。いやまぁ、美味しかったからいいんだけど。

 ともあれ、初クエストクリアに魔物も倒せたし、やっていけそうだな。まだまだ安い報酬だけど、ランクが上がっていけば十分稼いでいけるだろう。

 この調子で頑張っていこう。


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