表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/126

03 討伐作戦と出発

「我が国で起こっている事件については、既に皆知っている事と思う」

 俺達と再会を果たしたイヴァンは、街で一番広い広場に来ている。

 沢山の人を前に、国の兵士が大きな声で皆に呼び掛けている。

「その事態に対して、国は兵を出す事に決めた」

 最近の盗賊についてだろう。国は動いていないと思っていたけど、イヴァンの話では、きっちりと動いていたようだ。

「それに伴い、冒険者の力も借りたい。我こそはと思う冒険者は、冒険者ギルドで依頼を受けて欲しい」

 これがそれだ。

 国が兵を出すだけでなく、冒険者達にも協力を仰いで、共闘する。

「ランクが低い者でも大丈夫だ。前線で戦うだけでなく、裏方の仕事もある。国を脅威から守るために、皆の力を貸してほしい。以上!」

 俺達は、元々はこの国は通りすぎるだけの予定だった。

 でも盗賊が多いということで、落ち着くまで滞在しようかって意見もあった。

 そこにイヴァンの登場だ。

 引退したのに、家族のために危険を顧みずに戦いに向かうイヴァンを前に、俺達は去る事が出来るだろうか?

 否である。

 元はと言えば、イヴァン達に会いに行くのが目的だった訳だ。

 なら、ここでイヴァンに協力して、そのまま一緒にイヴァン達の故郷に向かえばいいじゃないかという結論になった。

 なので、こうして国の兵士が発表している、国からの依頼の詳細を聞いていた訳だ。

 でも、詳細は冒険者ギルドでという事なので、この発表は何の意味があったのだろうか。

「士気を高めるためっていうのが大きいと思うよ。単に依頼しただけだと、共闘しにくいっていうのもあるね」

「なるほどね。でも俺達は後方支援なんだけどね」

「ごめんね、僕のために……」

「それは昨日も言っただろ。気にするなよ」

 それにしても人が多い。イヴァンの言っていた士気を高めるっていう効果かな。




 とある場所のとある建物で、二人の男性が会話をしていた。

 どちらも怪しそうではあるが、どこにでもいそうな風貌だ。

「そうですか。ついに国が動きますかね」

「はい。演説をしていました。冒険者も雇うみたいです」

「んー。どうやらこちらの間者には気付いていたみたいですねぇ」

「そうみたいです。ですが、こちらの存在まではバレていないみたいですよ?」

「ほぉ? それは何でですかね?」

「盗賊のアジトは、街の南東にあるというのが、国が発表していた情報です」

「なるほど……。向こうの捨て駒の盗賊団に引っかかってくれている訳ですね。ならば話は簡単です。向こうを囮に、我々は脱出しましょうかね。最近は少し派手に動き過ぎましたし、これが終わったら、少し大人しくしますかね」




 とある場所のとある建物で、二人の男性が会話をしていた。

 どちらも豪華な衣装を着ており、明らかに偉いのが見て取れる風貌だ。

「告知は済んだか……。間者は予定通りに動いたのか?」

「はい。予定通りに南東のアジトへと駆け込んだ模様です。現在、交代で監視を行っています」

「なるほど。()()()()も順調か?」

「そちらも予定通りですね……。しかし、本当に出陣なさるおつもりですか? 王自らが」

「ふはは! これほどの盗賊団は久々なのだ。血が騒いで仕方ないではないか。なぁに、心配するな。護衛はきちんと付けるし、何よりそこいらの盗賊に負けるような儂ではないわ」

「ですが……。はい、分かりました。十分にご注意くださいませ」




 盗賊退治のクエストを受注した冒険者達は、ギルドの一室に集められた。

 後方支援で申し込んだ俺達もだ。

「諸君。よく集まってくれた。国からの依頼と言う事で、詳しい事はそちらから説明してくださる。静かに聞くように。ではお願いします」

「はい、皆さん。今回の盗賊討伐を受注してくれて感謝します。それでは詳細ですが……」

 兵士の説明によると。

 攻撃目標は二か所。どうやらアジトが二か所あるようだ。

 優先されるのは南東にある数が多いアジトだ。

 冒険者の多くはそちらに投入されることになる。

 もう一つは北東にあるアジトだ。

 こちらは数は少ないものの、もう片方のアジトの本拠地といったポジションみたいだ。

 こちらは主に国の兵が投入されることになる。

 そして、国が動いているというのは、既に向こうに知られているらしい。

 なので相応の抵抗をしたり、逃げだすかもしれない。それらを漏らす事なく討伐していく事になるという。

 実は、盗賊側のスパイがこの街に潜り込んでいたみたいで、国や冒険者ギルドの動向を探っていたらしい。

 それを炙り出すために、あのように大勢の前で演説を行ったという訳らしい。

 それで盗賊が逃げださないのか? と思ってしまうが、監視と包囲網を敷いているので大丈夫だとか。

 だけど、時間をかけてしまえば、それだけ盗賊側にも時間を与えてしまうことになる。

 なので、時間との勝負だ。

「それでは、出発は明日の早朝だ。もう半日もないが、各自準備をよろしく頼む」


「それで俺達は本拠地側の包囲網を手伝うって事か」

「国がしっかりしてくれるみたいだし、盗賊と戦闘になる事は無さそうだね」

 俺達とイヴァンの混合組は、北東にある本拠地側の包囲網をすることになった。

 今は兵士がそれを担っているが、包囲網と監視を俺達冒険者に任せ、兵士達が乗り込む事になるらしい。

 それに、国で一番強く、最強と言われている、獣族の国王も出陣するようだ。

 一番偉い人が戦場に出てくるなんて、もし何かあったら大変だと思うけど、だからこそ士気も上がるという事かもしれない。

 俺達の仕事は包囲網の手伝いだけど、もちろん盗賊が逃げだしてくる可能性もあるし、魔物が現れる可能性だってある。

 もちろん、前線に行く冒険者に比べれば優しいと言える。報酬だって少ない。

 だけど、万が一盗賊が逃げだしてきて、それに対応する事態になったときは、報酬は追加となる。

 報酬が貰えるのはいいけど、やはり安全が第一だ。

 包囲網なら他の冒険者もいるし、何より国の兵士も頼りになるっぽいので、戦闘になる可能性も低い。

 まさに後方支援という訳だ。

 それでも準備はしておかないといけない。

 色々なものは国側が準備してくれるけど、基本的な装備や消耗品などは自前だ。

 それにしても、前のエルフの国の時も国からの依頼はあったけど、今回みたいな大規模なものは初めてだ。

 前回みたいに他のパーティと強く関わる事はなさそうだし、基本的に待ちの状態になる。

 そういう意味では、大規模だけど自分達だけしかいないって感じで、大規模が感じにくい。




「兵と冒険者が二手に分かれたんですかね?」

「は、はい! こちらにも攻めてくるようです」

「……どうやら一杯食わされたみたいですねぇ。相手はこちらのスパイに気づいていて、それを利用したのでしょう」

「ど、どうしましょう?」

「変更はありません。向こうの捨て駒に少しでも奮闘して貰って、こちらに来る戦力を減らして貰います」

「それでは向こうは全滅になってしまいますが……」

「捨て駒ですからねぇ。こちらのいる人材が残れば大丈夫ですよ。それとも、あなたは向こうの応援に行きたいのですか?」

「い、いえ!」

「でしたら、もう行きますよ。こうしている間にも、相手は来てしまいますからねぇ」




 翌朝のまだ若干薄暗い時間。

 こんなに早起きするのは久しぶりな気がする。

 日本にいたときでも、こんなに早起きしたのは、家族で旅行するときとかだろう。

 特に国全体で兵士を送り出す事もなく、ひっそりと、それでいて速やかに兵と冒険者が出発している。

「我々の目標は北東だ。冒険者もよろしく頼む」

「がはは! 儂が出るのだ。皆は安心しておられよ。万が一にでも盗賊を逃がす事はないだろうが、皆も気を付けるように」

 あれがこの国の王かな。

 見るからにパワー系で強そうだ。獣族なんだけど、アルルと違って巨体だ。二メートル越えているんじゃないだろうか。

 まるでゴーレム系の召喚獣みたいだ。安心感は凄いある。

 それでいて、冒険者である俺たちも気遣ってくれている。

 他の国の王とは全く違う王だ。

 グーベラッハは、内政をしっかりするタイプの王に見えた。

 トーダの王は、普通のおっさんぽかったし、周りがしっかりするタイプだ。

 こうやって、ぐいぐい引っ張っていってくれる王だと、皆に支持されるのも頷ける。

「それでは出発します!」

 まだ出発だというのに、少し緊張してきた。

 実際に、盗賊と戦闘する訳じゃないけど……。

 でも、マリア達もいるし、イヴァンもいる。

 ただ待っているだけで、終わる作戦になるはずだ、きっと。

ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ