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01 新大陸とデラクルス国

 デラクルス国。

 ウィック大陸の東にあって、俺が最初に降り立ったワーズヴェシンとかと同じ大陸にある国だ。

 地球で例えると、ウィック大陸がオーストラリアで、デラクルス国が南アメリカで、カナダの北西辺りがワーズヴェシンという感じだ。

 縮尺も距離も全く違うけど、そんなイメージだ。


 ウィック大陸を出発した俺達は、ミネットの兄――イヴァン達に会うためにやってきたのだ。

 イヴァン達が住んでいる彼らの故郷は、また大陸を渡らないといけないけど、大きな川で区切られているため、そう遠くはないらしい。

 さすがに一日や二日で行く事は出来ないので、南の玄関口とも言えるデラクルス国を経由する必要があった。

 デラクルス国は、自然が多く、また獣族が多いのが特徴だ。国王も獣族らしい。

 俺達は今、そんな国に来ている。


「これはこれで少し居心地が悪いな……」

 獣族が多いとはいえ、そこまで比率は高くない。多少多いかなと思えるくらいで、それは別にいい。

 問題は、みんな暑苦しいということだ。

 ムキムキの筋肉を見せつけてきたり、ごつい装備を見せびらかしたり、そこかしこで殴り合いの喧嘩が行われていたり……。

 後衛っぽい感じの人は少ない。

 元々、獣族は魔力が低い傾向にある。そのため、獣族は大抵は前衛になる。アルルだってそうだ。

 さらにここにいる人族も、それを競うかのように前衛タイプの人が多い。

 どうもここは、腕力が正義な国みたいだ。

「そうね……。あまり長居はしたくないわね。でも、アルルは楽しそうね」

 俺達の中で唯一の獣族であるアルルにとっては、同族がこんなにいるのは珍しい事だろう。

 同族意識というか、そういうのがあるのだろう。

 アルル以外はみんな人族……ヴァルマは違ったか……。まぁアルルが喜んでいるならいい事だ。

「まぁせっかくだし、少しは見て回るか? ミネットはここに来たことはあるんだっけ?」

「来たことはあるんですが……。小さい頃でしたし、兄さんの後ろに付いて行っただけなので、分からないです」

 別に急ぐ旅でもないし、せっかくだから観光をしてもいいかと思ったけど、召喚士の俺からすれば、ウィック大陸とはまた違った意味で居心地が悪い。

 マリアと同意見で、出来る事なら長居はしたくないけど、さすがに旅の補給などはしないといけない。

 数日は滞在する事になるだろう。

「まずは冒険者ギルドだな」

 もうすっかり俺も冒険者だ。

 新しい街に来たら、まずは冒険者ギルド。そこで俺達のパーティの移動記録や生存報告、それ以外にも色々な情報を入手できる。


 さすがは冒険者ギルドだ。

 さらにも増して暑苦しい人達ばかりだ。

 それにしても……。

「人が多くないか?」

「他の国よりも賑やかね……」

「依頼、多いのでしょうか?」

 人が多い。建物もそれなりに多いけど、人が多い。

 こんなに人が多いという事は、依頼が多く冒険者が必要とされているという事だろう。

 自然が多く、森林や湖が多いと、魔物や植物なども多いのだろうか。それらを目的にした依頼が多いのだろう。

 とにかく、俺達は依頼は受けない。軽く情報を集めて宿でゆっくりとしようか。

「どうもこんにちは。今日この国に来たので、連絡に来ました」

「これはどうも……。アキヒトさん、六人パーティですね。ようこそ、デラクルスへ。依頼は受けていきますか?」

「いえ、今日は連絡だけのつもりなので……。それにしても、この国はいつもこんなに混んでいるんですか?」

「あぁ……。いえいえ。最近、盗賊や強盗被害が多いので、それの警備関連の依頼が多くなっているんですよ」

「そうですか……。私も気をつけます」

「はい、お気を付け下さい。では」


「おかえり、アキ。連絡は終わった?」

「あぁ。なんか最近強盗とか盗賊が多くなってるらしい。それで混んでいるんだとさ。俺達も気を付けような」

「物騒じゃの……」

 盗賊は怖い。

 数も力量も経験も俺よりも勝っていると言っていいだろう。

 前に捕まった時はなんとかなったけど、あんな思いはもうしたくないし、させたくもない。

 俺だって、あの時より成長している。

 まぁこんなに沢山の冒険者がいるなら、問題はないだろう。

「よし、宿を確保して飯でも食おうか。買い物とかは明日からで、今日はゆっくりとしよう」

「分かったわ。疲れちゃったしね。アルルなんか一日興奮しっぱなしだし」

「マ、マリア様! アルルはそんな事はありません」

「そうだよね。アルルちゃん、なんかいつもより元気だったし」

「尻尾がフリフリと動いておったしの」

「ローザさんは尻尾ないですけど、同じようなテンションをするです」

 アルルの喜びっぷりは、皆にも丸わかりだったみたいだ。

 ……もしかしたら、アルルの故郷もこの国のどこかにあったのかもしれないな。

 ここから王都グーベラッハは少し離れているけど、非現実的な距離でもないし。




「それで、首尾のほうはどうなっている?」

「はい。問題なく進んでおります。人数も揃ってきています」

「間者は?」

「そちらも問題ありません。うまく動いてくれています」

「ふむ……。となると、動くなると、数日後といった具合か。それまで準備を怠らないように」

「はっ!」

「……ふっふっふ。久々の大仕事か。血が踊る!」




「部屋が空いていた良かったな。まさかこんなに混んでいるとは……」

「冒険者が多いからかしら……」

 宿を探していた俺達だったけど、何件か回る事になってしまった。

 何故かというと、宿が激混みだったのだ。満員御礼だ。

 何件か目の、冒険者ギルドや商店外から少し外れた所にある宿で、なんとか二部屋確保できたのだ。

 それでも、ここも相当に混んでいる。二部屋取れたのは幸運と言えるだろう。

 マリアとかアルルだけだった頃は、一部屋とで三人一緒でという時期もあったけど、

 さすがに今はもう無理だ。

 マリアにアルル、カタリーナにヴァルマとミネットの五人の女性と、俺が一緒の部屋に泊まるなんて事は出来ない。

 とても夢のような話だけど、さすがに俺には無理。

 というか、一緒の部屋だとヴァルマに性的に襲われそうな気がする。

 なので、部屋は二部屋以上必須だ。一つは大きめで、もう一つは俺一人なので小さくていい。

 二部屋くらいなら飛び込みでも部屋が取れるのが多かったのだけれど、まさかこんなに苦労するとは思っていなかった。

 この混み状態が続くようなら、早めにこの国を出発した方がいいかもしれない。

 盗賊被害が多いって言っていたし、それが落ち着くのを待った方がいいのかもしれないけど、そこは悩み所だな。

「うん、美味しいわね」

「そうじゃの」

「ウィック大陸は女性向けのお店が多かったですけど、ここは冒険者の国って感じなのですかね」

 食事は美味しい。ウィック大陸では、お洒落であっさりとか健康志向の食事処が多かったけれど、ミネットの言う通り、ここは冒険者向けの店が多い感じだ。

 というより、ダイナミックだ。量も多いし、味も濃い目が多い。

 毎日はきついけど、たまにならいいかもしれない。

 ……やっぱ数日経ったら出発しようかな。


ご意見ご感想があれば嬉しいです。

が、豆腐メンタルなのでお手柔らかに……


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